華琳SIDE
「一刀がここにきていたの?」
「はい」
秋蘭に報告を聞きに彼女の部屋に行ったら、秋蘭は一刀がここに来ていたを言った。
「彼が何を考えているか分かるかしら?」
彼が我が軍に軍師が居ないことに疑問を持っていたことはわかる。
できれば、彼に軍師になってもらいたいけれど、彼自身にそのつもりがあるとしたら最初から軍師のことを口にしなかったでしょうね。
それなら
「私にもわかりませんが、ただ、北郷は我が軍の軍師になれるようなものがいると言っていました」
「それは誰なの?」
「誰かはいってませんでしたが、心当たりは…」
「言ってみなさい」
彼が軍師として勧めるような者。
どんな人かしら。
「荀彧文若です」
「…荀彧…」
荀家の…
がらっ
「!」
「夏侯淵将軍、兵站の報告書を持って参り……!」
変わった形の頭巾の女の子がそこに居た。
「それで、説明してもらおうかしら。こんなふざけた話を持ってきた理由を……」
「はっ」
荀文若、彼女が持ってきた報告書を見て、私は驚かざるを得なかった。
報告書には、元用意すべき兵糧の量の半分しか用意出来ていなかった。
こんな食糧で軍を出立させたら途中で行き倒れになってしまう。
軍事に於いてこんな働きをされると、ただでさえも首を刎ねてしまっても文句は言えないはず。
それが態とこんな真似したとも言えば、それほどの理由がないわけがない。
「まず、このような兵糧の量を準備した理由ですが、曹操さまがこの報告書をご拝見なされば、必ずや担当する者お呼びになるでしょう」
「そう、あなたはそれを逆手にとって、態と私があなたを呼ぶようにとこんな報告書を…?」
「はい。…自分の手で曹操さまに直接捧げることになるとは思っていませんでしたが…」
「で?私の前に出て、あなたはどうするつもりだったかしら」
「もちろん、そこにある兵糧を持って出立できるようにします」
「!」
もう一度言うけど、この兵糧だと普通に行軍しても帰るところで兵糧が尽きてしまう。
もちろん万が一も戦が長引く場合を想定して多めに用意したこともあるけれど、それは軍を率いる時に当たり前に用意しなければならないもの。
それがその半分の兵糧で、無事賊の退治を終えて帰ってくることができるですって?」
「兵糧が少なくなると郵送部隊によった兵の進軍速度低下を防ぐことが出来、進軍速度が上がります。無駄な兵糧を最初から持っていかないことでより早く賊を退治することができます。これが二つ目の理由です」
「けど、兵糧が半分になったところで、軍の速度が倍になるわけではないわ」
「無論です。そこで、三つ目の理由ですが………」
・・・
・・
・
「それで、荀文若を軍師にしたのか」
「ええ、あなたも秋蘭にそう言ったようだけれど…違ったのかしら」
「…俺の判断が既に孟徳の判断を覆すことができなくなっている。言うだけ無駄話だ」
一刀はいつもみたいに淡々を述べていたけれど、
気のせいかしら、少し不機嫌に見えるのは…。
だけど、なんと言っても今は既に軍が進軍中。彼が言ったとおり覆すことはできないし、そうするつもりもないわ。
彼女は自分の策を持ってすれば、自分が準備した兵糧だけでも十分なものだと言っていた。
もし、彼女の言う言葉が虚言であればそれぐらいの器と見て約束通りに頸を刎ねる。
「ちょっ!なんであんたがここに居るのよ」
「…………また会ったな、文若」
「人の質問に答えなさいよ!何であんたがここにいるのよ!」
「……俺が孟徳と一緖に居ることは契約の条件の一つだ。これからの彼女の戦いには中々興味を持っている」
「なんですって?!」
聞くと、荀彧、桂花はすごい男嫌いだらしい。
私にはあまり関係ないけれど、一刀との間に不和があるとなると今後少し厄介なことになるかもしれないわね。
「華琳さま、どうしてあんな男が華琳さまのお側に……」
「安心なさい、桂花」
「そうだ、文若。俺は…言わば君の補佐役ぐらいの者だ。君の軍師の座を揺らすことはない」
「そんなことは最初から思いもしていないわよ。というかあんたの脳みそ私の補佐役とは身の程知らずね」
「…………」
そう言われたら、突然一刀は桂花に近づいた。
