― 一刀Side ―
洛陽に到着してから数日・・・・・。
ガッチリとした城門をくぐり石畳の上を歩く。
そして城門よりも小さな門をくぐりぬけ、開けた場所に出る。
地面一帯に石畳を敷き詰めた広場。
俺が案内された場所から少し離れた左右には禁軍の兵が整列している。
そして正面には無駄に豪華な宮殿が鎮座している。
その宮殿のこれまた無駄に豪華な入り口の前、俺が立っている場所よりも高い場所。
そこに、これ見よがしに豪華な椅子が置いてあり、その左右には多分何進と張譲だろう・・・その二人が立っていた。
「皇帝陛下のおなーりー」
あまりにも予想通りの掛け声と共に宮殿の扉が開き護衛の護衛を連れた豪華な服を着た男が現れる。
それに合わせて俺以外の人間が跪き、礼をする。
(あれが『劉宏』か・・・・・・)
感想はそれだけ。
洛陽の街を見てもう嫌と言うほど『漢王朝』と言う物がどれだけ腐っているかを見せ付けられた。
それが目の前にいる暗愚の所為であり、その周りに仕える人間達の所為。
最初からそんなつもりはなかったが、俺は礼をすることなく劉宏を見据えたまま立っている。
ちなみに雪蓮達は城門前で待機してもらっている。
何かあった場合、雪蓮や亞莎を死なせるわけにはいかないから。
「貴様!!皇帝陛下の御前だぞ!!礼を尽くさぬか!!!!」
劉宏が座る椅子の右側の男が俺に向かって怒鳴り上げる。
さて、そろそろ始めますか。
「・・・・・・貴様、誰に向かって口を利いてるんだ?」
自分ができる精一杯の力をこめて思いっきり睨み付ける。
「っな!?何だと貴様!!!!!」
「無礼な!!衛兵、あの男をひっとら「劉宏!!この国の天は部下も躾けられないのか?」・・・・・っこ、皇帝陛下になんて言う口の聞き方を!!!!」
左側の男が兵に命令するのを遮って劉宏に怒鳴りつける。
劉宏は体を強張らせ左右の二人に助けを求めようとしている。
「お前らにひとつ言っておく、俺は『天の御遣い』だ・・・・・・・この意味もわからないほどお前らの頭は腐ってるのか?
お前達が寄越した無礼な勅使から俺が何をしたか聞いてないのか?」
あえて『天の御遣い』を強調して言葉をぶつける。
その一言で周囲の兵達が動揺していた。
影達に流させた噂は間違いなく洛陽の街に届いていた。
思った以上に尾鰭がついて。
「兵達にも一つ言っておく。
もし俺に剣を向ければ・・・・・・・・・・寿春での事以上の災いがその身に降りかかると思ったほうがいい」
俺は、できうる限りの不敵な笑みを浮かべつつ周囲の兵を見回す。
その言葉で、案の定兵達は固まり動揺が広がる。
(さて、とりあえずは第一段階終了ってとこかな)
正面の石段の上にいる三人も同様に俺を見ながら固唾をのんでいる。
ただ、何進の後ろに控えている男だけは笑みを浮かべながらその薄く閉じられた目で俺を見据えていた。
(やっぱりあの男が一番危険だな)
「さて、失礼な輩が黙ったところで一つ聞こう・・・・・・・劉宏、お前はなぜ俺を洛陽に呼びつけた?」
うまくできてるかなぁ・・・・・。
普段はこんな喋り方しないし、尚且つこんなキャラじゃない。
自分で決めたことだし仕方ないけどさ、やっぱりしっくり来ない訳で・・・・・。
まぁ、そんな事はさておき・・・・。
「さっきから聞いておれ「黙れ玉無しが!!誰がお前に口を開いていいといった!?」・・・・・っぐ!!」
うむ、『天の御遣い』と噂が効いているようだ。
俺って以外に演技力あるのかも・・・・・・・。
「こそこそ両脇と喋ってないで早く答えろ劉宏!!」
ったく、あんな気の弱そうな男が皇帝か・・・・・。
わかってはいたけど、やっぱり『漢』は救いようがない。
天の知識が有ろうが無かろうが誰が見ても救えないと思うはずだ。
流石に俺もいらいらしてくる。
少し早いが・・・・・・・
「・・・・・・・・喋る気が無いなら・・・・・・・『ッパン!!』」
劉宏を睨み付けながら胸の前で大げさに両手の掌を打ち合して音を鳴らす。
その瞬間左右に控えていた兵達の中でどよめきが起きる。
「な、なんだ!!急に泡を吹いて倒れやがった!!!」
「っこ、こっちもだ!!」
「おい!!大丈夫か!?」
付近に居なかった兵達にもその声と共に動揺が広がる。
この動揺を煽るように俺も言葉を発する。
「劉宏、早く答えないと次は・・・・・・・」
