第12話 混迷
虎牢関の袁紹軍が退却するすこし前に氾水関の袁紹軍を撃退した詠たちは戦後処理を翠にまかせ、いそぎ虎牢関へ向かう。虎牢関に付いたときには袁紹軍はすでに撤退した後で、虎牢関は見知った北郷隊の隊員の多くが息を引き取った後か怪我に呻いているような地獄絵図だった。
そしてその北郷隊の隊長である一刀も服を血で赤く染め特に右腕はもう真っ赤の状態で風に抱きつき、そして風も血で汚れるのもかかわらず一刀の背中に手を回し一刀を支えている。
「風!一刀は!」
「お兄さんはついさっき気を失ったのですよ・・・でもお兄さんも重症です、いそいで華陀さんのところに連れて行かないと拙いのです」
「華雄いける?」
「まかされた!」
華雄はそういうと一刀をやさしく抱きかかえ虎牢関へ走る。
虎牢関では風や協同様、北郷隊の危機と聞いた華陀も移動していた。
「一刀の様子は?!」
華雄に抱きかかえられている一刀を見た華陀だったが、
「右腕の矢傷が熱を持ち始めているな。それにかなりの血も流してしまってる!いそいで虎牢関の救護室に運んでくれ!すぐに手術を行う!」
「わかった!」
華雄と華陀が一刀を休憩室に運んでいくを見つめることしかできない風と詠に協が近衛部隊を撤退させた後2人に近づいた。
「風、詠。一刀の様子はどうなっておる?」
「これは陛下!」
詠が足をおり頭を下げようとするのを協はとめる。
「いまは緊急事態だ、礼などは考えなくていい。それよりも一刀は?」
「うーん・・・病み上がりで体力が低下しているところに全力戦闘。それに矢傷や刺傷や、切り傷による出血で重症なのですよ。いまは華陀さんが治療してるとこなのです」
「すまんの。詠、風。私がもっと早く禁軍を動かしておれば一刀は傷つかずに済んだかもしれんのに・・・」
そういうと協は2人に頭を下げる。
「協様!皇帝であるあなたが臣下である我々に頭を下げるなど!」
「詠いま私は献帝としてここにいるのではない、『友人』としての『協』としているのだ。これぐらいの謝罪はさせてくれ」
「陛下はなにもわるくないのです。原因は風、お兄さん、詠ちゃんの予測の甘さと、まだ本調子じゃないお兄さんを風たちが戦場に出したことなのです。だから・・・」
風は最後のほうから涙を流しながら話していた・・・
―――風は悔しいのだろう、病み上がりの一刀に頼るしかなくそして敵の策略にはまりその一刀が傷ついたことが・・・そして同じように詠も・・・
協は風、詠の様子を見ながらこのように感じていた。
そんな中斥候に出ていた部隊が戻り詠たちに報告する。
「報告します!袁紹本隊の動きですが氾水関と虎牢関の間にある抜け道をぬけたあと氾水関を攻撃していた部隊と合流しました。そして袁紹軍は陣を取り払い、撤退を開始した模様です。」
その報告に詠と風は首をかしげる。
「撤退・・・?ここまで消耗させたのにもかかわらず?」
「なにかいやな予感がするのです・・・!まさか・・・!」
「どうしたの風?」
「詠ちゃん今すぐ許昌へ斥候を走らせてください!」
「え、なぜ許昌?いま許昌には連合の本隊が・・・・!まさか!」
「その『まさか』が起きたかもしれないのです・・・分かったわ、すぐに用意させる!」
「風、どういうことなのだ?」
2人の話に付いていけない協が風に尋ねると険しい顔をした風が答えた。
「もしかしたら許昌が陥落したかもしれないのですよ。陛下・・・」
「なんじゃと!」
許昌
「南門破られました!」
「続いて西門も!」
「東ももうダメです!」
次々と伝えられる絶望的な情報に秋蘭は顔をしかめる。
―――華琳さまの居城であるこの許昌を袁紹軍に破られただと・・・
