No.288613

人類には早すぎた御使いが恋姫入り 六話

TAPEtさん

時間がないので早く書ける奴にしました。
ちょっと大雑把になったかな。でも、一刀的には

『計画通り』

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2011-08-30 17:51:51 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:7037   閲覧ユーザー数:5424

一刀SIDE

 

覇王、

 

それは全てを己の下とし、全てを喰らい尽くす強欲な指導者を称す名。

 

その強欲さを満たすために、どれだけ多くのものたちを犠牲にするか。

 

人、財、時

 

覇王を全盛期として全てを失っていく国の姿は偶然ではない。

 

謂わばここまでやらかしておいてお前が死んだらどうすんだよ、って話だ。

 

まるで現代いうと皆が頼っていた大企業が咄嗟の理由で倒産したのだ。

 

それじゃあその企業を頂点としていた群れは全てドミノのように崩れていく。

 

覇王はまるで自分たちの夢、望が誇り高きもので、他の者の目にとは尊い何かになるかのようにする。

 

確かに凡人ならそれを夢見ない。

 

それを夢見る者たちは周りのことなんて真に微塵なものにしか思わないキチガイな人種だけだ。

 

人それを天才を言う。

 

天にいるべき才、つまり地上には要らなかった才って話だ。

 

地上にお前なんて要らなかったのに何の必要も無く降りてきて、それからはまた天を目指して地上の人たちを惑わせ置いて、天に帰る時は地上は底なきの穴に落として帰りやがる、人類の進化において見た目は得だが、実際には居ない方が良かった人種だ。

 

 

 

 

 

 

 

「ここだな」

 

許緒が居た場所、そこから一番近い村あるはずの場所にたどり着いた。

 

「…うん?」

 

そこには女の子一人が村の入り口にて何かを待っているかのようにうろうろしていた。

 

「少し良いか」

 

俺はその娘に声をかけた。

 

「あ、はい、なんですか?」

「この村に、許緒という娘が居るか」

 

その娘はびっくりした顔で私を見た。

 

「季衣のことを知っているんですか!?」

 

恐らく許緒の真名らしき名を言っている。

つまりこの娘は許緒の姉妹か、それとも同じ村で育った幼なじみという話だ。

 

「東の荒野で彼女が盗賊と戦っている場を見た。この村の娘で間違いないか?」

「はい!季衣は無事ですか?」

「……今曹操軍に助けられて、一緒にいる」

「曹操さん……陳留の刺史の曹操さんですか?」

「そうだ。この地域の刺史が逃げたらしいからその補足に来ている。君の友たちは大丈夫だ」

「そうですか、ふぅ…よかった」

 

あくまで、俺が見た時大丈夫だったという話だが……

 

「許緒とは姉妹か?それとも……」

「一緒にこの村で育った友たちです」

「なるほど…良かったら名前を教えてもらえるか?」

「あ、はい、私は、典韋って言います」

「…………」

 

これは、また興味深いな。

 

 

 

 

華琳SIDE

 

 

一刀が軍を去った。

一時的なことなのか、本当に去ってしまったのかは分からないけれど、私に言い出した言葉が気にかかる。

 

「華琳さま!私のあいつを追わせてください!」

「……追って何をするの」

 

春蘭が怒りを抑えられず一刀を探すと私に申し出てきた

 

「華琳さまに果たした無礼、その場で償わせます!」

 

と言っても、春蘭を行かせるわけにはいかない。一刀のことが心配だからでなく、もうすぐ戦場を前にしてそんな暢気なことをしていられないからだ。

 

「ダメよ。彼の足で出ていったんだもの。放っておきなさい」

「しかしっ…!」

「くどいわよ!」

「っ!」

「春蘭、いまあなたのその怒りは彼が私を侮辱したからなの?それとも、あなた自身の武が穢されたからなの?」

「そ、そんなこと聞くまでもありません!!」

「なら、これ以上その話はやめなさい。私は侮辱されたとも思ってないし、彼を殺そうとも思っていない」

「なっ……!」

 

彼はいつも冷静な対応をする。

ちょっと変人だし、奇人ではあるけれど、その行動はいつも冷静で、理想的で、論理的だ。

そんな彼がただの感情の赴くまま私の前から去ったとは思えない。

 

「華琳さま、季衣と先行した部隊が賊が篭ってる砦を発見しました」

「………」

「華琳さま?」

「……」

 

