薄明かりの照明、潜水艦の艦橋で義眼の通信士が緑色のディスプレイと睨みあっていた。
「お客さん。博士から通信」
ピー、と高い電子音がして通信が到着したことを知らせる。
「やっときたか!発信元はどこだ?」
通信士の後ろから若い士官服を着た男が身を乗り出す。
「…日本」
「日本てことはあの街か…詳細に割り出しよろしく。繋いで」
士官服の男はヘッドセットを頭に当てる。ノイズ交じりの女性の声が届く。
『あら、繋がった。って事はそこにいるのは彩ちゃんね』
「彩ちゃんは止めて下さいと何度も言ってるでしょう」
『で、私を追ってきてるのね?』
「…助手をおいていくなんて酷いじゃないですか」
『無心に助手をしてくれてたわけじゃないから、おあいこよ』
「…博士が中央に示した資料は不完全にでも再現性もあって、認められる事になりました」
『あら、それはよかったわね』
「…しかし、博士の作った物と同じ物を我々で作っても同じ出力を得ることが出来なかった」
『…』
「原本を下さい。博士が細工を施した写本ではなく。です」
『…あれは私が自論を証明するために使った物よ。自らの力でたどり着いていない力を公表するわけにはいかないわ』
「しかし、中央は止まりません。中央はその街で明日の0700時に正式に発表します。あなたの説とあの力をペアでね」
『…』
「何を意地になってるんですか。私もクローブナーの爺さん方は嫌いですが、ここまでやる意味は無いでしょう」
『…』
「中央はあの技術の足がかりを手にした。彼らだけでもいつかあの技術は完成します。それでいいんですか?あなたは?」
『…時間ね』
「…待っ!」
ぶつん、と音がして通信が途切れる。
「どうだ?」
「あの街の第六電算区局を中継してる、としか。きっちり乱波入れて逆探の時間計られてましたよ」
士官服の男は振り返り、走り出す。
「どこに?」
「艦長室だ!レイチェ借りてあの街に行く!」
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小説というよりは随筆とか、駄文とか、原案とか言うのが正しいもの。1-2。 2000年ごろに書いたものを直しつつ投稿中。