― 陸遜Side ―
南陽での戦が終わって私達は寿春に戻ってきましたよ。
やっと一息・・・・・・と言う訳にいきません。
まだまだ私達には仕事が残ってますので。
「では、捕虜となった黄巾賊は一刀の案を採用し、斬首に変わり一定期間会稽と交州南海の農地開拓。
負傷しているものは傷が癒え次第、順次開拓に参加・・・・と言うことでいいか?」
「私は賛成です~。いくら賊とは言っても元農民ですしあの人数ですからねぇ」
「私も賛成です。会稽や豫章は未だ開拓が進んでいない土地が多いです。
ですので、揚州の混乱が収まった今が農作地を広げる良い時期だと思います!」
「亞莎さんの言う通りです。揚州は海沿いの地と言う事もあって農作物の収穫が少ない傾向にあります。
会稽、南海の内陸を開拓しておく事は今後の孫家においても大きな利益になると思います」
「うむ・・・・・・雪蓮はどうだ?」
いつもなら雪蓮様は賊徒やそれに類する者には容赦がないんですけど、今回に関しては一切口を挟んできません。
何か思うところがあるのか・・・・・。
それとも一刀さんの影響か・・・・・。
「それで良いわ。・・・・・・・・ただし、もし脱走や狼藉を働く輩がいた時はその場で処刑する。
いいわね?一刀」
「わかった」
「よし、これで黄巾賊の処分に関しての議題は終了する。穏、次の議題を」
「はい~。え~と、次の議題ですが、北郷隊の細作が持ってきた情報と荊州に関してです。
明命ちゃんの所の細作に調べてもらった所、劉表さんの体調が宜しくないらしく内部で跡目争いが起こっているようです~」
「跡目争い・・・・・・劉琮と劉琦か。蔡瑁は劉琮側についているはずだけど・・・・・・」
一刀さんはそう言って私を見つめてきます。
あぁ~、さすがは天の御使い様の名は伊達じゃないんですねぇ~♪
私が今から言おうとしていた所を的確についてくるなんて。
「その通りです♪・・・ですが、黄祖は劉琦側についているんですよ~。
今までの情報と食い違っているので今後どう対応するべきか・・・・と言うのが次の議題です」
一刀さんは隣に居る影さんとなにやら密談し始めました。
さぁて、今度はどんな事を考えているんですかねぇ?
「ふむ・・・・・繋がっている筈の黄祖と蔡瑁が離別・・・・・とは考えにくいな」
「あの屑達が仲違いするとは思えない・・・・必ず裏で何か企んでいるに違いないわ!!」
「蓮華様、落ち着いてください・・・・・ですが、私もあの男達がそう簡単に互いの手を切るとは思えません」
「思春もそう思うか・・・・・」
「はい・・・・・思い出したくもないですが、私があの男の下に居た頃から表面上は蔡瑁と仲違いしていましたが裏で繋がっていたことは確実です」
思春ちゃんは眉間に皺を寄せながらそう吐き捨てます。
その情報とあちらの企みの情報を持って私達孫家に来た思春ちゃんの言う事ですから間違いないはず。
「あぁ、そう言えば思春は昔黄祖の下に居たんだっけ?」
「表立ってではありませんが・・・・・・・」
「そっか。・・・・うーむ、どうしたもんかなぁ・・・・・・・黄祖達が洛陽の李儒と繋がってるのは確実なんだけど・・・・。
何を企んでいるのかがわからないから手の打ち様がないんだよなぁ」
確かに一刀さんの言う通りですねぇ・・・・。
明命ちゃんに調べてもらっても結局尻尾をつかめませんでしたし・・・・・。
「あのさぁ」
「どうした雪蓮?」
「尻尾出さないんなら、私達から尻尾に近づけばいいんじゃない?」
「あ~、なるほど~。雪蓮様の案で行きましょう♪」
「そう言う事か。となれば・・・・・明命!」
冥琳様も気づいたらしく早速明命ちゃんにテキパキと指示を出し始めます。
尻尾を見せないなら無理やり見に行けばいい。
後は冥琳様に任せていれば問題ないですねぇ~。
今日のところはお開きですね・・・・。
「では、本日の会議はこれまでとしま~す」
周囲の空気が弛緩して皆各々動き出します。
さてと・・・・・・。
「一刀さ~ん♪」
「ん?」
「き~き~ましたよ~」
「・・・・・・・な、何を?」
あぁん、もう!
ここまで来てまだ焦らすつもりなんですねぇ・・・・・。
「な・ん・で・も、曹孟徳さんから本をもらう約束をしたらしいじゃないですかぁ~」
「え?あ、うん?」
「その本は・・・・・・・・ぁん♪」
「え?な、何?穏・・・なんか変だぞ?」
あぁぁん!