そう言いながらさっきと同じように胸の前で手を叩こうとする。
「わ、わかった!!答える!!朕が答えるからやめるのじゃ!!!!」
うん、いい感じだ。
まぁ、種明かしするといたって単純明快。
禁軍の中に影率いる細作隊がそれなりの数で紛れ込んでいるだけ。
と言っても二十人ほどだけど。
そして紛れ込んでいる細作達を数組に分けて俺が手を鳴らすと決められた順番で細作達が昏倒するフリをするだけ。
寿春での事と、その事に対する噂が浸透していていれば効果覿面ってわけさ。
「それじゃ、答えてもらおうか・・・・・・」
「そ、そちが『天』を名乗っておるからじゃ・・・・・・・」
「っは、自分も『天』を名乗っておいてその言い分か?」
「朕はこの大陸の『天』じゃ!!なぜそちが『天』を名乗っておるのじゃ!!」
まだ言うか・・・・・・。
そう言い放った劉宏を睨み付けながら二度手を打ち鳴らす。
「ま、また倒れたぞ!?」
「御遣い様がお怒りだ!!!」
「い、息はあるのか!?」
ちなみに御遣い様が~の件は我が細作隊の一員が言っています。
やっぱ外野がうまく煽ってくれないとね。
「さて、まだわからないか?お前が『天』である様に俺も『天』なんだよ・・・・・この意味がわかるか?」
左右の二人は口を挟むこともできずに俺と劉宏の間で視線を行き来させている。
そんな二人は無視してさらに言葉を続ける。
「わからないなら一つ教えてやる。
『天』は劉宏、お前だけじゃないって事だ・・・・・と言うよりもお前は『天』なのか?まったくそんな力は感じられないが?」
「っ!?」
よし、楔は打ち込めた!
後は劉宏がどう出るか・・・・・・・。
「き、きさまぁ!!黙って効いておれば!!!!!兵共!!!!その男を切り捨ててしまえ!!!!!!!!」
男がそう声を荒げるも周囲の兵達は動揺して動こうとしない。
「何をやっておるのだ!!!さっさとその男を切り捨てんか!!!!!」
そろそろ仕上げと行こうか。
俺は劉宏を睨み付けあらん限りの声を上げて叫ぶ。
「『天』を名乗りし皇帝、既に地に落ちたり!!!!俺に剣を向けると言うのならその報い、身を持って知って貰おう!!!!!」
そして天を仰ぎもう一度叫ぶ。
「来い!!!!我が僕!!!!!!!!」
正直あんまり呼びたく無かったんだけど・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・るるるるるるるるるるるるるるるるるるるるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ふううううううううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!!!」
『ッズドドン!!!!!!!!!!!!!』
あれ?なんだか一人多いんだけど・・・・・・・・。
― 雪蓮Side ―
「・・・・・・・・・一刀」
一刀が城内に入ってからもう一刻はたとうとしている。
私と亞莎、そして北郷隊の二百名は城門の外で待機している。
中から微かに聞こえてくるのは兵達のどよめきだけ。
「雪蓮様・・・・・・・一刀様は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫・・・・・・・影もついてるんだし」
口ではそう言ってみても内心は不安で仕方ない。
いつもならこう言う時は勘がものを言うんだけど・・・・・・・。
こんなにヤキモキするんなら意地張らないでついていけばよかった気がする。
あ”ーもう!!
痺れを切らして城門へと歩き出そうとした時にその声は不意に聞こえてきた。
「ぶるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・」
「ぬっふううううううううううううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・・・・・」
後方から聞こえてきたその声。
聞こえてきたその方角を見る。
その声は私達の頭上よりはるかに高い場所を飛び越えて城へと消えていった・・・・・・・。
「・・・・・・・・・えっと、何あれ?」
「・・・・・・・わ、私にもさっぱりです」
私達二人は何かが城に飛び込んで行った方向を呆然と見つめていた。
っと、そんな場合じゃない!!
