No.239611 魔動少女ラジカルかがり SHOOTING -第八話Bパート-Leniさん 2011-07-28 13:36:20 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:520 閲覧ユーザー数:409 |
WARNING!
A HUGE BATTLE SHIP
G.T.
IS APPROACHING FAST
――――――
テスト投稿二次創作SS 魔動少女ラジカルかがり SHOOTING
テスト内容:バトル表現の練習
原作:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ
原作設定:日本製シューティングゲーム各種
ジャンル:原作キャラ蹂躙
――――――
海が荒れている。
風が弱く雲も少ないこの空が起こしたものではない。
巨大な鋼の塊が海の底から浮上したためだ。
鋼の塊……偉大なるクジラG.T.は、海上から飛び出し空へ空へと飛び上がっていった。
海から開放され陽の元へ飛び立つのがクジラの夢であったのか。
だが、それを否定するように、G.T.の全身には砲門が据え付けられている。
空を飛ぶには不要な、戦いの道具。
その無骨な鋼の様相からクリーンで安全などとは程遠い、殺しのための質量兵器を連想させられる。
対するこちらは、魔法の服を身にまとった小さな人だ。
武装局員三十名。士官一名。協力魔導師三名。
手にはそれぞれ魔法技術の粋を集めて作られた魔法武器を持つ。
小さな魔法都市ならば軽く陥落してしまえそうな布陣だが、このでかぶつの前では心もとない。
相手は全身に砲門があるため武装局員は大きくばらけず、ある程度距離を縮めた陣形を取っている。
ハラオウン執務官は、その陣形の中央に位置を取っている。
魔法技術力の突出した執務官を中心としたあらゆる局面に対応するための無難な選択だ。G.T.の詳細が判明していない以上、無難が一番と言うことだろう。
なのはさんは、ユーノくんと共に陣形から離れて上空に居る。ユーノくんは人間形態をとりマントの特徴的な発掘作業服に着替えている。
なのはさんはこの中での最大火力を持ち、ユーノくんは高度な補助魔法を使う。規模の大きい砲撃魔法に他の局員を巻き込まずに行動するための位置取りであろう。
そして私も、単独での戦闘となる。
私の運用に手馴れた地上本部ならともかく、合流して日の浅いアースラクルーでは私の速度についてこれないためだ。
息の合わない防壁魔法は進路を狭めてしまうだけ。
この場はお互いの邪魔をしないことが最良の選択だ。
準備が整ったところで、
『カガリちゃん、魔法障壁最大にしてG.T.へ接近。こちらへの攻撃の意思があるか念のため確認して』
今までの暴走体に習うと、巨大猫以外は全て攻撃的だったり破壊を撒き散らすようなものであったが、まずは確かめる必要があるか。
無抵抗なら武装隊の合成封印魔法で五つのジュエルシード全て封印してしまえそうなものだが……。
緩やかな速度でG.T.に近づく。
魔法障壁は強度最大。
斑鳩・銀鶏は特別速度に優れた機体ではない。
機体形状からして、速度を得ることを放棄している。
左肩の斑鳩は、後方へ突き出した直線的な巨大な盾。
右肩の銀鶏は、盾と肩当を組み合わせたような流線型の装甲。
それぞれ、オリジナルの英雄機を模した形をした左右非対称の形状だ。
前方へと槍のように突き出している胸部装甲も、左側と右側とではデザインが異なる。
左右非対称ということは、機体バランスが悪いということだ。
安定性を得るために若干加速性能を犠牲にしている。
まあ属性吸収フィールドなど、速度よりも防御能力を高めた機体ではあるので速度はそもコンセプトにはない。
それを補助するための撤退専用にブラックハートが配置されているわけでもある。
だがそれでもシップは機動力という点に関しては他の魔導師の追従を許さない。
何が起きても瞬時になのはさんたちの元へ飛んでいく自信がある。
G.T.の正面から、走るような速度で近づいていく。
クジラとは思えない鋭い牙の並んだ巨大な口。
正面だけでも、頭上の巨大砲台、額に縦に並んだ複数の砲台、側面砲台と多くの兵装が見える。
その全てをバイザーで捉え、砲塔の向きを監視する。
少しでもこちらに砲が向けばその時点で急いで離脱だ。
G.T.の目と思わしき白い双眸がこちらを捕らえた。
気付いたか。さあ、どう動く。
砲台に動きは無く、巨体も空中に浮いたまま動かない。
ただ、その牙の並んだ口をゆっくりと開いた。
突如、封時結界に包まれた空間に爆音が轟いた。
G.T.の口の中から熱反応。何かが発射されたのだ。
銀鶏高速駆動、緊急離脱する。
宙返りするようにして回転した視界からG.T.を見る。
G.T.の口から煙を噴いて細長い金属の筒が飛び出してくる。
金属で覆われたイカや小魚のようなフォルムのロケットだ。その先端からは進行方向へ光線を撒き散らしている。
捕食した生物すらも武器として取り込んだのか!