「な、何よ」
「君の策は失敗だ」
「なっ!?」
「俺が保証する。君の策は未完成だ」
「あんた、私を侮辱するつもり?!」
「事実を言ったまでだ。このままだと、君の頸が孟徳の手に落ちる日も近い」
「なんですって!?」
何だか既に険悪な雰囲気してるわね。
「一刀、桂花は挑発するのはやめてもらえるかしら」
「…………」
「あんたがあの時私の策を読めたのは関心するわ。だけど私の策は完璧よ。あんたみたいな男にはそれが分からないかもしれないけど」
「なら賭けるか?」
「…!」
「もし、君の策が成功すれば、君の望む通りに孟徳の手前に出るのはやめてあげよう。ただし、失敗した時には君の真名はもらう」
「…………」
「どうした、自身がなくなったのか、文若」
「…ッ!いいわ。ただし、私の策通りになった時は華琳さまから一里以上近づかないこと。いいわね!」
「……構わん」
一里(400m)って、城の中に置けなくなるじゃない。
「あなた、何勝手に桂花とそんな賭けをしてくれたのかしら」
「彼女の策は失敗する。俺の計算は的確だ」
「そういう問題じゃないわ。私の許可もなくそのような賭けをするなんて……もしもあなたが負けたら…」
「その時は俺の頸を刎ねろ」
「なっ!」
何を言って…
「荀文若、かの王佐の才を持ったと評価される程度の者があの程度であるとすれば、魏の成り立ては遠い。それなら俺もこれ以上孟徳に興味を持つことが無意味というわけだ」
「……私まで試すつもり?」
「……先に俺の実力を図ろうとしたのは孟徳が先だ。俺が仕える程の戦力を持つことが出来るか俺からも試してもらう。でなければ、俺はお前に力を貸さない。その時は俺を荒野に放り出すだの首を刎ねるだのすればいい」
「…………」
一刀、あなたは一体何がしたいというの?
分からないわ。
・・・
・・
・
進軍中に報告が入った。
この辺りで暴れている賊の一員と見られる群れが手前で誰かと戦っているという報告だった。
しかも、相手は…
「子供一人ですって?」
「報告に来た者たちによると、女の子一人が賊の群れに囲まれて戦っていたと……」
「華琳さま!」
春蘭は今でもあの娘を助けに行くと言わんばかりの目でこっちを見ていた。
「わかったわ。春蘭、行ってきなさい。ただに、逃げる奴らは放っておきなさい、彼らを追って賊の本拠地を見つけるわ」
「御意」
「俺も同行しよう」
「!」
一刀が…?
「貴様の助けなど要らん!」
「分かっている。ただ観察するだけだ。夏侯元譲の力を…」
「……いいでしょう。もし彼女が私が言ったことを忘れたら、あなたが奴らの本拠地を…」
「心配は要らない。さあ、元譲、早く行くぞ」
「っ、貴様に言われずとも分かっている」
そうやって春蘭と一刀は報告が入った西側へ向かった。
春蘭SIDE
「どうして私が貴様などと一緖に行動しなければならないのだ」
まったく華琳さまはいつも私を馬鹿にしすぎだ。
私が華琳さまの命令を忘れるわけがなかろうに…何故こんな奴を連れて行けと……
「自分を信用することは必要だが、元譲の場合過信しているようにも見える」
「何だと!」
「少しは身分を弁えろという話だ」
「貴様ー!」
「夏侯惇将軍!前方に賊の群れを発見しました」
ちっ!
こんな時でなければこんな奴いつでもぶっ飛ばしてやるのに……
「うわああああーーー!!」
「「!!」」
その時だった。
いきなり人が一人、私たちの上を乗り越えて地平線向こうへと消えていった。
なんだ、あれは?
「……これは中々興味深そうだ」
「お、おい、北郷!」
呆気無くしている私を置いといて、北郷は勝手に先走って前に走っていった。
大した武もない奴がでしゃばりおって…!!
・・・
・・
・
「てやあああーーー!!」
「どぅわあああああああああああああ!!」
また一人賊が飛んで行った。
一体中で何が起きてるんだ?
「このー…うじゃうじゃと!」
「ひ、怯むな、お前ら!全員で一気にかかれー!」
「「「うおおおお!!」」」
中から少女の声が聞こえてくる。
一人で戦っているのならこのまま放っておくわけにはいかない
「しゃおらあああーーーー!!!」
ドガーン!!
