― 董卓Side ―
どうしてこんな事になっちゃったのかな・・・・・・・。
蝋燭の火だけが薄っすらとその周囲を照らす薄暗い部屋。
私は、今どこに居るのかもわかりません。
わかる事は、ここが洛陽のどこかと言う事だけ。
「詠ちゃん・・・・・・・・」
皆は今どうしてるのかな?
詠ちゃんの事だから・・・・今、私を必死に探してくれていると思う。
でも、駄目だよ詠ちゃん。
私なんかの為に、あの人達の言う事なんて聞いちゃ駄目だよ。
あんな人達の好きにさせたら洛陽の人達がまた苦しんじゃうから・・・・・。
私がここに閉じ込められてから、いったい何日たったのかはわかりません。
劉弁様が呼んでいると伝えられて、私は劉弁様のお部屋へと足を運びました。
劉弁様のお部屋に足を踏み入れた瞬間、私は首筋に強い衝撃を受けた所までしか記憶が途切れました。
目を覚ましてみればこの部屋で寝かされていたわけです。
意識が途切れる寸前に見た光景は鮮明に覚えてます。
張譲に羽交い絞めにされて口を塞がれていた劉弁様の姿。
目を覚まして自分の置かれた状況に絶望しました。
詠ちゃんから、あれだけ気をつけるようにって言われてたのに・・・・・。
そんな時、扉がある方向から鍵を開ける音が聞こえました。
「喜べ、董仲穎」
入って来たのは十常侍の最高位である張譲。
その顔にはおぞましい程の笑みが貼り付けられていました。
「・・・・・・何を喜べというのですか?」
「お前の部下、賈文和が『天の御使い』を洛陽に連れて来たのだ・・・・・・もちろん、皇帝の命令でな」
言葉になりませんでした・・・・・・。
私の所為で・・・・・・。
詠ちゃん・・・・・・・・・。
自分の不甲斐なさを呪いました。
私が捕まった所為で詠ちゃんはこの男達の言いなりになっているんだと思うと・・・・・・。
私は泣く事しかできませんでした。
「・・・・・ごめんね、詠ちゃん・・・・・・・ごめんね」
「ヒッヒッヒ・・・良い部下を持ったものだな董仲穎。お前のお陰で『天の御使い』を亡き者にできる!!
田舎者が力を持とうとした結果、このざまだ・・・・私を恨む前に自分自身を恨むのだな」
そう言った後、嫌悪感のする笑い声を上げながら部屋から出て行った張譲。
私は言い返すこともできずに唯々泣いていました。
自分自身を恨め・・・・・・・その通りかも知れません。
「私が洛陽の人達を助けようなんて言わなければ良かったのかな・・・・・・。
詠ちゃんだけじゃない、色んな人達に迷惑をかけて・・・・・・そして民達の希望である『天の御使い』様にまで・・・・・」
そうだよね。
私がここに居る限り詠ちゃん達に色んな人達に迷惑かけているんだよね・・・・・・。
私がここに居なければ・・・・・。
私が居なければ・・・・・・。
薄暗い部屋を見回します。
机の上にあった燭台を手にとって、使える物がないか色んな場所を探してみます。
そうですよね・・・・・・あるはず無いですよね。
それなら・・・・・・やれることは一つだけ。
「スゥー・・・・・・・・・ハァー・・・・・・・・・・・」
震える身体を落ち着かせる為に深呼吸。
何度も何度も。
それでも止まらない震え。
私は弱い人間だな・・・・・・・と心底思います。
だけど、私がここに居る限り詠ちゃん達は・・・・・・・。
頭の中に浮かんでくる詠ちゃんの顔、恋さん、霞さん、音々ちゃん、華雄さん・・・・・そして顔も知らない『天の御使い』様。
心の中で・・・・ご迷惑おかけしました、ごめんなさい・・・・・そう呟いて、意を決し大きく口を開け舌を出します。
(詠ちゃん、ごめんね・・・・・・)
『ッパン!!!!!!』
勢い良く舌を噛み切るために顎を動かしたはずの私は、なぜか床に倒れていました。
頬に受けた強い衝撃。
強烈な熱を持った頬に手を当て、私は呆然としていました。
「良い身分だな董仲穎・・・・・・」
突然聞こえてきた男の人の声。
私は訳もわからず、その場から動く事ができませんでした。
「死ぬ事は許さん・・・・・死ぬ気概があるのなら這ってでも生き延びろ」
その言葉に身体が震えました。
薄っすらと蝋燭の明かりが照らす室内。
声が聞こえる方へと視線を移します。
蝋燭の火に照らされ、薄っすらと見える人影。
闇の中でもハッキリとわかる人影の服。
純白の、蝋燭の微かな炎でも薄っすらと輝いて見えるその服。
私の頭の中に思い浮かんだのは、噂でしか聞いた事のない人。
「・・・・・・助けに来たぞ、董仲穎」
一歩進み出てそう言った男の人。
私は、蝋燭の火に照らされた男の人の顔をじっと見つめ続けていました・・・・。
― 孫策Side ―
「なっとくいかなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」
「うるさいぞ雪蓮」
「姉様、少し静かにしてください」
「穏もなっとくいきませ~~ん!」
「穏・・・・・・」
「あ、あはは・・・じょ、冗談ですよぉ~・・・・・」
納得いかないわよ!
