No.267002

真・恋姫†無双~恋と共に~ #58

一郎太さん

昨日の今日で本編です。明日から帰省する為、今日は時間があった。
という事で書いてみたらけっこうな長さに。まぁ、読み応えという点ではいいかなと………。
前回に引き続き、今回もずっと書きたかった話です。
その為に色々と伏線を張ってきました。………真偽の程はともかくとして。
ではどぞ。

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2011-08-09 19:21:16 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:12255   閲覧ユーザー数:8989

 

 

#58

 

 

 

「……あれ………此処、どこだ?」

 

身体を包む暖かい感触に、一刀は目を覚ました。瞼を上げれば、自分が寝台の上で布団に包まれているのがわかる。意識を落とすまでの事を思い出そうとし、自分の頭が寝起きだからという理由以上にぼうっとしている事に気づいた。

 

「あら、目を覚ましたみたいね?」

 

かかる声に、一刀は首を傾けた。視線の先には声を発した少女。青紫のスカートの端に白いフリルが見え隠れしている。視線を上げれば胸元の肌は露出し、その上には白い襟に紫のリボンが結ばれていた。頭の両サイドでは黄金色の髪が綺麗に螺旋を描き、髑髏の髪飾りで留められている。

 

「………華琳か」

「えぇ。久しぶりね」

 

碧い瞳が一刀を射抜く。ただし、そこに敵意等の負の感情はない。優しげに、寝台で横になる男を見つめていた。

 

「間に合ってくれたみたいだな」

「私を誰だと思っているの?覇王、曹孟徳よ」

「そりゃそうか……」

「―――と、言いたいところだけれど、春蘭と霞に礼を言っておくことね。あの娘達が間に合わなければ、貴方、死んでいたわよ」

「春蘭と霞?どうして―――」

「あぁ、その前に」

 

理由を聞こうとした一刀を遮って、華琳は立ち上がる。そして寝台を指しながらこう告げた。

 

「一番に礼を言う相手は別にいるわね。ずっと貴方についていたんだから」

「あ…」

 

言われてようやく気づいた。視線を華琳の指す方へ向ければ、椅子に座りながらも一刀の腰に覆いかぶさるようにして眠っている風がいる。

 

「また来るわ」

 

一刀が振り向くよりも早く、華琳は部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

一刀は身体を起こす。振動に風がかすかに呻いたが、起きる気配はない。少女の小さな頭を撫でながら、一刀は朧気な記憶を辿った。思い出すのは、劉備との再会。そして袁紹軍への迎撃。だが、そこからが繋がらない。自分はどうして華琳の城にいるのだろうか。そんな疑問に応えるかのように、風がゆっくりと上半身を起こす。

 

「おはよう、風」

「おはよございます………って、おにーさん?」

 

目覚めの挨拶をすれば、少女は瞼を両手の甲でぐしぐしと擦りながら挨拶を返してきた。

 

「あ……」

「心配かけたみたいだな」

 

状況を把握した少女の口から、言葉は出なかった。それよりも早く、少女は跳ね起き、一刀に飛びついた。

 

「………おにーさんは怠け過ぎなのです。お昼寝は風の専売特許なのですよ」

「あぁ。ごめんな、風」

 

震える声でしがみついてくる少女を、一刀は優しく抱き締め返す。

 

 

しばらくの間2人は互いに抱き合っていたが、風が落ち着いたところで一刀は切り出す。

 

「なぁ、俺はどうして華琳の城にいるんだ?」

「本当に覚えていないみたいですね」

 

足の上に横向きに座る風に、胸に寄り掛からせながら一刀は問う。風も力を抜いて一刀の胸に頬擦りしながら説明を始めた。

 

 

「どけぇえええっ!!」

 

地面に転がった一刀を守るようにしゃがみ込んだ風の上を、2頭の馬が跳び越える。状況を把握しようと彼女が振り返るよりも早く、武器がぶつかる音と男たちの悲鳴が彼女の耳を打った。

 

「………春蘭さん?」

 

視界の先には、長い黒髪を棚引かせた、赤い戦装束の女性が馬上から大剣を振るっていた。その隣では、袴姿にサラシを巻いただけのすみれ色の髪をした女性が偃月刀を構えている。

 

「霞さんまで……」

 

たった2騎で?そんな疑問を浮かべるよりも早く、断続的な馬蹄の音が背後から近づいてくる。その音は風たちの横を走り抜けたかと思うと、一部の小隊が2人と1頭を囲むように陣を敷いた。そして、その奥から1騎の馬がゆっくりと歩いてくる。

 

「風のそのような顔は初めて見るな」

「星…ちゃん………?」

「あぁ、伯珪殿の城で別れて以来だな。久しいぞ、風」

 

その馬から飛び降りた女性は、槍を肩に担ぎながら風の傍に並び立つ。

 

「さて、風よ。再会を祝して一献といきたいところだが、それは後でもよかろう。こちらの騎兵は2000。対する袁紹軍は5000。御遣い殿の守備にいくらか残すとして、どう退ける?」

