一刀視点
「お前様、只今戻ったぞ」
「あぁ、璃々ちゃん、桜、お帰り」
俺は玄関まで二人を出迎えに行った。そこで二人の後ろに永安の民が立っており、その手には一人の少女が抱かれていた。
「え? 桜、その娘は?」
「うむ、街で行き倒れていたのを余が保護したのじゃ。ここに来るまでに医者に見せてある。特に病を患っておるわけではないようじゃ。少しの間で構わぬから、ここで養ってはもらえぬか?」
桜から事情を聞いて、紫苑さんにも確認し、とりあえずしばらくは家で預かることにした。それから身寄りが見つからないようなら、竜胆の許に預けることになる。竜胆は孤児を個人的に養っているので、一人くらい増えても問題ないだろう。
ここまで少女を運んでくれた民にお礼を言って、紫苑さんの従者に竜胆を探してもらうようにお願いする。
それから昼食を取り、彼女が目覚めるまで待った。桜も言っていたが、おそらくどこかの貴族の娘か何かなのだろう。庶民にしては衣服が豪華過ぎるし、どこか位の高い者特有の気品めいたものもあった。
大方、戦乱か何かに巻き込まれたのだろうが、益州における反乱は貴族に損害を与えるものではなかったし、ここから近いところで言うと荊州や涼州辺りだろうか? いずれにしろそのような報告は入っていない。
「うにゅぅ……」
そんなことを考えている間に、件の少女は目覚めてしまった。寝起きの子供みたいに瞼を手でごしごしと擦ると、周囲を軽く見回しながら、徐々に自分がこれまで違う環境に置かれていることを認知する。
「ぴぃぃぃっ! ここは誰なのじゃ! 妾はどこなのじゃ!」
お約束的な発言は出来るくらいの元気はあるようだけど、どうにも俺たちに怯えているようで、壁に向かってじりじりと後ずさりをしてしまう。
「七乃ぉ! どこにおるのじゃぁ!」
「あー、えーと、怖がらなくても大丈夫だよ。俺たちは君に危害を加える気はないから。それよりもどこか痛いところろかはないかな? この娘が街で倒れているところを保護したみたいなんだけど」
なるべく怖がらせないように、柔和な表情を作りながら話しかける。まるで野良猫みたいにこちらを警戒していたが、お茶を淹れた椀を渡そうと手を伸ばすと、恐る恐るそれを掴んで飲んでくれた。
「何じゃ、蜂蜜水ではないのかの? 妾は蜂蜜水が飲みたいのじゃ」
蜂蜜? とりあえず機嫌を良くしてもらわないと困るし、紫苑さんに目線で確認すると、苦笑しながらもそれを取りに台所まで行ってくれた。
「はい、蜂蜜水だよ」
それを手渡すと、その少女はぱぁと表情を明るくさせて、それを一気に呷った。
「ぷはぁ。うむ、やっぱり蜂蜜水が一番なのじゃ!」
さっきまでの表情をころっと一転させて可愛い笑顔を見せてくれた。これでもう少し近づくことも出来るかな、と思っていると、早くも竜胆が屋敷に到着した。どういう経緯か知らないが、桔梗さんも一緒にいて、一人だけ楽しそうな表情をしている。
桔梗さんの楽しめるセンサーに引っ掛かったみたいだな。この人がこういう表情をしていると、大概碌なことが起こらないからな。
「御主人……子供を迎えに来た」
「あぁ、ご苦労様。でも何か保護者というか、付き添いの人がいるみたいなんだ」
さっきそれらしい名前を叫んでいたし。だとしたら、今頃その人はこの娘を探しているだろうから、早く手を回さないとな。心底残念そうにしている竜胆を放っておいて、そんなことを考えているときだった。
「そうですよー。お嬢様は誰にも渡しませんよー」
どこからか声が聞こえた。その間延びたような声に俺たちの緊張が一気に張りつめた。何故ならば、声の持ち主は、その少女の手前、部屋の奥にいるはずの俺の背後から発されたのだから。
「北郷、下がれ!」
最初に反応したのは桔梗さんだった。俺の腕を掴むとぐいっと側まで引き寄せた。それも当然の反応で、その人物は誰にも気付かない内にこの部屋に侵入していたのだから。
「あらー、そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。私はお嬢様を迎えに来ただけですからー」
にこにこと無機質な笑みを顔に張り付けているが、その言葉を簡単に信用出来ないと、桔梗さん、紫苑さん、竜胆が無言のまま得物に手をかけることで応えた。