願いを叶えるロストロギアは、はたしてこのクジラのどのような願いを叶えたというのか。
文字通りの魚雷と言うべきロケットは一通り魔力の光線を吐き出した後に爆発して消滅する。
移動速度が肉眼で十分に追えるものであったのが救いか、ロケットの向かった武装局員への被害はない。
『砲台から魔力反応! 敵性ありとみなし、総員戦闘を開始して!』
G.T.の鼻先の砲身が輝き、無数の魔力弾が正射される。
その巨体に見合うかのような広範囲への一斉射撃。
私はその隙間を縫うようにして機体を駆り、武装隊の攻撃に巻き込まれないよう上空へ飛ぶ。
全身のカメラアイを総動員して得られた人を超えた視界の中、魔法の弾幕が戦場を埋め尽くしていく。
風を斬る音が響く。
戦艦と呼ぶに相応しい規模の圧倒的火力だ。
一人を狙って放たれたものではない。
周囲を全て破壊するかのように、無差別に弾雨がばら撒かれる。
武装隊は障壁魔法でそれを防ぎ、反撃の詠唱に入る。
私も機銃をG.T.に向け、魔力弾を撃ち付ける。
巨体に小さな魔法の光が突き刺さり、血飛沫が空に舞う。だがすぐに傷口の周囲の金属が結びついて傷が塞がる。
傷の再生。ジュエルシードを五つ持つがゆえの強力な能力か。
まあさすがに神話そのものとはいかないか。中身は生きているクジラだ。
「な、なに。血が出てるよ」
魔法の飛び交う轟音に混じって、上からなのはさんの声が聞こえた。
非殺傷設定なんて使っていないから当然の結果なのだが。
「こちらのほうが威力が高いでしょう。慈愛に満ちるのは良いですが、相手の強大さを見てください」
原生生物に情けをかけるほど私は博愛主義でもないし余裕もない。
魔力炉のうなりに任せて、機銃をひたすらに撃ち続ける。
武装隊からも砲撃魔法が続けて撃たれた。
G.T.には他の暴走体と同様に魔法障壁が存在しない。
巨体に吸い込まれた魔法は全て装甲を削って血肉と金属片を撒き散らしていく。
時折空中でぶつかりあった互いの魔力弾が空中で爆発する。
巨体ゆえに撃てば当たる。
だが、当たろうが大した効果は無いのか体は揺らぎもしない。
『頭部の砲台から破壊して。まずは戦力を削ぎましょう』
ハラオウン提督からの指示が走る。
ダライアスの戦い方では防護の強固な巨大艦相手には砲台破壊が定石だが、提督の選択した作戦も同じものだった。
頭部から背にかけて並ぶ巨砲の列に機銃の狙いを切り替える。
なのはさんも気をひきしめたようにG.T.を強く睨み、魔力弾を連続で放った。
砲台が少しずつ削られていく。
再生をする様子は無い。砲台は肉体ではないということだろう。
G.T.の魔力弾が止まる。
魔力弾では効果が無いと見たのか、背の巨大砲門と左右の側面の砲門が駆動する。
轟音。
側面砲台から小さなミサイルが多数撃ち出された。
口から撃たれた魚雷とは違う。
この動きは……こちらの動きを追ってきている。
誘導弾だ。
列をなして的確にこちらを狙ってくる。
機体を軋ませ大きく回避する。
が、ミサイルはさらに追いすがってくる。
この数の攻撃、全て防ぎきれる自信は無い。
逃げる。
高速で空を飛ぶ。両肩のシールドが空を切り裂き飛行機雲を生む。
それでもまだミサイルは追ってくる。無駄か。
急旋回。
ミサイルの群れをぎりぎりまでひきつけてからで回避し、交差した瞬間に魔力弾を撃ち一つずつ撃ち落していく。
確実な方法だが、足が止まってしまった。
そこを狙われてしまった。
G.T.から光が飛来し、魔法障壁に突き刺さった。
狙撃だ。
G.T.の背の砲門の一つがこちらを狙っているのが見える。
紙一重で直撃は避けられたが、障壁の消耗が大きい。
武装隊も次々と背の砲門から光を狙い撃たれていた。
G.T.の巨体からすると細いレーザーに見えるが、味わってみるとかつて相手にした黒瞥の砲撃を相手にするようだ。
容赦の無い砲撃に、武装隊の陣形が散り散りとなっていく。
なのはさんたちはユーノくんがなんとか防いでいるようだが、消耗は大きい。