 

口から出てきた言葉は援軍の数。それを以って、風は理解する。彼女達に軍師がついていない事を。風は立ち上がる。愛する男を守る為に。

 

「………この場を本陣として、横陣を敷いてください。数は100で十分です。500は隊列を作って夏候惇将軍に、もう500は張遼将軍に。星ちゃんは残りを率いて袁紹軍を迂回、敵の後背をついてください。挟撃し、分散させます」

「「「「「応っ!!!」」」」」

「承知した」

 

風の指示に星が頷き、兵が動く。張遼隊や、曹操軍で一刀がかつて訓練した騎馬隊―――風の指揮を経験した事のある者たちに、戸惑いはない。

 

 

 

 

 

 

袁紹軍を退け、しばらく迎撃態勢をとっていた騎馬隊であったが、再び襲ってくる気配はない。風はそれを確認すると、再び一刀のそばに駆け寄った。

 

「おにーさん…」

 

声をかけるも、返事はない。早く医者に見せなければ。気持ちだけが逸る。そんな時、背後から大きな声が轟いた。

 

「一刀、大丈夫か!?」

「お師匠様!」

 

騎馬隊をまとめ終えた霞と春蘭だった。彼女たちは馬を止まらせるまでもなく馬上から飛び降り、一刀に駆け寄る。

 

「風、一刀は大丈夫なんか!?」

「早く医者に見せなければ………医療兵を連れて来い!」

「とりあえず落ち着いてくだされ」

 

風を押しのけて一刀を揺さぶろうとする春蘭の頭に槍の柄がゴツンと振り下ろされる。

 

「いだいっ!?」

「まったく………それより、風。御遣い殿の様子はどうだ?」

「はい。おそらくこの辺りの風土病に罹っていると思われます」

「確かに…うちの文官でも時たま罹っている者がいたな。だが、薬があれば対処できるという話だったと思うが」

 

思い出したように趙雲が呟く。だが、風は首を横に振る。

 

「病気に罹り始めた頃ならばそれで大丈夫でしょう。ですが、おにーさんはずっとその事を隠していましたから………お医者さんにも診せなければなりません」

「隠しとったって………何やっとんのや、このド阿呆は!」

 

憤る霞に、風は説明する。恋や香もその病気に罹っている事。その為、一刀まで動けなくなる訳にはいかなかった事。そして、一刀と風が此処にいる理由を。

 

「そか、相変わらず一刀は恰好つけ過ぎやな。………まぁ、えぇわ。ほならウチが連れていったる」

 

風の説明を聞いた霞は呆れたように首を振るが、表情を元に戻すと提案した。

 

「なるほど。確かに神速の張遼殿ならば誰よりも速く城へと連れ帰る事が可能でしょうな」

「そうだな、霞は馬の準備をしろ。私が一刀を連れていく」

 

趙雲が頷き、春蘭が動いたところで彼女の視界を遮る壁ができた。

 

「どうしたんだ、黒兎?」

 

見れば、陣が敷かれてから、脚を曲げて一刀の傍で休んでいた黒兎馬が立ち上がっている。

 

「どいてくれ。早くお師匠様を城に連れて行かねばならんのだ」

 

春蘭の言葉にも、黒兎馬は頑として動こうとしない。

 

「そこをどけ、黒兎っ!」

「待ちぃ」

 

ついには怒りを露わにしそうとなる春蘭を制した声があった。振り返れば、愛馬に乗った霞の姿。

 

「霞?」

「………………」

 

彼女は春蘭の問いかけに応えず、目の前の巨馬の瞳見つめる。

 

「アンタかて疲れとるやろ?」

「………」

 

霞の問いにも、黒兎は反応を見せない。しばらく無言の間が続き、霞は目を細めて口を開いた。

 

「………………行けるんか?」

 

その問いに黒兎は嘶き、前脚を高々と上げる。その姿に、霞はふっと一息吐くと、春蘭に向き直った。

 

「春蘭、黒兎に一刀を乗せぇ」

「なっ、大丈夫なのか!?」

「アンタかて見たやろ?自分で運ぶ気満々やわ。それに多分、今のコイツやったら赤兎馬かて負けるで」

「………黒兎」

 

霞の言葉に、春蘭は黒兎の鼻をそっと撫で、馬の背後に回り込んだ。黒兎もそれを止めようとはしない。霞は自分の馬から降りて、今度は黒兎馬に飛び乗る。

 

「あぁ、ちゃうちゃう。前やなくて後ろに乗せ。………あと、誰か縄か何か持っとるか?」

 

自分の前に一刀の身体を乗せようとした春蘭を手で制し、後ろに乗せるように言う。霞は兵から縄を受け取ると、それを使って自身と一刀をきつく縛り付けた。

 

「………これでよし、っと。ほな、行ってくるで。風も安心せぇ。ウチが必ず間に合わせたる」

「はい…」

 

