極秘指令

 

 セキュリティ解除

 

 コード9234

 

 次ノ作戦ヲ命ズ

 

 敵基地内ノ魔力炉ヲ捜索シ

 

 コレヲ破壊セヨ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

テスト投稿二次創作SS 魔動少女ラジカルかがり A.C.E.

第六話『疾風魔法大作戦』前編

 

原作:アインハンダー

原作世界:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ

原作設定:日本製シューティングゲーム各種

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中解同との戦いが攻勢に向かい始めた。

 

 レジアスおじさんの叱咤激励が飛ぶ。航空魔導師隊の企業テロ担当課一同が緊急に集められての作戦指示だった。

 

 少将であるレジアスおじさんが直接出てくるほど事態は大きくなっていた。

 

 

 首都クラナガン郊外。捜査部はそこに中解同の兵器生産プラントを発見した。

 地方世界で生産されているとばかり思われていた中解同の魔法機械兵器だが、ミッドチルダ内で生産拠点が見つかったのだ。

 

 灯台もと暗しとはこのことか。世界規模の大企業の本社や地上本部があるクラナガンのすぐ近くにこんなものがあるとは。

 

 だが、ミッドチルダは次元世界中の闇資材が集まる犯罪組織の中枢世界でもある。

 高い生産力を叩き出すには最高の立地条件だろう。

 

「作戦は迅速に行わねばならない! 工場内部は警備兵器がすさまじく制圧は困難を極めるだろう。だが我々は、人も情報も逃がす前に全て取り押さえねばならん! よって、この作戦は首都防衛隊、及び本局首都航空隊との合同での大規模戦力投入を行う」

 

 一瞬のざわめきが一同から走る。

 

 本局嫌いの地上本部トップ、レジアス・ゲイズ少将から本局との協力作戦が下されたのだ。

 それだけで、この作戦がどれほど大事なのかが解る。

 戦闘機人研究組織の検挙を行ったときも、ここまで大きな規模ではなかった。

 

 本来なら首都防衛隊と首都航空隊が我先にと手柄を取り合うクラナガン近郊での中解同事件。

 

 上で話が通っていても、現場レベルではどうなってしまうのか。

 

 陸から早く海へ異動して立身出世したいと思っている人も多いので、大丈夫だったりするのだろうか。

 

「諸君達の働きに期待する」

 

 レジアスおじさんの話が終わり、各員に通信ウィンドウが開き作戦本部からの指示が飛ぶ。

 おじさんの登場は、激昂や士気向上のためというよりは、作戦の重要性と事件の進展を皆に知らしめるためという感じなのだろうか。

 

 私も分隊長からの指示を受ける。

 予想通りというか、いつも通りの先行部隊任務だ。

 

 

 

 パイロットスーツに着替える必要があるのでロッカールームへ向けて廊下を駆け足で進んでいると、レジアスおじさんが巨体をゆらして前を歩いていた。

 

 久しぶりの対面だ。こんな状況だが少し話をしておこう。

 

「すごいことになりましたね。本局と協力だなんて」

 

 横まで走って並び、そのまま一緒に歩く。

 

「協力? ふん、馬鹿なことを言うな。ミッドの平和を守るために海の馬鹿どもの力を利用するだけだ」

 

 レジアスおじさんの歩みは速い。

 歩幅の差もあるが、時間の無駄を無くすという職業病もあるのだろう。

 

 自然と私は早歩きになる。

 

「まだまだ中企戦の奴らとの戦いは続く。極力こちらの金と人材を消耗したくはないものだな」

 

 あ、今、絶対一瞬にやって笑った。

 なるほど、最近は企業テロ対応の混乱に乗じて予算やら人材やら本局から色々搾り取っているんだったか。

 

 全部解決してみたら地上部隊の戦力が倍になっていましたとかこの人ならやりそうだ。

 

「なるほど、解りました。では、局の人材消費を減らすためにも任務に向かいます」

 

 そう言い、軽く会釈するとロッカールームへ向かうためフロア脇の階段を駆け上がる。

 

「ああ、それと」

 

 一つ言い忘れていたことがあった。

 

 下の階を振り返ると、レジアスおじさんはまだ立ち去っていないようだった。

 

 