防戦は不利だ。砲台をいち早く潰したい。
だが、G.T.は攻撃の効果を確認したのか、さらに砲門を開く。
額に縦に並んだ砲身に光が渦を巻いて集まっていく。
光の渦は収まることなく、魔力の塊が螺旋を持って放出された。
速い。
空を削って飛ぶその螺旋の魔力は、さながらロケット付きの削岩機だ。
これは、この魔法は危険だ。
フィールドに触れさせることも無く、ひたすらに距離を取ることで回避した。
避けずに防ごうとしたユーノくんたちは、障壁魔法を削られて弾けだされた。
魔法の制御を乱され落ちそうになる二人に急いで近寄り、魔法障壁で受け止める。
「大丈夫ですか?」
「わ、私は大丈夫だけどユーノくんが」
螺旋弾を正面から受け止めたユーノくんの腕がところどころ裂けて服に血を滲ませていた。
「……まだ大丈夫だよ」
ユーノくんは痛みをこらえ回復魔法をかけている。
バリアジャケットを使わないユーノくんだが、その代わりにバリアジャケット以上の能力を持つ魔法障壁を常時展開しているはずだ。
あの螺旋弾はそれすらも突破していた。
『そのドリルには気をつけて! 込められている魔力は三十万程度だけど、回転の力で何倍も威力が上がってる!』
アースラからの分析が届く。
この螺旋弾の恐るべきは、出力そのものではない。
魔力を完全に物質化させた螺旋を描く刃と、その回転力。
魔力の大きさに頼った高位魔導師にはない純粋な物理的破壊力。
魔力の強さが攻撃の強さではない。この管理外世界に存在する魔力のない兵器でも、費用を無視してつぎ込めば魔導師の防御を十分に突破できるのだ。
相手を殺すことを突き詰めた魔導師にはこういった魔法の使い方が多い。
なおも螺旋弾がうねりを上げて戦場を飛び交う。
皆、防壁魔法を解いて回避に必死だ。
この攻撃は武装局員のみならず、私やなのはさんでも障壁で防ぐのは難しいだろう。
だが――。
「あの螺旋弾は物質化された魔力の塊です! 中和魔法を込めた魔法射撃で撃ち落せます!」
言いながら武装局員へ向かっていった螺旋弾に向けて機銃を連射する。
螺旋弾は魔力弾の直撃で霧散し、魔力残滓へと分解された。
回避に余裕があったためバイザーで解析をかけで出た結果だ。
背の砲台からは未だに光線が放たれているが、それを掻い潜って螺旋弾を狙い撃つ。
なのはさんはユーノくんに向けていた意識をG.T.へと向けなおした。
この場の最大火力はなのはさんだ。流れを変えるために彼女の力を借りよう。
「なのはさん、私があの螺旋弾を破壊して魔力残滓を充満させます。スターライトブレイカーで砲台を狙ってください」
「うん、解った!」
力強い声が返ってくる。
血を見て臆していないようで安心した。
私を狙いを全て次々と撃ちだされる螺旋弾に集中させる。
ときおり狙撃される光線は、軌道を予測して銀鶏の属性吸収フィールドに触れさせ魔力の糧とする。
溜まった魔力を解放し、発射直後の螺旋弾すら破壊して一つも後方へ逃さない。
『Starlight Breaker』
レイジングハートからアナウンス音声が流れる。
準備は整った。巻き込まれないようになのはさんから離れる。
「いっけえー!」
強大な桃色の魔力の光がG.T.の背に突き刺さった。
迎え撃つ光線や螺旋弾すらも分解し力に換え、装甲を貫いていく。
砲身が歪み砲台が爆ぜ装甲が裂ける。
非殺傷を解除された一撃は、戦艦の主砲とも言うべき圧倒的な破壊力を持っていた。
『砲台二基破壊しました!』
背から鉄の残骸が剥がれ落ち、海に落ちて大きな飛沫をあげた。
背の一角が抉り取られたように更地と化していた。
機銃を撃ちこんでも破壊されなかったものが、たったの一撃でこれだ。
傷の修復は出来ても、あの大きさの砲台の再生は難しいだろう。
と考えた矢先、砲台の剥がれ落ちた頭部に光で出来た線が浮かびあがった。
それは、砲台を模した
光が数度瞬くと、時を戻したかのように落ちたはずの砲台が二基いきなり現れた。
再生、した?
