No.258948

真・恋姫†無双 外伝:蓮華さま!お庭のお手入れが終わりましたです!

一郎太さん

という事で、相変わらずAC711様の作品にインスパイアされて外伝を書かせて頂きました。
まずはそちらをご覧ください(右上のイラストをクリック)

それではどぞ。

2011-08-04 17:53:23 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:9737   閲覧ユーザー数:7335

 

 

 

蓮華さま!お庭のお手入れが終わりましたです!

 

 

 

――――――建業。

 

「………このくらいにしましょうか」

「お疲れ様です、蓮華様」

 

午前の政務を終えた蓮華に、側近の思春が声をかける。その手には侍女から受け取ったか自身で準備したのか、茶の乗ったお盆があった。

 

「ありがとう、思春」

 

部下から湯呑を受け取ると、それを口に運ぶ。茶葉の芳しい香が口を通って鼻に抜ける。湯呑を片手に蓮華は立ち上がり、窓へと向かう。江東の地は大陸でも南に位置しており、気温は年間を通して高い。この日も晴れ渡った空に燦々と照りつける太陽が昇っていた。

 

「今日も暑いわね」

「いつもの事です」

「そうね」

 

素っ気ない部下の返事を気にした様子はない。彼女の言葉ではないが、いつもの事だったからだ。ふと、窓から中庭を眺めている蓮華の眼につくものがあった。

 

「………中庭の木、育ち過ぎではないかしら」

 

彼女の言葉に思春も窓へと歩み寄る。見れば、確かに方々に枝は伸び、葉が生い茂っている。だが如何せん見た目がよろしくない。しばし考えた後、蓮華は思春へと告げた。

 

「剪定の者を呼んで、上手く整えさせてもらえる?」

「御意」

 

短い返事と共に、思春は部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

部屋を出た思春は、まもなく水軍の調練の時間だった事を思い出す。

 

「………誰かしら目に留まった者にでも伝えればよいか」

 

そうひとりごちて進むが、何故だか一向に文官に出会う気配がない。侍女はよく見かけるのだが、流石に身の回りの世話が仕事の彼女らに頼むのはお門違いだろう。そう思い、歩きざまに文官を探すが、それも見つからない。と、角を曲がったところで見慣れた姿を見つけた。

 

「明命」

「あ、思春様、お疲れ様です!」

 

いつものように元気よく挨拶をする明命に、思春はいつも通り一言挨拶を口にする。と、そこで思いつく。簡単な事だ。彼女に頼めばよい。

 

「そうだ、明命はこの後時間はあるか」

「はいっ、大丈夫です。なんでしょうか?」

「先ほど蓮華様が仰っていたのだが、中庭の木々が伸びすぎていてな。それで頼みたいのだが………」

 

言葉の途中だが、彼女の言いたい事を理解したらしい。明命は元気よく頷く。

 

「なるほど、上手く枝や葉を切って形を整えればよいのですね!」

「あぁ、その通りだ。私が行こうかとも思っていたのだが、調練の時間が迫っていてな。悪いが頼まれてくれるか?」

「はっ!この明命にお任せください!」

「そうか、任せたぞ」

「はい!」

 

元気のよい返事に背を押され、思春は歩き出す。政とは程遠いが、主の仕事環境を整えるのも部下の仕事だ。存外早く済んだなと、彼女は水軍の待つ河へと向かう。

 

 

 

 

 

 

思春の頼みを受け、明命は中庭へと来ていた。

 

「………なるほど。確かにこれは少々育ち過ぎですね」

 

彼女の眼の前には植木の数々。そのどれもが不恰好に枝を伸ばし、葉を纏わせていた。

 

「これは………なかなか遣り甲斐がありそうですね」

 

ひとり呟く明命の手には、高枝切り鋏。背中の魂切は壁に立てかけて置いている。

 

「それではさっそく取り掛かりましょう!」

 

気合を入れると、明命は鋏を構えた。

 

 

書庫へ赴いた帰り道、亞莎は聞き慣れない音に気付く。じゃきじゃきと何かを切っている音のようだ。一体何だろうかと彼女は音の方へと進む。その先には―――。

 

「み、明命?何をしてるのですか?」

 

見れば、大きな木の周りを飛び回っている明命の姿があった。その手にはいつも構えている長刀ではなく高枝切り鋏。彼女が飛ぶと同時にじゃきじゃきと音が鳴り、葉切れが舞う。

