超技術力による艦隊戦といえば、よく解らない造語とやけに小難しい熟語を使ってそれっぽい雰囲気を演出するのが物語での定番なのだが。

 

『シールド張り終えましたー。副砲もいつでもいっけますよー』

 

『ええと、じゃあこことこことここ狙ってお願いね』

 

『あー、思いっきり防がれちゃいました。あの岩、生意気にも防壁張ってますよ』

 

『ジュエルシードがあると主砲は撃てないわねぇ。適当に撃って削ってから障壁中和して中に突入しちゃいましょうか』

 

『じゃあどんどん撃っちゃいましょう!』

 

『結界分の魔力まで撃ち尽くさないでね』

 

 ハラオウン提督とエイミィ執務官補佐の前ではそんな風情は存在しないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

テスト投稿二次創作SS 魔動少女ラジカルかがり SHOOTING

テスト内容:原作沿い展開のテスト

原作:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ

原作設定:日本製シューティングゲーム各種

ジャンル:(原作キャラの)魔改造生命体 VS (一部の人の)究極自己投影生命体

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アースラの医務室は混雑していた。

 武装隊一小隊を軽々と収容できるこの部屋も、二つの小隊ほぼ全員が負傷者となるとさすがに定員オーバー。

 第三第四の小隊である二チームを投入して全滅寸前まで行ったのだ。死者が居ないだけ行幸だろう。

 

 重傷者は最優先でベッドで治療を受け、軽傷者は部屋の隅や廊下で互いに治療魔法を掛け合っている。

 

 私も幾度かG.T.に直撃を受けた(ざんきをへらされた)ものの、一応軽傷のうちだ。

 だが、魔力切れのなのはさんと腕を引き裂かれたユーノくんはそうでもなく、部屋を狭くするというのに装着したままのシップで二人のデバイスに魔力を送っている。

 

 魔力供給の仕様上半ば抱き合うような形で寄り集まっている隣では、フェイトさんが心配そうにおろおろとしている。

 胸には邪魔にならないよう子犬に変身したアルフさんがいる。

 

 格好つけて別れたというのにこうぼろぼろになって帰ってきたのでは、少し恥ずかしいものがある。

 

 まあ相手が相手であったし仕方が無いと思っておこう。

 

 

 銀鶏のフレームに肩を寄せるユーノくんは、私から魔力を補充するそばから自分に治療魔法をかけている。

 ユーノくんの治療魔法は医務担当の局員さん並に高度で繊細な代物だ。腕の傷など痕も残らないだろう。

 先ほども魔力を消耗しているというのに、重傷者へ魔法処置を施していた。

 すぐになのはさんのように魔力をほぼ空にして供給を受けに戻ってきたが。

 

 本来失った魔力の回復は以前ユーノくんが使っていたような本人の波長を登録した治療器を用いるのが良いのだが、今もなお続く状況の中では時間のかかる治療器は使っていられない。室内はリンカーコアから魔力を生成するための魔力素がどんどん換気と共に送られてきている。

 

 最後まで無傷だったなのはさんは、消耗が大きいのか魔力の流れに身を任せてぐったりとしている。目線の先は、中継モニター。

 中継モニターには、海上に出現したプレシア・テスタロッサの居城である時の庭園への突入の様子が映されていた。

 

 

 封時結界の海上で互いの魔導砲を撃ちあったアースラと時の庭園だが、最後にはアースラが副砲へとまわしていた魔力を庭園の砲台の封鎖魔法へと変え、庭園の防護フィールドを中和し内部へ突入するという手段が取られた。

 

 内部にフェイトさんが持ち込んだ四つと、先ほど横取りされた五つのジュエルシードがある以上、まとめて撃ち落すよりは内部への強制捜査に入ったのだろう。

 

 

 モニターでは、ヤマトさんを先頭に傀儡兵を破壊して進んでいく武装隊が映っている。

 陸戦魔導師隊である第一小隊と第二小隊、補助魔導師隊の第五小隊。

 普通の魔導師一人を捕まえるにはあまりにも大掛かりなアースラの全戦力投入だ。

 