「どうしてこの娘がここにいると分かったのじゃ」
意外にも冷静な問いかけを発したのは桜であった。彼女は三人を制止するように前に立った。
「あー、それはですねー。あなたがお嬢様を連れて行くのを目撃したからですよー」
「ではお主は余がこの娘を連れ去るのを黙って見ておったわけじゃな。その理由を申せ。この娘をお嬢様と呼ぶ以上、お主はこの娘に仕えておるのであろう。主が得体の知れぬ者に連れて行かれる様を黙認し、危地へ晒すなど誉められることではないの。事と次第によっては、余はお主を許さぬ」
桜の瞳には静かな怒気が湛えられていた。そういえば彼女は、この少女が怯えた表情を見せたとき一番心配そうな顔をしていた。性根の優しい桜のことだ、きっとこんな幼い少女を見捨てたに等しい行為を行ったことに対して憤りを隠せないのだろう。
そもそも桜は自身の記憶が曖昧なためか、自己の存在を希薄に思い、まるで己の存在を証明するように他人に依存する傾向がある。だから逆に他人を蔑にするような行為を嫌悪するのだ。
「そんなに怒らないで下さいよー。だって、私にはあなたがお嬢様に危害を加えることがないって分かってましたから。ねぇ、劉璋さん」
その言葉に驚く間もなく竜胆が反応した。得物を抜き、そのまま斬りかかろうと迫る。「竜胆、控えよ!」
彼女の前に腕を広げて制止する桜。普段の桜には似合わぬ一喝にさすがの竜胆も動きを止め、頭を垂れながら指示に従った。
「お主が何故に余の正体を知っているのかは問わぬ。じゃが、次にその名を呼んだときは竜胆を止めぬぞ。余が劉璋であるのが露見すれば、困るのは余を救ってくれた旦那様じゃ。余は旦那様に迷惑をかけるつもりはない」
「七乃?」
桜とその女性の間に不穏な空気が流れた。誰にも気取られることなくここに入りこみ、桜の正体まで知るこの女性を、黙って帰すわけにもいかなった。
しかし、その緊迫に満ちた場を壊したのは、意外にも桜が保護した少女だった。
「この者たちは妾に蜂蜜水をくれたのじゃ。じゃから無礼な真似をするななのじゃ。お主、名を何と申す」
「余か。余は桜と申す」
「桜か。妾は袁術なのじゃ。妾を助けてくれたのはお主かや? ありがとうなのじゃ」
桜に向かってぺこりと頭を下げた少女、彼女は袁術と名乗った。確か客将としていた孫策に叛旗を翻され、その領地を奪われてしまったはず。それでここまで逃げてきたというのか。
「あら、お嬢さんが自己紹介したのなら、私もしないわけにはいきませんねー。お嬢様に仕えています、張勲と申します。……あぁ、皆さんは自己紹介をしなくても平気ですからね。厳顔さんに黄忠さん、それに今にも襲って来そうな人が張任さん。最後に、平凡そうな顔しているあなたが、天の御遣い――北郷一刀さん、ですよねー?」
相変わらず笑みを絶やすことなく、俺たちを指しながら言う張勲さん。その挑発的な態度に桔梗さんも竜胆もこめかみをピクピクさせて怒りを堪えている。
「桔梗さん、竜胆、悪いけど麗羽さんを連れて来てもらえるかな?」
俺は二人の肩を宥めるように摩りながらそうお願いした。短気な二人なら咄嗟の対応で斬り捨ててしまうかもしれないし。袁家の所縁ある人だったら、麗羽さんに対応してもらった方が都合が良い。
無言のまま頷くと、去り際に張勲さんのことをキッと睨んでいった。その瞳にはそれなりに殺気が込められていたはずなのに、張勲さんはニコニコと微笑んでいる。
「それで張勲さん、桜の言うことを守って欲しい。もしもこの先、あなたが桜の正体を言い触らすようならば、このまま帰らせるわけにはいかない」
「大丈夫ですよ。その代わりと言っちゃなんですけど、一つこちらからも条件を出してもいいですかー?」
「……内容に依るよ。とりあえず聞かせてもらえるかな?」
「はい。私とお嬢様を保護してもらいたいんですよー」
張勲さんの条件とはこんな感じだった。自分たちは今や孫家に領地を奪われ、その身も追われている。ここまで必死になって逃げてきたが、行く宛てもなくいずれ捕まるか野垂れ死にしてしまう。だから保護してもらいたい。
「一刀くん、条件にしては対等ではないと思うのだけど……」