「アースラ、今のは?」
『……ええと、傷の再生とは違うみたい。ジュエルシードから強い魔力反応があったから、願いを叶える力に関連しているのかも』
一瞬の間をおいてアースラからの通信が返ってくる。
G.T.の持つ能力ではなく、
願いで動く暴走体を相手にするのと、魔力の塊であるジュエルシードそのものを相手にするのでは、後者のほうが始末が悪い。
そもそも願いで砲台が再生するなど、このクジラは大艦巨砲主義か何かか。
『仕方ないわ。本体を狙っていきましょう。アースラも亜空間離脱が完了したら副砲で援護射撃にまわれるからそれまで耐えて』
アースラが動く、か。事態が大きくなってきた。
プレシア・テスタロッサの介入の懸念さえなければ残りの魔導師の全戦力投入が出来たものだが……。
再生を終えたG.T.が身体を大きく動かした。
ここにきて初めてG.T.が移動の動きを見せる。再生した背の砲門からは再び光線が撃ち出される。
シップのハンドルから手を離し、大魔法の直後で身動きが取れないなのはさんと、消耗の大きいユーノくんを両腕で抱えて急いで逃げる。
避けた光線が突如直角に軌道を変えるが、ユーノくんが障壁魔法でそれを逸らせた。
前進、前進。
砲身がこちらを捉える前に高速で移動を続ける。
私に抱えられたままなのはさんが砲撃魔法を放つ。高速で移動する砲撃の光は、さながら剣で巨体を切り裂いているように見えた。
だが、この砲撃も果たしてどれほどの効果があるのか。
G.T.はあまりにも大きい。
死角に回り込むなどという概念も無い。
確かにシップの機動力を持ってしたならば瞬く間に背後にまわれるだろう。
だが、この巨体と全身に備え付けられた兵装の前ではその瞬く間が何の意味も持たない。
砲門はすぐにこちらを向き、狙いもまともに定めないまま分裂する広範囲射撃を行ってくる。
側面の砲台から矢のような魔力弾を雨のように放ってくる。
加圧処理で遅くなった視界の中で凶弾の嵐を掻い潜る。
ときおり逃げ場が無くなり魔法障壁へ直撃するが、抱える二人には怪我は無い。
腕の中ではなのはさんが砲撃を続ける。疲労は大きいだろうが、手を休めることは無い。
私も機銃で装甲を削っていく。
傷の再生以上の攻撃を与えられているのが解る。
このままジュエルシードを抉り出して力を削げれば良いのだが。
旋回をするG.T.の後ろに位置を取る。ジュエルシードの反応の一つは尾からだ。
だが、その尾にも巨大な砲塔が据え付けられていた。
いや、尾そのものが二門の砲身なのだ。
砲身に光が溜まる。
分析、誘導性魔法。狙いは、恐らく私だ。
「攻撃、来ます。離しますよ」
二人を抱えての回避は困難だ。
先ほどから、G.T.の攻撃は私を狙ったものが多い。
一番初めに発見した獲物として優先的に狙われているのだろう。
尾から虹色の魔力弾が発射される。
動きは先ほどのミサイルとは違い、くねったような軌道。
動きの予測が難しい。
避ける、避ける。
尾からはさらに誘導弾が幾度と無く放たれた。
避ける、避ける。
そして直撃した。
『アースラ、海上へ転送します。副砲を使うので射線上からは逃れてください』
ようやくアースラが援護に現れた。
ここまでこちらの被害は甚大だ。
回避を得意とする私でも数度の直撃。武装局員やなのはさんはすでにぼろぼろだ。
執務官はさすがというべきか直撃をぎりぎりでそらしているようだが、目に見て取れる疲労が大きい。
だがここにきてアースラという強大な戦力が味方に加わった。
アースラから魔力の砲撃が次々と放たれる。
副砲といえど、一撃一撃がAクラスに匹敵するような代物だ。
主砲は次元系の魔法弾であるため、次元干渉を起こすジュエルシードに対して使えないが、副砲だけでも威力は十分だ。
装甲を突き破り肉片を飛び散らせていく。
G.T.が身をくねらせて泳ぐように動き出した。
鋼につつまれ叫びも上げないその姿では果たして消耗しているのか本気を出しているのか解らないが、局面が大きく変わったのは確かだ。
身体を横倒しにするようにG.T.がその向きを変えた。