最後に、心配そうに見上げる風に声をかけると、霞は走り出した。黒兎の決意は確かなもので、瞬く間にその背が小さくなる。

 

「連合の際にも見たが、やはりあの馬は凄いな。そしてそれをすぐに操れる張遼殿も………っと、どうした、夏候惇殿?」

 

それを見ながらひとり呟く趙雲は、隣で眉尻を下げる曹武の大剣に声をかける。

 

「………いいなぁ、霞。私も乗せて欲しいなぁ」

「ふふっ、先ほどまで袁紹軍を薙ぎ払っていた将とは思えぬ顔だな」

 

羨ましげに声を洩らす春蘭に、趙雲は笑みを零した。

 

 

 

 

 

 

 

「――――――それでなんとか間に合い、おにーさんはこうして華琳さんの城にいるのです」

「そうか……」

 

風は説明をすべて終え、一刀もようやく事態を理解した。だが、気になる事はまだある。

 

「それで、恋と香は………?」

「わかりません。稟ちゃんや桂花ちゃんが細作を出しているとは思いますが、風からそれを聞くわけにもいきませんので」

「そっか……」

「まぁ、あの2人の体力も桁外れですし、おにーさんがこうして回復しているのならば大丈夫ですよ、きっと」

「そうだな…」

 

一刀は呟きながら布団へと倒れ込む。いくら病状が改善されたとはいえ、病み上がりだ。色々な事を聞きすぎて、頭がぼんやりとしている。

 

「………寝ますか、おにーさん?」

「あぁ、少しだけ休ませてくれ」

「一緒に寝てもいいですか?」

 

風が問いかける。一刀は目を閉じたまま彼女の頭を撫でた。

 

「駄目だと言ってもどうせ布団に入り込んでくるだろ。いいよ、おいで」

「はい」

 

風もゆっくりと体を横にする。一刀の胸に抱き着き、目を閉じた。少しも経たないうちに、どちらからともなく寝息が聞こえ始める。

 

 

 

 

 

 

目を覚ました一刀は、風の案内で城を移動していた。どうやら華琳も拠点を移動したらしい。陳留とは違った構造に、風の案内がなければまず迷ったろうと一刀は思う。最初に向かったのは食堂だった。食事も目的のひとつではあるが、この時間帯なら此処に来れば彼女に会えると踏んだのだ。

 

「おじじょうざばっ!?」

「兄ちゃん!」

 

入口をくぐって最初に眼にしたのは、大食い競争と思しき事をしている春蘭と季衣だった。春蘭は口に食べ物を詰めたまま驚きの声を上げ、季衣は彼の姿を認めると、食事途中の皿を投げ出して一刀に飛びついた。

 

「兄ちゃん、元気になったんだね?」

「あぁ、まだ少しフラつくけどな。心配かけちゃったみたいだ」

「うぅん、兄ちゃんが無事ならいいよ……」

 

一刀の言葉通り、季衣もかなり心配したようだ。その声は震えている。

 

「おやおや、元気になったと思ったらもう女の子といちゃついているとは、おにーさんも盛ってますねー」

「妬くなよ、風」

「ぷいっ、です」

 

言葉とは裏腹に、風もそれほど気にしていないようだ。すぐに視線を食堂の中に移すと、一刀に再び声をかける。

 

「それよりおにーさん。あそこでいじけてるおねーさんがいますが、慰めなくていいのですか?」

「ん?……何やってるんだ、春蘭?」

「どうせ私なんか……黒兎にも乗れなかったし………季衣に先をとられるし………」

 

見れば、春蘭が食堂の隅で影を纏っている。一刀は季衣の頭を撫でて身体に巻きつけていた腕を解くと、春蘭に近づいた。

 

「………お師匠様?」

「風から話は聞いたよ。ありがとうな、春蘭」

 

顔を上げた春蘭の頭を撫でてやる。途端、春蘭の瞳に涙が浮かんだ。

 

「うぅ…うぐっ、お師匠様ぁ………」

「よしよし」

 

曹操軍一の武人とは思えない表情で抱き着いてくる春蘭を受け入れ、頭を撫でる。しばらくの間、彼女は一刀の胸で泣き続けていた。

 

 

食事を終えた一刀と風は、春蘭達に挨拶し、華琳の執務室へと向かった。ノックへの返事を聞いて扉を開ければ、華琳と稟が仕事をしている最中だった。

 

「あら、もう起きて大丈夫なのかしら?」

「あぁ。食事を摂れるくらいには恢復したよ」

「そう」

「風から事情は聞いたの?」

「大筋はな」

 

一刀の返事を聞き、華琳は立ち上がった。

 

「風、悪いけど一刀と2人にしてもらえるかしら?」

「かまいませんよー。風も久しぶりに稟ちゃんをからかって遊びたいのでー」

「風っ!?」

 

意味深な視線を送る華琳に、風は冗談交じりに頷いた。

 