「はやてさんの件、ありがとうございました。裁判に手を入れてくれて」

 

「ふん、毒をもって毒を制すだ。テロ組織を潰すのに、使い潰しのきく犯罪者を使ったまでだ」

 

 

 今度はにやりと笑わず、微妙に赤面していたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回の私の任務は、先行突入。本隊が結界と包囲網で封鎖を行う最中に突入し、中枢を制圧する。

 いきなり全戦力投入をして罠でした、では大事だ。

 

 まず先に転送妨害結界をかけ、私たちが内部突入。

 証拠隠滅される前に中央情報機械を確保するという手はずになっている。

 

 先行突入の強襲チームは、私を入れてAAランクが三人、AAA-ランクが一人、現ランクは低いが推定AAA+ランクが一人だ。

 まるで戦争にいくかのごとき布陣だ。

 統率力よりも突破力優先と言うことで、首都航空隊、首都防衛隊、航空魔導師隊の混成チームとなっている。

 

 

 時空管理局の隊編成にはランク上限という制度がある。

 今回の突入チームような高ランクのチームを普段から用意しておくことは出来ない。

 

 高練度の連携のとれた既存の隊を使う編成と、緊急で高ランクを詰め込んだ編成。今回は後者が選択された。

 それだけ高ランク魔導師という存在の兵器価値が高いと言うことだ。

 

 そもそも即席の連携も出来ないようでは高ランクの資格試験になど合格できない。

 

 

 ちなみに、はやてさんは私と外れて、魔法の万能性を活用して外からのバックアップとなる。

 突入班から外れたのは場慣れしていない、というのが大きいが。

 

 

 突入前、完全武装した突入チーム一同で作戦の確認を行っていた。

 

 先行の突入チームのメンバーは、首都防衛隊からクイント・ナカジマ准陸尉、メガーヌ・アルピーノ准陸尉、シグナム三等空士。

 本局ミッドチルダ首都航空隊からティーダ・ランスター二等空尉。

 そして航空魔導師隊から私、カガリ・ダライアス嘱託魔導師となっている。

 

 ランスター二等空尉以外は事件の捜査で一緒になったことのあるメンバーだ。

 いや、シグナムさんは事件の捜査じゃなくて事件の犯人だったか。

 

 即席のチームリーダーとして、一番階級の高いティーダ・ランスター二等空尉ではなくクイント・ナカジマ准陸尉が作戦の説明を行っていた。

 皆デバイスの着用とバリアジャケットの展開は済んでいる。

 

「捜査官のクイント・ナカジマ准陸尉です。資料の押収などは私が担当しますが……先日捜査本部が極秘侵入を行ったときに武装突入出来るだけの証拠を上げているので、基本的には防衛兵器の破壊と人員の逮捕を。本格的な捜査はプラント全体を制圧してからになります」

 

 ナカジマ捜査官の武装は両の手に付けた手甲型デバイス。

 見た目通りの近接殴打用のデバイスだ。

 

 バリアジャケットは、短い青のジャケットを羽織った動きやすいパンツ姿。

 長い青紫の髪はリボンでポニーテールにまとめ上げられている。

 

 

 ナカジマ捜査官とは、戦闘機人事件の時に合同捜査を行ったことがある。

 

 あのときはゼストさんが指揮をしていたが、なるほど彼女は突入隊の指揮を任される程の人物だったのか。

 

「兵器の破壊は解りますが、確保した人員の護送はどのような手はずに?」

 

 軽く手を上げて質問を投げる。

 事前に隊から説明されていた任務内容は中枢の制圧。

 人員に関しては全員非殺傷設定魔法で昏倒させて真っ直ぐ中枢を目指すとばかり思っていたので、逮捕は想定していなかった。

 

「生産プラント全体に転送妨害が入るけど、特定の魔導師の転送は通るように結界が組まれます。そこを召喚士のメガーヌが」

 

「はい、びゅびゅびゅんと豚箱の中に転送させちゃいます!」

 

 青いローブのようなバリアジャケットに身を包んだメガーヌ・アルピーノ准陸尉が、両手を胸の前で握って力強く言った。

 手の甲の宝玉型のブーストデバイスがライトの光を反射してきらきらと輝く。

 