「くっ!民衆の避難はどうなっている?!」
「董卓軍の呂布殿と張遼殿が護衛しつつ今北門あたりです!」
伝令兵が情報を伝える。
「われわれも民衆の護衛をしつつ許昌から撤退する!季衣、流琉は私に続け!」
「はい!」「了解!」
―――華琳様もうしわけありません・・・
秋蘭は心の中で華琳に謝りながら城壁を走る。
北門近くで民の護衛についている霞の耳に城門を突破される音が聞こえた。
「城門がやぶられたか!恋このままやとすこし時間がたらん!足止めできるか?!」
「・・・まかせて。霞ははやくみんなを・・・」
方天画戟を構えた恋が民衆の最後尾に付く。
許昌に入り込んだ袁紹軍は戦功を求めるように撤退を開始した連合の兵に襲い掛かる。そして・・・
「あれは『飛将軍』呂布か!各自あのものを討ち取って戦功とするのだ!」
30騎ほどの騎馬隊が恋に迫る。
しかし恋は動じることなく方天画戟を振り下ろす。その戟の一撃と衝撃波は一気に騎馬隊を吹き飛ばした。
「ここから・・・さきは・・・行かせない・・・」
恋の威力に恐れをなした袁紹軍は足を止める。その横から秋蘭が矢の雨を降り注ぐ。ほとんどがその矢によって倒れ、残ったのは季衣の岩打武反魔と流琉の伝磁葉々がなぎ払う。
「呂布!大丈夫か?!」
秋蘭が恋に近づき状況を確認する。恋は大丈夫と頷いて返事し霞のいる方向を刺す
「みんな・・・あっち・・・恋はここで守る・・・」
「わかった。ムリはするなよ、呂布。季衣、流琉、いくぞ!」
秋蘭たちが民衆のほうへ駆けていき、それを追っていた袁紹軍は恋によって次々と倒されて行く。霞からの撤退完了を知らせる銅鑼が鳴ったを聞いた恋が方天画戟で左右の家屋を崩壊させ、簡単な壁を作り霞たちと合流すべく走り出した。
許昌を逃れた恋たちは一路陳留に篭城し袁紹軍に対して防衛戦を引いた。
そして許昌陥落の報はあっというまに大陸に広まることになる。
寿春城外にある反袁紹・袁術連合本陣にも当然ながら許昌陥落の報が伝えられる。
「もう許昌が陥落したですって?!それは本当なの?」
華琳が珍しく狼狽する。その言葉に凛が答える。
「はい、事実のようです。袁紹軍は圧倒的な兵力を用いて官渡砦を攻略。その勢いのまま許昌へなだれ込んだようです。」
「董卓軍はどうなっていたの?」
「董卓軍からは呂布、張遼が5万を連れて許昌に向かっていたようですが、到着したときにはもうほぼ陥落寸前で、彼らはそのまま許昌の逃げ遅れた民の護衛に入り、秋蘭、季衣、流琉などの許昌守備に入っていたものたちは一度陳留に入り、現在防衛体制に入っているとのことです」
「そう、秋蘭たちは無事なのね・・・それだけでもよしとしましょう。桂花」
「はっ!」
「あなたは先に陳留に戻って陳留防衛の指揮をおねがい」
「わかりました。華琳様!陳留はしっかりまもってみせます!」
「麗羽をすこし侮りすぎたわ・・・これがこの曹孟徳最大の失策だわ・・・」
華琳は目を閉じてつぶやいた言葉を凛は聞こえ
「華琳様・・・」
というしかなかった。
「本来は董卓軍が合流してから寿春を落とすつもりだったけど、そんな悠長なことはしていられないわね。凛、劉備と孫策を呼んできて。袁術を滅ぼしにかかると・・・」
「わかりました」
華琳の召集に桃香と雪蓮が朱里と冥淋をつれて華琳のいる天幕へやってきた。
「孫策、例のお姫様は救出できたのかしら?」
華琳が雪蓮に孫尚香(小蓮)のことを尋ねると、雪蓮は笑顔を見せた。
「ええ、ばっちりうちの工作員が救出してきたわ。だからいつでもいいわよ」
「わかったわ。もう聞いてのとおりだと思うけど袁紹が動いたわ」
「ええ、聞いたわ、許昌が陥落したって」
華琳の言葉に雪蓮が答える。