いけないわね。いまは賊の退治の方を考えなければ……

 

「ええ、それで桂花、策は?」

「はい、先ず華琳さまは少数の軍を率い砦の正面に展開してください、春蘭、秋蘭は残りの連れ後方の崖に待機。本隊で銅鑼を鳴らしたら、砦の賊は目の前の華琳さまの兵の少なさに釣られ、必ずや砦から出てくるでしょう」

「待て!それなら華琳さまのことをお取りにするというだろ!」

「敵が挑発に乗らない場合は?」

 

春蘭が私を囮にすることに異議を言っていたが、私は構わず桂花の策を聞いた。

 

「その場合は、砦の内側から攻めます。この地域の図を既に把握しております。あの城の内側の地図も持っていますので、もし相手が策に乗らない場合でも問題ありません。どの策にしても、兵の被害を最小限に抑えることができるでしょう」

「なるほど……わかったわ」

「華琳さまっ!」

「何春蘭、さっきからうるさいわ」

「しかし、こいつは華琳さまのことを囮にすると言っているのです!」

「これだけ勝つ理由のある戦いよ。囮の一つぐらいもできなければ、今後覇道を唱えることなんてできたもんじゃないわ」

「なら、せめて季衣に護衛をさせてください!」

 

春蘭はさっき拾った季衣のことを護衛にさせたいと言う。だけど

 

「季衣の力は我が軍の戦力に重要な力となる。本名である伏兵の戦力を下がらせたくないわ。季衣はあなたと一緒に居させなさい」

「しかし、もしもの時があれば…」

「私があんな志もなくただ力を使うことしか知らない獣どもに遅れをとるほど弱いと言いたいの、春蘭」

「そのようなことは……!」

「なら決まりね」

 

春蘭の言う通りに、季衣に護衛をさせてもよかったのだけれど、春蘭はさきほどの醜態もある。何かまた無茶な真似をするか不安になる。

秋蘭と、子供の季衣がいれば、ある程度は謹んでくれるでしょう。

 

「では、桂花、あなたは私と一緒に…」

「はい」

 

 

一刀は無くても、私たちの策はつづく。

一刀、何をしようとしているのか知らないけれど、私の期待に応えられないほどなら、あなたにもう用はない。

……それでも、あなたがこれほどじゃないことは、私が一番良く知っている。

 

 

 

桂花SIDE

 

 

ガーン!ガーン!ガーン!!

 

・・・・ギギギィーーー

 

「……桂花、これもあなたの想定内なの?」

「いえ、さすがにここまでは……」

 

季衣の情報の通り、盗賊の本隊が篭ってる砦に着いた私は、華琳さまと私の部隊を囮になって、後ろに引きずって狭い道で奇襲するという策を立てた。

それで、砦の盗賊たちを誘引するために銅鑼を鳴らしたのだけど……

 

「まさか、私たちの銅鑼の音を出撃の信号を勘違いして出てくるとは……」

 

華琳さまも呆れた顔で前を見ていた。

だけど、だからってどうということはない。

 

「まぁ、いいわ。このまま作戦通りに行きましょう。総員敵に適当に相手しながら後方に後退する!」

 

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

作戦通りに、本隊の春蘭と季衣の部隊が砦から出てきた賊の軍勢を包囲、作戦はうまくいった。

これで、華琳さまに私の智謀を証明することができた。

 

 

『君の策は未完成だ』

 

「ふん!何が未完成よ。戦に恐れて逃げ出すようなやつが……」

 

所詮男はそんな連中だ。

頭を使える奴なんていない。

今どこに居るか、知ったことじゃないけど、結果的に約束通りにあいつが消えてくれたわけだから問題はないわ。

 

「報告!」

 

その時、異変が起きた。

 

「何事よ!」

「賊の一部が包囲網から抜け出し、本隊がある方に近づいています!」

「なっ!」

 

どういうこと、どうして……包囲網が

 

「抜けた場所は」

「右翼の方です!」

 

春蘭……あいつまさか、目の前の敵に目をトラれて統率に手を抜いていたの?

何やってるのよ!

このままだと華琳さまが……!