 この人もナカジマ捜査官と同じで、捜査官の役職に就いていたはずだ。

 

「豚箱の中じゃなくて本部の護送機の中ね。捜査官が聴取と裁判すっとばすのは駄目だぞ」

 

 デバイスを付けたままの手でナカジマ捜査官がアルピーノ捜査官の肩を何度も叩く。

 

 相変わらず女学生のように仲の良い二人だ。

 もう二人とも二十の中頃くらいの歳のはずだけれども。

 

「と、とにかく」

 

 誤魔化すようにアルピーノ捜査官はオーバーアクション気味に顔の前で握った両の手を大きく振るった。

 

「一番の目的は逮捕や破壊じゃなくて、ダッシュで中央へ向かうことです! タイムアタックです! 名付けて、疾風魔法大作戦です!」

 

「…………」

 

 このようなときはどうリアクションを返せばいいのだろうか。

 

「うん、無理しなくて良いからね」

 

 再び肩を叩くナカジマ捜査官。

 何だろうこの芸人舞台芸は。

 

「ちなみにメガーヌはこれでも一児の母です」

 

 これを聞いて今まで無言で話を聞いていたランスター二等空尉が豪快に吹き出した。

 シグナムさんは無言のままだったが。まあ一応上司のようだしこれで笑うわけにはいかないだろう。

 

 ランスター二等空尉の笑いをこらえる様を見て、してやったりという顔でナカジマ捜査官は突入ルートの説明を続ける。

 内部の見取り図までしっかりと作成されている。

 潜入捜査をしたという人はさぞ高い隠密性を持った人なのだろう。

 

 

 確認が終わり待機状態になっても、ランスター二等空尉はまだ微妙に咳を続けていた。

 

 そんなに笑いのツボに入ったのか。

 大丈夫だろうかこの人は、と見上げていたら相手がこちらに気づいた。

 

 とりあえずぺこりと軽く会釈をしておく。

 

「ああ、首都航空隊のティーダ・ランスター二等空尉だ。よろしく」

 

「航空魔導師隊の嘱託魔導師、カガリ・ダライアスです。よろしくお願いします」

 

 突入部隊にしっかりと高階級を投入してくるあたりは、やはり首都航空隊といったところか。

 

 階級とAAA-という魔導師ランクからして、小隊長クラスは確実な人材か。

 今回のチームリーダーにならなかったあたりの事情は私には解らない。

 まだ十代のようだし、若さか?

 

「やー、やっぱ君があの魔動少女かー。うちの妹が君のファンでさ。任務終わったらサインくれないか」

 

「……かまいませんが、首都航空隊の方は地上本部を嫌っていると聞いていましたが」

 

 ずいぶんとフランクな人だ。

 すんなり会話できたどころか、世間話までしてくるとは。

 

「ああ、俺、陸とか海とか空とかどうでもよくてさー。執務官になりたいから色々やっていたら、まあこんなところに居るわけ」

 

 こんなところ、とは言うものの、この若さで首都航空隊で二等空尉なんて、執務官も夢じゃないエリート士官だ。

 

「執務官候補ですか。それなら確かに自然と本局勤務が多くなりますね」

 

「執務官目指したのも、ガキの頃見た地方ドラマの影響なんだけどね。聞いたことねえ? ガンフロンティアっていう荒野で質量兵器の銃撃ち合うドラマ」

 

「第6管理世界で制作されたものですね。そこの出身なので知っていますよ

 

「へえ、知ってるのか。いやー久しぶりに友に会えたな」

 

 ……いや、実は私の一族が制作に参加したアクションドラマだったりするのだが。

 

 植民惑星開拓時代の出来事をモチーフに戦闘機の描写を大幅に削り、生身対巨大機械兵器のガンアクションに仕立て上げたシリーズだ。

 第6管理世界の都市部では、私の生まれるより前に配信されていたはずだ。

 

 彼の出身世界は知らないが、ひょんなところで縁がある。

 

「デバイスもそれの影響受けてさ。ほら、見た目質量兵器の銃みたいで変だろ?」

 

 ランスター二等空尉が腰に付けられたデバイスをこちらに見せてきた。

 片手で持てる赤い銃型のデバイス。

 確かにこの形状のデバイスを使っている人はそうそう見ない。

 

