No.224684

恋姫外史・あるところに一刀第34話

アキナスさん

毒矢に倒れた一刀

その真相は・・・

2011-06-25 15:42:58 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:11494   閲覧ユーザー数:8483

雪蓮達が去った後の森の中

 

「フッフッフ・・・・ハァーッハッハッハ!!」

 

少年の笑い声が響いた。

 

「ご機嫌ですね~~」

 

その傍らには眼鏡をかけた一人の男の姿がある。

 

二人の名は左慈と于吉。

 

話の起点となった外史で一刀を殺害しようとして、それ以来様々な外史で一刀を亡き者にしようとしている天敵(特に敵視しているのは左慈)である。

 

「当然だ!この外史に来てみたはいいが、正直遅く来すぎた。ヤツの敵になりそうなのは、もはや取り残された蜀のみ!正直少しでも混乱を引き起こしてさっさと別の外史に行こうと思っていたところだったが・・・」

 

左慈は心底愉快そうに言った。

 

「まさかヤツもここに来るとはな!今までどこの外史でも将に守られて、こちらの刺客など意味を成さないのではないか?などと苦々しく思っていた所だったが、これほど嬉しい誤算は初めてだ!!」

 

ハッハッハ!!

 

左慈の笑い声が再び響く。

 

「いやいや、貴方のこれほど嬉しそうな顔を見るのは久しぶりですよ。胸がときめきますね・・・」

 

左慈を見ながらうっとりとそう漏らす于吉。

 

「いつもなら失せろ変態!・・・と一撃入れる所だが、今日は気分がいい!聞かなかったことにしてやる!」

 

「アア・・・あなたに優しく扱われるなど、初めてだ。もう逝きそうで・・・」

 

グシャッ!

 

左慈の蹴りが于吉の顔面にめり込んだ。

 

「死ね!変態!!」

 

眼鏡が割れ、崩れ落ちる于吉。

 

「アア、貴方の愛が痛い・・・しかし耐えて見せますよ。耐えることが私の愛なのですから・・・」

 

于吉はそう言い残し、地面に倒れ伏した。

 

「フン!」

 

于吉を無視して、左慈は一刀の連れて行かれた方を見る。

 

「さて、これでお前は死ぬのかな?北郷一刀・・・」

 

「あまり死んで欲しくないようですね?」

 

もう復活を果たした于吉が左慈の背後から語りかけた。

 

眼鏡は割れたままだったが・・・

 

「お前にはすぐにでも死んで欲しいがな・・・」

 

「つれないですねぇ」

 

「フン!・・・まあ本当は俺の手で殺すのが一番だからな」

 

ヤツが死んでくれればそれに越した事はないが・・・と呟く左慈。

 

「今回使ったのはこの世界の毒ですから、治療出来ない訳ではありません。もしかしたら、助かるかもしれませんよ?」

 

「それはそれでいいさ。ヤツの苦しむ様も見れたし、これで終わりではないからな」

 

「・・・これからどうします?」

 

于吉の問いに左慈は

 

「とりあえず見物だ。仕込みはしてあるしな。戦争になるだろうが、北郷が出てこないなら参加する気がせん。せいぜい楽しく見させてもらうさ・・・」

 

ニヤリと笑みを浮かべ、そう言った・・・

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・」

 

「一刀・・・」

 

一刀は部屋で苦しんでいた。

 

傍らでは小蓮が心配そうに一刀の側についている。

 

恋もまた、一刀が帰ってきてから側を離れようとしなかった。

 

血が大量に出てしまい体力は落ち、華佗の治療でも毒をすぐさま消し去るという事は出来ず、もう一刀の生命力を信じる事しか出来なかった・・・

 

「本当に蜀の仕業なのね?」

 

雪蓮が冥琳に訊ねる。

 

「・・・おそらくだがな。持ち物などから蜀の兵士の物が発見された。それに今我らと敵対する国は、蜀しかないだろう。・・・ただ」

 

冥琳はそこで言葉を止めた。

 

「ただ?」

 

「このような手を使うなら隠密関係だろうが・・・だとしたらやり方がお粗末過ぎる。調べればすぐばれるような物を持ち歩くはずがないし、第一あの劉備がこのような策を用いるとは思えん」

 

「孔明達軍師の仕業って事は?」

 

「その線も薄いな。蜀は劉備の徳を持って治めているような国だ。このようなやり方をすれば、劉備の名声は地に落ちる。そうすれば国は内部から崩れていくだろう・・・」

 

「じゃあ結局誰の仕業なのよ!?」

 