「ついでに政務の手伝いでもしておきますのでー」

「えぇ、許可するわ。悪いわね」

 

それだけ残すと、華琳は部屋を出る。別の場所で話をしたいという事なのだろう。一刀も一言二言稟に声をかけ、部屋を出た。

 

 

一刀を連れた華琳は中庭へと出てきていた。そのまま歩を進め、一角にある四阿へと入る。一刀もそれに続いた。

 

「ここなら誰かが来てもすぐわかるでしょう?」

「確かにな」

 

間諜対策………というよりは、他の者に聞かれたくない話のようだ。

 

「それにしても驚いたよ」

「何がかしら?」

 

先に口を開いたのは一刀だった。

 

「劉備の件だよ。まさか領内の通過を許可するとはな」

「そう?」

「華琳の覇道に必要だと感じたのか?」

「どうかしらね」

 

微笑みで誤魔化す華琳を、一刀は追究しようとはしない。彼が口を出す事でもない。

 

「それで、話って?」

「そんな急がなくてもいいじゃない。久しぶりに2人きりで話が出来るんだから」

「………そうだな」

 

しばし沈黙が流れる。一刀は難しげな顔をし、華琳も何処にともなく視線を流す。

 

「まずは貴方が一番知りたがっている事から」

「………」

「間諜から情報が入ったわ。劉備軍の兵糧の減りが、通常より早いらしいわよ」

 

その言葉の意味を理解し、一刀は両手で顔を覆う。

 

「………よかった」

 

ただ一言、その指の隙間から声が漏れ出た。彼の気持ちを汲み取ったのか、華琳もそれ以上言葉をかけなかった。

 

 

 

 

 

 

 

執務室で竹簡に筆を走らせる姿が2つ。風と稟のものだった。

 

「こうやって共に政務に励むのも久しぶりですね」

「そですねー。稟ちゃんはもう華琳さんに抱かれましたか?」

「ぷはっ!?」

 

脈絡も関係もない内容に、稟の脳内は一瞬でオーバーヒートする。一言返す暇もなく彼女の鼻から鮮血が噴出した。

 

「はーい、稟ちゃん。とんとんしましょうねー」

「ふがふが……」

 

うなじを叩かれてなんとか気を持ち直した稟はずれた眼鏡を直す。

 

「はぁ…風は相変わらずですね。久しぶりに再会したというのに………」

「軽い冗談ではないですか。でもその様子では、まだみたいですねー」

「その話はもういいです!それより………」

 

冗談を続ける風を遮って、稟は僅かに顔を傾ける。光の反射で、眼鏡の奥の瞳は見えない。

 

「これからどうするつもりですか?」

「………いきなりですね」

「風を相手にするにはこれが一番いいと知っていますので」

 

これ以上戯れ言で遊ぶつもりはないようだ。風も諦めたのか、体重を椅子の背もたれに預けて天井を見上げる。そこに空はない。

 

「おにーさんが決める事です。風は口出しできないのですよ」

「ですが、貴女ならば彼の考える事がわかるのではないですか?そして華琳様のお考えになっている事も」

「風は一流ですので………と、これ以上冗談を言うと稟ちゃんが怒りそうなので風も真面目になります。華琳さんの出方にもよりますが、おそらく――――――」

 

風の口から言葉が紡がれる。その内容を聞く者は、稟しかいない。

 

 

「それで、これからどうするつもり?」

「………………そうだな」

 

華琳の言いたい事は理解できる。自分自身の事だ。

これまで『天の御遣い』として動いてきた。数週間前も、その立場でもって勅令に反した軍を罰したところだ。そんな自分が、緊急の事態とはいえ、1つの軍に加担した。許される事ではない。いや、空や月たちは許すかもしれないが、自分が自分を赦せなかった。

 

「貴方は『天の御遣い』という立場でありながら、劉備軍に加担した」

「わかってる……」

「春蘭たちが到着するまで袁紹軍に死傷者はいなかったみたいだけれど、貴方が彼らに刃を向けた事実に変わりはない」

「わかってる…」

「貴方はこれからも『天の御遣い』として動くの?」

「わかってる!」

 

そう。彼はもう、過去の自分には戻れない。いや、戻るわけにはいかない。

 

「………ではどうするつもり?」

「俺は――――――」

 

一刀の口から言葉が紡がれる。それを聞く者は、華琳以外にいない。

 

 

 

 

 

 

ひとり部屋に戻った一刀は、寝台の上で膝を抱えていた。膝に顔を埋め、その表情を読む事は出来ない。

 

「恋…」

 

その呟きは誰に聞こえるともなく虚空へと消える。何度もその名前を呼ぶが、返事はない。

 

「入りますよー」

 

そんな時だった。扉がゆっくりと開き、風が入ってくる。

 

「風か…」

「はい、おにーさんの風です。お邪魔しますねー」

 