 だが、プレシア・テスタロッサは普通の魔導師ではなかったようだ。

 一体がAクラスの魔力炉を持つ傀儡兵が次々と現れる。

 

 人型の傀儡兵だけではなく、魔砲戦車や浮遊機械も見てとれる。

 

 この庭園もそうだが、技術力や魔導兵器の強力さ以前に資金力の豊富さに驚かされる。

 時空管理局にばれないようにこれだけの資材をかき集めたというのだ。

 

 当初想定していた密漁団などよりはるかに規模の大きい犯罪者と言えよう。

 

 

 だが、それらを全て打ち倒して武装隊が突破していく。

 武装局員とはこのような犯罪者に対応するためにただひたすら戦闘に特化した専門魔導師である。

 同じ魔力値の魔導師でも、その戦闘能力と火力は別物であろう。

 

 地上本部とは違い、ランクの高い魔導師も揃っていそうだ。

 

 

 そしてヤマトさん。流石艦内最大火力と言われるだけはある。大型の飛行傀儡兵を魔法の一振りでなぎ払ってしまった。

 

 

「あいつが捕まるのも時間の問題かね」

 

 

 アルフさんがぼそっと感想を漏らす。

 だが、そう簡単にはいかないだろう。

 

 ジュエルシードが相手の手の内にあり、また傀儡兵以外の隠し玉を持っていないとも限らない。

 そう、フェイトさんのような強力な手ごまがもういないとは言い切れないのだ。

 

 

 戦車を破壊し、蜘蛛のような形をした傀儡兵の頭部を砕いて進んでいく。

 

 

 向かう先はフェイトさんの言うところでは玉座の間。

 プレシア・テスタロッサの研究室が隣接する、石造りの城の主が鎮座する場所だ。

 ジュエルシードの反応は九つとも全てそこから検知されている。

 

 

 玉座の間へと続く扉の前では、強力な魔法障壁発生機と、それを守る二門の砲台が待ち受けていた。

 だがそれもヤマトさんは軽々と障壁ごと貫いてしまった。

 

「すごいねー」

 

 ぼんやりとしたままなのはさんが言った。

 そういえばなのはさんはヤマトさんの戦うところを今まで数度しか見ていないのか。

 

 なのはさんは戦い好きの傾向があるから、ヤマトさんの活躍に惚れて現地妻入りとかされると彼女の友人として嫌だが。

 まあ大丈夫か。子供を子供と扱うこの世界なら、この歳であれば憧れのお兄さん程度で済んでくれるだろう。

 

「母さん、大丈夫かな……」

 

 フェイトさんが別の方向で心配しだしてしまった。

 

「大丈夫でしょう。ヤマトさん訓練弾とか非殺傷とかの扱い上手ですし」

 

 魔法学校時代に何度ものされた私の実体験からくる間違った自信から断言できる。

 

 

 扉を破壊し、玉座の間へと侵入する。

 そこは、赤いカーペットがしかれた長い廊下。古めかしい調度品に飾られた、まさしく王の城だった。

 ところどころに階段があり、玉座はその上にあるのだろう。

 

 そして、廊下には可愛らしいエプロンドレスに身を包んだたくさんの女の子が並んでいた。

 

「嘘っ! フェイトちゃん!?」

 

 その顔、髪の色はまさしくフェイトさんと瓜二つ

 いや、フェイトさんよりもいかばかりか幼い。

 

 フェイトさんと同じ、アリシア・テスタロッサを元にした複製人造魔導師ということか。

 

 フェイトさんに似たエプロンドレスの集団が、笑い声をあげながら無作為に魔法を放ってくる。

 

 

「これ、もしかして全部クローン体!?」

 

 

 古代史で人の業を良く知るユーノくんもこの情景には戸惑いを隠せないようだ。

 

 クローン体は技術も何もなくただ無作為に武装隊へ魔力の塊を叩きつけてくる。

 ただただ笑うだけのその表情からは、知性や人格などは窺えない。

 

 まさか、アリシア・テスタロッサを再現しようとした失敗作だからと、ろくに知識も植えつけずに兵器として扱っているのか。

 プレシア・テスタロッサが狂った魔法研究者ならば、その程度平気でするだろう。

 