雪蓮が苛立った様子で言う。

 

「姉様、一刀の近くで大声は・・・」

 

孫権が姉をたしなめる。

 

「・・・そうね」

 

怒りを押し殺し、再び冥琳と会話に入る雪蓮。

 

「とにかくこの事は、魁にも知らせないとね・・・」

 

「ああ、それと蜀に間諜を送ろう。真実を確かめるためにも・・・」

 

「本当なら、すぐにでも攻め込んでやりたいけどね・・・」

 

「それにも準備が必要だろう?少し待て」

 

「・・・冥琳はよく冷静でいられるわね」

 

「・・・それが軍師だからな。正直はらわたが煮えくり返っているよ・・・」

 

表情を険しくする冥琳。

 

「・・・そうよね、ごめんなさい」

 

謝る雪蓮

 

「気にするな。それよりも・・・」

 

「ええ」

 

 

 

呉は戦の準備を始めた。

 

 

 

まるで

 

 

 

糸で吊られた操り人形のように・・・

「・・・嘘だろ?」

 

一刀が毒矢に倒れたと言う報告を聞いた白蓮の第一声がそれだった。

 

そして、それを行ったのが蜀かもしれないと聞いたときにも、白蓮は信じられなかった。

 

「おのれ!あやつら!!」

 

華雄は激昂した。

 

「お、落ち着け華雄・・・」

 

白蓮がそれを止めようとする

 

「落ち着いていられるか!?もし一刀が死んだら・・・」

 

そこまで華雄が言ったところで

 

「落ち着きなさい!!」

 

華琳が制した。

 

「・・・・・・」

 

華雄が止まる。

 

「まずは状況を整理して、冷静に考えましょう。桂花」

 

「ハッ!」

 

「どう思う?これは蜀の仕業かしら?」

 

華琳の問いに桂花はこう答えた。

 

「正直考えにくいですね。このような手を使った所で、蜀は国の内部はがたがたになってしまうでしょうし、魁・呉も即敵に回すことになります。滅びる為にやるような策ともいえない最悪の手です」

 

「・・・そうね。私も同意見だわ」

 

桂花の言葉に華琳も同意する。

 

「私も同意見ですね。少なくともあの孔明達がこのような策を用いるとは思えません」

 

「う~ん・・・となると、誰の仕業でしょうね~~~」

 

稟、風も同意見のようだ。

 

「・・・ねね、どう思う?」

 

白蓮はねねに訊ねた。

 

「・・・ねねも元魏の軍師達と同意見です。もしやるとするなら・・・蜀内部に劉備達とは別の派閥があって、そいつらの独断で行われたという可能性が濃厚でしょうか・・・」

 

ねねはそう白蓮に言った。

 

「・・・それで、どうするの?白蓮」

 

「・・・え?」

 

しばし呆然としていた白蓮。

 

「貴方がこの国の君主なのよ?一刀が動けない今、貴方がこれからの事を決めないと」

 

「・・・そ、そうだな」

 

白蓮は考え込む、そして

 

「・・・蜀へ使者を送る。まず桃香自身に真実を聞きたい」

 

白蓮はそう言った。

 

「白蓮!お前は・・・」

 

華雄が白蓮に意見しようとするも

 

「私は最後まで桃香を信じる!だから・・・」

 

白蓮の言葉に口をつぐむ華雄。

 

「・・・そう。貴方がそう言うなら、そうすればいいわ」

 

華琳は何とも含みのある言い方だったが、反対はしなかった。

 

そして使者には秋蘭、ねねが選ばれたのであった・・・

 

 

 

そして劉備の元へやってきた秋蘭とねね。

 

謁見の間にずらっと将と文官達が居並ぶ中、今回の事について劉備に問いかける。

 

「わ、私達、知りませんよ?ねえ、朱里ちゃん」

 

「も、もちろんでしゅ!」

 

即座に否定する劉備と孔明。

 

「貴様ら!言いがかりも甚だしいぞ!桃香様がそのような事をするはずが無いだろう!!」

 

魏延が憤慨する。

 

「しかし、北郷一刀が毒矢に倒れたのはまぎれもない事実。そしてそこに貴方がた蜀の痕跡があった。疑うのは仕方が無い事かと・・・」

 

秋蘭はあくまで冷静にそう言った。

 

「だが、実際我らには身に覚えの無い事。問い詰められても答えようが無い」

 

趙雲がそう言った時だった。

 

「ハッハッハッハッハ・・・・」

 

謁見の間に笑い声が響いた。

 

笑っているのは文官の列に居た初老の男

 

「な、何を笑っている?」

 

関羽が戸惑いの声を上げる。

 

「いやいや、申し訳ない。ただ愉快で・・・」

 

そして男が手を上げたその時!

