一刀がその女性を指差した瞬間
「思春!!」
孫権の言葉と共に甘寧が曲刀を抜いて一刀めがけ突っ込んできた・・・のだが
「・・・・・・」
すぐさま一刀の前に出てきた恋。
その殺気に甘寧の足が止まる。
「蓮華!思春を止めなさい!!」
「いいえ!できません!!」
孫策の言葉に耳を貸そうとしない孫権
そんな中
「恋、下がってな」
一刀が恋にそう言った。
「・・・フルフル」
当然恋は首を横に振る
「大丈夫だって」
「・・・フルフル」
それでもやはり退こうとしない恋
まあ当然の反応だが・・・
ここで退けば、甘寧は容赦なく一刀に武器を突きつけるだろうから。
「いいから退いとけって。むしろその方があちらさんにとって苦しい状況になるんだから」
「・・・?」
恋は首を傾げるが、やはり退かない。
「俺がお前に嘘ついたことがあるか?」
「フルフル」
即座に首を横に振る恋。
「な?頼むよ。帰りにこの街の料理の美味い店でおごるから・・・」
「・・・・・・」
恋は考え込み
「・・・コクッ」
一刀の後ろへ戻った。
その行動に周りは呆然としていたが・・・
「・・・貴様、正気か?」
そう言って甘寧は一刀の後ろに回り曲刀を首筋に当てる
「おう、もちろんだ」
平然とそう言い放つ一刀。
そんな中
「お姉ちゃん!何で邪魔するの!!」
一刀が選んだ女性
孫家の末娘、孫尚香が孫権に向かって怒りの声を上げた・・・
「当然だ!このような事を言い出した姉様も姉様だが、シャオを選ぶなどふざけているとしか思えん!!」
「・・・酷い姉ちゃんだな」
「うん・・・ちょっと傷ついたかも・・・」
孫権の言葉に同情する一刀と、いじけるように言う孫尚香。
「シャオ!このような男と口を聞くな!!」
孫権は相変わらず厳しい口調で言う。
「・・・んで、ここから俺をどうするつもりだ?孫権さんよお?」
甘寧に曲刀を当てられたまま一刀は孫権に問う。
「知れた事!貴様を人質にして魁との交渉に使わせて貰う!!」
「・・・跡継ぎがこれだと、呉の将来は危ないな」
「器は十分だと思うんだけど、まだ未熟なのよね・・・」
こんな状態だと言うのに普通に会話する一刀と孫策。
「姉様!」
「いいかげんにしなさい蓮華。決めるのはシャオなのよ?」
「姉様はこんな男にシャオが嫁いでも平気なのですか!?」
「だから、まずシャオの答えを聞きなさいって・・・。拒否権はあるって言ったでしょ?」
そして孫策は言った。
「で、どうする?シャオ」
孫策の質問に孫尚香は
「ん~~~・・・」
一刀の前に来て、物色するようにグルグルと一刀の周囲を回る
そして最後に一刀と見つめ合うと
「うん!いいよ~~」
なんとOKした。
「な!・・・」
孫権は声も出ないほど驚いた。
周りもざわ・・・ざわ・・・とざわつきはじめる。
慌てるもの(呂蒙、明命)、面白そうに笑みを浮かべる者(孫策、黄蓋)などなど反応は様々であった。
「でも俺には既に女が居るから、正妻になれるかは分からないぞ?」
「フッフ~ン!望む所だよ!シャオの魅力で一刀を骨抜きにしてやるんだから!!」
「いいねえ、その勝気な態度。けど骨は抜いて欲しくないな、動けなくなるから」
アッハッハと笑い合う一刀と孫尚香
お互いに意気投合と言った感じだ。
「じゃあ、シャオの真名を預けるね。小蓮って言うの」
「呼び方はシャオでいいのか?」
「うん。呼びにくいからみんなそう呼んでる」
なごやかな空気が流れる
そしてその空気は
「シャオ!どういうつもりだ!!」
再び孫権の叫びで掻き消されたのであった・・・
「お姉ちゃんは黙っててよ。シャオが良いって言ってるんだから・・・ていうか早く一刀を放してあげてよ」
姉に抗議する小蓮
「そうよ、本人が良いっていってるんだから貴方に邪魔する権利は無いわよ?蓮華」
孫策も孫権にそう言った
「・・・・・・」
しかし孫権は厳しい顔のまま辞めさせようとはしない。
そして
「・・・まどろっこしいな」
一刀はそう言うと
プツッ!
