第21話 拡大
戦場となった陳留に華琳の声が響く。
「魏の兵たちよ!聞け!私は董卓軍へ降る!私に付き従いたいものは私に続け。それを異とするものはこの場から去るといい!追撃や罰することはしない!いままで私に付いて来てくれたことに感謝する!」
すこしのざわめきがおきたもののほぼ全兵士が
「曹操様と一緒に!」
と叫び董卓軍へ降ることになった。
その光景を見た一刀は華琳に事態の収拾を任せて、恋たちが待つ陣へ戻るために歩みだす。その後ろから秋蘭が一刀に声をかける。
「北郷!そなたのおかげで多くの兵が助かった。礼をいう」
「礼を言われることはやってないさ。それよりも怪我をしている将や兵たちをみてやってくれ」
そう一刀は言い残すと走り出した。
魏の陣から一刀が戻ってくるのを見つめる詠たちは安堵の表情をしていた。
「なんだかんだいって一刀が1人でどうにかしてしまうのね・・・」
「せやな・・・」
「しかしあの状態の恋を止めるとはさすがは北郷だな」
詠、霞、華雄が口々にいう。
「そういえばいま恋は?」
「ああ、さっき風が華陀のとこにつれてったで」
「そう・・・」
そんなことを話していると一刀が陣に戻ってきた。
「戻ったよ。みんな」
「さて一刀。あなたは私達に説明しないといけないことあるよね?」
詠は目を細めて一刀を睨みつける
「え、詠さん?その目はこ、怖いです!言いますから説明しますから!」
一刀はまだ血の流れる左目を抑えるために包帯を巻きながら説明を始めた。
「夏候惇、楽進、許緒、干禁と戦闘状態にはいったのは知っていたと思う。戦闘開始直後に許緒と干禁は無力化したんだけど、夏候惇との戦闘にすこし手間取って楽進が氣をためる時間を与えてしまってね。夏候惇の武器をはじき飛ばし無力化したとおもったらそれは囮で本命の楽進の氣弾のほうへ投げ飛ばされてしまったんだ。ここまでいいかな?」
「ああ」
華雄が返事をし、霞たちも頷く
「空中に投げ出されて体勢は戻せたけど氣弾が迫っていて咄嗟に2本の刀を交差するように構えて氣を全力放出して相殺したはずだったんのだけど氣弾のほうが強くて爆発。その爆風に煽られて吹き飛ばされていたというのがおれが後ろから現れた理由だけど・・・」
―――全部を話したわけではないけどね・・・
「一刀のことだからそれぐらいしてもなんも驚きはしないけども・・・」
詠がもうまったくといった顔をして答える。
「北郷がそういうのならそうなのだろう。それよりも北郷その左目はどうなのだ?」
華雄が包帯を巻かれた一刀の左目を指差す。
「大丈夫だよ、目の周辺からの切り傷からの血が鬱陶しいから包帯してるわけだし・・・」
そういってる間にも一刀の左目に巻かれた包帯はすこしずつ赤く染まっていっている。
「それよりも恋は?」
一刀は周辺を見回してもいない恋を心配し詠たちに問いかける。
「恋なら華陀のとこよ」
「わかった!ありがとな!」
一刀はお礼をいいながら華陀のいる天幕へ走っていく。
その後姿をみながら詠はつぶやく
「やっぱり一刀にとって恋は特別なのね・・・」
一刀は華陀の天幕に飛び込む。そしてその目に最初にはいってきたのは死んだように眠る恋とその横で丸まって寝ている風だった。
「大丈夫そうだな・・・よかった・・・」
「おお、一刀きたのか。呂布なら大丈夫だ。氣の消耗が激しかったけど許容範囲内だったからな」
ほかの天幕のけが人の治療していたらしい華陀が天幕に戻ってくる。
華陀と一刀の会話で風は目を覚ました。
「・・おにーさん?」
風は一刀を送り出した後に後方に待機していた華陀たちへの連絡のために離れていたために、怪我した一刀を見たのは初めてだった。そのために・・・
「その左目は・・・どうしたのですか?」
「うん?ああ、大丈夫。失明とかはしてないから」
すこし風の様子がおかしいのに気が付いた一刀は安心させようとやさしい声で返事をする。
「・・・ご・・・さ・・・」
風はつぶやくような声を発する。
「え?」
一刀はなんといったか聞き取れなかった。
しかしその声はすこしずつ大きくなり、風の言葉も理解することができた。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
風は寝台の上に座って涙を流す。その様子に驚いた一刀は慌てる。
「え・・・」
「また・・・風たちのせいでグス・・・怪我をさせてしまって・・・」