 

「季衣の部隊を護衛に向かうように伝達しなさい!!私も直ぐに行くわ!」

「はっ!」

 

季衣はまだ軍を動かすのがうまくない。

伝達しろと言っても、間に合わない可能性が…というか多分間に合わない。

華琳さま、どうかご無事で……

 

 

 

 

華琳SIDE

 

突然よそから賊の部隊が現れた。

包囲網に穴ができたのか、それとも他のところから戻ってくる部隊があったのかはわからないけど、賊の群れにしては手強い部隊だった。

賊の中でも、結構腕の立つやつがあったのかしら。

 

「せいっ!」

「ぐぁっ!」

 

だけど、だからって危ないということはない。

全てが作戦通りに行くのであったら、実戦も将棋盤の上と変わらない。

こういう時に的確な反応をしてこそ、本当の強さを図れる。

 

「あの女が大将だー!!」

「ちっ、うじゃうじゃと……」

 

 

「てやああああっ!」

 

ドーン!!

 

「ぐああああーー!!」

「……へっ?」

 

目の前にかかってくる賊に向かって立っていた私は突然太鼓のようなものが飛んできて賊たちを飛ばすのを見て思わず変な声を漏らした。

 

「お助けに来ました!曹操さまですよね!」

 

そして、後ろから季衣ぐらいの女の子一人が現れた。

薄緑の髪に青いリボンを付けて、季衣のように布が少なめな服を来た健気そうな女の子。

その子が持っている紐を引っ張ると、飛んできた太鼓が彼女の手に届いた。

 

「あなたは誰?」

「申し遅れました。私は季衣の友たちで、名前は典韋と言います」

「季衣の?!」

「はい、同じ村に住む友たちです」

「…どうしてここが解って……」

「白い服を来た方が、ここに来るように言ってくれました」

「!!」

 

一刀……!

 

「彼は今どこに居るの?」

「他にするべきことがあるって……さっきまであそこの丘に私と一緒に居ましたけど、私に本隊のある場所を教えて直ぐに他のところに行ってしまいました」

 

一刀……こうなることを読んでいたというの?

作戦にもなかったこの異常事態に、戦場の者よりも早く対処できたというの?

 

「…わかったわ、典韋。あなたの協力に感謝するわ。ありがとう」

「いいえ、私こそ、季衣のことを助けてくださって、本当にありがとうございます」

「そう……季衣ももうすぐここに来るはずよ。今は先ず、この賊たちを片付けるわ」

「はい!」

 

そうやって典韋を護衛にして、私の本隊は賊の群れと戦いを続けた。

 

 

 

秋蘭SIDE

 

 

思わぬ事故もあったものの、結果は大勝利。

突然の攻撃を受けた華琳さまの本隊も、典韋の登場によってほぼ無傷で場を凌ぎ、私たちは桂花の言ったとおりほぼ被害なしで勝つことが出来た。

 

が、

 

「季衣のバカーー!何勝手に危ないところに行くのよ!」

 

ドーン!!

 

「馬鹿って何よ!ボクは村の皆を守ろうと思ってやったのにー!」

 

ドーン!!

 

「だからって、私に何も言わないで出ていくなんて聞いてないよ!」

 

ドーン!!

 

「直ぐに戻ってくるからそんなの一々言わなくてもいいじゃない!」

 

ドーン!

 

「何が直ぐ戻ってくるよ!危険な目にあってたくせに!」

 

ドーン!!

 

「流琉は私の気持ちもしらないでどうしてボクばかり悪いっていうんだよ!悪いのは逃げた官軍のあいつらなのにー!」

 

なんか、かなり規模の大きい子供喧嘩が始まっていた。

 

「貴様、華琳さまを危険な目に合わせないといっていたな!なのになんだこれは!」

「あんたが馬鹿みたいに突撃したせいで華琳さまが危険な目にあったのでしょ!」

 

こっちはこっちで大人同士の喧嘩が始まっていた。

はぁ……

 

「華琳さま、やっぱこんな軍師なんて我が軍に必要ありません!」

「華琳さま、こんなイノシシ武将、今後の曹操軍に邪魔にしかなりません」

「なんだとー!」

「何よー!」

「……<<ピキッ>>」

 

 

「春蘭」

「はっ!」

「一ヶ月閨立ち入り禁止」

「<<ガガーン>>」

 

あ、姉者の口から白い何かが……

 

「桂花」

「は、はっ」

「帰ったら私の部屋に来なさい」

「は、はいっ!」

 

そして桂花の後方に光とともに花びらが舞い散る。

 

「秋蘭」

「はっ」

「部隊を分けて、周りで北郷が居るか探索なさい。遠くは行かなかったはずよ」

「北郷を、ですか?」

「典韋をここに連れてきたこともあるし、何か企んでいるわ。探しだしなさい」

「…御意」

 

北郷、あの時行ってしまうかと思ったら、まだ何かかんがえての行動だったというのか?