一刀が洛陽に行くのに、なんで私が付いて行けない訳?
私は一刀の主なんだから一緒に行くのは当然の事じゃない?
「雪蓮・・・・・・心の中でなんと思おうが、お前は我等孫家の主なのだ。
危険とわかっている場所にむざむざ行かせる訳にはいかない」
「姉様、私も納得はしていません。ですが冥琳の言う通り・・・・・。
ん?・・・・・・・冥琳、その理屈であれば私が行っても問題なかったんじゃ?」
「失礼ながら、蓮華様の場合は実力が問題です」
「・・・・・・・・・・・・そ、そう・・・・・ね」
冥琳の一言に、本気で落ち込んだ蓮華の姿が地味に面白い・・・・・。
っと、今はそれどころじゃないわね。
まぁ、冥琳の言う事がわからない訳じゃないけどさ・・・・・・。
なんて言うか、つい数日前にあんなこと言ったわけだし?
今さら隠してても仕方ないんだからって思ったわけよ。
なのに冥琳ったら洛陽に行く北郷隊五百名と亞莎に加え、一刀の護衛に玲を指名しちゃうし・・・・・・。
「って言うかさ、冥琳」
「なんだ雪蓮」
「玲が行くなら私が付いていっても問題なかったんじゃない?」
「大ありだ、馬鹿者」
「っひど!!」
「近いうちに戦が起こるのに、お前が居なくてどうするのだ雪蓮」
「蓮華が居るじゃない」
「姉様!?」
「雪蓮さまったら~・・・・・相変わらず冗談がお好きですねぇ~」
ちょっと・・・・・・穏、目が笑ってない!
普段ニコニコしている穏の目が笑っていないだけでこんなに怖いなんて・・・・・・。
そんな穏に若干引きながら冥琳に戦の事を問いかける。
「既に各地に檄文が届けられていると情報が入ってきている。
近いうちに、ここ揚州にもそれは届けられるだろう」
「時間はどのくらいあるの?」
「既に檄文が届いた諸侯の大半は準備に入っているらしい。恐らく遅くても二週間後には洛陽近郊に各地の諸侯が集うはずだ」
「たった二週間!?」
蓮華が驚きの声を上げる。
私も同じように感じた。
一刀が洛陽に付くまでに限界まで急いでも四日。
洛陽に付いてから董卓を救出する為にいったい何日かかるのかわからない。
腐っても皇帝の宮殿・・・・・そう簡単には行かないはず。
それを考えると確実に間に合いそうにない・・・・・。
「心配するな雪蓮。私が何も考えていないと思うか?それに・・・・・あの男が何も考えていないと思うか?」
「そりゃ、冥琳も一刀も何か考えてるでしょうけど・・・・・・」
「心配無用・・・・一刀は必ず董仲穎を救出する。それならば、私達は私達のの仕事をするだけだ」
「けどさ、一刀が間に合わなかったらどうするのよ?」
どう考えても間に合うはずがない。
冥琳は間に合うと思ってるのかしら?
「間に合わなければ・・・・・か。ふむ・・・・・・・その時は孫家は全力を持って洛陽を攻め落とす事になるだろうな」
「っな!?」
「冥琳!!!!」
声を荒げた私を、何時も通り見つめる冥琳。
その目は嘘は言っていない。
子供の頃からずっと一緒に生きてきた冥琳。
冥琳は孫家の事を一番に考えて行動する。
だからこその発言なんだってわかる。
だけど、何か違和感を感じる。
「・・・・・・・冥琳」
「なんだ?」
「何か隠してるでしょ?」
「どうしてそう思う?」
「勘よ」
「勘か・・・・・・・だが、私は何も隠していないぞ、私はな」
そう言って冥琳は意味深な笑みを浮かべる。
隠してるって言ってるようなもんじゃない。
あれ?・・・・・・・今の話からすると冥琳は一刀から何か聞いてるって事じゃないの?
「ねぇ・・・・・・冥琳」
「なんだ?」
「一刀と冥琳って仲いいのね」
「まぁ、否定はしない」
「へぇ~・・・・・・・・へぇ~~・・・・・・・・・・・・・」
「ね、姉様・・・・・・?」
「蓮華さま~・・・・・・触らぬ神に祟りなしですよぉ~」
「そ、そうね・・・・・・・」
あー!!なんかもやもやする!!!
冥琳を一刀にとられた気がするし・・・・・・冥琳に一刀をとられた気もする。
やっぱり私が洛陽に付いていけばよかった。
そうすればこんな変な気分にならなくてすんだのに。
むぅー・・・・・・。
よし!
一刀が帰ってきたら色々問い詰めてあげるわ!