「私は機体に銃どころか機関銃のような武器が付いていますから人のこと言えないです。それより、近接になったら相手の殴り付けをとっさにデバイスで受け止められなさそうですね。これまた人のこと言えないですけど」

 

「いや、この銃口から魔力の刃をずびびーって伸ばせるんだ。デバイスは精密機械なんだから直接つばぜり合いしちゃいかんだろ」

 

「なるほど。無理にデバイスぶつけ合ってデバイス損傷させている人に聞かせたら目から鱗をこぼしそうですね」

 

 本来の銃ならば銃口のあるべき部分。

 そこにミッド式の杖型デバイスでよく見る宝玉が小さなサイズになってはめ込まれていた。

 

 ここから魔法を放出するのだろう。

 

 

「最近は古代ベルカのなんだっけ。カートリッジシステム? あれが開発部でブームみたいでなー。すっげーつけてみたいんだよね。あ、ナカジマさーん、それカートリッジシステムのデバイスっすよねー?」

 

 ランスター二等空尉は、一人柔軟体操をしていたナカジマ捜査官に向けて声をかけた。

 手甲型のデバイスを付けたままナカジマ捜査官がこちらに歩いてくる。

 

「ええ、近代ベルカでも不安定さは隠せないと言うことで使うのは個人の趣向レベルで、ずっと現場での使用は避けられていたんですが……最近見直されてきましたね」

 

 ナカジマ捜査官が手首の部分に重厚なギミックのついたデバイスを掲げてみせた。

 

 カートリッジシステムとは、純魔力を圧縮して注入された弾丸サイズの魔力槽を炸裂させ、爆発的な魔力を一時的にデバイスに送るという上級者向けのデバイスオプションだ。当然爆発的に増えた魔力は魔導師自信が制御しなければならない。

 保有魔力が少なかったベルカの人々が魔力不足を補うために考え出したと言われている。

 

 私の機動小型戦闘機の一時魔力補助(パワーアップ)システムに似ている部分がある。

 一時魔力補助(パワーアップ)システムは魔力の底上げではなく、撃ち出す魔力弾に追加で魔力を付与するという物なので、使用するまでの前途条件が多いものの使用者の技量は関係ないし不安定さは無いのだが。

 

「アースラって聞いたことあるでしょう。次元航行部隊のエース戦艦アースラ。そのメンバーのミッドチルダ式デバイスにカートリッジが実験運用されて、そこで安全性を確立されたデータが管理局中の開発部に正式配布されたんです」

 

 アースラでのカートリッジシステム運用か。

 闇の書事件の報告書で読んだ。

 

 古代ベルカの守護騎士達のカートリッジ搭載デバイスに対抗するためになのはさん、フェイトさん、ヤマトさんのデバイスに搭載されたのだ。

 ヤマトさんはデバイス好きだから、おもちゃを与えられた子供のように喜んでいそうだ。彼のデバイスはギミックだらけだった。

 

 レイジングハートは……ユーノくんの手元にあった頃からアグレッシブだったからなのはさんを困らせていなければいいけれど。

 あの子は本当にミッド式のデバイスなのかも怪しい。一族が一族だけにロストロギアが関わっていそうとかユーノくんは言っていた。

 

「それで首都防衛隊にもまわってきまして。私のは近代ベルカのデバイスなので格好の実験体ってところですね」

 

「シグナムちゃんのデバイスはもっとすごいんだよねー」

 

 シグナムさんとなにやら話していたアルピーノ捜査官が、椅子を引きずりながら会話に参加してきた。

 目を輝かせながら、シグナムさんにほらほらと何かを促していた。

 本当に一児の母なのだろうか。

 

「すごいかどうかは解りませんが……私のレヴァンティンは今で言う先史時代のデバイスです。カートリッジの精度も開発部の人が言うには高いらしい」

 

「うわー、かっけー。ロストロギアのデバイスかよー」

 

 鞘から剣型のアームドデバイスを抜いてみせるシグナムさんと、それを見て少年のように目を輝かせるランスター二等空尉。ああ、彼は少年だったか。

 

 私はシグナムさんのデバイスがちょっと苦手だ。

 あれで散々いたぶられたから。そうそうあの恐怖は消えるものではない。

 

 