擬似人型生命兵器(アリス・クローン)……」

 

 ダライアスの兵器の歴史からこれに近しい存在に思い当たる。

 攻性魔法を先天的に身につけた原始魔導師を複製し、生きる防衛兵器として生産されたものだ。

 

 人体改造に対する倫理観の薄いダライアスといえども受け入れられることの無かった生命兵器だ。

 そんなものをミッドチルダの魔導師が作りえたと言うのか。

 

『く、総員非殺傷で突破! 捕縛魔法で無力化してとにかく進むんだ!』

 

 精神的には人ではない存在とはいえ、殺すのをためらったのか無力化に的を絞った攻撃が展開されていく。

 クローンはあくまで感覚での魔法行使をしていたのか、防壁魔法も捕縛解除も出来ずに次々と沈黙していく。

 

 甲高い言葉になっていない叫び声が廊下に響き渡っていく。

 武装隊は前へ。局員さんたちはそれぞれ悲しそうであったり怒っていたりと反応はさまざまだ。

 

 カーペットの敷き詰められた階段を駆け抜け、開けた広間へと辿り着く。

 広間の壁周辺には、巨大な戦士の石像が並んで立っていた。

 

 カーペットは真っ直ぐと玉座へと伸びている。

 そこには、一人の妙齢の女性が気だるそうに座っていた。

 

 プレシア・テスタロッサだ。

 

 

 武器を構える武装隊が、それを囲むようにして対峙する。

 正面にヤマトさんが睨むようにして立った。

 

『何なんだよあれは……』

 

 クローン達を目の当たりにした怒りのまま、プレシア・テスタロッサへと言葉を叩きつけた。

 

『何で自分の娘と同じ姿の子をあんなことに使えるんだ!』

 

『うふふ……』

 

 それがどうした、と言わんばかりにプレシア・テスタロッサは笑い返す。

 

『あの子を再現しようとしたのだけど、駄目ね。作り物の命は所詮作り物。失ったものの代わりにはならないわ』

 

 その言葉には、何の感情も篭っていない。

 悲しみすらも篭められていない。

 

『こんなはずじゃなかったのよ。私はあの子と二人でやり直さなければならない。でも、紛い物ではやり直しなんてとても無理』

 

 ふらりと立ち上がると、軽く後ろへ跳躍。そのまま吸い込まれるように浮遊し、背後にあった巨人の像の兜の上へと飛び乗った。

 この状況でも、投降する気は無いということだろう。

 

 そこへ向けて、さらにヤマトさんの言葉が続く。

 

『世界はいつだって、こんなはずじゃないことばかりだ! ずっと昔からいつだって誰だってそうなんだ!』

 

 ここにきてヤマトさんの断罪タイムだ。

 医務室の向こうではハラオウン執務官が、中々言うじゃないかヤマト、などと嬉しそうにしているが、こういうのが執務官のデフォなんだろうか。

 

『やり直す? 今のあんたには娘がいるだろう。アリシアとは違う、あんたの血肉を受け継いだフェイトという娘が!』

 

 ヤマトさんと杖型のデバイスを構えたプレシア・テスタロッサが魔法の打ち合いを始める。

 

 ヤマトさんはいつもの無限に分裂する魔力弾を次々と撃つ。

 

『あのお人形が娘? あは、あはははははははははははは』

 

 対するプレシア・テスタロッサは壊れたように笑いながら、広間を埋め尽くさんばかりの紫の雷撃を全身から放つ。

 

『あの子は私があの子を忘れないために気まぐれに作っただけの、ただの玩具よ。あはははははははははははは』

 

 狂ったように笑い続ける。いや、とうに狂っているのか。

 プレシアが宙に浮く。

 飛行魔法ではない。彼女の座る巨人の像から頭が切り離され、浮いたのだ。

 

 今突入している武装隊は陸戦魔導師の集まりだ。上を取るだけで優位になる。

 

 おそらくこの石像も傀儡兵のような魔導兵器なのだろう。

 石像の目と額から次々と魔力弾が地上へ向けて発射される。

 