 

「………あぁ、剪定ですか」

「はい!どうやら蓮華様が気にしていたようで、思春様から言われて切っております」

「でも明命がやらなくとも誰か業者を呼べばよいのでは?」

「それも考えたのですが、本日私は休みなので、折角だったら自分でやってみようと思いまして」

 

会話を続けながらも、明命はどんどんと枝葉を切っていく。次第に丸みを帯びていくその気に、亞莎は感心していた。

 

「そうですか。怪我には気をつけてくださいね」

「お任せください!」

「あと、誰かにお茶とお菓子を運んでもらいますから、休憩の時にでも食べてください」

「はいっ、ありがとうございます!」

 

元気よく返事をしながらも飛び交う明命をしばらく眺めていたが、亞莎はこの様子なら大丈夫だろうと背を向け、その場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

何本か形を纏め終えた明命は、近くにお茶と胡麻団子の乗ったお盆を見つける。

 

「?…あぁ、亞莎が言ってましたね。ありがたく頂くとしましょう」

 

先の会話を思い出し、明命は湯呑を手に取る。温くなってしまっているが、軽く汗をかいた今の自分にはちょうどいい。お茶を飲みながら胡麻団子を口に運ぶ。

 

「ふぅ……それにしても、今日も暑いですね」

 

そんな独り言を口にする明命の眼に、あるものが映り込む。

 

「あれは………お猫様ではありませんか!」

 

じっと見れば、木陰にサバトラの猫が丸まっていた。気持ちよさそうに昼寝をしている。

 

「ふふっ、仕事が終わればもふもふさせて貰いましょう」

 

最後の胡麻団子を口に放り込むと、明命は立ち上がった。さぁ、仕事を再開しよう。

 

 

 

 

 

 

太陽も幾分か傾き、午後の調練を終えた思春は城へと戻っていた。門をくぐり廊下に入った所で主と出会った。

 

「あら、思春。調練お疲れ様」

「いえ。蓮華様はご休憩ですか?」

「えぇ、先ほど部屋から庭の手入れをしている様子が見えたの。そろそろ終わる頃だろうから少し見てこようかと思って」

「もう業者が来たのですか?なかなか仕事の早い職人なのですね」

 

明命に頼んだのは昼前だ。それがもう来ているとは、余程暇だったに違いない。そう考えた思春だったが、蓮華がそれを否定する。

 

「いえ、明命が自分でやっていたわよ?」

「明命が?」

「えぇ。あの娘、たしか今日は休みだったし、自分でやろうと思ったのではないかしら」

「はぁ…」

 

確かに経費は浮くが、何となく嫌な予感を拭えなかった。

 

 

廊下を進んで途中、外に出る。角を曲がれば中庭はすぐそこだ。2人は歩を進め、そして見知った背中を見つけた。

 

「あら、亞莎。貴女も見に来ていたの?」

「………」

「………亞莎?」

 

蓮華が声を掛けるが、亞莎は反応を示さない。如何に彼女の目が悪いとはいえ、声まで聴けば誰だかわかる筈だ。その様子を不審に思った2人は彼女の前に回り込み、その顔を見る。

 

「………………」

 

そして気づく。亞莎は目を見開き、ただ口をぽかんと開けていた。目の前にいる蓮華と思春にも気付かないようだ。訝しんで彼女の視線を追い、そして2人も同じ表情となる。

 

 

 

 

 

 

「あ、皆さん、お疲れ様です!」

 

3人に気づいた明命は、左手に湯呑を持ち、右手で額の汗を拭っていた。3人はそんな彼女を―――ではなく、その背後にあるものに目を奪われていた。

はたしてそこにあったのは、綺麗に剪定された植木。裾が広がり上に向かうにつれて細まっていく。と思えばくびれが出来て、その上には真ん丸な部分。さらにその上には2つの三角形が飛び出している。再び根本に視線を戻せば、その本体とは別に伸びた枝は綺麗な波を描き、それはまるで――――――。

 

「蓮華様!お庭のお手入れが終わりましたです!」

 

やり遂げた顔をしている明命の背後には、まるで猫の形をした植木が鎮座している。木陰からは、猫が1匹その物体を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

という訳で、外伝を投稿しました。

いつもインスパイア許可を下さるAC711様に感謝です。

 

ではまた次回。

 

ばいばい。

 

 

 


 
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