そして、華琳さまも内心彼のことをずっと気にしていらっしゃった。

私には二人の考えていることに追いつくことができない。

 

・・・

 

・・

 

 

 

一刀SIDE

 

バサッ

 

「昼間荒野を歩くのは熱いな……甘いものが食べたくなる」

 

バサッ、バサッ

 

「観察は済んだ。孟徳と荀彧の臨機応変の用兵、許緒と悪来典韋武勇、妙才は元譲の押さえ役にまわなければ元譲の力を戦場で100%発揮させることは難しそうだな。今回は俺が元譲を挑発させたせいもあるが、それを念にいれておくとしても今回の痴態は曹魏の今後に悪影響になることは否定できない」

 

バサッ

 

「後は、俺と荀彧との賭けだな。先ず、元彼女が負ける要素を幾つか述べよう」

 

 

桂花SIDE

 

「これを、あいつが?」

「はい、進軍がある程度進んだら、これをねこみみの帽子をした軍師さまに伝えろと……」

 

退軍を始め3日後、流琉は私に一通の手紙を渡した。

あの男が渡した手紙と言いながら、

 

探索に行った秋蘭まだ見つかってないようだし、見る必要もないと思ったけど、流琉のこともあって、一応封を開けた。

 

『君と俺の賭けは、孟徳とお前の賭けに反するものがある。俺が勝つとお前は孟徳に負け、お前が勝つとお前が知らない俺と孟徳との賭けによって俺が死ぬ。その中、俺は曹魏に最善になる方法を想定した。そして、君との賭けに俺が負けてあげることにした』

 

「何を言っているの、こいつ……」

 

負けてあげる。あなたはただ逃げただけでしょ?

 

『先ず、君の策が失敗する理由を幾つか述べよう。一つは夏侯惇の存在だ。曹操軍の一番古参として一番頭の固い元譲が、君の(俺が想定している策通りに行動することを前提にして)策にまんまと動いてくれそうにないということだ。これが、君の策が未完成だと言った理由だ』

 

確かに、アイツの言う通りに、戦場にて春蘭のせいで小さな事故が起きた。

だけど、それほどの異変はなくてはならないものだけど、必ずないというものではない。

このような想定外の状況が私の策の穴になるとは言えない。

 

『そして、君が孟徳との賭けに負ける理由は、君が自分のことを過小評価したことにも問題がある』

 

「なっ!」

 

『君は最善の策を用意したくせに、兵糧の量を最悪の場面を想定して用意した。自分の策に自身があるなら、行った時と同じ数の兵士が食べれるような兵糧を用意すべきだったのにもかかわらず、君は帰ってくる時兵士が減ることを想定した。それが君が孟徳に負けかねない理由になる」

 

「……」

 

確かに、私の策は成功した。それも大成功。

 

でも、そのせいで私が想定した兵士の数を上回る数が残ってしまい、兵糧に関しての賭けであった華琳さまとの賭けで不利な位置に立った。

でも、もっと問題になるのは兵士の数ではなく、

 

『そして、決定的にお前が孟徳に負けそうになった原因は……』

 

「季衣」『許緒だ』

 

季衣は小柄なのに比べて、使う力もあったのか、他の人の何十人分の食事をいっきに片付けた。

このままだと、私の計算でもギリギリの所で兵糧が尽きてしまう

 

『以上の問題は想定できるものも、できないものもあったが、結果的にお前が許緒を登用としようとする孟徳を止めなかった時点で、俺はお前の負けを確信した』

 

「だけど、季衣はいい戦力となった。例え私が賭けに負けることがあってでも、その場で季衣をあんたのような理由で入れることを反対することなんて、できるはずがない」

 

『が、君にはそういうことを言うほどの鉄面をしていないから、俺はお前を勝たせるためにある人を探した。それが、』

 

「………」

「?」

 

私は目の前で私が手紙を呼んでいる姿を見ている流琉を見た。

 

『聞くに典韋は、昔から許緒と一緒に居たらしい。それに料理の腕もあって、良く許緒に料理を作ってやったりもしたそうだ。彼女に事情を説明して、許緒の食する量を抑えてもらえ。そしたらギリギリのところまで持ちこたえることができよう。むしろぴったりの兵糧になると、孟徳の評価も上がる』