風は一刀の返事も待たずに履物を脱ぐと、寝台の上の一刀の隣に座った。何も言わず、ただ一刀に寄り掛かる。どれだけの間そうしていただろうか。先に口を開いたのは一刀だった。

 

「………聞かないのか?」

「その様子だと、もうお決めになったみたいですね」

 

何を、とは言わない。だが、風のその返事だけで、一刀は風が理解している事を理解した。

 

「恋の話は聞いたか?」

「何でも劉備さんのところに大飯食らいがいるそうでー」

「そうだな。恋はきっと………劉備につくだろうな」

「恋ちゃんの性格を考えたら、きっとそうなるでしょうね」

「あぁ。恋はあれでいて、ちゃんと考える事の出来る娘だ。いくら俺が彼女のもとに向かったとして、命の恩人を無下にするような娘じゃない………それを出来るような娘じゃない」

「優しいですからね」

「香も同様だ。2度も主君を裏切らせる形になってしまうのは申し訳ないが、彼女なら恋の面倒も見れるだろう」

「だいぶ強かに成長してますし」

「………そうだな」

 

一刀は窓を見上げる。その向こうにある空は紅く、昏い。

 

「そして俺は…『天の御遣い』を捨てた………」

「………」

「それを証明する―――と言うのも可笑しな話だが―――服も失った。何より、禁を犯した」

「やはり…そう考えるのですね、おにーさんは………」

「ごめんな、風」

「いえ、風はおにーさんと一緒にいられればそれでいいのですよ。それに、稟ちゃんをまたからかう事が出来ますしー」

「そっか…」

 

一刀は力無く笑みを零す。風もそれが虚勢である事を理解したのだろう。ただ、ぎゅっと彼の手を握る。

 

――――――途端、一刀の表情が歪んだ。

 

それを見た風は、普段の彼女からは想像できないような素早さで膝立ちになり、その薄い胸に一刀を抱き寄せる。

 

「風…?」

「誰も見てません。ここには誰も……風もいないのです………だから、おにーさんは好きにしていいのですよ」

「あ―――」

 

それは少女の精一杯の優しさ。彼の涙を誰にも見せたくない。誰にも見せてはいけない…自分ですらも。何故だか、そうする事が正しいと思えた。

 

「あ、ぁ…くっ……ぅぅ………」

 

胸の中で震え、嗚咽を洩らす青年を抱きながら、ようやく少女は理解した。彼が、これほどまでに重いものを背負っていた事を。独り知らない世界に迷い込み、『天の御遣い』と祀り上げられ、期待を背負う。彼はそれに相応しい行動をとろうと常に縛られ、努力し、成し遂げてきた。彼の不幸は、それを成すだけの器があった事だ。そこに人々は―――自分すらも、過度な期待をかけ、彼を無意識のうちに苦しめてきた。

いつの事だか、彼は言った。元の世界では、自分はどこにでもいるような人間だったと。少女も、まわりの人間もそれを冗談だと思った。何故なら、彼はこの大陸で卓越した武を誇り、またその智も確たるものを持っていたからだ。それを指して言えば彼は苦笑し、そうしていつもの雑談に戻る。

 

「おにーさん……」

 

だが、それは彼の無意識のうちに出た本音ではなかったのだろうか。自分は特別な存在ではない、だからこれ以上重圧をかけないでくれ。その無言の叫びに、誰も気づかなかった。彼が優し過ぎたが故に。

あれは青年と出会ったばかりの頃だった。まだ彼が正体を明かさなかった時、少女はひとり考えた。彼が『天の御遣い』だったとして、彼の愛する少女はその重責を理解できるのだろうか、彼を支える事は出来るのだろうか、と。無責任な思考。結局、そう考えた少女も同じだったのだ。

 

「俺は、弱い…弱いんだよ…………」

 

小さな身体にしがみついて嗚咽を洩らす青年を、少女はさらに強く抱きめた。彼女の瞳に大粒の涙が浮かぶ。

 

ごめんなさい

 

少女は謝る。言葉に出す事はしない。してはいけない。もし口にしてしまったら最後、それは、これまでの彼を否定する事になる。

 

ごめんなさい

 

それでも少女は謝り続ける。彼の眩しさに目が眩み、彼の苦悩に気づく事の出来ない―――気づかせて貰えない人々の代わりに。

 

陽が落ちるまでの間、瞳を濡らした青年と少女はただただ抱き合っていた。

 

 

 

 

 

 

陽が完全に沈み、部屋の中に闇が満ちる。月明かりでぼんやりと姿を認識できる程度の部屋で、2人は身体を離した。どちらも口を開かない。先の事については何も言ってはいけない。それでも風は考えた。なんとかしたい。何を、どうしたいのかすら分からない。それでも、なんとかしたいと。そして、彼女は行動に出た。

 

「おにーさん。大事な話があります」

「………なんだ?」

「実はですね………」

 

もし部屋に灯りをつけたら、少女の表情が羞恥に彩られている事がわかるだろう。風はそれを抑えながら口を開く。

 