 

 逃げる場所も無いほどの雷撃と魔力弾に、次々と武装局員が倒れていく。

 戦闘続行に陥った局員はアースラまで直接転送させられる。

 医務室内が騒がしくなってきた。

 

 

 もはや戦場は多対一の捕り物ではなく、オーバーSランク魔導師の殺し合いとなっていた。

 広範囲に向けていた雷撃をヤマトさん一人に向ける。プレシア・テスタロッサもヤマトさんしか見ていない。

 

 だがヤマトさんはそれを力技で弾き、魔力弾と合わせて砲撃魔法を撃ち返す。

 

 石像の頭が粉々に砕け散る。粉塵がプレシア・テスタロッサを覆う。

 魔法の衝撃波を叩きつけてそれを払うが、そこには誰の姿も無い。

 

『奥の部屋へ逃げたようです。総員急いで追ってください』

 

 魔力反応を追っていた通信士からの指示が飛ぶ。

 この奥はプレシア・テスタロッサへの研究室へ続いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プレシア・テスタロッサの言葉をただ黙って聞いていたフェイトさんの手を私は強く握った。

 なのはさんも手を重ねてくる。

 

 フェイトさんは確かに前納得したと言った。でも、だからといって割り切れるものでもないのだ。

 母と思っていた存在。母の居ない私には、そも思いは全て理解することはできないが。

 

「大丈夫です、きっと、きっと全てが上手くいきます」

 

 確かにヤマトさんの言うとおり、世界はいつだってこんなはずじゃないことばかりだ。

 

 でも、私の新しいこの可愛い友達を苦しめるほど過酷(ラジカル)じゃなくて良いじゃないか。

 フェイトさんまで私のように生まれながらに過激(ラジカル)な人生に翻弄されなくていいじゃないか。

 

 この世界にあるお話の中のよう(リリカル)に幸せに過ごしましたという結末でも、誰も文句は無いはずだ。

 

 

 事態の進むモニターへと視線を向ける。

 

 

 武装隊の突入した研究室。プレシア・テスタロッサの立つ後ろには、大きなガラスの筒が置かれていた。

 中には、金色の髪の女の子。フェイトさんに良く似た裸の少女が目を閉じて浮かんでいた。

 

『死んだ者は蘇らない。そう、あの力を使っても取り戻せなかった……』

 

 いとおしいものに触れるように、筒の表面を撫でる。

 その仕草から、あれが死んだオリジナルのアリシア・テスタロッサであるのが見てとれた。

 

『だから私は過去を取り戻す! ジュエルシードとこの庭園の力を使って、過去へと旅立つのよ!』

 

 大げさな身振りで腕を振って武装隊へと振り返る。

 視点の定まらないその瞳には、狂気のみが宿っている。

 

『過去へだって……? 魔法なんて使っても時間を遡るなど出来るものか!』

 

『いいえ、人は何度でもやり直すことができる。間違ったのならやり直さなければならない、やり直さなければいけないの』

 

『くっ……』

 

 何を言っても無駄と悟ったのか、プレシア・テスタロッサに向けて砲撃魔法を向ける。

 武装局員もそれに追従して砲撃を重ねる。

 

 だがプレシア・テスタロッサが軽く手を振って作った障壁魔法の前に全て霧散した。

 

『アリシアが傷ついちゃうじゃないの。貴方達、何をしようとしたのか解っているの……?』

 

 笑いがこびりついていた表情に険が走る。

 眉を寄せた顔が怒りに染まり、そして憎悪へと変わった。

 

『時空管理局……。おのれ、生かして帰さん!』

 

 紫色の魔力光が瞬く。

 アリシア・テスタロッサの遺体を収容した管が転送されて消え去る。

 

 プレシア・テスタロッサが再び戦いの意思を見せた。

 

 

 全身から紫電をまとった魔力弾が次々と放射される。

 研究室の至る部分が壊れ、天井が崩落する。

 

 さらに腕を振るうと、冷気を封じた青い魔力弾が嵐のように武装隊へと殺到する。

 避けようの無い弾雨に、少しずつ戦える局員の数が減らされていく。

 

