第6話 懐かしき出会いと黄巾党壊滅
冀州広宗城。現在黄巾党一派によって占拠されている城。各地の黄巾党の争いはほぼ鎮圧され、黄巾党は最後の本拠地まで追い詰められた。
そして朝廷は各地の諸侯に黄巾党討伐の勅命を出した。
勅命によって現在各方面の諸侯が広宗城から3里のところに陣をつくり集結していた。
その中に并州連合大将として恋ともにその討伐戦に参加している一刀の姿もあった。
一刀や恋はその中に懐かしい顔を見かけた。
「桃香に愛紗、それに朱里か・・・」
いまとは違う世界だったとはいえ、共に戦った仲間達。
「・・・・ご主人様・・・」
辛そうな顔をしてる一刀を気遣い恋は声をかける。
「大丈夫・・・・ありがと恋・・・」
心配してくれた恋の頭を撫でながら周りを見渡すと、3人ほどがこちらに向かってくるのが見えた。
「あなたたちが噂の『飛将軍』かしら?」
何度も戦場で合間見えた懐かしい顔。
「曹操かな?」
護衛で張り付いていた2人が刀に手をかけようとするのを止める。
「あら、どうしてそう思ったのかしら?」
「まぁ、飛将軍としての勘さ」
と肩を上げながら返事をする。
「ふふ、面白いわね。あなた。名は?」
「おれの名は北郷一刀。うんで、この張り付いてるのが呂布。さて曹操。こちらからも質問だ。なぜ俺たちが『飛将軍』と考えた?」
曹操と呼び捨てにしたことに怒る春蘭を抑えながら華琳が答えた。
「私だって武人よ?その者を見れば大体の強さが分かるわ。そしてこの陣には私の大切な夏候惇をはじめ、劉備のところの関羽、張飛などの多くの強者がいるわ。しかし、あなたたち2人は彼女たちに匹敵する力を持ち、でも彼女達とは何かが違う強さを感じた。これで十分ではなくて?」
「かの有名な曹孟徳にここまで賞賛されるとは光栄だな。」
華琳は笑っているがその右側に立っていた春蘭からは殺気が篭った視線を浴びる。
―――このような男と私をいっしょにするな!ってところかな?
このあとすこしばかり戦力に関する話を簡単にした後この会談は解散した。
「華琳さま楽しそうですね」
自分たちに割り当てられた天幕に戻る途中秋蘭が華淋にたずねた。
「あら?そう見える?フフ、あの2人をどうやって手に入れようかと思ってね」
「あの2人、北郷と呂布のことですか」
「ええ、そうよ秋蘭。あの2人を良く見ておきなさい。私のものにできたらそれでいいけどできなかったら我が覇道、最大の脅威になるかもしれないあの2人を」
数刻後遅れていた軍勢が陣に到着し、各諸侯、代表が集まり軍議が始まった。
1刻ほどの軍議にて大体の布陣が決まった。
一刀達并州連合は前曲中央。最前線に配置された。
各諸侯の思惑はただ一つ。
―――飛将軍と名高いその力を見せてみろ
この思惑を理解した上で一刀は前曲中央に配置されるのを了承した。
―――この戦いでおれと恋の脅威を各諸侯に叩き込む・・・そしてその印象を持って俺たちは・・・
一刀はその秘めたる決意を心に構え戦場へ赴く・・・
そして討伐連合軍と黄巾党との最後の戦いが切って落とされた。
「并州の精鋭たちよ!長かった黄巾党との戦いもこれが最後だ!もう次の戦いを考えることはない!各自全力で城を攻め立てよ!城までの道は我等『飛将軍』が切り開く!全軍我らが旗につづけぇ!」
并州軍が前進を始めるのと同時に右翼の曹操・劉備連合、左翼の孫堅軍も前進を始めた。
広宗城内
「波才様!敵が動き始めました!」
玉座の間に伝令が走りこんでくる。
「敵先陣は!」
「旗は白に「十」と真紅で『呂』です!」
その報告に玉座はざわめく・・・
「飛将軍だと・・・・」
「どうなさいますか?波才様」
