自殺をしようと思いました。
一目惚れをした見知らぬ少女に振られたからです。
突き抜ける夏の青空が灰色にしか見えなくなったからです。
ですがその振った少女から止められました。
自殺はするなと。
「どうして止めるんだい?」
「貴方にはまだやることがあるでしょう?」
そう言われたので生きてみようと思います。
ある時、自殺しようとするおじさんを見つけました。
それを彼は止めました。
「どうして自殺するの?」
「おじさんは金持ちで、今まで色んな人を搾取してきたんだ」
「じゃあ返せばいいじゃない」
「なるほどそうだな」
おじさんは今まで搾取してきた人々にお金をあげました。
ある時、自殺しようとするおばさんを見つけました。
それを彼は止めました。
「どうして自殺するの?」
「おばさんは働いていたんだけど、給料が少なすぎて生きていけないんだよ」
「じゃあ金持ちのおじさんに相談すると良いよ、たぶんいくらかくれるはずだ」
「ありがとう、そうしよう」
おばさんはおじさんの所へ行くと、おじさんに一目惚れされ結婚しました。
ある時、自殺しようとするお兄さんを見つけました。
それを彼は止めました。
「どうして自殺するの?」
「私は神に仕えていたんだが、許されない罪を犯してしまったんだ」
「じゃあ、死ぬ前にこれから結婚する人達を祝福してあげてよ、最後の仕事に」
「なるほど、最後ぐらいきちんとお役目をまっとうしよう」
お兄さんはおじさんとおばさんの結婚式で神父として活躍しました。
ある時、自殺しようとするお姉さんを見つけました。
それを彼は止めました。
「どうして自殺するの?」
「私は信じていた人に裏切られて望まぬ子供を産みそうだから、一緒に死ぬのよ」
「じゃあ、子供を養子に出そうよ。貴方もいくらかお金をもらえるだろうし」
「なるほど、そうしましょ」
お姉さんの生んだ子供は健康な女の子で、
子供を産むのが難しいおじさん夫妻は喜んで引き取りました。
随分時が経って、自殺しようとする両親を見つけました。
それを彼は止めました。
「どうして自殺するの?」
「会社が倒産したんだ、おまえに迷惑をかけないためにここで借金を背負って死ぬよ」
「じゃあ、借金を返せるだけのお金があればいいんだね?」
「簡単に言うが、おまえの稼ぎではとても返せない負債なんだよ?」
「大丈夫、任せてよ」
彼はすっかり年老いた夫婦の所へ行き、娘へ婿入りしたいと言いました。
夫婦は彼に救われたことを覚えていました。喜んで婿に入れてくれました。
そうして借金は返せました。
彼らには子供が生まれました。元気な男の子と女の子です。
二人ともすくすく育ち、特に女の子は神童と呼ばれる天才でした。
女の子はある日、彼に言いました。
「私、お父さんの若い頃を見てみたい」
なんと女の子はタイムマシンを作っていたのです。
「行ってきます」
女の子は別れの挨拶も程々に、タイムマシンに乗って過去に飛んでいきました。
その日は突き抜ける程清々しい、夏の青空が広がっていました。
「確かに、やることはあったよ」
赤子の頃から見知った少女に呟く、見知らぬ少女への返答は聞こえず。
真相は灰色のままに。
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