冥琳様から聞いただけでこんなにも・・・・・・♪
「なんでも、かの孫子に独自に注釈を入れた物だとか・・・・はぁん♪」
「そ、そうだけど・・・・・え?何?何でそんなに鼻息荒いんだ?」
「孫子の兵法書に独自の注釈なんて・・・・・・ぁん♪・・・・・・考えただけでも・・・・・・『ッガツ』っへぶん!?」
「め、冥琳・・・・・・」
「いたいですぅ~・・・・・・」
頭のてっぺんを何か硬いもので叩かれましたぁ・・・・・・。
恐る恐る振り返って見ると・・・・・・。
「っひぃ!?」
「穏・・・・・・・あれほど大人しくしておけ・・・・と言ったはずだが?」
「ご、ごめんなさぁ~い」
「・・・・・・・あー、冥琳?」
「すまんな一刀。なんと言うか・・・・・・・・・穏は本の事となると押さえが利かなくなるのだ」
「押さえが利かなくなるって・・・・・・何が?」
あー・・・・とうとうばれちゃうんですね。
私自身も分かってはいるんです。
私の・・・・この変な癖が皆に迷惑をかけているって事を。
なので、一刀さんの前では絶対に出さないようにって気をつけてたのに。
「むぅ・・・・・・・まぁ、一刀ならいいだろう。穏は、ある厄介な癖があってな。
まぁ、なんと言うか・・・・・・本を読んだり、興味がある本の事になると押さえが利かなくなるのだ・・・・・・・・『性欲』が」
「は?」
「そうなんですー・・・・・・・・・・・・抑えきれないんです・・・・『性欲』が」
「・・・・・・」
ほら、やっぱり一刀さんも困ってる。
「ま、まぁ・・・そんな人もいるんじゃない?」
「あぁ、目の前にな」
「問題ないんじゃない?(本さえ読ませなければ)」
「あぁ、問題ない。(本さえ読ませなければ)」
「・・・・・・・気持ち悪くないんですか?」
「別に気持ち悪くなんてないよ。まぁ、特殊だなぁとは思うけど」
「本当にそう思うんですか?」
「嘘ではないよ?」
さ、さすがは一刀さん。
私のこの特殊な癖をあっさり受け入れてくれるなんて・・・・・・。
心の声が聞こえたような気がしますけど・・・・・まぁ、気のせいだという事にしておきます。
今までは癖の所為で冥琳様が居る時にしか本を読ませてもらえなかったんですけど・・・・・・。
「穏・・・・・・そんな目で何を期待し・・・・・・ふむ、そうだな。一刀」
「ん?」
「美蓮様が行ったこと覚えているか?」
「覚えていますよねぇ♪孫家に天の御使いの血を入れるって言ってましたよ~」
「え?・・・・・それが何?」
「穏」
「なんでしょ~♪」
「次からは本が読みたければ一刀に付いてもらうといい」
「はぁ~い♪」
「え?ちょ!?え!?」
あぁ~、なんて幸運なんでしょ~♪
素敵な御本を読む事ができる♪
それに、一刀さんと公認で一緒に居られるんですから♪
天の知識のあ~んな事や、こ~んな事まで・・・・・・・・ぁん♪
「かずとさぁ~ん♪」
「っちょ!?きゅ、急に抱きついてこないで!!」
「うむ。これで私の肩の荷も下りたということだな」
「っちょ!冥琳!!何で一人で納得してるんだよ!!」
「「「じぃー・・・・・・・・・」」」
なんだか周囲の視線が痛い気もしますけど・・・・・そんなどうでもいいですねぇ♪
はぁん・・・・・・何の本を読もうかなぁ~♪
「っちょ!?穏!!く・・・・るし・・・・い・・・・・・・・・・・」
「あぁん、一刀さんったら・・・ダ・イ・タ・ン♪」
― ???Side ―
「なんやこれ・・・・・・・」
「酷いものだな・・・・・・・・」
「そうね・・・・・・ここまで酷いなんて思いもしなかったわ」
「・・・・・酷い」
「これは酷すぎるのです・・・・・・・・」
「うん・・・・・ねぇ、私達に出来るのかな?」
私は洛陽の現状を見て酷く胸が痛くなりました。
洛陽・・・・この大陸で一番栄えているはずの都であり、『皇帝』が住んでいるはずの場所。
私達は大将軍である何進様の命によって住み慣れた地からここ洛陽を訪れました。
大陸中で起こっていた民による反乱の所為でここ洛陽を守る人達が極端に減ってしまった為。
「出来るじゃなくて、やるの。いくらなんでもこのまま放って置く事は出来ないんでしょ?」
「うん。・・・・・・私達で出来うる限り何とかしたいと思う」
