宙に浮いたままアインハンダーと対峙する。

 

 周囲にはランスター二等空尉の封鎖結界。

 

 沈黙が空間を満たす中、私は一人アインハンダーに対しスキャンをかける。

 強力な対検査魔法プロテクトがかけられているアインハンダーの機体と搭乗者だが、私のスキャンは魔法を基盤にしたものではなく、機械科学とダライアス独自の魔法科学技術が基盤になっている。

 あくまでサブシステムなので解析能力はさほど高くないが、もしアインハンダーのプロテクト技術がミッドチルダ魔法科学ベースならば突破は不可能ではない。

 

 解析データは本部との通信経路を通り解析班へリアルタイムで送られている。

 

 機体の分析データはデバイスの専門家ではない私には理解が出来ない部分が多く見られたが、その中でも新しく判明した情報に目を通していく。

 その中から解ったことがある。

 

 アインハンダーのパイロットは共通人類種と同じ身体形状の雌。

 小さな人間の女の子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

テスト投稿二次創作SS 魔動少女ラジカルかがり A.C.E.

第六話『疾風魔法大作戦』後編

 

原作:アインハンダー

原作世界:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ

原作設定:日本製シューティングゲーム各種

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作戦は未だ続いている。

 第三者の介入があろうとも、迅速に作戦を進めなければいけない。

 

 ここまでの突入は順調だった。最速でルートの半分を進行し、現在は下層へと続く大型機材輸送路にいる。

 そして、そこで後ろから高速で進行してきたアインハンダーと遭遇した。

 

 この地点での相対を予測していた私たちは、ランスター二等空尉の結界で出来た密室内にアインハンダーを捕らえることができた。

 

 

 無断でスキャンをかけるという、平時に道端で行ったら一発逮捕な行動を取る私を横に、ナカジマ捜査官がアインハンダーへと呼びかけた。

 

「この区域は管理法により時空管理局が封鎖しています。所属と目的を直ちに提示しなさい」

 

 戦闘姿勢を取ったままの呼びかけ。

 抵抗するそぶりを見せた瞬間にあの空中走行で腕のデバイスを叩きつけるつもりだろう。

 

 私はアインハンダーの武装を隅から隅まで解析し続ける。

 

 アインハンダーの特性上、搭乗者も解析対象に含まれる。

 

 人体スキャンはまるで透視をしているようで気が進まないが仕方がない。

 武装したまま戦場に突入してくる方が悪いのだ。

 敵武装の解析は戦況を左右する重要な要素である。

 

 バイザーの解析視界の中、ヘルメットの奥で女の子が口を小さく開いた。

 

「所属の開示は許可されていない」

 

 ヘルメットに拡声機能でもあるのか、小さく口を動かして紡がれた声はこちらの耳へしっかりと届いた。

 

 この声が肉声なのか変声器を通っているかまでは解らない。

 そのあたりの細かい分析は後回しだ。

 

「目的は?」

 

 ナカジマ捜査官は再び質問を問いかけ直した。

 

「……開示を許可されている。地下駆動炉の完全破壊」

 

「地下駆動炉?」

 

「地下廃棄物処理場の下層の機密区画」

 

 廃棄物処理場はこの生産プラントの最下層にあるという施設だ。

 何せここは中解同の極秘施設。ゴミをミッドの処理場に運ぶわけにもいかないので自前の処理場を持っているのだ。

 

 事前調査では、その廃棄物処理場が最下層とされていたのだが。

 

 

 この会話は全て作戦本部へ通信されている。

 今頃本部は大急ぎでこの証言の裏付けを取っているだろう。

 

 ナカジマ捜査官はなおも尋問を続ける。声に驚きはなく、捜査官らしさがうかがえた。

 

「何故そこの破壊を?」

 

「地下駆動炉はプラント中枢が機能不全に陥った場合に制御装置を解除。地表に向け臨界魔力を放出する。……自爆?」

 

 とんでもない話が出てきた。

 事前に予想はされていた事態だが、地下駆動炉などと言う物は情報になかった。

 

「時空管理局の主戦力の損失は、中解同制圧に不利になると判断。……これ以上の情報開示は許可されていない」

 

 情報開示。許可。

 アインハンダーの背後に組織の影が見えた。

 

 プラントの所在を知り、内部構造も知っている。

 制圧作戦を行おうとする管理局の動きも察知。さらに局の把握していない情報も掴んでいる。

 

 だが、今はそれを追求しているときではない。

 本部と繋いだままの回線に問いかける。

 