「実はですね、今まで黙っていたのですが、風にはお友達がいるのです」

「友達……稟とは別に?」

「稟ちゃんにも教えていないお友達です。そのお友達を、今からおにーさんに紹介します」

「えぇと…うん………」

 

恥ずかしさで顔が紅くなるのがわかる。それでもと、少女は決意した。

 

「よう、兄ちゃん、初めましてだな!ようやく風からお許しが出たぜ。ったく、風も酷いよな?俺にずーっと黙ってろって言うんだからよ」

「………風?」

 

風の声で、風とは異なる口調で喋っている。

 

「風、何やってるんだ?」

「風じゃねーよ、この盆暗。上を見な、上をよぅ」

「う、上?」

 

薄暗がりのなか、一刀は視線を少女の眼から逸らす。緩やかにウェーブした金色の髪があり、その上にいつもの人形が乗っている。何もおかしいところはない。

 

「何もないけど?」

「何もないって酷いな、コラ。あれか?兄ちゃんの周りには美女ばっかいるから男には目もくれない、ってか?」

「こらこら、宝慧や。そんな本当の事を言ったら風は照れてしまうのですよー」

「はいはい、わかってるって。というかちゃんと紹介しろよ」

 

一人二役で進む会話に、一刀の口はぽかんと開く。それを見ながら風は両手を上げ、頭上の人形を手にとった。

 

「という訳でおにーさん。こちらが風のお友達の宝慧です」

「おう、俺が宝慧だ。おっと、同じ読み方だからって変な想像をするなよ、兄ちゃん?」

「………」

「おにーさん、宝慧が折角挨拶をしているというのに、無視は酷いのでは?」

「そうだぞ、コラ。テメェは自己紹介もできねーのかよ」

 

同じ声の少女と人形に罵倒され、一刀の肩が小刻みに震える。その震えは次第に大きくなり、そして、彼はとうとう笑い出した。

 

「くく、くくくっ………あっははははは!そうだな!自己紹介が遅れてしまった。俺は北郷一刀。よろしくな」

「おう、分かればいいんだよ、分かれば」

「おやおや、宝慧も新しいお友達が出来て照れているようですねー」

「んだと、コラ。風が作らせなかったくせによく言うぜ」

「くくっ、喧嘩するなよ。風、宝慧」

「おにーさんは笑い過ぎなのです」

 

一刀は涙を流しながら笑い転げる。それを見てむくれる風の瞳にも、涙が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

背中に規則的な振動を感じながら、恋は眼を覚ました。瞼を上げれば、青い空が広がっている。無限に広がる海を、雲がゆったりと流れていた。ふと、胸元から漂う心地よい匂いに気がついた。

 

「(………一刀の匂い)」

 

その元を探ろうと腕を動かせば、いつも触る布の感触。彼以外持っていないその感触。それが一刀の着る上着だと気付いて、恋は身体を起こした。

 

「恋さん!?………よかった、目を覚ましたんですね」

 

途端、横からかかる声。

 

「香…」

 

恋の隣で木箱によりかかった友の姿を認め、その名前を呼ぶ。そして周囲を見渡して、自分が荷車の上に横になっていた事に気がついた。

 

「ここ…どこ………?」

「いま私達は、劉備さんの軍にお世話になっているんです。恋さん、自分が病気に罹った事を覚えてますか?」

「………たぶん」

 

微妙な返事に香は苦笑しながらも説明する。恋が病気に罹り、香も同じ病になった事。一刀たちが街で医者を探したが見つからなかった事。賊に追われた事。そして劉備軍を見つけた事。

 

「………香は、だいじょうぶ?」

「はい。私が病気に罹ったのも恋さんよりしばらく後でしたし、薬の効きも早かったようで」

「ん……よかった」

「恋さんも治ったみたいでよかったです」

 

そう言って微笑む香の顔が、恋の次の言葉で固まった。

 

「それで…一刀と風は………?」

 

 

兵の隊列は進んでいく。荷車に乗せられた2人。1人は膝を抱えて蹲り、1人はそれを心配そうに見やるもかける言葉を持たない。ただただ揺られながら、時間だけが過ぎていく。そんな折、1人の少女が現れた。

 

「あ、呂布さんも目が覚めたみたいです、ね………」

 

そして荷車に座る2人の姿を認めて声をかけ、その様子に気づいた。

 

「劉備さん…」

 

香は意味ありげな視線を送る。劉備もそれで察したのか、視線だけで香を連れ出した。

 

「あの……呂布さんはどうしちゃったんですか?」

「えぇと、その……一刀さんがいないから、落ち込んでしまって………」

「御遣い様、か…大丈夫なのかな………」

「彼と風ちゃんならばうまく立ち回ると思います………それで、2人は見つかりましたか?」

 

心配そうに呟く劉備に、香は問いかける。だが、返事は芳しくない。

 

「うぅん、まだ愛紗ちゃんが戻っていないから何とも………」

「そうですか」

 