私が外側で一度剣をおもいっきり振るうと、その先にあった賊どもが両方に飛んで一直線に道が開かれた。
そして、その道の先には鉄球を持った桃色の髪の小さな少女が一人で賊どもに囲まれていた。
「怪我はないか!勇敢な少女よ!」
「は、…はい!」
「な、何だ、こいつは!」
「構わねー!両方ヤッちまえ!」
「へーーい!!」
「えいっ、邪魔だー!」
数に頼った軟弱な者共が……!!
「うせろおおおおお!!!」
どガーーン!!
周りに剣を振るって、次々と賊たちを斬りかかる。
あっちの少女も同じく、鉄球を投げてかかってくる賊を一人ずつ空の向こうへと飛ばしていった。
「ひぃー!隊長、もう無理ッス!」
「ちぃっ!撤退だ!撤退しろー!」
数が少なくなった賊の群れは逃げはじめた。
「一人たりとも生きて帰すなー!」
「はい!!」
私は私が連れてきた兵士たちに号令すると一緒に、逃げていく奴らを追おうとした。
「やはり元譲、お前は馬鹿だ」
「!」
突然後ろから聞こえた声に振り向くと、私より先に行っていた北郷が立っていた。
「全員追撃を中止、何人か奴らを追っていけ。本拠地までの道を案内してくれるはずだ」
「はい!」
「貴様、何勝手なことをしているのだ!」
私は怒り満ちて北郷に怒鳴った。
が、
「戦場で命令不服従は死刑だと心得ているがこの世界では違うのか?」
「はぁ?何を言ってるのだ、貴様は。そんなことより早く追わなければあいつらが逃げてしまうであろう。何故止める!」
「……孟徳は部下のことを良く知っているな」
「何?」
「元譲、孟徳がお前に命じたのって何だ?」
「はぁ?それはあの少女をたすけて、奴らを全滅させることに決まってあ………」
・
・
・
「あ」
「………孟徳が君の武を高く買うことはわかっているが、そんないい武としても自分の思う通りに動いてくれないものなら時にはないよりも頼りにならない」
「う、うるさい!ちょっと忘れてただけだ!」
「…」
ところでこいつ、何やらさっき見た時より服に砂や泥がたくさんついてるが、何事だ?
北郷の言う通り何人かを斥候に出して、私があの少女を保護したら、華琳さまの本隊が私たちのところまで来ていた。
「!!」
「一刀、戦闘があったって聞いたけれど………どうしてそんな汚れてるの?」
「…お前の右腕が激しく馬鹿なせいだ」
あいつ、遠回りで私のことを馬鹿と言ったな。そんな風に言ったら私が知らないとでも思ったのか?(いえ、直球です by作者)
「そ、そう、大変だったわね。それで、この娘は?」
お、そういえば名前を聞いていなかった。
「あ、あの……もしかしてお姉さん、国の軍隊?」
「うん?ああ、そうだが……」
「元譲、構えろ」
は?
何を言って……
「てやあーっ!」
!
ガキン!
「貴様、何をする!」
突然少女が私に鉄球を投げて来た。
「国の軍隊なんて信用できるもんか!私たちの村を助けてもくれないくせに税金ばかり持っていって……!」
何を言っているんだ、この娘は……?
ガキン!
「ぐっ、中々……」
これじゃ、本気にしないとこっちがやられるかもしれない。
しかし、相手は子供。下手して怪我させるわけにも……
「二人とも武器をおろしなさい!」
その時、華琳さまの覇気滲んだ声が私たち二人にかかった。
「「……!」」
私は華琳さまの命通りに剣をおろし、娘もしたがって鉄球を降ろしてくれた。
「あなた、名はなんというのかしら」
「え、あ…許緒といいます」
「そう…許緒、ごめんなさい」
なっ!
「…華琳さま…!」
「………!」
華琳さまが許緒という少女に頭を下げるのを見て、私も他の連中も驚いた。
「え?」
「私は曹孟徳、山向こうの陳留の街で刺史をしているわ」
「山向こうの……!!」
華琳さまの名を聞いた許緒はその場に跪いた。
「ごめんなさい。山向こうの街なら噂で聞いています。そこを治める刺史さまはとても良い人で街を良く治めてくれているって……そんな人に…私……本当にごめんなさい」
「構わないわ。あなたの言った通り、この国の官吏が腐敗していることは事実。あなたがそういう行動をとるのも無理はない」
華琳さま…なんと心の広いお方だ!