風の頭の中は虎牢関で一刀に大怪我をさせてしまったとき同様後悔の念で埋まっていた。
恋をとめれるのはあの時一刀しかいなかったと考えた、もしかしたら一刀ではなくても恋を止めれたかもしれないという後悔。
その言葉を聞いた一刀は風を胸のなかに抱きしめる
「風・・・大丈夫だよ・・・この怪我はみんなを・・・恋を守るために必要だったんだよ」
「でも・・・」
「心配してくれてありがとう、風。おれは大丈夫・・・」
風を一刀はやさしく抱きしめる。抱きしめられた風は最初驚きの顔をしたが一刀の胸に顔を沈めて号泣した。
しばらくして風が泣き止み落ち着いたごろに恋が目覚めた。
最初は今自分がどこにいるのかわかってないようで周囲をキョロキョロと見ていたがその中に一刀の姿を見つけて飛び起きた。
「ご主人様!」
「お、恋起きたかい?体の変なとこはないか?」
「(フルフル)」
「そうか、ならよかったよ・・・」
一刀は安堵の表情を浮かべていると恋は寝台から降りて一刀のそばにより手を左目の傷のあたりに当てた。
「・・・・ごめんなさい」
「あのときもいっただろ?大丈夫って」
「でも・・・ん・・」
謝罪の言葉を言おうとする恋を一刀は無理やり口付けをしていていわせないようにする。
「恋にそんな悲しい顔は似合わないよ。恋は笑ってないと」
「・・・うん・・・うん」
泣きそうな顔ではあったがそこには笑顔の恋がいた。
「謝らないといけないことはおれもあるしな・・・」
「・・・ん?」
「方天画戟のことだ」
「・・・・あ」
恋の相棒である方天画戟を恋をとめるためとはいえ破壊してしまったことを一刀は後悔していた。しかし
「・・・大丈夫。ご主人様はわるくない」
「しかし・・・」
「戟が壊れたのは残念。だけど物はいつか壊れるもの。それが早くなっただけ。また作ったらいい」
恋は一刀に抱きつきながら答える。その答えを聞いた一刀は恋を抱きしめ返しながら答えた。
「そうだな・・・」
恋と一刀の様子を見ていた風は・・・
「やっぱりおにいさんは恋ちゃんが一番なんですねー・・・でも側室の座は・・・」
なにかを決意していた。
一刀達が勝利を収めたその日の夜の洛陽では陳留がある東方向の城壁の上に月は立ち、一刀たちの無事を祈っていた。
「詠ちゃん、一刀さん怪我せずに帰ってきてください・・・」
その月のうしろからある者が近づいていた。
「月よ。一刀たちが心配なのじゃな?」
「献帝様!?なぜ護衛もなしにこのような場に・・・」
皇帝の御服はきていないが協がそこにいた。
「護衛は一刀や恋の部隊の者達が付いてきておる。心配するでない」
「しかし・・・」
「月よ。私も一刀たちのことが心配になっての。あの者達は強いが戦いとはなにがおきるかわからないものじゃ・・・」
「はい・・・」
「いてもたってもいられなくなって、彼らにお願いをしてここまで連れてきてもらったのじゃ」
協が指差したところにはうっすらと兵士の姿が見え、礼をとっていた。
「それにの・・・月に伝えたいことがあったのじゃ」
協の言葉に月は首をかしげる
「私にですか?」
「そうじゃ・・・月よ・・・」
次の協の言葉は月を驚愕させるものだった・・・
「朕に代わって皇帝にならぬか?」
あとがき!
いろいろ手直しとかしてたら投稿がすごく遅れてしまいました!ごめんなさい!
第2回恋姫同人祭りにおいて南華老仙様、新咲柊様からおすすめ作品にこの2人の飛将軍を推薦していただき作者感謝感激でございます( TДT)
期待に添えるように今後もがんばっていきますのでよろしくお願いします。
今回の21話について。
拠点フェイズと説明フェイズの混ぜ合わせになってます。詠ちゃん、風、恋、月の4人が中心で書いたつもりです。華雄たち武将組は?というと戦闘シーンになると彼女たちのほうが登場しやすいのと作者の好みです!(`・ω・´)
そして意識的に一刀の恋と恋以外の女性との態度を変えていこうと思っています。前の設定上やあとがぎでも書きましたがこの作品では一刀君は恋を一番と考えているためです。
しかしやさしい一刀君なので風への態度もとったりはするとおもいます。矛盾してね?とおもわれるかもしれませんがそのあたりは一刀のやさしさと受け取ってもらえれば幸いです。
では次回お会いしましょう(´・ω・`)ノシ
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