盾のように突き出した側面の砲台が、回転して前方を向く。
『ジュエルシードから強い魔力反応!』
側面の砲台が、突如歪む。
いや、これは空間が歪んでいるのか。
『次元干渉魔法です! 周囲の空間を吸収しています!』
空間の歪みはG.T.からはなれ、渦巻きながらそのまま前へと進んでいく。
向かう先はアースラだ。
周りの空気が吸い込まれ機体が干渉の渦へと吸い寄せられそうになる。
慣性制御を打ち破るほどの強烈な吸引だ。魔法障壁に急いで次元魔法の中和を付与する。
アースラは防御のために
副砲の援護射撃が止む。
アースラを御したと思ったか、G.T.が向きを変えて武装隊へと頭を向ける。
その方向には、なのはさんとユーノくんの姿も見えた。
G.T.の前方に魔力の光が集まる。
魔力は巨大な魔法陣となり、さらなる魔力を周囲から取り込んでいく。
魔力光の色は、桃色。この光景は……。
「全員逃げて! スターライトブレイカーです!」
私の叫びと共に魔法陣から光が開放された。
なのはさんのそれより倍ほどもある圧倒的な光の洪水。
周囲の魔力だけではなく体内のジュエルシードから魔力を取り込んだ一撃は、武装隊を一瞬でなぎ払った。
「なのはさん!」
光に巻き込まれ吹き飛ぶなのはさんがカメラアイに映る。
シップを急駆動させてその方向へと突き進む。
G.T.の一撃はまだおさまっていなかったが、それを掻い潜って進む。
海へと向けて落ちていくなのはさん。
急げ、急げ。
海面へと叩きつけられそうになる直前に捕縛。胸部装甲を腰元へ移動させ、両腕で抱きしめる。
「二度目です。大丈夫ですか?」
腕を緩めて顔を覗き込む。その表情はわずかに青ざめている。
「あは、痛くは無いけど、ちょっと力が抜けちゃった、かな」
魔力を使い果たしたのか。
砲撃魔法も連発していたし、G.T.の攻撃を無傷で切り抜けるほど防御を展開していた。
治療が必要なほど限界を超えての魔力行使はしていないようだが、これ以上の魔法使用には足りないだろう
彼女の防御を行っていたユーノくんの姿は見えないが、どうなったのか。
なのはさんへ確認すると、バリアジャケットの襟元を広げて見せてきた。
首長ネズミに変身したユーノくんがぐったりと服の中に収まっていた。
なのはさんはエネルギー力切れ。補佐を行うユーノくんはリタイア。
アースラに収容したいところだが、次元弾でそれどころではないだろう。
武装隊も、G.T.のスターライトブレイカーで戦闘不能に陥った局員を無事だった局員が回収している。彼女を任せる余裕はなさそうだ。
私はまだ戦えるが、なのはさんを背負いながらの余裕は無く、さらに機銃では火力不足が否めない。
この状況を解決する方法は一つだけある。
だが、それはまだ試作段階のものであり、また、なのはさんの協力が必要だ。
「なのはさん、まだ戦う意志はありますか?」
だから問う。共に戦ってくれるかと。
「うん、力が入らないけど、まだ、私は力を出し切ってないから」
即答だ。
「じゃあ、一緒に戦いましょう。全力全開で」
腰へと下げていた胸部装甲を変形させる。
私たち二人を被うようにと。
私専用の兵装であった機動小型戦闘機が、副座式へと変わる。
二人で一緒に飛ぶための機能進化。
だが、これだけでは私がなのはさんを乗せて飛ぶだけだ。
G.T.を打ち倒すにはさらなる力が要る。
魔力炉を回す。クリーンフォースから生まれた魔力は、体内を巡りシップへ、そしてなのはさんの持つレイジングハートへと流れる。
「私が魔力を作ります。なのはさんは、デバイスの魔法の起動に専念してください」
ディバイドエナジーというミッドチルダ式の魔法がある。
自分の魔力を他者へ分け与える治療魔法だが、私が行っているのはデバイスを通して相手に魔力を与える補助機能の実行だ。
デバイスに流れた魔力は、相手に還元されずともそのまま魔法の発動に使用できる。
私の一度に生成できる魔力量はなのはさんには及ばないが、それでもシップを駆ってなお有り余り、無限に生成することが出来る。
そしてなのはさんならば、シップの持つ攻撃機能以上の魔法を使うことが出来るだろう。