「許緒、あなたのその力、私のために使わせてもらえないかしら?」
「…え?どういうことですか?」
「孟徳、彼女を将に入れるつもりか?」
桂花SIDE
華琳さまが頭を下げるのを見て、私も他の皆も驚いた。
そして、華琳さまが許緒に華琳さまのために力を振るうように頼んだ時、
「孟徳、彼女を将に入れるつもりか?」
あの男が口を開けた。
「彼女さえ良しとするのならね」
「……」
「何?」
「孟徳の覇道の犠牲になるには幼すぎるとは思わないのか?」
あいつが華琳さまに言う言葉は、つまり彼女が私たちの軍に入るには幼すぎるということ。
見た目でも、許緒は確かに将になって戦うにはまだ幼い。
だけど、さっきの春蘭と何合か交わったのを見ると、その武は将になるに足りないものではない。
「私はこの大陸の王になるわ。そのためには才があるものだったら、幼い娘だとしてもその分強ければ手に入れたい。あなたは彼女が幼いから将になれないって言いたいの?」
「…俺の話を勘違いするな、孟徳。俺は彼女が『将になるに幼い』といっているわけではない。『お前の野望の生贄にするに幼い』と言っているのだ」
「……どういう意味かしら」
「………」
「………」
何これ……
なぜか一気に場の温度が下がっていく。
華琳さまとアイツを中心にして、場の空気が一気に凍るように冷えてるように感じる。
何?一体アイツ何を考えてあんなこと言ってるの?
「あ、あの!」
そんな二人が何も言わずに互いを睨み続けている場面で、口を開けたのは許緒だった。
「もし、私が曹操さまの部下になったら、私たちの村も守ってくれるんですか?」
「……当然よ。あなたの村とも限らず、私はいつかこの大陸の民皆を守ってみせる」
「大陸の皆………じゃあ、私、曹操さまの部下になります」
「考えなおし給え、許緒。お前は今ここでも死ぬことが出来た。お前が部下にならずとも、こいつは勝手に覇王になって勝手にお前たちを守ってくれる」
「…!あなた、その口黙ってもらえないかしら」
「黙るのは孟徳お前だ」
「なんですって…!」
「貴様……!」
春蘭が我慢出来ずに剣を持ってアイツにとりかかった。が、
『一回は一回だ』
「!!」
ガチン!
春蘭の鳩尾を狙ったアイツの足は春蘭の剣によって塞がれた。
が、それぐらい予想できたいたかのようにアイツが春蘭の剣を踏み台にし、身を投じて他の足で春蘭の頸を狙うと春蘭は対抗できずそのまま横に倒れた。
「ぐぅっ!」
「姉者!」
「ちょっと待って、秋蘭!」
私は思わず秋蘭が弓を構えるのを止めた。
私は感づいていたのだ。これが私たち、家臣たちが出る場面ではないことを……。
華琳SIDE
春蘭を倒した一刀は何もなかったかのように私の目に視線を戻した。
私も何も言わないまま彼の瞳を貫くように見つめた。
「………」
「………」
私は彼が私の覇道に益になると思って彼を拾ってきた。そして今までその考えに間違いはなかったと思っている。
だけど、今日ここで、彼は私の意志に全面的に反対した。
今までそんなことがなかったわけじゃないけれど、私の覇道に対して直接異議を唱えたわけではない。
だけど、今回の一刀はそうじゃなかった。
私が思う覇道を穢してまで、私の考えを曲げようとしている。
「……もういい」
いや。
「興味を失せた」
「!!」
彼は私を睨むのをやめて、振り向いて私たち、私の軍隊から離れていった。
「一刀!」
「………それがお前の覇道か」
「…?」
「そんな小汚いものなもう見ている。尚且つ観察する価値もない」
振り向きもせずそうつぶやいた一刀はそのまま私から離れて行った。
「うっ!待たんか、貴様!」
「追うな、春蘭!」
倒れていた春蘭が遠くなる一刀を止めようとしたけど、私はそれを止めた。
「華琳さま!あいつは華琳さまの覇道を……」
「もう良いわ」
彼が私を助けないのなら、私も彼との契約を守る義理はない。
「許緒、あなたを歓迎するわ」
「……あ、あの…」
「あなたが気にすることではない。私の真名、華琳、あなたに預けるわ」
「…あ、はい!私の真名は季衣って言います」
「そう……季衣、これから宜しくね」
「はい!」
一刀、今まで世話になったわ。
でも、私は覇王になる。
その野望にあなたが口を叩く権利はない。
・・・
・・
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放棄していた。
反省はしています。二ヶ月越えてた。祭りも終わってちょっと鳳凰無双の脈が絶たれたので、他の外史も書いてみようと思ったが偶然これを見つけた。
今回見つけなかったら永遠に忘れ去ってたかもしれない