「城壁の弓矢隊は飛将軍の部隊に集中させよ!城壁に近づかせるな。」
「は!」
玉座に座る波才は長く伸びた髭にさわりつつ気味の悪い笑みを玉座の前で跪いている者に向けた。
「さて張角様。あなたにはやってもらいたいことがあるのですよ」
表には黄巾党首領と言われている張角その人だった・・・
広宗城外
「もうすぐ敵弓矢の射程範囲だ!堅盾隊前へ!正面と上方からの弓矢を防ぎつつ前進せよ!攻城部隊もそれにつづけ!」
一刀の指示により大きな厚みのある盾を持って部隊が陣形を組みすこしずつ前進を開始する。
城から見ればそれは壁のように見えたことだろう。
「伝令!正面城門に動きあり!野戦部隊が出てきそうです!」
「分かった。北郷隊・呂布隊で敵野戦部隊を叩く!攻城部隊は攻撃を続けよ!後曲弩隊は城壁の上に矢の雨を降らせ!」
一刀は閃華を、恋が方天画戟を構え広宗城から出てきた野戦部隊と激突する。
敵野戦部隊の中央を2人が切り裂き、敵指揮系統を分断。その間に北郷・呂布隊の両隊が両翼から押し上げる。敵野戦部隊はあっというまに壊滅した。
「敵野戦部隊は潰した!横槍を食らう心配はない!攻め立てよ!」
閃華を掲げながら一刀が指示を出していく。
広宗城内
「波才様!北郷・呂布両隊によって野戦部隊すでに壊滅!敵攻城部隊も壁のような敵部隊に弓矢を阻まれ動きを止めれずもうすぐ取り付かれます!」
その報告を聞いて波才は顔を歪める。
「伝令!西門に「曹」と「劉」!東門に「孫」が張り付いてます!」
「弓隊は梯子を上ってくる者を狙わせろ、石も用意しているはずだ。敵連中の頭上に叩き込んでやれ。こっちのほうが兵力は上だ。持久戦に持ち込めばいい」
「張角はどうなってる」
「現在隣の部屋にて準備中です。ほかの準備は完了しておりますのでご命令させあれば、いつでも」
「わかった。下がってよい」
「はっ」
広宗城外 北門
并州連合はどの軍よりも早く城壁にたどり着き、攻城部隊の部隊長が指示を出す
「攻城部隊梯子を掛けよ!弓矢隊は攻城部隊を狙う敵弓隊を最優先で狙え!」
北門周りの城壁に4つの梯子がかかる。その梯子を攻城部隊が登って行くが、敵守備隊からの矢や石による攻撃によって難攻する。
一刀たち北郷・呂布隊は一旦後方にさがり敵野戦部隊に備えていた。
その場に前線攻城部隊の苦戦が伝えられる。
「北郷・呂布隊の精鋭たちよ。我々は只今より攻城部隊の援護を行う。弓騎兵隊・弩隊は前線弓隊と合流。弓隊の部隊長の指示に従え。騎馬隊は後曲からの弓矢等の補給線を確保。常に前線に矢を送り込め。歩兵隊はオレと恋とともに攻城戦に入るぞ!」
「応!」
一刀の指示通り各部隊はそれぞれの場所へ移動を開始する
そして戦いは最終局面へ移行する。
一刀達が前線と合流し、その姿を確認した攻城部隊長が戦況を報告する。
「現在4つの梯子を城壁に掛けておりますが、城壁からの矢・石の攻撃によって攻撃隊が落とされている状況です。」
報告を受け一刀は対策案を考え始める。
「わかった。矢と石か・・・石がめんどうだな・・・」
「・・・ご主人様・・・恋がいってくる」
「頼む。でもムリはするなよ?恋」
「うん・・・まかせて」
方天画戟を担いだ恋が梯子に向かって走っていく。
「弓矢隊構え!目標敵城壁上!射撃後左右に展開!呂布将軍の道をつくれ!」
恋は城壁の前で足に氣を集中そして一気に飛翔。1度梯子に足をかけ再度飛び上がり城壁上へたどり着いた。
「我が名は・・・『飛将軍』呂奉先・・・ご主人様の邪魔はさせない」
恋が方天画戟を振るい複数名の守備兵を吹き飛ばす。そして攻城部隊への攻撃が止まる。
「攻城部隊突撃!呂布将軍が作ってくれたこの機会を逃すのでない!」