 

 それでもヤマトさんは、銀色の魔力光を撒き散らしながら多彩な攻撃魔法で反撃を続ける。

 プレシア・テスタロッサのもつ魔力障壁が削られていく。

 

『こざかしいやつめ!』

 

 不利と見たか、プレシア・テスタロッサが今までに見たことの無い魔法陣を展開させた。

 黒い衣装の背が紫の魔力光に満たされる。

 

『魔力値、大幅増大しました! SSクラスを超えています!』

 

 その背から、人の身長の十倍もある巨大な翼が生まれた。

 根元は紫、先に行くにしたがって緑へと色が変わっていく、円と曲線で描かれた蝶のような羽だ。

 

『外部からの魔力供給を受けているようです! 位置は……庭園最上階の駆動炉!』

 

 エイミィ執務官補佐の報告が映像と共に響く。

 

 私が見たところ、あの羽はただの魔力増幅器ではない。

 あれは私のブラックハートと同じ、羽全体が魔法の発生砲門だ。

 

 羽ばたきもせず微動だにもしないその羽から、魔法の渦が生み出される。

 

 わずかに残っていた局員も、その強烈な魔法からは逃れはしなかった。

 皆吹き飛ばされ、ヤマトさん一人が残る。

 

『あの庭園の駆動炉も、ジュエルシードと同系のロストロギアです。それを艦長がアースラを使ってするような魔力供給魔法を使って力を引き出しています』

 

 フェイトさんの情報提供で作られた庭園図面がモニターに表示され、最上階部分が赤く点滅している。

 プレシア・テスタロッサはエネルギーに関して研究していた魔導師である。

 時空管理局の艦長級が用いる艦からの魔力供給魔法をその知識で再現したのだろう。しかも、供給元はジュエルシード並のロストロギアだというのだ。

 

 外部からの無限の魔力供給を受ける化け物など、Sランク魔導師のヤマトさんでも厳しいだろう。

 

 武装局員はすでにヤマトさん以外負傷で全員アースラへ回収させられていた。

 駆動炉を潰しに行く人員が向こうには居ない。

 

 

『ヤマト補佐、援軍を送るわ。私も出ます。それまで持ちこたえられる?』

 

 

 今もなお魔法の撃ち合いを続けるヤマトさんへ、ハラオウン提督が問いかける。

 

 ヤマトさんには珍しい、力負けする相手との戦い。

 補助魔法を駆使して身を守る防戦となっていた。

 

 

『ええ、大丈夫です。ところで艦長。一つ確認していいかな』

 

『……いいわ。なに?』

 

『ああ、時間を稼ぐのはいいが――別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?』

 

 プレシア・テスタロッサを見据えたまま、力強く言うヤマトさん。

 

 自信の表れ、ではないか。この状況に来て自分に酔っているのか。

 世間一般では死亡フラグとも言うのですが。

 

 

 ヤマトさんとの通信が終わり、艦内が騒がしくなる。

 医務室では、先のG.T.戦で軽傷であった局員達が自発的に動き出した。

 

『カガリちゃん』

 

 ハラオウン提督からの通信だ。

 

『三度目、だけど一番怪我が少ないのは貴女だからまたお願いするわ』

 

 三連戦か。何ともハードな一日だ。

 だが、問題は無い。戦いが続くならば一ヶ月であろうと魔力弾を撃ち続けて見せよう。

 

「私も、私も行きます!」

 

 私の隣でなのはさんが立ち上がり、通信ウィンドウに向かって懇願した。

 彼女へは魔力の受け渡しがほぼ済んでいるが、疲労が激しく長期戦に慣れていない彼女に戦えるのかは疑問だ。

 

 ウィンドウの中で提督は軽く眉を寄せる。だが。

 

『……許可します。貴女の世界を守る戦い、これで最後にしましょう』

 

「私も!」

 

 提督が言うや否や、それまでずっと黙っていたフェイトさんが叫んだ。

 

「私も母さんを助けたいから、お願い、私も行かせて、お願い……」

 