「うん、二人で一緒に全力全開、だね」
前に乗るなのはさんの顔は見えないが、きっと先ほどよりも力強くなっているだろう。
彼女は私を信じてくれた。ならば、私はそれに応じよう。
加速を開始する。
空では未だ執務官が戦い続けている。
機体を前へ、魚雷と魔力弾の飛び交う戦場へと飛び込む。
G.T.がこちらの復帰に気付いたのか、背の巨大砲門を全てこちらへ向けてくる。
一斉に光線が撃ちだされるが、速度をもってそれに対抗する。
機銃は停止状態へ。属性吸収フィールドも止め、余った魔力を全てレイジングハートへ注ぎ込む。
「リリカル! マジカル!」
なのはさんの詠唱が響き渡り、レイジングハートから魔法陣が展開する。
その魔力光はいつもの桃色ではなく、銀鶏の持つ闇色。
「ディバイン・バスタァーッ!」
轟音と共に、黒い刃がでかぶつへ向けて突き進む。
高速の世界を飛ぶ戦闘機が振るう魔法の剣。今度は、途切れることの無い剣だ。
装甲に突き刺さり、肉を切り裂いていく。
弾雨を突っ切り、弾を吐き出し続ける側面の砲台へ砲撃を向ける。
金属片を撒き散らしながら、砲台が根元から断ち切られた。
同じようにして反対側へと回り込み砲台を狙い撃つ。
砲台の破壊により攻撃の激しさが治まった。
G.T.は砲台を再生しようとするが、次の瞬間には別の砲台を破壊する。
根元を狙うようにして、砲台と本体への攻撃を同時に行う。
さらに、側面砲の破壊により次元弾から解放されたアースラからの援護射撃が再開される。
G.T.は次々とその身の欠片を海へと落としていく。
残った砲身を全てこちらを狙おうと向けてくるが、そこにハラオウン執務官の捕縛魔法が飛んだ。
砲身の動きが止まる。
攻撃の手を止められたG.T.が、再度スターライトブレイカーを使おうと魔法陣を展開する。
が、撃たせるはずが無い。
魔法陣の中心、魔法砲台をディバインバスターで撃ち抜く。
魔法陣が霧散し、集まった魔力が大爆発を起こす。
G.T.のその偉大な巨大が、ゆっくりと高度を下げていく。
とどめとばかりにその沈む巨体の下を掻い潜り、魔砲の刃で縦に切り裂いた。
装甲の至る所で爆発がおき、身体の隙間から白い魔力の光が漏れた。
魔力弾が完全に止む。
強い閃光と共に、G.T.を被っていた装甲が全て弾けとんだ。
無数の瓦礫と共に、装甲のはがれた一匹のクジラが海へと落ちていく。
空に残ったのは、五つのジュエルシード。
なのはさんの砲撃により、半ばまで封印が行われている。
「勝ち、ですかね」
「うん、やった、ね」
前のなのはさんがこちらに振り向く。
互いに、息を切らせていた。疲労というよりは緊張によるものだろう。
「封印、してしまいましょう。それでこの場は全て完了です」
「うん、そうだね」
再度レイジングハートへ魔力を送る。
なのはさんが魔法陣を展開させて封印魔法の準備へと入る。
この胸の奥から気力を吸われるような感覚は少し快感かもしれない。
ジュエルシードを眺める。
五つは寄り集まって、青い光を放って瞬いている。
G.T.から剥離したのは、巨体を維持できなくなったためと、封印が進んだためだろう。
『カガリちゃん、急いで離れて! ジュエルシード周辺に巨大な転送反応! 巻き込まれるよ!』
んな。
ほとんどレイジングハートへ向けていた魔力を断ち切って、全力で背面の
急な視界の移動になのはさんが叫び声を上げるが、無視。
軋みをあげる空間から全速力で離脱する。
雷鳴が轟く。
背後に巨大な物体が転送されていく。
乱れた気流が強風を生む。
その風に乗るようにして、さらに距離を取る。
旋回して背後へと振り向く。
「岩の……お城?」
偉大なる者の飛んでいたその空間に、巨大な建造物が鎮座していた。
――――――
あとがき:視点変更や場面転換が無いので冗長。書いてから気付きましたが、二人できっちり半分こするはずのフェイトの役割をカガリが横から奪ってますね。
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