攻城部隊長の指示が飛ぶ。その指示に後押しされたかのようにどんどん攻城部隊が広宗城へ入り込んでいく。そして広宗城の黄色の旗が崩され真紅の旗が広宗城に立てられた。
「よし!攻城部隊3つに分かれて各門を開け!」
并州連合によって各門が開かれ、討伐軍が広宗城に流れ込む。
「なんだ・・・これは・・・」
しかし各討伐隊は城下に入った時、その異常な状況に驚き足を止めた。
広宗城下中央にある大きな広場に5万を超える黄巾党兵が固まっていた。その中心に1人の女の子が一段高い台座に立っている。
その異様な光景に諸侯が固まっていた状況の中で華琳が動いた。
「あなたが張角かしら?」
「そう・・・です・・・私が張角です」
震えるような声でその女の子は答える。
「あら?たしかあなた達3姉妹のはずよね?あとの2人はどこかしら?」
その華琳の言葉に張角は体を一層震わせる。
「ちーちゃんとれんほーちゃんは・・・」
「まぁ、いいわ。あなたを捕らえてこの城を探せばいいだろうし」
その華琳の言葉に討伐軍は張角との距離を縮める。
そんな中一刀と恋は広宗城内を走り回っていた。
「ご主人様・・・何を探してるの?」
既に一刀たちにも張角が城下にある広場にいるということは報告が来ている。それにも関わらず一刀はなにかを探していた。
「張宝と張梁。そして波才。」
「・・・・・・?」
「おそらく張角は捨て駒。前に黄巾党に侵入させた斥候によると黄巾党の実質指導者は張3姉妹ではなく波才とのこと。それだとあの張角の不可解な行動も理解できる。おそらく張宝と張梁は張角にとっての人質。そして波才は再興または逃亡の切り札として張宝と張梁を使うつもりなのだろう。だからこそ張角が殺される前にこの3人を見つけないといけない」
そして一刀はさらに走る速度を上げていく。
「ご主人様・・・あれ!」
恋が指刺した延長上に黄色の布を頭に巻き長い髭を伸ばした男に引きずられる2人の女の子がいた。
「あれだな・・・おれが前を押さえるから恋は退路を断ってくれ」
「・・・わかった」
一刀は足に氣を込めいっきに3人を飛び越え進路を塞ぐ。
「なにものだ!」
波才は目の前にいきなり現れた一刀に驚き2人をつないでいた縄を離してしまう。
「『飛将軍』北郷一刀といえばわかるかな?波才。そしてその拘束されているのが張宝と張梁だな。」
「「「!」」」
3人は驚きの顔で一刀を見る。
「あなた方3人を捕らえさせてもらう。抵抗はしないほうがいいよ。」
一刀は殺気を開放する。その迫力に張宝と張梁は震え上がり、波才も足を振るわせるが腰から剣を抜いた。
「ここでつかまるわけにはいかないんだよ!」
そして一刀にその剣を振り落としたが・・・
「抵抗しないほうがいいといったのに・・・ねてろ。」
次の瞬間一刀に蹴り飛ばされた波才は壁に直撃し気を失った。
一刀は恋に波才を拘束させている間に張宝と張梁の拘束を外す。
「大丈夫かい?」
しかしさっきの一刀の殺気にたいする恐怖からまだ立ち直ってないのか頭を振るだけだった。
「君達のお姉さんが死のうとしている。おれを信じて付いてきて欲しい」
「姉」という言葉に2人は顔を上げて頷く。
そして一刀は張宝と張梁を腕に抱えて走り出す。もう時間はそうない・・・
張角を守ろうと集まった黄巾党の兵もすこしずつ削られるように減っていく。
集まった彼らは純粋に張3姉妹のファンだった者達。そしていま彼らの願いは「張3姉妹の3人を再会させること」そのために自分の命を懸けて討伐隊から張角を守ろうとしていた。
「死を恐れない兵がここまで恐ろしいとわね」
あの華琳でさえその光景に少々恐怖を抱いていた。
このまま持久戦になると思われたところに・・・