「フェイト……」

 

「フェイトちゃん……」

 

 アルフさんとなのはさんが悲痛なフェイトさんの顔を心配そうに見つめる。

 再び考え込む提督。だが、時間が無い。返答はすぐに来た。

 

『クロノ、聞いているわね。魔力抑制の制御器を貴方が持って。フェイトさんをプレシア婦人のところまで連れて行ってあげて』

 

「母さん!?」

 

 ハラオウン執務官の驚きは最もだが、時間が無い。

 室内の全員に向かって出動を呼びかけ、軽傷者を率いて医務室を出る。

 

 シップを使った魔力治療をしていたため幸い武装は全て手元にある。

 急がなければ、ヤマトさんを失ってしまう。大切な友人の一人なのだ。私が助けられるというなら全力を尽くそう。

 

 シップの機能一つ一つをスキャンで確かめる。土壇場で故障しましたでは話にならない。

 斑鳩・銀鶏は未だ試作機なのだ。

 試作機に、私は全てを任せなければいけない。

 

 

 飛行魔法で転送室まで走る私に、ユーノくんが飛んで併走してきた。

 

「ユーノくん、貴方は……」

 

「僕も行くよ。カガリのおかげで魔力も戻ったし」

 

 ぐっと右腕を曲げて力こぶを作ってみせるユーノくん。

 細いその身体でやっても可愛らしいだけだが。

 

「ユーノくん、付いてくるなとは言いませんが、今回の件はユーノくんには関係無いと思うのですよ」

 

 皆が幾度となくユーノくんに言ったであろう言葉だ。

 だがそれでも言葉を続ける。

 

「フェイトさんの証言では、ジュエルシードの運搬事故はテスタロッサ一家が犯人。貴方の責任は一欠けらもありません」

 

 できればこの優しい親友には、これ以上怪我などはして欲しくは無い。

 

 でも、ユーノくんの顔には、なのはさんと同じ強い信念が宿っている。

 

 

 だから、その意志を確かめるべく、はいかいいえの問いを訊ねる。

 

「このさきには、暴力的で、鬼のような極殺兵器どもがあなたをまっています。それでも戦い(プレイし)ますか?」

 

 力強く頷きを返してくる。答えは[はい]だ。

 

「では、行きましょうか。ユーノくんが背中を守ってくれれば、私たちは負けませんよ」

 

 ユーノくんに親愛を込めて笑みを投げかける。

 

 私には頼もしい仲間が居る。

 後ろを振り返る。

 そこには、なのはさんが、フェイトさんが、アルフさんが、ハラオウン執務官が、七人の武装局員さんたちが強い意志を目に秘めて駆けていた。

 

 

 

 進もう。(NEXT.)最後の戦いへ。(FINAL STAGE)

 

 

 

――――――

あとがき:別に逆行者が居て二周目に入っているとかではありません。

 

用語解説

■世界はいつだって、こんなはずじゃないことばかりだ!

人間そんなに簡単に名台詞など出るものではありません。その道何十年の職人さんじゃないんですから。

無意識でクロノくんの台詞をパクっていますが、問い詰めてもヤマト本人は「参考にしただけで盗んではいない」と返すでしょう。

あ、このSSのSTGネタはパロディでリスペクトでインスパイアであって、パクリじゃないっすよー(よくある言い訳)。

 

■アレを倒してしまっても構わんのだろう?

同上。多分彼は絶体絶命の状況に酔ってます。

 

 

SHOOTING TIPS

■アリス・クローン

ケイブの古い名作エスプレイドより、五面道中の雑魚敵。ラスボスのガラ婦人が溺愛していた超能力者アリスのクローン体。

強力な能力者のクローンだというのに攻撃を軽く当てただけで甲高い叫びをあげて死にます。エスプシリーズは生身の雑魚敵が血柱をあげて潰れるのが恐ろしい。

 

■生かして返さん!

エスプレイドより、ラスボスのガラ婦人の台詞。

画面半分を覆いつくすほどの巨大な極彩色の羽は、ガラウィングと呼ばれて狭く親しまれています。

 


 
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