今、自分がどれほどかわいくない顔をしてるかって、それなりに分かってるつもりだ。
どれだけ努めてみても眉はぎゅっと寄っているし、唇はへの字になっている。
歩き方だってぜんぜん女の子らしくない。
追い掛けてくる足音を待っているくせに、わざとそれに冷たく返したくなったりして、その結果、ミクちゃんは困った顔をしている。
「リン」
「ミクちゃん、ラブレターもらった」
「うん」
「……読んだ?」
「うん、読んだ」
小さい頃からミクちゃんはかっこいいと思ってた。
その評価が、万人に通じるものだっただけ。
それがこんなに不愉快なのは、私が欲張りで我儘だからだ。
他の人がミクちゃんを好きになるのはいや。いやだけど、嬉しい。
「読まない方がよかった?」
「……ううん」
「捨てた方がよかった?」
「だめ。そんなミクちゃん嫌い」
「そだね。そんな俺、俺も嫌い」
ラブレターっていうのは、その人の気持ちが詰まった大事なものだ。
それを「捨てる」とか、「突き返す」とかしないミクちゃんはやっぱり素敵だと思う。
ちゃんと受け止めて、いつも、それから。
「……ミクちゃん」
「んー?」
「ごめんなさいしてくれる?」
「うん、最初からそのつもり」
「相手の人かわいかった?」
「そうだなあ、可愛い顔はしてたかもなあ」
「……ふーん」
でも、こういうとこってどうなんだろう。
私というものがありながら他の女の子をかわいいとかいうのって。
いや、何も「リンが一番可愛いよ」とかそんな痒い台詞を求めているんじゃないんだけど。
少し上で、ミクちゃんが笑うのが分かった。くすって、ほんとに小さく。
「ばーか」
「バカとはなんだぁちくしょー!」
「俺の嫁になってくれるんでしょ?」
「なる! 絶対なる!」
「じゃあいいじゃん。少なくとも、リンは特別だよ。安心しとけば? やだなーこの子、ほんと俺のこと好きなんだから」
早足になっていた私を軽々と追い越して、これ見よがしに、ポケットに入れていた手を差し出す。
「ミクちゃんの左手が空いてますけど?」
――そうだ、こんな人、人気がないほうがおかしいんだ。
「ぐ、偶然ですねえ、リンちゃんの右手も今フリーですよ」
繋ぐ?
そう言って振り返ったミクちゃんの微笑は、異常なくらいにかっこよかった。
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幼馴染クオリン
*学パロです
*サムネは嫁に頂いたイラストを使用してます