「そうだ。アースラといえば、今、上に来ているぞ」

 

「え、そうなんですか」

 

 ランスター二等空尉がデバイスを持ったまま銃口を上に向けた。

 

 アースラが来ているなど初耳だ。

 

「そうですね。衛星軌道上からは、本局の戦艦が地表に向けて大規模結界を張ってくれる手はずになってます」

 

 ナカジマ捜査官が続けて説明した。

 

 確かに戦艦が出動するとは聞いていたが、アースラだとは思わなかった。

 そうか、あの人達がミッドチルダに来ているのか。

 

「企業テロの舞台はミッドだが、実態は次元世界を股に掛けた大犯罪だからなー。わざわざエース艦を出してくるくらいには本局も本気なのさ」

 

 中解同の企業テロは世界間犯罪だ。

 見方によっては、地方世界が中央世界に戦争を仕掛けているとも言われている。

 

「まあ本局の戦艦が出てくるのは地上本部に高出力駆動炉を持つ宇宙戦艦がないからなのですが……」

 

 ナカジマ捜査官が曖昧な表情を浮かべながら言った。

 ランスター二等空尉の言葉と比べると、本当に地上本部は華がないというか貧窮しているというか。

 

 そんなナカジマ捜査官の愚痴混じりの言葉に、ランスター二等空尉が言葉を返した。

 

「魔法主義時代の地上部隊ってのは言わば各世界の保有軍事力ですからねー」

 

 軽く言っているように見えて、言葉の中身は本質を捕らえたような話だ。

 

「世界管理をする時空管理局としてはあまり地上部隊に力を持たせたくない、と言うのが一応本局勤めの言い訳っすよ。この言い訳嫌いですけどねー。俺ミッド人だし」

 

 ランスター二等空尉は何というか、世渡りが上手そうな人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突入、いや、強襲が開始された。正面からではなく、警備の手の薄いとされている経路から壁をぶちついての侵入だ。

 隠密性などは皆無。最速で中枢を目指す。

 

 私は本来は単機突入殲滅が得意なのだが、任務内容に逮捕が混ざっている以上は一人で先行するわけにもいかない。

 私の戦闘手段は魔力の銃弾を撃ち出すことであり、捕縛や拘束といった補助系の魔法は専門外なのだ。

 

 時空管理局はあくまで警察機関。ランスター二等空尉はああ言っていたが、軍隊ではない。

 

 先頭を行くのは駆動ローラーの付いたブーツデバイスを履いているナカジマ捜査官と、天井を飛ぶ私の二人。

 アルピーノ捜査官もランスター二等空尉もさすがに高ランクの魔導師とあって遅れてはいない。

 シグナムさんは言わずもがなだ。

 

「狭い通路だけど、飛びながらで大丈夫!?」

 

 ナカジマ捜査官が壁から飛び出してきた魔法機械を殴り飛ばしながらこちらに声をかけてくる。

 

「戦艦や要塞への突入はむしろ得意ですよ」

 

 私はR-GRAY2のロックオンシステムで前方の空間に潜む警備装置を片っ端からロックし、雷撃で撃ち抜く。

 単機潜入、帰還はそれこそ物心がついたばかりのころから延々とシミュレーターでやってきた訓練内容だ。

 

 速度を活かせないような場所であっても、空間を全て使って戦えばいいのだ。

 

 

 細い通路を抜けて、部品生産場と思われる広い空間に抜ける。

 侵入と同時に魔法機械兵器が次々と沸いて出てきた。

 

 壁や天井にも銃口と思わしき機械が貼りついている。

 

 

 ナカジマ捜査官は、ローラーシューズで加速をつけ跳躍すると、そのまま空を走った。

 

 よく見るとシューズのわずか先に魔力の道が生まれており、ローラーが通過すると同時に霧散していった。

 空に道を作る魔法か。面白い。下手に飛行するよりもずっと速度が出るだろう。

 

 速度を落とさぬまま機械兵器の元へたどり着くと、両の手の手甲で次々と地を這う機械兵器の脚部を破壊していった。

 

 動きを止めた機械兵器をランスター二等空尉の魔力弾が撃ち抜いていく。

 彼の銃撃には無駄弾がない。

 