桔梗さんがひっそりと俺に囁いた。それもそのはず、袁術ちゃんを保護することは、孫策から攻められる口実を与えることになる。国境を接していない今ならその可能性は低いが、少なくとも同盟を結べる間柄ではなくなるのだ。
「張勲さん、一つだけ聞かせてもらえるかな?」
「はい?」
「どうして桜の――劉璋の正体が分かったんだ?」
「そんなことなら、少し考えれば分かりますよー。黄忠さんの家に正体不明の幼女が転がり込んだのは街で噂になっていましたし、口調や容姿から高貴な家柄であることも推測できます」
「でも、それが劉璋だという証拠にはならないはずだよ」
「はい、決定的だったのは、市街に晒された劉璋の首が市街に晒されなかったことですねー。血の気の多い反乱軍にしては穏便過ぎる。それは劉璋の存命を示しています」
まるで子供の謎かけを解説するみたいに饒舌に話す張勲さん。益州で暮らしていたわけでもないのに、的確に状況を把握し、たった少しの取っ掛かりでそこまで推理するなんて、少し考えれば分かる程度のことではない。
「分かった。二人は責任を持って俺たちが保護するよ」
「一刀くん……」
紫苑さんが反対意見のようで俺を窘めるように見つめる。
「大丈夫ですよ。でも俺たちが保護する以上、二人にも益州のために協力してもらいます。いいですね?」
「分かりました。それでいいですか、お嬢様?」
「良いも何も、妾は蜂蜜水さえ飲めれば良いのじゃ!」
「さすがはお嬢様、自分の置かれた身を全く理解していないその精神、よっ! 極太神経の蜂蜜依存幼女!」
「うははー! もっと誉めるのじゃ!」
……あれ? 簡単に二人を受け入れるなんて言っちゃったけど大丈夫かな? まぁでも、この張勲さんはかなりの智者みたいだし、彼女が尽力してくれればかなりの戦力になるだろう。
「そうだ、お嬢様。これを機会に天の御遣いである一刀さんのお嫁さんになっちゃいましょう! そうすればお嬢様は益州の主の妻として、今まで以上に豪勢に暮らせますよ」
「なんじゃと! 蜂蜜水も飲み放題かや!」
「勿論ですよー。きっと毎日浴びるほど飲めますよ」
「うむ! ならばそうするのじゃ! これから妾をよろしくな、なのじゃ、主様」
「ちょっ! 何をどうすればそういう方向になるんだ!」
「……妾じゃ不満かや?」
目をうるうるさせながら上目使いで俺を見つめる袁術ちゃん。
「……い、いや、不満とかそういうんじゃなくて……」
「じゃあ、決まりなのじゃ!」
「ならぬぞ!」
俺に向かってくる袁術ちゃんを桜が押し退けた。
「お前様、余という正妻がおりながら、こんなちんくしゃ娘に誘惑されるなど言語道断じゃ! 妾を囲うにしてももっと品性のある娘にせい。こんなつるぺたで脳内空っぽ娘などお前様には見合わぬ!」
「ちんくしゃ……つるぺた……脳内空っぽじゃとぉ! お主も変わらぬではないか!」
桜の言葉が悪口であると、今度は理解したようで、袁術ちゃんは顔を紅潮させながら怒りを桜にぶつけた。
「何を申す! 余は既に成人を迎えておる! 主のように我儘な小娘ではないわ!」
「ふんじゃ。成人にしてそんなぺたんこではもう成長は望めないのじゃ! 妾はきっと後数年したら、ばいんばいんになるのじゃ!」
「なんじゃとぉ!」
さっきまであった雰囲気はどこへやら、桜と袁術ちゃんは子供のような口喧嘩を始めてしまった。止めてもらおうと張勲さんに視界を向けた。
「あぁ、怒って必死になっているお嬢様も素敵……」
何故かとろんと瞳を潤ませながら恍惚の表情を湛えている張勲さんがそこにいた。
「あら、美羽さんでありませんの?」
「麗羽お姉様!」
タイミング良く、麗羽さんを連れて桔梗さんと竜胆が屋敷に戻ってきた。それで桜と袁術ちゃんの不毛な争いも休戦という形になったみたいだ。
「無事でいらしたのね……良かったですわ」
袁術ちゃんの無事な姿を見てホッと安堵した表情を見せる麗羽さん。優しくその頭を撫でる。袁術ちゃんもそれが心地良いのか、目を細めながら身を麗羽さんに任せている。
やっぱり二人は顔見知りだったんだな。真名も交換し合っているみたいだし、今度麗羽さんからきちんと話を聞かなくちゃいけないな。
「七乃さんも、孫策さんに急襲されて行方不明と聞いておりましたので、心配していましたのよ」