「本部、地下の情報の裏付けはどうですか?」

 

『完全な見落としでしたが……確かに地下最下層よりさらに下層から魔力検知できました』

 

「自爆に関しては?」

 

『本当に自爆するかまでは解りませんが、もし駆動炉が崩壊し地表に向けて魔力を放出した場合、建物が根こそぎ潰れて無くなる建築構造になっています。自爆前途に建てられた、と考えてもおかしくはありません』

 

 本隊が中枢に向かった後に崩壊していたとしたら大惨事だった。

 少数での先行突入作戦は正解だったということか。

 

 いや、どちらにしろアインハンダーの証言がなければ中枢制圧後に本隊が突入していた。

 

「ど、どうしましょう……」

 

 アルピーノ捜査官はもう一人の捜査官と対照的におろおろとうろたえていた。

 足下に地雷が埋まっていると考えたら、確かに気が気ではないのは理解できる。

 

 ちなみにアルピーノ捜査官は未だに巨大な機械生物の中に入ったままなので、慌てる様子は全然可愛くない。

 この召喚機人は大きすぎて狭い通路を通れないので、途中で送還することになるだろう。

 

「まーさすがに本部の指示待ちっすね。アインハンダーの君には悪いけど、俺たち勝手に動けないからちょっとだけこのフロアで我慢な」

 

「早急に。なお管理局との協力は許可されている。が、こちらを捕らえようとするならその限りではない」

 

「こんなときに無断飛行程度を捕まえてる余裕なんて無いさ。こちらを邪魔しようとするならその限りではないが」

 

 指示待ち。だが大体の予想は出来る。

 今回は、あのラジカルな強行姿勢で知られるレジアス・ゲイズ少将が直接関わっている作戦なのだ。

 罠が怖いので宝を目の前に逃げました、で済ますはずがない。

 

『こちら本部。作戦の一部変更を指示します。カガリ・ダライアス嘱託魔導師は最下層へ向かい、駆動炉を術式封印してください。他四名はこちらの指示するタイミングで中枢へ向かってください』

 

「た、退避しないんですかー?」

 

 軽い涙声でアルピーノ捜査官が言った。

 捜査官という役職で魔導師ランクも高いのに、意外と恐がりな人だ。

 

『最下層の魔力反応は爆弾ではなく本物の駆動炉のようなので、崩壊しても一瞬で大爆発は起きません。崩壊時はアースラからの転送サポートが入ります』

 

 単独突破の指示が出た。

 あらゆる障害を無視して強引に先へと進む(きょうせいスクロールする)のであれば、このプラントの防衛能力だと全員で行くより私一人で突破する方がはるかに速い。

 魔力を封印する術式もシップには搭載されている。

 ロストロギアの事件に当たる上では必須となる術式だ。

 

 だが、作戦には一つ抜けているところがあった。本部へと疑問を投げる。

 

「アインハンダーの処遇はどうなりますか?」

 

『民間の情報提供者として現場への同行を許可します。ダライアス嘱託魔導師の指揮下ならば危険魔法行使も特例で許可されます』

 

 民間の情報提供者ときたか。物は言いようだ。

 使える物は使ってしまえということだろう。

 

 確かに、屋外ならともかく屋内ならばこの中で唯一アインハンダーが私の速度についてこれることができる。

 

 これもレジアスおじさんの判断か?

 飛行違反の現行犯をそのまま作戦に組み込むというのは無理が大きいが……、捕縛しようとここで作戦に関係ない大捕物をするよりはマシなのか。

 

「アインハンダーさん。これから貴女は私の指揮下に入り地下駆動炉へ向かいます。時間がありません。協力してくれますね?」

 

「許可されている。問題ない」

 

 戦闘機型デバイスと機動小型戦闘機。

 奇妙な二人のコンビが急遽編成された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 通路を高速で駆け抜け、時には床を撃ち抜き下へ下へと降りていく。

 少しでも操縦を間違えようものなら壁に激突してそのまま大破する速度だ。

 

 後ろからはアインハンダーが追従してきている。

 

 カメラアイの視界の中、アインハンダーは時折危ない動きを見せる。

 だが私は速度をこれ以上緩めるつもりはない。

 

 道をふさぐ敵機を破壊しながらの侵攻なので、これでも速度は落としている。

 

 本来ならアインハンダーもそこらの空戦魔導師とは比べものにならない速度と機動力を出せる飛行性能のはずだ。

 それでも付いてくるのがやっとのこの状況は、慣れていない、ということに尽きるだろう。

 