 

列の前後に居た文官の四人ほどが短剣を抜いて秋蘭達に襲い掛かる。

 

突然の事に蜀の人間は、動き出すのが遅れた。

 

そして

 

「・・・クッ!」

 

ねねと共に出口の方へ走る秋蘭。

 

その前に文官が二人、立ちふさがる。

 

「シャア!」

 

まるで兵士のような動きで攻撃してくる二人。

 

一人の攻撃は避けてカウンターを浴びせた秋蘭だったが

 

ピッ!

 

もう一人の攻撃にかすり傷を負ってしまった。

 

「しゅ、秋蘭!?」

 

「心配するな!かすり傷だ!!」

 

そのままもう一人も倒し、謁見の間から逃げ出す秋蘭とねね。

 

そして二人が逃げ去った後

 

「こ、この者達を捕らえよ!!」

 

関羽の言葉と共に兵士達に捕らえられる五人。

 

「どういうつもりですか?このような事を・・・」

 

「おやおや?まだお分かりになりませんか?」

 

孔明の質問に落ち着いたそぶりで言う男。

 

「あの男がいなくなれば、魁は主軸を失うも同然。そして彼女達を殺せば更に奴らの力は衰える。私は桃香様の天下統一の手助けをしたかっただけの事ですよ?」

 

「・・・では貴方が」

 

「ええ、私があの男の暗殺を命じました」

 

孔明に平然と答える男。

 

「馬鹿な!?貴様のやった事は桃香様の理想を汚しただけだ!!」

 

「そうなのだ!おっちゃんのやった事は許せない事なのだ!!」

 

関羽と張飛が男の言葉に憤慨する。

 

「では、いかにして桃香様に天下を取らせるおつもりか?魁と呉が手を組んでしまって、私達の力は彼らの半分もないでしょう?手がおありなら言ってごらんなさい」

 

「そ、それは・・・」

 

孔明は口ごもる。

 

確かに今の力であの二つの国を相手にする方法はない。

 

「しかし、貴方のやった事はこの国に混乱を招き、更に魁、呉との戦いを決定付けただけです。何も良い方向には向かっていません」

 

「いやいや、失礼ですが私には策があるんですよ」

 

「・・・策、ですか?」

 

孔明の言葉に頷く男。

 

「ええ、簡単な事ですよ」

 

そして男は語りだした。

 

話が進むにつれて、周りの人間の顔色が真っ青になっていく

 

その内容は

 

人道を完全に無視した

 

語るもおぞましいものだった・・・

 

ザシュッ!

 

男が全てを語り終える前に、関羽の偃月刀が男を真っ二つにしていた。

 

「クズが!!」

 

そう吐き捨てる関羽。

 

「残る者共も牢へ連れてゆけ!!」

 

兵士達に牢へ連れていかれようとする四人

 

しかし

 

「「「「・・・ウッ!」」」」

 

全員ほぼ同時に舌を噛み切った。

 

静寂に包まれる謁見の間。

 

そして劉備は

 

「・・・・・・・」

 

死人のような顔色をしていた。

 

「・・・桃香様」

 

「・・・・・」

 

孔明の言葉に反応はない。

 

「桃香様!」

 

「・・・!!」

 

孔明の叫びにようやく顔を向ける。

 

「・・・戦の準備をしましょう。もはや戦争は避けられません」

 

「・・・・・でも」

 

「今回の事は明らかにこちらに非があります。ですがこのままでは桃香様も、私達も只ではすまないでしょう。最悪、全員処刑されるかもしれません・・・」

 

「そ、そんなの駄目だよ!!」

 

劉備が立ち上がり、叫ぶ。

 

「・・・桃香様」

 

「・・・戦おう。みんなの為に・・・」

 

戦う意思を皆に伝える劉備。

 

そして蜀も戦いの準備を始める。

 

 

 

 

それが

 

 

 

 

仕組まれたものとは知らずに・・・・・・

 

 

 

どうも、アキナスです。

 

まさか彼等まで出る事になろうとは・・・

 

もう本当にキャラ達が一人歩き・・・というか一人全力疾走始めてしまいました。

 

もはや作者にもこの戦いの着地点が見えません。

 

一体どうなってしまうのか・・・

 

それでは次回に・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「我は放つ光の白刃!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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