覚悟しなさい一刀!!
「ッへ・・・ッグシ!」
「風邪ですか?一刀様」
「いや、そんな事はないと思うけど・・・・・」
― 張勲Side ―
あ~ん、美羽様と初めての旅は最高ですねぇ♪
「七乃!七乃!洛陽で何をするのじゃ?」
「それはですねぇ~、洛陽で新たなお客様をゲットする為なんです♪」
「げ、げっととはなんじゃ?」
「え?あ~、一刀さんに教えていただいた『天』の言葉でして、『獲得する』とか『手に入れる』と言う意味らしいですよ~」
「ほほ~・・・・『天』は相変わらず変わった国じゃのぉ~」
お空を見上げながらそう呟く美羽様の可愛さって言ったらもう!!
そんなこんなで、私達は洛陽に来ました♪
一刀さん達に引っ付いてですけどね♪
「ところで七乃、一刀はどこに行ったのかの?」
「一刀さん達はお仕事があるらしいですよ~。だからその間、私達は洛陽見学してて下さいとの事です♪」
「なんじゃ、一刀は仕事なのか・・・・・・まぁ、邪魔はしたくないしのぉ。
うむ・・・七乃!一刀が戻るまで洛陽の蜂蜜屋めぐりじゃ!!」
むぅ~・・・・・・最近の美羽様は良い子になってきて少しつまらないですねぇ・・・・・。
蜂蜜好きは相変わらずなんですけどねぇ。
「美羽様・・・・・・」
「どうしたのじゃ?七乃」
「大変申し上げにくいんですけど~」
「なんじゃ?申してみ」
「洛陽に蜂蜜屋さんはないかと♪」
「な!なんじゃとぉ~~~~~~~!!!」
あぁん♪
そう聞いて本気で落ち込む美羽様・・・・・・・最高です!
「と、言うか・・・・この大陸探しても美羽様の『蜂蜜乃苑』以外に蜂蜜だけ売っているお店なんてありませんよぉ~」
「そ、そうじゃの・・・・・言われてみればどこの店も蜂蜜以外も売っておったような・・・・・」
はぁ~・・・・考え込む美羽様も堪らないですねぇ~。
っと、美羽様を愛でるのはこれ位にしておきましょうかねぇ。
一刀さんを狙うとすればこの辺りでしょうし・・・・・。
周囲は洛陽で働いている官僚達が多く住む地区。
もちろん一刀さん達に与えられた宿もここにあります。
美羽様を地味に誘導しながら周囲を確認したところ、それはもうばっちり把握できました♪
さて、一刀さんに頼まれた宿周辺の地形の把握も済んだことですし・・・・・・・。
「美羽様~♪今度はあっちに行ってみませんか~?」
「うむ!・・・・ところで七乃?」
「は~い」
「あっちには何があるのじゃ?」
「それはですね~・・・・・・・・」
お仕事を終えた私は、そのまま美羽様を弄り倒すべく洛陽の街を散策するのでした♪
後書きっぽいもの
うん。最初シリアスだったのになぜか後半シリアス臭が無くなった・・・・・獅子丸です。
あれです。
書いてて思ったんですが、獅子丸は過程を省く傾向にあるようです(ぁ
一刀達いつ洛陽に行ったんだ?
とか思われそうですがスルーしてくださいw
なんと言うか、道中をだらだら書いて話数稼ぐのは微妙で・・・・・・。
と言っても既にだらだら書いている所為で未だに反董卓連合すら終わってないわけですがw
とまぁ、言い訳はこの辺でb
さて、皆のアイドル月ちゃんの話。
ちょっと考えが突拍子過ぎるかもしれないかな?何て思いつつもこの展開。
まぁ、月ちゃんはいい子なので。
そして突然登場我らが種馬。
どこから来たの?・・・・・・・と聞かれても今は知りません!!としか答えません(ぁ
月ちゃんにビンタして・・・・・種馬殺す!!とか言われても話の流れだからしょうがない!!としか答えません(ぇ
張譲はなんて言うかもうヤラレ役臭たっぷりの人です。それ以外言う事ありませんb
さてはて、今後種馬ンがどう動くのか・・・・・・月ちゃんがどうなるのか・・・・・・・・。
さてお次。
雪蓮ヤキモチを焼くの回。
だだっこ→やぶへび→やきもち。
以上です(ぇ
冥琳が何気に意味深なこと言ってたりしますが、だだっこ→やぶへび→やきもち・・・・・・これが全ての話。
さて突然登場。
美羽と七乃さん再登場。
何しに来たの?と聞かれれば、何かしに来た・・・・・としか答えれませ(ぁ
まぁ、美羽はともかく七乃さんは少しがんばってくれているようです。
何かあってもきっと七乃さんが悪知恵で何とかしてくれると思います(ぇ
とりあえず今回はこのぐらいかな?
と言うわけで、
次回も
生温い目でお読みいただけると幸いです。
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第三十八話。
最近思ったんです。
一刀くん武力高い設定なのに生かされてないと・・・・・。
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