 例えデバイスの支援を受けていようとも、狭い屋内での飛行は困難を極めるものだ。

 オーリス姉さんから見せて貰ったアインハンダーの戦闘記録は、全て外の広い空間でのものだった。

 

 そして搭乗者の女の子はまだ幼い。訓練も経験も少ないのだろう。

 

 速度を落とさぬまま念話チップを起動し、アインハンダーへと念話を飛ばす。

 数秒は直線なので気が散って落ちることはないだろう。

 

『無理にぴったり付いてくる必要はありません。多少は遅れてもかまいませんよ』

 

『……問題ない』

 

 無理しちゃってまー可愛いこと。

 あのヘルメットの中を解析で見てから、少し彼女に愛着がわいてしまった。

 

 ただの戦闘機型デバイスと思っていたものにちゃんと人間が乗っているというのを改めて認識させられたというか。

 可愛くても速度は落とさないが。

 

 

 そしてすぐに最下層の区画、廃棄物処理場へと辿り着く。

 巨大な施設といえど、ルートを無視して床を抜いて飛べばたいした距離ではない。

 

 背後からは防衛機械は迫ってきていない。

 

 防衛機構には守備範囲というものがある。

 高速でそこを突破すれば、戦わずとも一定以上は追ってこなくなる。

 私の目的は防衛機械をスクラップにすることではないのだ。

 

 

 処理場の中を見渡す。廃棄物処理といっても汚い施設ではなく、地上部の施設と同じように機械がいくつも連なって今も稼働していた。

 廃水浄化にゴミの次元圧縮。相変わらず無駄に技術力の高い人達だ。

 だがこんなのものに感心している場合ではない。駆動炉に向かわなくては。

 

「どこが駆動炉につながっているか解りますか?」

 

「あそこ」

 

 アインハンダーの大きな左腕で、施設の一角を指し示した。ちなみに左腕の先には、魔法機械の残骸から回収した質量兵器の機関銃が据え付けられている。

 

 アインハンダーの示した先は、大きな円筒状の深い深い穴。

 その穴に上から次々とゆがんだ金属の固まりが降り注いでいた。

 

 廃棄資材の投棄場か。駆動炉の熱で溶かして再利用でもしているのだろうか。

 

「地下駆動炉区画はあの穴の下」

 

「……絶賛稼働中のようですが」

 

 今もなお廃材の落ちていく穴を眺めながら言う。

 まあ確かに秘密の区画を隠すには良い場所なのかもしれないが。

 

 アインハンダーは私の言葉を無視して、穴の中へと飛んでいく。

 

 仕方がない。稼働中だろうが何だろうが駆動炉へ向かわなければいけないのだ。

 アインハンダーを追い瓦礫の降りしきる空洞の中へと機体を進めた。

 

 

『WARNING!! WARNING!!』

 

 

 ……少し進んだだけでこれだ。

 地下駆動炉のものとは違う強力な魔力反応がすぐ下から発生した。

 

 穴の底を覗くと、高速で回転する巨大な歯車状のノコギリの刃が見えた。

 

「金属材の粉砕機、ですかね。下手な魔法機械兵器よりずっと頑丈みたいですよあの機械」

 

 太い二本の多関節アームの先端にそれぞれ二枚ずつのノコギリが装着されている。

 アームの台座が壁面にうちつけられたレールの上を疾走している。

 重厚な動きでアームを曲げ、落ちる資材をノコギリの刃で砕いていた。

 

 時折落ちてくる壊れた魔法機械兵器すら粉々に粉砕している。

 処理機の表面にはしっかりと魔力障壁が展開されているのが見えた。

 

 確かにここまですればどんなものでも細かく砕いて処分できるだろう。

 

「侵入者撃退用の防衛ライン」

 

「やっぱりですか……」

 

 ここまで強力な魔力反応を穴の中に入るまで気づかないなどありえない。

 侵入を検知されて出力を上げたのだろう。

 

「武装はあの回転アームだけのようなので遠距離砲撃で……といきたいところですがそうもいかないですね」

 

 穴の入り口には一方通行の強力な封鎖結界が張られていた。

 上からの金属片はそのまま通り、下からの脱出を防ぐというものだ。

 破るのは不可能ではないが、魔力値AAランク以上の魔法機械を足下に置いた状態では危険が高い。

 

 まず先に粉砕機の破壊を行わなければ。

 

「瓦礫、多くなってきた」

 