「はい。それはもう、あんな凶悪な戦狂いに襲われたので、もう気が気ではありませんでしたよー」
言葉と裏腹にニコニコと微笑む張勲さん。
「それにしても麗羽様も随分お変わりになりましたねー。まるで別人みたいじゃないですか?」
「あら、わたくしが無事であることには驚かないんですのね?」
「はい。麗羽様はきっと曹操さんに生かされたと思ってましたから」
そこで麗羽さんは何かに気付いたのか、唇を少し歪ませた。
「相変わらず何でもお見通しですのね?」
「そんなことありませんよー」
「でも、わたくしたちがここにいたことも御存知ではなくって? 同じ袁家なら放っておくはずがない、と考えたのではないのかしら?」
「まさか。いくら私でもそこまで腹黒ではありませんよー」
顔の前でぱたぱたと手を振って否定する張勲さん。なるほど、さすがは麗羽さんだ。鋭い指摘をしてくれる。最初からそれが狙いで益州に逃げ込んだんだな。
「一刀さん、警戒しなくても平気ですわよ。七乃さんは見かけ通りの不敵な人ですけれど、美羽さん絡みでは決して裏切りませんわ」
その言葉に俺は納得するが、桔梗さんや他の益州の将たちはあまり歓迎ムードではないようで、ふんと鼻を鳴らして不機嫌さをアピールしている。
まあ、張勲さんの実力はいずれ分かるだろうし、そうなればきっと認めてくれるだろう。性格だけ何とかしてもらわないといけないけどね。
「余も、この娘がお前様の嫁になると言うのなら反対じゃ」
桜は両手を挙げながら、自分の意志を示す。さっきの言い合いで、どうにも臍を曲げてしまったようだ。
いや、そもそもお前が保護してくれって言ったんじゃないか。それに、俺もお前を嫁にしたなんて一言も認めてないぞ。
そんなことを思いながら、桜のことをじと目で見つめた。
「むぅ、何じゃ、お前様。そんなに見つめられては照れるではないか。うむ! よし、ならばお前様の希望通り、今から閨に――」
「よーし! それじゃ、二人との交友も兼ねて、今夜は宴にでもするか!」
「ぬぅ! お前様、人の話は最後まで――」
「何と、酒か! 酒が飲めるのなら、儂は構わん。袁術だろうがなんだろうが、受け入れてやろうではないか」
「待て、お主たち! 余の話はまだ――」
「あらあら? それじゃ、今日は沢山料理を作らないといけないわね。一刀くんも手伝ってね」
そんな感じで集まりは解散。麗羽さんが張勲さんと袁術ちゃんをひとまず預かることに。桔梗さんの竜胆はそのまま帰宅。俺と紫苑さんは宴の準備をしに台所へと向かい、そこには桜だけが残された。
「余をもっと構うのじゃぁぁぁぁっ!」
その夜、歓迎会として紫苑さんの屋敷で宴が催された。
メンバーはさっき紫苑さんの屋敷にいた者に、焔耶、斗詩、猪々子、月、詠などの将を加えた、個人的な宴だ。麗羽さんと同様、袁術ちゃんの存在もあまり公にして良いものではないからこのくらいで丁度良い。
「主様、一献どうぞなのじゃ」
袁術ちゃんが俺の膝に陣取りながら、可愛らしい仕草で俺に酒を注いでくれた。せっかくのお酒なので、俺はそれを一気に呷る。
「お前様、余の酒の方が美味いぞ。さぁ、飲むのじゃ」
袁術ちゃんを目の敵にした桜も、反対側の膝に陣取り、俺に酒を注ぐ。これを飲まないと、どうなるか分からないから、それも一気に呷る。
そんなことがさっきからずっと続いている。さすがに何度も一気飲みなんて出来ないし、徐々にではあるが、酒が身体を回り始めている。
「ほら、二人とも。明日も仕事があるんだから、あんまり酔わせちゃダメよ」
紫苑さんが二人の首根っこを掴む。まるで子猫みたいにぶら下がった二人をそのまま別の席に座らせる。
「ありがとうございました。助かりますよ」
「まったく……。少しは私にも構ってくれなくちゃ、嫌よ?」
耳元でそっと囁かれたものだから、顔が赤くなりそうで、急いで酒を飲んで酔った振りをする。不意打ちでそんなことを言うのは控えて欲しいものだ。
宴の席では各々それなりに楽しんでいるようだ。
袁術ちゃんは竜胆に捕まったみたいで、全身を撫でまわされて悶絶しているし、張勲さんは桔梗さんとこそこそ何かを話している。時折、こちらをちらりと見てはにやにやと嫌らしい笑いを浮かべている。嫌な予感がするのは気のせいだ。