 

「……冗談じゃないわ」

 

『解決案は提示した。俺の計算では、お前がこれを読んでいる時点で行動に入らなければ間に合わないだろう。どの道、俺はお前との賭けの通りお前と孟徳の前から去る。戦場でのお前たちの指揮と武勇は見せてもらった。いい資料になる。せいぜい孟徳の覇道のために力を振り絞るがいい。尚、俺が居た部屋に行ったら俺が書いた軍の改善案がある。元譲の邪魔で終わらせては居ないが、お前なら実行可能なものに出来るだろう。話は以上だ』

 

 

 

 

 

手紙は、そこで終わりだった。

 

 

 

 

 

負けた。

 

私の完敗だ。

 

彼は私に自分をなんと紹介していた?…警備隊隊長?

 

どうして?どうして彼ほどの人材が華琳さまのそばに既に居たのに、彼は華琳さまの軍師にならなかった。

 

なぜ『私なんか』を華琳さまの軍師にさせるためにここまですることが出来る?

 

「……<<ボタっ>>」

「…桂花さま?」

 

あまりの情けなさに涙が滲みでて手紙を濡らした。

 

 

秋蘭SIDE

 

「それで、君は典韋を探すために華琳さまにあんなことを言ってその前から去ったというのか?」

「……座って負け仕合を見ているのは性に合わないのでな」

 

荒野のあるところに倒れていた北郷見つけて保護したら、北郷はそんなことを述べた。

つまり桂花を華琳さまの軍師にさせるために、こいつは華琳さまの前で華琳さまのことを侮辱までもしたということだ。

 

「華琳さまがそんな賭けで負けたぐらいで本当に桂花を斬るとでも思っていたのか?」

「お前はそうでないと確信出来るかも知れない。だが、決定をするのは孟徳自身。人に任せることよりは自分で掴めた勝利の味の方が良い」

「…つまり、お前の勝利だと」

「勝ったのは荀彧」

 

だが、勝たせたのは北郷、お前だ。

我が主華琳さままでも利用して、

季衣のあるかも知れない友たちまで巻き込んでまで、お前は自分が思うように私たちの軍を導かせた。

なんと恐ろしい奴だ。

 

「が、妙才」

「うん?」

「俺があの時孟徳に言った言葉は、ただ荀彧を助けるためにそんなムダ話を言ってその場を去ったわけではない。俺は本気でそう思って孟徳にそう言ったのだ」

「…………」

「許緒、あの子が見た目で何才もすると思う。12,13?お前や元譲や荀彧は孟徳の覇道のためなら命でも賭けることが出来るだろう。でもあの娘はそれできるか?いや、出来るとして、お前たちはあの子にそんなことをさせるつもりか?主の尊い望のために?」

「…それは………」

 

季衣に、そして典韋。

二人ともまだまだ子供だ。

華琳さまはいつか覇王になる。

その望こそは高い所を見るものの、そこまで行く道は厳しい。

力のあるものは誰でも拒まない華琳さまだが、彼女たちは単に自分たちを村を守りたいから戦場に出ていただけだ。今は賊退治という名分があるが、これからはそうも行かない。ただ勝つために戦いが、理想と理想とのぶつかり合いが始まると、私たちはあの子たちにちゃんと私たちの戦う理由を説明することができるか?あの娘たちの犠牲を願えるか?それで掴まえた覇道は、華琳さまが思っているほど誇り高きものになれるのか?」

 

「わからない」

「……そうか」

 

肯定することも、否定することも私にはできなかった。

 

「なら、やはり俺は戻らなくてはいけないわけだ」

「?」

「妙才、元譲、孟徳の志を支えるも、その先を共に見ることはできない。だからお前は俺の問いに何の迷いもなく肯定できないのだ」

「!!」

「覇王は孤独だ。配下の将も、軍師も兵士もただの駒だ。駒は象棋盤の上で自分たちを操っている棋士の心を知ることができない。ただ動かせるように従ったまま動くだけ。どれだけ棋士のことを理解しているつもりでも、それは駒として、自分がどうすれば良いかを知っているぐらいだ。駒ではなく、象棋を打っている彼女の側に居てもらわなければ、彼女は一人で戦っているのも同じ」

「…お前は、それが出来るというのか?」

「………この天下で唯一お前の主と同位に立つことが出来る者があるとしたら…それは俺だ」

 