「なので袁術ごときに時間をかけている時間は無くなった。下手に袁紹が袁術と合流したらめんどいことにもなりかねないわ」
その言葉にほかのメンバーはうなづきそのまま軍議は続いていった。
夜明けまえに寿春城へ忍び込もうとしている影が2つ。
その影は足音を忍ばせながら一路兵糧庫を目指す。
兵糧庫にところには2人見張りがいたが、その影たちはあっという間に息の根を止める。
タイマツの炎を木にうつし、そして兵糧庫に放り投げた。
それに加えて油をしみこませた布も複数枚投げ入れる。
その油の力によって火は瞬く間に燃え広がり始める。
「思春と明命がやってくれたようね。全軍いくわよ!」
その炎を確認した連合軍は寿春へ攻撃を開始した。
連合が考えた戦術は、呉の優秀な工作員である思春、明命を寿春に潜入させ、兵糧庫に火を放ち、城内の兵士の目をそちらに向かわせる。その間に3方向からの攻城戦を仕掛けるというもの。
まだ薄暗い早朝に火災が重なり城内は大混乱に陥っていた。
その気に乗じて討伐連合はいっきに城門を突破。
連合は寿春内の宮殿へなだれ込み、袁術を探すが・・・その姿はどこにもいなかった。袁術軍の兵士たちにも宮殿からでたところは見てないということで再度を宮殿内部を探していた際に、雪蓮が持ち前の勘で玉座の間にあった隠し通路を発見する。
華琳、桃香も呼んで連合で腕のたつメンバー、雪蓮・春蘭・愛紗が連合の代表としてその隠し通路の中に入っていった。隠し通路内は明かりはないものの足元は整地されており歩くのには支障はなかった。しばらく暗闇を歩いていくと光りが差し込んでいるところにでた。そこはいままでの1本道とは違いすこし広い部屋のようなところで、棚には食糧や武器が詰まれていた。
その部屋を見て回っていた春蘭がとあるものを見つける。
「これは・・・どこかで見たような・・・」
春蘭の言葉を聞いた雪蓮が春蘭に近づき持っているものをみて唖然とした。
それはいつも美羽が頭に載せていた冠だったからだ。
「まさか・・・・!」
雪蓮が突然走り出したことに驚いた愛紗と春蘭だったがすぐに追いかけ始める。
そして雪蓮が光の外へ出たときには遠くに七乃と美羽が馬に乗って逃げていくのを見つけてしまう。
「やられた・・・あの連中の逃げ足の速さを忘れてたわ・・・」
すこしして追いついた愛紗と春蘭は呆然としている雪蓮を見て顔を見合わせた。
こうして寿春攻略戦はあっけなく終了し、袁術軍は壊滅したものの、当主である袁術の行方はわからなくなったのだった。次に連合は袁紹を迎え撃つために一路陳留を目指すことになる。
あとがき
はい、どうも作者です。バイト+大学のせいで時間が無かったためあまり進行しておりません。
今回は虎牢関のその後と許昌、寿春での戦闘(?)パートになりましたが、あまり見所はすくないかもしれません。恋と霞や秋蘭たちが無事で次は陳留という形へもっていきました。
次に寿春ですが、ここまで引っ張ってあの結末かというツッコミはあると思います・・・ゴメンナサイゴメンナサイ。当初は野戦も考えていたのですがあまりにもキャラが袁術側いなさすぎ+ネタにできる要素がないと理由からもうあっさり終わらせようと作者が思ってあのような結末にナリマシタ。
次回は陳留決戦になります。
みなさまご期待の復讐鬼のあの方も登場予定です。
では次回お会いしましょう
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復讐の鬼と化した麗羽によって一刀は重症。そして恋、霞が向かった許昌の陥落。この戦乱の混迷は更に深みへとはまっていく・・・・
作者)
次回作13話は7月19日投稿予定