最初はどうなるかと思っていたが、どうやら二人のことを受け入れてくれているみたいで安堵した。
すると袁術ちゃんと張勲さんが二人して俺のところへとやって来た。
「どうしたの?」
「いえ、一刀さんは私たちの主になるわけですから、真名を預けようと思いまして。改めまして、お嬢様をよろしくお願いしますね。私の真名は七乃と申します」
「妾の真名は美羽なのじゃ。よろしくお願いしますなのじゃ、主様」
「あぁ、こっちこそよろしくな、美羽、七乃さん」
すると、今度は俺が飲み過ぎないように配慮してくれたみたいで、水が入った器を手に、月と詠も近寄って来た。
「どうぞ、御主人様」
「ありがとう、月」
「それにしてもあんたも物好きよね? こんな二人を保護した挙句、既に一人を籠絡したみたいだし。本当にチンコ太守ね」
美羽を籠絡したつもりなんて一切ないんだけどね、と詠の言葉に苦笑することしか出来なかった。
「あぁ、そういえば、前に言っていた曹孟徳の件だけど。南征に備えて漢中から兵をこっちに移動させた方がいいんじゃないの? あんたの言うこともわかるけど、兵たちが不安がるわよ?」
「曹操さんの南征? そんなこと信じているんですか?」
詠の言葉に七乃さんは首を傾げながら反応した。
「何言ってんのよ? 都ではその噂で持ちきりじゃない?」
「それは曹操さんが敢えて行った情報操作ですよ。今頃はきっと、馬騰さんとの戦のために長安に向かっていると思いますよー」
「なっ!」
七乃さんの言葉に詠が反応しようとした刹那、部屋の扉が開け放たれて、この場に雅が息を切らしたまま飛び込んできた。
「一刀はん! 大変どすえ! 部下からたった今報告が入ったんやけど、曹操はんが馬騰はん討伐を目的に長安に向かったどす!」
七乃さんの言葉はどうやら本当のことだったらしい。俺は目を見開いて驚いたが、雅の口からは更に俺を驚愕させる情報が告げられた。
「それと時を同じうして、劉表はんの軍勢が永安に向かって進軍中! その軍勢を率いる総大将は劉備はんどす!」
あとがき
第三十八話の投稿です。
言い訳のコーナーです。
さて、前話の最後の登場した人物ですが、蜂蜜大好き美羽様でした。
コメントにもありましたが、彼女だと気付いた方も多かったと思います。まぁ、作者もあまり隠す気はありませんでしたが。
今回は美羽様と七乃登場回と次回への繋ぎです。
孫策陣営に視点を移したときに少し触れましたが、この物語の七乃は結構なチート性能です。冥琳すら出し抜いた手腕ですからね。
美羽様大好きな七乃のことですから、率先して陣頭に立ち自らの腕を振るうなんてことはそんなに多くはないと思いますけど、彼女の参入で益々一刀くんの陣営は強力になりました。
それにしても桜は使いやすい。シリアスでもギャグでもどんなシチュエーションでも活躍できるので、作者にとっては有り難過ぎるキャラです。
今回も最初はシリアスな雰囲気をばしばし放ちながら、結局最後はギャグになってしまいました。
今後も美羽様と良き喧嘩仲間として仲良くなってやって欲しいものです。
そういえばこの物語の一刀くんは種馬設定が若干弱めな設定ですが、今のところ公に告白しているのは、ヒロインの紫苑さんを除いて桜と美羽様だけなんですよね。
いつの間にか幼女に好かれています。
さてさて、最後はオリジナル展開です。
劉備襲来。
その知らせに一刀くんはどう動くのか。
桃香と一刀の出会いは。
蜀建国はなるのか。
次回を妄想して頂ければ今回は成功です。
相も変わらず駄作ですが、楽しんでくれた方は支援、あるいはコメントをして下さると幸いです。
誰か一人でも面白いと思ってくれたら嬉しいです。
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第三十八話の投稿です。
桜の保護した少女は益州に何をもたらすのか。彼女を保護し、その歓迎会を開く一刀の許に、雅が彼を驚愕させる知らせを届ける。そして一刀はどう動くのか……。
では御覧ください、どうぞ。
コメントしてくれた方、支援してくれた方、ありがとうございます!
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