その言葉に黙り込む。恋よりも先に目を覚ました香が、劉備に無理を言ってお願いしていたのだ。だが、その安否は未だ届かないらしい。

 

「見つかるといいね」

「はい…」

 

香の返事は、力ない。

 

 

 

 

 

 

しばらくして、劉備軍は休息をとる。陣を敷いて炊き出しを行っていた。劉備の勧めで香が恋を食事に誘うが、彼女はただ白い上着を抱き締めるだけで反応を示さない。そんな折だった。劉備陣に、1頭の巨馬が到着する。

 

「おかえり、愛紗ちゃん」

「ただいま戻りました。………この馬は素晴らしいな。紀霊よ、説得感謝する」

 

赤兎馬から飛び降りた関羽は、劉備に挨拶をし、香に言葉をかける。香の頼みで一刀と袁紹軍が戦った地へと調査に向かう事となったのだが、諸葛亮がそれを止めていた。曰く、万が一袁紹軍が迫っていたら、たかだか数騎の馬では瞬く間にやられてしまうと。それを聞いた香が、関羽を乗せて偵察に向かうよう赤兎馬を説得したのだ。

 

「いえ。赤兎馬さんも一刀さん達の事は心配していましたから。それで―――」

 

関羽の礼に言葉を返し、ずっと訊きたかった問いをする。しかし、関羽の表情はすぐれなかった。

 

「すまないが、見つける事はできなかった。袁紹軍と曹操軍の騎兵が幾人か倒れているのは見たが………彼の姿を見つける事は出来なんだ」

「そう、ですか……お疲れ様でした」

 

申し訳なさそうに瞳を伏せる関羽に礼を言うと、香は恋のもとへと戻っていた。その香と入れ違いに、2人の少女が現れる。

 

「お帰りなさい、愛紗さん」

「お帰りなさいです」

 

諸葛亮と鳳統だった。何事か問いたげな視線をしていたが、関羽の表情を見て言葉を飲み込む。

 

「あぁ、ただいま。兵の様子はどうだ?」

「はい。特に病に罹ったりという事もなく、この様子だと無事荊州に着けそうです」

「そうか」

「それで、桃香様……」

「ん、何かな?」

「その、呂布さんの様子はどうですか?」

 

関羽と劉備に報告をし、少女は先程尋ねようとした事とは別の質問をする。

 

「うん…紀霊ちゃんの話だと、やっぱり落ち込んでるみたい。ご飯も食べようとはしないって」

「そうですか………」

 

主の言葉に諸葛亮は何事か考え込む。そして、親友を連れてその場を辞した。

 

 

 

 

 

 

「ほらほら、こんなに美味しそうなのだ!ちゃんと食べないと、元気が出ないのだ!」

 

連れ立って香と恋のもとに向かった諸葛亮たちの耳に届いたのは、張飛の元気な声だった。見れば、張飛が大盛りの料理が盛られた皿を恋の前に置いている。香はそれを困ったように見ながらも、口を挟もうとはしない。

 

「鈴々ちゃん、何してるの?」

「呂布が食べないからこうして誘惑してるのだ。呂布が元気にならないと勝負も出来ないのだ」

「勝負って……呂布さんは病み上がりなんだよ?」

「でもでも、呂布は『天の御遣い』のお兄ちゃんと同じくらい強いって聞いたのだ。勝負してみたく――――――」

 

『天の御遣い』。その言葉に恋は反応する。彼の不在に、彼女は強く膝を抱きかかえた。それを見た諸葛亮は、鳳統に視線を送る。鳳統も理解したのか、張飛の手をとった。

 

「鈴々ちゃん、愛紗さんが呼んでたよ」

「愛紗が戻ってるの?」

「うん、何か話があるみたいだよ。ほら、一緒に行こう?」

「わかったのだ!あ、でも呂布との勝負が………って、雛里、そんなに引っ張ったら――――――」

 

力で敵う筈のない相手の手を引いて、鳳統は歩き出す。本気で抵抗する気はないのか、張飛は慌てて荷車から飛び降りると彼女についていった。

 

「………ふぅ」

 

それを見送った諸葛亮は、ひとつ息を吐くと荷車によじ登り、一刀の上着ごと膝を抱える恋の前に腰を降ろした。

 

「呂布さん、北郷さんがいなくて寂しいですか?」

「………」

 

恋は応えない。だが、わずかにその肩が震えた。

 

「実は、北郷さんから預かっているものがあるんです」

「一刀…から………?」

「はい」

 

その言葉に、恋はようやく顔を上げる。それを見て、諸葛亮は懐からあるものを取り出した。

 

「あ…」

 

少女の手には、この大陸には存在しない、金属の塊。光沢をもち、滑らかな表面を携えたそれは、少女の両手にすっぽりと収まっていた。

 

 

「諸葛亮…もうひとつだけ、頼まれてくれないか?」

「頼み、ですか?」

 

