No.225630

三人の御遣い 獣と呼ばれし者達 EP2 事件前夜

勇心さん

どうも。
一応予告どおりオリキャラ二人と一刀の食事中の会話を中心に書いてます。少しでも楽しめれば幸いです。
これでようやく見習い卒業です。

2011-07-01 05:48:29 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1990   閲覧ユーザー数:1753

校門の前に二つの影が存在した。

一人はイラついた様子で壁に寄りかかっており、彼の横を通り過ぎる生徒達は皆一様に離れたところから門を抜けていった。

180cmを超える長身に、野生的な短髪と鋭い眼光は獰猛な獣を連想させ、自身の存在感をより一層際立たせていた。

???「チッ!!一刀のヤツ遅すぎだろ、コノヤロー!何時間待たせる気だ」

イラついていた青年はこの場にいない人間に悪態を吐く。

???「うるせえぞ~烈矢。一刀は遅れるかもしれないってあらかじめ言ってたんだから少しは落ち着け。あんま一刀の悪口言ってるとぶん殴っちゃうぞ~てめー」

もう一人の能天気そうな青年が烈矢と呼ぶ青年を嗜める。

烈矢「るっせぇーな!わーってるよ、んなことは。……たくっ、相変わらず兵衛は一刀のことになると無駄に好戦的だよな」

兵衛と呼ばれた青年は呆れたような仕草をした。

一刀「当たり前だろ。一刀は俺の大事な親友なんだから、親友のために怒るのは友達として義務と言っても過言じゃねーよ。場合によっては国家すら敵に回しても構わない覚悟を持ってるぜ俺は(笑)」

烈矢「いや、覚悟決めすぎだろ……。」

烈矢は笑いながら答える兵衛に思わずツッコミを入れてしまった。

烈矢「それにお前が言うと洒落になんねーんだよ。冗談でもそういうことは言わないほうがいいぞ?『国家特別戦力』に数えられてる俺達がそんなことを平然と言ってたら後々問題になっちまうだろ……」

 

 

 

『国家特別戦力』

 

 

 

 

それは国が例外的に認めた獣達

 

それは圧倒的な力を持った獣達

 

それは反則的な力を持った獣達

 

それは人外的な力を持った獣達

 

そんな常識では説明できない強さを持った七人の少年少女が『国家特別戦力』と呼ばれている。

『国家特別戦力』に選ばれた人間はその圧倒的な力を行使し、国の外敵となりえる存在を消すことが主な役割である。その対象は、犯罪者から革命家、場合によっては敵対している国の主要人物にも及ぶことがあり、その力は国にとって重要な戦力と言わざるを得ないものであった。

しかし、『国家特別戦力』に数えられた人間は国にとって重要な戦力であると同時に国から最も警戒されている要注意人物でもあり、その危険性から監視が就くことも多かった。

 

そして

 

『国家特別戦力』に数えられた

 

---否

 

数えられてしまった七人の内の二人が赤羽烈矢と巽兵衛

 

 

赤羽烈矢は空手の全日本王者として対戦相手を壊し続け『破壊神』と呼ばれた経歴を買われ、

 

 

巽兵衛は戦国時代に最強と称された殺人武術『無双流』の使い手としての経歴で選ばれた。

 

そして

 

 

彼らが今現在待っている人物北郷一刀もまた

 

『北郷一天流』の後継者として『国家特別戦力』に数えられる一人なのだった------

北郷一刀は急いでいた。

 

 

 

不動との死合?のせいで約束の時間に大幅に遅れてしまっていた。

待ち合わせ場所が校門前なのが幸いしたのか、約束の時間から一時間ちょいの遅れで済ませることができた。

それでも十分すぎる遅刻のためおそらく今日の食事は一刀が全面的に奢ることになるのは変えようのない事実だろう。

一刀「はあ~……今月ピンチなのに」

一刀は走りながら自分の財布の中身を確認し、心の底から溜息を漏らした。

 

 

 

走り続けて数分後、一刀は校門前にたどり着き、約束をしていた二人の姿を確認し、声をかけた。

一刀「悪い!!遅くなった」

一刀は肩で息をしながら待たせてしまった友人に謝罪をした。

烈矢「おせーぞ~一刀。今日の晩飯お前が全部奢れよ」

兵衛「よろしく~」

一刀「そ、そんな……」

一刀はその場に崩れ落ちた。

一刀の予想通り食事は一刀の奢りで決まりのようだった。

しかし、一刀は内心では喜んでいた。

本来なら遅刻したことにもっと怒ってもいいはずなのに、二人はなんでもないように対応してくれる。先ほどまで不動との死合で少しだけ気が滅入っていた一刀はそんな些細なことに喜びを覚え、改めて二人が自分の友人であることに心の中で感謝した。

 

 

 

兵衛「んでさ……どこ行く?」

兵衛が行き先を二人に尋ねた。

烈矢「そうだな~……もうこんな時間だからファミレスで良くねえ?」

一刀「そうだな、今からだと他に行く所なさそうだし、ファミレスにしよう」

兵衛「それじゃ早く行こうぜ。もう腹減ったよ~」

一刀・烈矢「「はいはい……」」

兵衛の泣き言に二人は相槌を打ち、三人はファミレスへと向かった。

 

---

 

ファミレス

 

 

 

 

一刀、烈矢、兵衛の三人はファミレスに到着した。

 