 無駄弾は撃てば撃つほど焦りが増し戦いの難度が上がるのだ、という言葉を思い出した。

 ガンフロンティアでの台詞だったか。

 

 シグナムさんは剣の刃を節に分裂させて伸ばし、鞭のように操って空中の飛行機械をまとめてなぎ払っていた。

 硬派な剣士に見えて、意外と多芸な人だ。私を撃ち落としたときは矢も使っていたか。

 

 飛行機械はシグナムさんに任せ、私は壁や天井についた警備装置を狙い撃つ。

 バイザーでの空間解析、魔力探知が可能な私は、隠れた機械が作動する前に破壊が可能だ。

 

 外からも解析班が内部の魔力解析を行っており、工場ごと自爆でもされない限りはそうそう後手に回ることはない。

 

 

 そして、アルピーノ捜査官はというと。

 

「応えて、アスクレピオス……機人召喚!」

 

 地面に描かれた召喚魔法陣から、四メートルはあるかという人型の機械生物を呼び出していた。

 青い装甲に包まれた巨人。

 ただの機械に見えるが、バイザーの視界からは確かな生命反応が見て取れた。

 

「ライドオン!」

 

 機械生命の胸部が開くとアルピーノ捜査官はその隙間に飛び込み、機械生命の体内へ飲み込まれていった。

 駆動音を鳴らして胸部が閉じる。

 

 そして、背についた推進器のような機械が火を噴くと、強烈な勢いで機械兵器の群れへと突進していった。

 前方に構えた巨大な盾から、赤い魔力の槍が生える。

 突進と共に次々と機械兵器の残骸が宙に舞った。

 

 機械兵器がその巨体に向けて魔力弾を放つが、機械の巨人は手に持った巨大な盾で魔力弾を全て跳ね返す。

 

 

「ロ、ロボットだー!」

 

 

 ランスター二等空尉の叫びが爆音の続く場内を満たす。

 男の子は人型兵器とか好きそうだからこの反応は仕方がない、のか?

 

 いや、そもそも召喚した生物に乗り込んで、近代ベルカな肉弾戦をするなどロボット抜きで普通は驚く。

 

 

 思わぬ驚愕はあったが、流石は高ランク魔導師の集団による一斉攻撃。部品生産場内の機械兵器は一瞬で駆逐された。

 

「後は後続部隊に任せて突破します! 残存機体に気をつけて!」

 

 残骸の上をローラーシューズで飛びながら、ナカジマ捜査官が指示を出す。

 前へと進みながらの戦闘だったので、さして足止めもされていない。

 

 次のルートへ向けて生産場を抜けようとしたときだった。

 

 

『突入班! 突入班! 緊急連絡です!』

 

「何事?」

 

 

 作戦本部からの通信が入った。

 ナカジマ捜査官が通信に応対する。

 

 こちらの経過は順調なはずだ。外で何かが起きたのか。

 

 

『アインハンダーが上空から施設内に侵入しました! 突入班と同じルートを通って進んでいます!』

 

 

 

――――――

あとがき:StS24話には地上本部過去の妄想の夢が詰まっています。ちなみにルーテシアは現在0歳です。

StSに入るまでの時系列追っていくと、クイントさんって三年間しかスバルとギンガを育てていないんですね。それであそこまで二人に影響与える当たり母は強し?

 

 

SHOOTING TIPS

■ガンフロンティア

ガンフロンティアは、宇宙時代の西部劇という独特の世界観を持つタイトーのSTGです。

西部劇と言うことでリボルバーに羽を付けた、一風変わった戦闘機が自機です。撃ち出されるショットも弾丸風。

某西部劇漫画とは一切関係ありません。多分。

 

■アスクレピオス

R-TYPE FINALに登場する自機の一つ、人型変形防衛能力強化型TL-1B"ASKLEPIOS"。敵弾を跳ね返すシールドフォースが特徴的です。

メガーヌさんは近代ベルカの魔導師と言うことしか知りませんが、公式の所持ブーストデバイスの名前が「アスクレピオス」だということで娘と一緒の召喚屋さんに。

まあ、使用デバイスがアスクレピオスと聞いてもR-TYPE FINALのことが思い浮かばなくて、どこかで聞き覚えのある単語だとググったわけですが。

 


 
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