風を黒兎の背に乗せた一刀が、諸葛亮の前に歩み出る。彼は懐からあるものを取り出した。

 

「もし恋が目を覚まして…その時俺がいなかったら………恋はきっと落ち込むと思う。もし元気を取り戻さなかったら、これを見せてやってくれないか?」

「………これって」

 

少女に示されたのは、小さな金属の直方体。一刀はそれを動かして見せる。

 

「使い方は教えるから………どうか、頼む」

「………わかりました。私が責任を持って預からせて頂きます」

 

諸葛亮は頷き、一刀は説明を始める。初めて聞く言葉に、初めて見るもの………少女の知的好奇心が疼くが、何とかそれを抑えて彼の説明を頭に叩き込んだ。

 

 

一刀の説明を思い出しながら、諸葛亮はそれを開く。僅かに盛り上がった部分を順番にゆっくりと押していき、それを表示させた。

 

「………一刀」

「はい。呂布さんがどうしても元気にならなかったら、これを見せて欲しいと頼まれました」

 

少女の手には、一刀がずっと持ち歩いていた携帯電話。太陽光でこまめに充電し、その機能を維持させ続けてきたそれは、幾分か色がくすんでいる。それでも、それを表示するには十分だった。

諸葛亮はそれを開いたまま、恋に手渡した。

 

「………」

 

恋はそれをじっと見つめる。開かれたディスプレイに表示されたのは、かつて撮影した3人の写真。その中心には微笑む恋。彼女を挟むように、馬鹿みたいに明るい笑顔を見せる一刀と、穏やかな笑みを湛える女性の姿――――――。

 

「………おかあ、さん」

 

次第に視界がぼやけてくる。そして、その眼から涙が溢れ出すと同時に、恋はその小さな塊を胸に抱きしめた。

 

「それは呂布さんにお渡ししますね。呂布さん自身の手で、北郷さんに返してあげください」

 

それだけ告げると、諸葛亮は荷台から降り、立ち去った。香はその背を見送り、そして、身体を震わせて泣き続ける恋の肩をそっと抱き締めた。

 

 

 

 

 

「恋さんのお母さんですか。綺麗な方ですね」

「ん…お母さんは、美人………」

 

落ち着いた恋から携帯電話を受け取って、写真を眺める。

 

「いま、この方は?」

 

香の問いに、恋は思い出した。賊に斬られた母親の痛ましい姿を、そしてその翌日に一刀から聞いた話を。

 

「………賊に、殺された」

「そう、ですか………すみません」

 

恋の返事に香は申し訳なさそうな顔をするが、恋は首を横に振る。

 

「いい…一刀が言ってた………お母さんはお星様になって、恋を見守ってくれてる、って」

「お星様ですか………そうですね。こんな綺麗な方ですから、きっと夜空でもひと際輝いているのでしょう」

「ん…だから、恋は寂しくない………一刀がいなくても、頑張る」

「そうですね」

 

弱々しくはあるが、はっきりと自分の意志を示す恋に、香は頷く。それに、と恋は続けた。

 

「香も、いる……一緒に、頑張る」

「………はいっ」

 

微笑みを見せる恋の手をとると、香は立ち上がった。

 

「だったらまずは、腹拵えですね。劉備さんの軍を兵糧攻めにしちゃいましょう!」

「ん……おなか、すいた」

 

恋も立ち上がり、香と手を繋いで荷車を降りる。その足取りは、確かなものだった。

 

 

「(ぱくぱくむしゃむしゃもきゅもきゅ――――――)」

 

炊き出しの場へと移動した恋は、食事を受け取って口をつける。最初はゆっくりだったそれも、数日まともに食べられなかった事を身体が思い出し、すぐさま普段の彼女の食べっぷりとなる。

 

「うふふ、呂布さん可愛いなぁ」

「はわわっ!この調子で食べ続けると、荊州に着く前に兵糧が尽きちゃいます!?」

「にゃにゃっ、鈴々も負けないのだ!」

「はわわわわ………」

 

劉備はそれを見て顔をにやけさせ、諸葛亮は糧食の心配をする。張飛は対抗するようにお代わりをしていた。

 

「あわわ、愛紗さん!鈴々ちゃんだけでも止めてくださいぃ」

「………」

 

鳳統が関羽に声を掛けるも返事はない。

 

「………………かわいいなぁ」

「あわわっ、愛紗さんまで!?」

 

振り返れば、義姉と同じような表情で恋を見つめる武人の姿があった。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

という訳で本編でした。

最初にも書いたけど、この回はずっと書きたかった話で、その為に色々と伏線を張っていたり。

しいて挙げるなら、#3、#5、#27そして前回等々。

 

まぁ、楽しんで頂けたのなら幸いです。

 

これから帰省前の東京最後の食事として友達とラーメン食ってくるぜ!

野菜ニンニク脂で行ってやんよ、コンチキショウ。

 

という訳で、また次回お会いしましょう。

 

バイバイ。

 

 


 
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