北郷は淡々と私の目を見てそう言った。

 

「だから、お前次第が妙才。俺を孟徳の仲間にしたいのなら馬一頭を渡してこのまま孟徳の居る場所へ戻れ。俺を孟徳の敵になりかねない危険な人物だと判断するならこの場で俺を斬れ」

 

自分の生死について語っている口のことがまったくくだらない話を言っているかのように、北郷の目はビクッともせずに私を見ていた。

それはまるで興味がないかの目つきだった。

私に、自分の命に、この世界に何の未練も、興味もないかの目で、彼は私を見ていた。

 

この男が天才ということは分かった。

その智謀、判断、奇才なれど的確で、有効なのも分かった。

 

だけど、こんな目をする者が、華琳さまをどうこうできるわけがない。

こんなものが、華琳さまと同じ位置に立てるはずがない。

華琳さまの行く道を邪魔できるわけがない。

 

「馬を渡そう」

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

 

 

桂花SIDE

 

「そう、一刀がこれを書いたですって?」

「はい」

 

私はあいつの手紙を華琳さまに見せた。

 

そして、華琳さまにこの頸を斬ってもらいたいと思った

 

私では華琳さまの軍師にはなれなかった。

 

アイツは…北郷は私の能力を遙かに上回っていた。

 

そんな奴を抜けだして、私なんかが華琳さまの軍師を務めるなんてとんでもないと思った。

 

 

華琳さまは私をどうなさるつもりだろうか。

覚悟はできていた。

私の手で華琳さまの覇道を導きたいと思っていた。

でも、例えそれが私の力でないとしても、華琳さまの天下が成すとすれば、私はそれでもいい。

 

「……<<ぶるぶる>>」

 

華琳さまの手紙を持っている手が震えていた。

いや、華琳さまの全身が震えていた。

 

「ゾクゾクするわね」

「はい?」

 

私は顔を上げて華琳さまの顔を見た。

華琳さまの顔は笑っていらっしゃった。

 

「一刀、あなたって本当に興味深いわ。是非とも欲しい」

 

そして、華琳さまは私を見て言った。

 

「桂花」

「はい」

「あなたを正式に私の軍師として仕えるわ」

「……はい?」

 

『絶』が落とされると思っていた私は心外の言葉に間抜けな声を出してしまった。

 

「し、しかし、華琳さま、私は……」

「今回見たあなたの智謀、綿密さ、そして、アイツの保証もあるわ。あなたを軍師にしない手はない」

「……!」

「桂花、私がなぜ一刀を軍師しなかったか分かってる?」

「…いえ、わかりません」

「…アイツと私はね…………

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

 

華琳SIDE

 

三日後、

 

城を半日距離にしていた朝。兵糧が尽きてしまった。

もう賭けなんてどうでも良くなっていたから別にいいけれど………

 

「華琳さま」

「秋蘭?どうしたの?」

 

先鋒に居た秋蘭が私のところに来たのを見て、私はキョトンとして聞いた。

 

「それが……前方にて陳留からの輸送部隊が……」

「…は?」

 

・・・

 

・・

 

 

「どう計算をしても、一食分が足りなかったので、先に陳留に戻って集めてきた」

「「「「…………」」」」

 

勝手に私たちの前で消え去っていた一刀が、今度は勝手に先に陳留に戻って一食分の兵糧を詰めて私たちの軍を迎えにきたのだった。

 

「貴様、良くもその面で戻ってきたなー!」

 

春蘭がうるさいのはきっとお腹が減っているからね。

食べたら静かになるでしょう。

 

「一刀」

「異論は認める。勝手に輸送隊を組んできた。相当な罰があるだろう」

「違うわよ」

「……お前の前から突然消えた理由は既に典韋から荀彧にわたって説明されているはず……」

「違うって言ってるでしょ?」

「…………まさか、荀彧を軍師にしないという話ではないだろうな」

「はぁ……」

「………?」

 

この男、自分のことに対しては鈍いのね。

 

「…おかえりなさい、一刀」

「……………興味深いことを言うね、孟徳」

「華琳よ。あなたが負けたから私のことは真名で呼びなさい」

「………」

「後、そうね。あなたもとても興味深いことしてくれたわね、一刀」

「……通常の働きだ」

「そう、今後も頼んだわよ」

「………孟徳こそな」

 

『『私(俺)の興味に応えてみなさい(もらおう)』』


 
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