 上空から降り注ぐ魔法機械の廃材が視界一杯に埋まるようになる。

 

 これは……下手な魔力弾を連発されるよりやっかいだ。

 

 瓦礫をロックオンレーザーで撃ち抜き、浮遊地点を確保する。

 上からの思わぬ襲撃に気を取られていたそのときだ。

 粉砕機が高速で迫り上がり、こちらと同じ高さまで迫ってきた。

 

 アームを曲げ回転ノコギリの刃が振り下ろされる。

 

 咄嗟に真後ろに飛び退いて回避。

 当たれば一発で真っ二つにされてしまいそうな轟音が目の前を通過する。

 

 アインハンダーもこれを避けたのか、上の方から私を見下ろしている。

 

「接近戦、得意?」

 

「大の苦手です!」

 

 叫び返しながらレーザーショットをアームの接合部に向けて撃ち込む。

 

 注意するべきは上空からの落下物、アームの動き、台座の動きだ。

 砲門らしきものは見あたらない。

 台座の中央に金色に輝く球体があるが、何らかの魔力発生装置だろう。

 

 

 バイザー越しに映る魔力障壁の隙間に多重ロックオン。

 R-GRAY2の雷撃を放つ。

 

 敵の装甲は厚い。

 ビックバイパーに換装したいところだ。

 だが、降る瓦礫の多さとアインハンダーの存在からR-GRAY2を使わざるを得ない状況だ。

 

 レーザーショットでなぎ払うようにして瓦礫を吹き飛ばし、迫るノコギリの刃をすれ違いざまにロックして紫電を叩きつける。

 

 アームの動きは機械的だ。

 台座の移動と回転で縦横無尽に斬り結んでいるように見えるが、軌道は読みやすい。

 

 小さな動きを続ける私とは対照的に、アインハンダーは大きく旋回して銃撃を続けている。

 落ちてくる廃棄材の中に銃弾の装填された武器が混ざっているのか、機関銃から散弾銃へと左腕の兵装が変更されていた。

 

 問題ない。

 強力な魔力炉を持つ兵器であろうが、粗悪な自動操縦相手に私たち二人は落とされやしない。

 

 

 そう思い、二枚のノコギリの隙間に入り込み接合部を狙い撃っていた瞬間。

 

「わあああー!?」

 

 初めて聞くアインハンダーの叫び声。

 

「どうしました」

 

「ひ、引き寄せれられれー!」

 

 舌が回っていない叫びを上げながらアインハンダーがアフターバーナーの火を今までにないくらいに噴かせていた。

 

 落下してきていたはずの周囲の瓦礫が、全て粉砕機の台座の中心に吸い寄せられている。

 解析を通すと、台座の中心の黄色いスフィアから強力な磁場が展開されていた。

 

 金属材を磁力で集めまとめて粉砕するための魔法機能だろう。

 

 アインハンダーはその力場に吸い寄せられそうになっている。

 

 磁力で引き寄せられるような素材を使っているのかアインハンダーは。

 いや、そもそも磁力遮断フィールドを持っていないのか。

 

 物理科学アプローチなら慣性制御や重力制御が出来るならそのはるか前の段階で磁力制御も出来て当たり前なのだが、魔法の防護フィールドを持つアインハンダーはそうでもないらしい。

 文明レベルの差というか文明種別の差か。

 

 結界魔法を使えない私はアインハンダーを直接助けることは出来ない。

 吸い寄せられていく瓦礫を破壊することで直撃するのを助ける。

 

 やがて、磁場の展開が収まり、アインハンダーが大きく粉砕機から離脱する。

 そのどさくさに紛れてアインハンダーは巨大な砲塔を腕に掴んでいた。

 

 旋回したままアームの関節部に向けて砲撃を開始する。

 

 やはり砲弾は中に装着されているようだ。

 まさかこちらにぶつける質量弾にするために、まだ使える資材まで穴の中に投下されているのではないか。

 この鋼の雨は確かに驚異だが、それを逆手に取ってしまえば良い。

 

 そうだ、武器は頭の上からいくらでも降ってくるのだ。

 補助兵装を起動。より大きな廃棄材に向けてアンカーショットを放つ。

 

 シップと廃棄材がアンカーショットで一つなぎになった。

 魔力を通し強化し、鉄の塊を大きく振り回す。

 

 小さな瓦礫はその動きだけで粉々に粉砕される。

 

 原始的な武器。巨大なモーニングスターだ。

 近接武装がないならこの場で用意してしまえばいい。

 