「亞莎!私達も・・・「伝令!!」・・・・って、こんなときにいったい何!?」
「申し訳ございません!!・・報告します!!ただ今洛陽に魯粛様が到着しました!!」
「なんですって!?」
何で藍が洛陽に?
でも悪い感じはしない。
「続けなさい・・・・・」
「魯粛様が率いるは『新生』北郷隊・・・・・その数三千!!北郷様の号令を今か今かと待ち望んでいます!!!」
思わず笑みがこぼれる。
「しぇ、雪蓮様!?」
「亞莎、兵を動かすわよ。一刀の所に行くわ」
「しかし!!私達が城に入るのを許してもらえるかどうか・・・・・」
「亞莎、私達には『天の御遣い』がついてるじゃない♪」
「・・・・・・・・なるほど、わかりました!!伝令!!!北郷隊は速やかに合流し、一刀様のところへ馳せ参じます!!」
「「「「御意!!!」」」」
亞莎もやればできるじゃない。
伝令が洛陽の街へと走る。
程なくしてその方角から砂塵が上がる。
街の人たちには少し迷惑かけちゃったかも・・・・・・・。
そうこうしている内に私達の目の前に北郷隊が綺麗に整列して並んでいた。
「雪蓮様・・・・・・・」
「みなまで言わないで・・・・・・」
目の前に立つ兵たちの姿に見惚れてしまった。
かつての北郷隊の姿はもうそこには無い。
目の前に立つ兵達は白を基調にした重厚な半身鎧を身に着け、身の丈ほどもある鋼鉄製らしき壁盾を持ち一糸乱れぬ隊列を組みそこに立っている。
そして盾を持つ兵達の後方には全身鎧に円形の盾を持ち見たことも無い槍のような武器を持っている。
兵達の顔は皆気力が満ちているようだ。
「これが新しい北郷隊・・・・・・・・」
「すごいです・・・・・・・」
「いかがです?『新生』北郷隊は」
藍が兵達に視線を向けながら私達に問いかける。
何に対してかわからない。
目の前の北郷隊を見ていると『負けない』と思ってしまう。
そんな気持ちにさせてくれるほど目の前の北郷隊はすごいのだから。
そんなか騒ぎを聞きつけた洛陽の民が集まってきている。
すると、藍が私に耳打ちをしてくる。
「なるほど・・・・・いいわね」
私は、目を閉じ深呼吸をする。
さぁ、知らしめてあげようじゃない!
私達を守護する『天』の存在を!!
腹に力を込めて声を上げる。
「『天の御遣い』率いる北郷隊の者達よ!!『天の御遣い』が主、孫伯符が命ず!!!!我に続け!!!!!!」
「「「「「「「「「応!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
私は踵を翻し城門へと足を進める。
城門を守る兵は北郷隊の姿に圧され行く手を阻むことさえしない。
(『漢』は此処まで落ちたか・・・・・)
そんな事を思いつつ私達は城内へと足を踏み入れた。
あとがきっぽいもの
イタズラするなら蓮華の国宝級に・・・・・・獅子丸です。
さて、前書き?でも書きましたが一刀のイタズラ無双の回です。
口先だけで丸め込む・・・・・・。
無理やりすぎるかもしれませんがw
そして登場しちゃ駄目な人が登場しました。
しかもオマケつきで(ぁ
一刀、手段選べよ・・・・・・・とか思ってみたり。
お次は雪蓮。
1回デレた癖になかなかデレない雪蓮・・・・・・。
そして藍さん到着。
北郷隊新生!!
装備の説明は後々小出しにして行きます(ぁ
亞莎は一刀の戦術をどんどん吸収してもらう予定です。
普段は「は、はひ!」な亞莎さんでも戦場ではしっかり軍師をしてくれると思います!!
次回は・・・・・・
多分洛陽編ひとまず決着&黄巾戦開始かな?・・・・・・・たぶん。
では今回はこの辺で。
次回も
生温い目でお読みいただけると幸いです。
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第二十九話。
一刀イタズラ無双。
そして助っ人登場。
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