私達の力で出来る事なんてたかが知れていると思うけれど・・・・出来うる限りの事はしたいから。
私は非力で皆みたいに戦ったり出来ないけれど・・・・・。
それでも何か出来る事があると思いました。
「月はそれで良いのよ」
「そうやで月っち」
「月様がそう望むなら」
「・・・月の力になる」
「恋殿が力を貸すのなら音々も力を貸すのです!」
「へぅ~・・・みんなありがとう」
私一人じゃ何も出来ないと思います。
でも皆が手を貸してくれれば、少しずつかもしれないけどこの洛陽に住む人達を助けてあげれるはず。
「さぁ、月。城に行きましょう」
「せやな。ここでボーっとしとっても一緒や」
「うむ」
「大丈夫・・・・・恋がついてる」
「さぁ、行くのですよ!!」
頼もしい仲間に囲まれて、私は宮殿へと足を踏み入れました。
この洛陽を・・・・この洛陽に住む人達を助けたい・・・・・ただその一身で。
「お待ちしておりました。董仲穎様」
「お出迎えありがとうございます」
「わたくし、姓は李、名は儒、字は文優と申します・・・・・広間で何進様がお待ちです」
うっすらと笑みをたたえた李儒さんは手で行く先を示しながら私達を案内してくれました。
この時は思っても見ませんでした。
この先、私達があんな事に巻き込まれるなんて。
それが、この洛陽を・・・・そして『漢王朝』揺るがし、さらには私達が住むこの『大陸』をも揺るがす事になるなんて・・・・・・。
「董仲穎様をお連れしました」
「失礼します・・・・」
この部屋に足を踏み入れた時・・・・・それが私達の運命の分岐点だったんだと思います。
あとがきっぽいもの
反董卓連合編突入したよ!獅子丸です。
まぁ、なんて言うか・・・・・穏の思考ってどうなってるんでしょうね・・・・・。
なんて言うかすらすら考えているのか穏らしくマッタリ考えているのか謎です。
若干っていうかかなり不安定な文となってると思いますがスルーでお願いします。
それか脳内変換で(ぁ
そして穏フラグがっつり立ちました。
危うし一刀君!!
雪蓮先を越されるぞ!?
蓮華・・・・病んだらだめよ?
あ、思春が先の先取ったりして・・・・・・。
まぁ、脳内でそんなくだらない事考えてましたw
と言うわけで穏Side前半に話を戻します。
この呉√で悪役臭駄々漏れのお二人。
34話のコメントで雪蓮に違和感がある人が数人いたようですね。
原作の雪蓮の事忘れていたわけではないですb
なので34話での違和感に気づいていた人がいたかもしれません。
『負傷した賊を全て孫家で処遇を考えると伝え引き取っている。雪蓮もそれに反対する事もなかった』
この一文です。
この文の中の『処遇』がこの話の前半部分。
いくら雪蓮でも戦闘中ならまだしも降伏してきた無抵抗な人間を殺したりはしないでしょうし。
少数なら斬首もありかもしれません。
ですが今回はかなりの人数。
ならば斬首の変わりに開拓させようじゃないか。
それが一刀の企みだったという落ちです(ぁ
まぁ、一種の強制労役です。
んで中盤部分、作中書いては居ませんが黄祖は武官、蔡瑁は軍師と言う設定となっています。
はっきり言ってこの設定は対して重要ではないんですけどねw
あとがきで補足しておく事が一点。
史実どおり思春は黄祖の下で働いていた事があります。
本作では重要な部分ではないので書きません。
前の話でもちょろって出てきましたが孫家への妨害工作の為に密かに雇われたのが思春率いる江賊。
しかし、黄祖があまりに卑劣だった為、その卑劣な策を知らせる為に孫堅を尋ね、そこで孫堅に気に入られて孫家入りしたという設定です。
まぁ、黄祖、蔡瑁は時代劇の表向きは人のいい悪代官をイメージしておいてくれればOKですb
んではお次。
???Sideとしていますが普通に真名が出てます(ぁ
皆の理想・・・月様の回想編となっています。
この回想から本格的に反董卓へと進んでいく事になります。
そして悪役筆頭李儒も再登場。
黄祖、蔡瑁、李儒。
この三人が今後どう絡んでくるのかお楽しみに?(ぁ
では今回はこの辺で
次回も
生温い目でお読みいただけると幸いです。
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第三十五話。
寿春に帰還。
そして反董卓へ・・・・・。