店の中は思ったよりも人は少なく、すぐさま店員が現れ、そのまま奥の席へと案内された。

 

 

三人は席に着くと、各々が食べたいメニューを店員に伝え、料理が来るのを待った。

 

 

一刀は和食

 

烈矢はステーキ

 

兵衛はパスタ

 

を頼み、注文した料理が運ばれたの確認し終わると三人は食事を始めた。

 

兵衛「ところでさ~不動先輩との死合?だっけ?結局どうだったのよ」

食事をしていると兵衛が唐突に一刀に質問をしてきた。

一刀「どうも何も……普通に相手しただけだよ。ただ……」

兵衛「ただ?」

一刀「先輩は俺の……『北郷一天流』を身に付けたかったみたいなんだ。だけど俺は先輩に『北郷一天流』を身に付けてほしくなかったから…………だから俺……」

烈矢「ようするに手を抜きすぎて怒られたってことだろ?」

一刀「ぐっ!!」

烈矢に図星を突かれて一刀は言葉に詰まってしまった。

兵衛「ああ、なるほどね。だから遅くなったのか。でも珍しいじゃん?いつもの一刀は手抜きするくらいなら死合自体受けないのに」

一刀「まあね、いつもならそうしてるんだけど……今回先輩にはもっと大事な事を気付いてほしかったからさ。いい機会だと思って受けたんだよ」

兵衛「ああ~確かにね~。不動先輩ってさ、高校剣道で敵なしだけど、な~んか勝利に飢えてるって感じだったもんな。そのせいで剣筋もなんか凶暴すぎるっつうか、相手のこと殺すんじゃないかって心配になる試合してたもんな」

烈矢「この前の練習試合のときか……確かにあの時は変だったな。剣道家っていうよりも剣術家って言うほうがしっくりした」

一刀「そうなんだよ。剣を振るうだけなら人の心を持つ必要はない。人の心を持ったまま剣の道を歩むのが剣道家なのに、あのときの先輩はその道から大きく外れていた。だから外れきる前に昔の先輩に戻ってほしかったんだ。だから受けた」

烈矢「その判断は正解だな。あのまま突き進んでいたらいつか『壊れる』。壊れなかったとしても国に目を付けられて俺達同様『国家特別戦力』の仲間入りをしてただろうな……もし、そうなったらまともな道には戻れなくなるだろ」

兵衛「まあ結果として上手くいって良かったじゃん?」

一刀「ああ。先輩も自分の進むべき道を見つけたみたいだから、これで心配の種はなくなったよ。」

烈矢「ところでよ……話は変わるんだが、国から一つ任務の依頼が来てたんだよ」

一刀「国から?随分と急だな……それで内容は?」

烈矢「ああ、なんでもウチの学校に古い鏡が保管されてるらしくて、それが明日の夜に盗むという犯行声明が出されたから警護をしてほしいらしい……」

兵衛「警護?そんなの警察がやればいいじゃん。しかも学校の鏡??ますますわからん」

烈矢「俺も詳しい事は知らないんだ。依頼内容だけ伝えられただけだからな。……どうする一刀?」

一刀は烈矢の問いに少しの間考え込んでいた。

一刀「…………今分かるのは二つだな。一つ目は鏡を盗みに来る犯人は相当の手練の可能性が高い事。俺達に依頼するくらいだ、まず間違いないだろう……二つ目は警護対象である鏡は俺達が思っている以上にヤバイ代物ってことだ」

烈矢「ヤバイ代物?」

烈矢が一刀の言葉に眉をひそめる。

一刀「考えてもみろ?犯人が相当の手練だから俺達に依頼するのは分かるとしても、なぜたかだか学校に保管されている程度の鏡を国が守ろうとするんだ?」

兵衛「確かにね……」

一刀「おそらく鏡は国が守ろうとするほどの秘密があるんだ。犯人もその秘密を知ってるんだろう」

 

 

 

一刀の心配も最もだ。あまりにも話が上手すぎる。

 

犯人の目的

 

自分達に依頼する理由

 

国を挙げてまで守ろうとする鏡

 

全てが不透明すぎる話に一刀は違和感を感じていた。

 

そう---

 

まるで元から仕組まれているかのように……

 

 

 

兵衛「どちらにしても依頼は受けたほうがいいと思うぜ。事が俺達の学校で起こるなら、万が一生徒に被害が出るのは避けたほうがいい」

一刀の不安をよそに兵衛が話を続けた。

烈矢「確かにな……俺も兵衛の意見には賛成だ。一刀はどうする?」

一刀は若干の不安を覚えながらも二人に賛同する事を選ぶ事にした。

一刀「俺も行くよ。生徒に被害が出るのは確かにまずいからな。」

烈矢「決まりだな。それじゃ明日の夕方六時に校門に集合ということにしよう」

一刀・兵衛「「わかった」」

 

烈矢の言葉に二人は頷きその日は解散することにした。

 

彼らはまだ気付いていなかったのだ。

自分達を待ち受けている運命が如何に過酷で、如何に残酷なモノなのかを……

???「ふふふっどうやら彼らが鏡の警護に動き出すようですよ。」

???「ふんっ!北郷一刀め……この外史では貴様の勝手にはさせんぞ!首を洗って待っているといい」

 

 

 

???「「ははははははははははっ!!!」」

 

 

 

 

暗い闇の中、二人の男が不気味に笑い続けていた----

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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