 アインハンダーの砲撃に重ねるようにして粉砕機の関節に向けて鉄塊を叩きつけた。

 

 表面を覆う魔力障壁が吹き飛び、アームの装甲が大きく砕ける。

 流れは掴んだ。ただの粉砕機で追加武装がないならば、このまま打ち砕ける。

 

「この機械、同じ動きを繰り返しています。こちらも動きをパターン化して対処しましょう」

 

「ん」

 

 魔力障壁を失ったアームを折り砕くにはさしたる労力は必要なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地下区画の駆動炉を前にビックバイパーT301を起動させる。

 

 駆動炉は高出力で稼働している。

 魔法による封印というものは、まず対象の魔力放出を抑えなければいけない。

 ジュエルシードの封印時にまず暴走体の破壊を行っていたのにはそのような理由がある。

 

 ビックバイパーに搭載されている封印術式は、空間転移(ワープ)航法の時空間制御能力を応用したものだ。

 この時空間制御能力は、ミッドの魔法方式と異なるため次元世界の移動こそ不可能なものの、フルドライブさせることで周囲の空間を巻き込んだタイムワープすら可能とする。

 時間の移動は空想上の技術ではない。ダライアスはバイドという時間を超えてやってきた兵器に滅ぼされかけているのだ。

 

 時空間を操る機体。その力を活かし対象の時間を歪め魔力を霧散させ、空間を固定させて魔力の放出を封印する。

 

 

 一連の術式を駆動炉に向けて行使する。

 空間が歪み、青白い光が駆動炉の中枢を満たす。

 

 後ろで待機するアインハンダーも、単機でここに向かおうとしていたわけだからミッドチルダ式かベルカ式の封印魔法を使えるのだろうが、これは私の仕事だ。ここまで任せるわけにはいかない。

 

 駆動炉の魔力放出が止まる。

 最後に疑似再現したミッドチルダ式の封印拘束をかけて全て終わりだ。

 

「本部、地下駆動炉の封印完了しました」

 

『では中枢の制圧を開始します。念のため駆動炉の崩壊圏内から離脱してください』

 

 強固な封印をかけたので、この場を離れて中解同の人間がこの場に来ても、そう簡単に封印は破れないだろう。

 中枢の制圧が終わればこの場にも本隊が詰めかける。後は局の人達に任せればいい。

 

「ということです。帰って良いですよ」

 

「…………」

 

 アインハンダーはヘルメットごしにこちらをじっと見据えていた。

 このまま見過ごすのか、とでも言いたいのだろう。

 

「私って管理局員ではなくて交通課所属でもないので、無断飛行で貴女を捕まえる理由が特に無いんですよね。今回は無許可での危険魔法行使していませんし」

 

 現行犯でなければ私も目くじらを立てるほどではない。

 それに、無理に捕まえようとして駆動炉を撃ち抜いてしまっては大変だ。私は拘束魔法を使えない。

 

「そう」

 

 ぼそりとつぶやいて、飛び去ろうとこちらに背を向ける。

 プラントを飛び出したアインハンダーを管理局の人達がどうするかは知らないが、今まで通り適当に逃げ去るだろう。

 

「ああ、それと」

 

 一つ言い忘れていたことがあった。

 

 アインハンダーはまだ立ち去っておらず、アフターバーナーに魔力の光を溜めたまま振り返った。

 

「アインハンダーさん。貴女の名前は何て言うのでしょうか。こちらが勝手に付けたあだ名ではあれでしょう」

 

「……コードネームの開示は許可されていない」

 

 最後につぶやいた声は、今までの抑揚のない声とは違う何かの感情が含まれていたような気がした。

 

 

 

――――――

あとがき:展開が無理矢理だぁ……。

 

 

SHOOTING TIPS

■きょうせいスクロールする

STGの多くは強制スクロールと呼ばれる、敵の撃破状況に関わりなく背景が前へと進むゲーム進行をします。

アクションゲームに多い機体の動きに合わせた任意スクロールのものや、インベーダーゲームのようにそもそも画面が動かないものも一部ありますが、STGのステージといえば現在は強制スクロールが一般的です。

 

■粉砕機

オメガファイブ三面ボスより。機械的な動きでパターン化も容易な処理機さん。

オメガファイブはXBOX360のハード性能を活かした3Dグラフィックの横スクロールSTGです。

最近のモニターのワイド画面化の流れは横スクロールSTGを動かすのに最適です。横スクロールSTG頑張れ。もう少し頑張れ。

 


 
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