城内から何者かが降り立った。そして戦場全体に響くように叫ぶ。
「敵将張宝と張梁、波才は并州連合大将北郷一刀が捕らえた!黄巾党の残党兵よ。武器を納め、降伏しろ!」
黄巾党の残党兵は城下町の店の屋根に立つ一刀と恋を見上げる。そしてその腕に抱えられている2人をみて歓声を上げ武器を下ろした。
戦意がなくなったことを確認した一刀たちは屋根から降り、張宝と張梁を開放する。
「「天和おねえちゃん!」」
「ちーちゃん!れんほーちゃん!」
張3姉妹が人目があるのにもかかわらず抱き合い涙を流す。その様子を残党兵たちも泣きながら見つめている。
一刀はその様子に笑みを浮かべた後、まだ気を失ってる波才を担いで討伐軍の前に進み出た。
「ちょっと北郷一刀とかいいましたよね?これはいったいどういうことですの?!」
袁紹が討伐軍全体の疑問を声に出す。
「見てのとおりですよ。黄巾党の本当の主導者はこの波才。表立った主導者と言われていた3人のうち張宝と張梁の2人は張角の人質として利用されていたってところかな。」
一刀はさも当然といったように話す。討伐隊にざわめきが起きる。
そしてその様子を横目に振り返り、黄巾党残党に向き直る。
「さて張角。どうする?まだ戦うか?」
その声に3姉妹と残党が一刀を見る。しかし彼らに戦意はない。
「我々黄巾党は降伏し、身柄をお預けいたします」
3姉妹そして残党全員が頭を下げた。
「わかった。あなたたちの身柄はおれが預かる。それでいいですよね?ほかの方」
「なにをいってますの?勅命は黄巾党の討伐ですのよ!」
袁紹だけが慌てたように反論するがほかの諸侯は何もいえなかった。
城への一番乗り、首謀者の捕縛、この戦いでのほぼすべての手柄は一刀たちだからだ。
「麗羽様今回は下がりましょう。相手が悪すぎです」「しかし斗詩さん・・・」
部下に引きずられるように下がっていく袁紹。
「ほかに反論はないみたいですね。では彼女たちは并州連合が預かります」
この宣言によって黄巾党はこの日をもって壊滅した。
先日体調を崩して寝込んでました、楽しみにしてた方申し訳ありません。
前回の予告では拠点話を書く予定でしたが、なかなかイイ感じに書けず本編の続きを書きました。
さて今回華淋や桃香たちが登場。前の世界では一刀と恋は蜀ルートでしたので桃香たちのことは良く知っていて華琳たちは戦場で出会ったぐらいでそうは知らないという設定です。
そして今回一刀が決意を明らかにしました。ついにこの物語は第2章へ進み、一刀・恋はとある勢力に所属することになります。
次に黄巾党について。天和・地和・人和に関しては次回以降しばらく出番がない予定です。彼女達の活躍を期待していた方は申し訳ありません。
今回の戦闘シーンに関して。
当初の予定では正面からの総力戦でと考えていたのですが、それだと一刀と恋が大暴れしました、マルで終わりそうだったので「『飛将軍』が率いる軍が活躍する」という形で書きましたので、あまり一刀・恋個人の戦闘シーンは描いておりません。
では第7話で一気に登場人物が増え、そして物語最初の山場に入っていきます。
次回投稿は今日いけそうなら書きますが高確率で明日に持ち越すような気がします。
では次回お会いしましょう。
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飛将軍と畏れられるようになった一刀と恋
2人は朝廷からの命で黄巾党の主力が集まる冀州広宗城へ向かう・・・
作者)
ごめんなさい!いろいろ予定が狂い6話投稿です。
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