ポタポタ・・・
突きつけられている剣に自ら首を押し付けた
血がポタポタと床に垂れる
「「な!」」
孫権と、曲刀を押し付けていた甘寧もまた驚きの声を上げる
「何驚いてんだよ?刃物突きつけたって事はこうする覚悟があってやったんだろ?」
そう一刀は言った。そして・・・
「覚悟が無いんだったら刃物で脅したりするんじゃねえ!俺を脅すなんざ十年早いんだよ!三下共が!!」
一刀の叫びが玉座の間に響き渡る
そして
「貴様ァ!!」
自分はともかく主人に対する暴言に甘寧は一刀の首を掻き切ろうとするが
「呉を滅ぼすつもりか!?甘興覇!!」
孫策の怒声に手が止まる甘寧。
そして孫策は孫権に冷たい口調で言う。
「いいかげんに分かりなさい蓮華。貴方がやっている事は呉の立場を悪化させているだけよ?一刀のさっきの行動を見たでしょう?貴方のやり方に従う気はこれっぽっちもない。それどころか死んでも貴方には屈しないでしょう。このまま一刀に死なれたら、呉は魁と確実に戦争になるわよ?もし負けたら呉は終わりでしょうね」
「・・・・・・」
「貴方のわがままで皆を殺す気?」
孫策は冷たく言い放つ。
そして
「・・・思春、その男を放しなさい」
「・・・ハッ!」
孫権の言葉と共に一刀は解放された。
「やれやれ・・・」
未だに首から血をポタポタと流す一刀。
あまり深い傷では無いようだ。
「コーチ!これを!!」
シュルシュルと
明命は下着代わりにしている自分のサラシをほどいて一刀の首に巻きつけた。
「サ、サンキュ・・・」
さすがにその行動に動揺する一刀。
「むーー・・・」
小蓮が膨れっ面で一刀を睨む。
「傷の手当をしよう、こちらへ」
周瑜の指示で一刀は奥へと通された。
その途中
「・・・一刀、嘘ついた」
恋が一刀にそう言った。
「・・・死んではいないぞ?」
「・・・でも、大丈夫じゃない」
恨みがましい眼でそう言う恋。
「・・・そうだな、悪かった」
一刀は恋の頭を撫でてそう言った。
「・・・もっと」
「はいはい」
「・・・ご飯も・・・たくさん」
「ああ、約束だもんな」
「・・・約束」
そうして
一刀達は奥の部屋へ入っていった・・・
「一刀無茶しすぎ。シャオいきなり未亡人になっちゃうかと思ったよ・・・」
「その齢で未亡人か・・・スゲーなそれ」
アッハッハと笑う一刀
一刀は治療を受けた部屋で小蓮と話していた。
恋は扉の前で見張りをしている。
「笑い事じゃないよ、もう・・・」
「悪い悪い・・・」
そう言いながら小蓮の頭を撫でる一刀。
「・・・もう、子供扱いして」
そう言いながら、嫌がる様子もなくおとなしく撫でられる小蓮。
「別に子供扱いじゃないぞ?恋とかにもよくやるし・・・」
「こんな時他の女の話はしない~~」
「・・・そうだな。配慮が足りなかった」
「本当だよ、もう・・・」
ムスッとする小蓮
そんな中、小蓮は一刀に訊ねた。
「ねえ、一刀?」
「何だ?」
「どうしてシャオを選んだの?」
「・・・嫌だったか?」
「怒るよ?そんな訳ないじゃない・・・」
「それもそうだな、悪い」
「むしろ嬉しかったよ・・・でも、何でシャオなのかな~~って思って」
「そんな不思議な事か?」
「だって・・・シャオ、お姉ちゃん達みたいに出るとこ出てないし・・・」
自分の体型を見てため息をつく小蓮。
どうやらかなりコンプレックスになっているようだ。
「比べる時が間違ってるんだよ。シャオと同い年の頃にあの体型だった訳じゃないだろ?」
「・・・でも、今のシャオよりは成長してた・・・」
思い出して更に落ち込む小蓮。
ヤブヘビだったか・・・と一刀は少し後悔した。
「まあ、それは置いておいて・・・選んだ理由だったな?」
「うん・・・」
「まあ、一言で言えば・・・」
一刀の答えは・・・
「笑顔だな」
「・・・笑顔?」
一刀の答えに小蓮は首を傾げた。
「ああ、選んでる最中、目が合ったろ?その時笑ってくれたじゃねえか」
「う、うん・・・」
そう、あの中から一刀が選ぶためにそれぞれの女性達を見回していた時、一刀と目が合った小蓮はニコッ、と笑顔を見せてくれたのだ。
「あれにやられた。あんな魅力的な笑顔は初めてだったよ」
「・・・フ~ン」
ニヤニヤしながら一刀を見る小蓮。
「・・・何だよ」
その視線にちょっとイラッとする一刀。
「ううん、ただ・・・シャオの眼は確かだったなって思って!」
そう言って一刀に抱きついてくる小蓮。
しかし・・・
「イテテテテ!!首!首ーーー!!」
「あ!ゴメーン!」
そう言って抱きついた首から手を離し、代わりに腰に手を回し一刀の胸に顔を埋める小蓮。
「全く・・・マジで死ぬかと思った・・・」
「エヘへ、ゴメ~ン」
そのままグリグリと頭を一刀の胸に押し付けてくる小蓮。
「やれやれ・・・」
一刀もそう言いながら、左手を小蓮の背中に回して引き寄せるようにして、右手で小蓮の頭を撫でる。
「ん~~・・・」
幸せそうな小蓮。
そして
「一刀」
「ん?」
「シャオ、絶対に一刀の正妻になって見せるからね!」
小蓮の宣言に一刀は
「・・・ああ、楽しみにしてるよ」
珍しく柔らかな笑顔でそう言ったのだった・・・
そんなラブラブな空気の中
「ハーイ!傷の具合は・・・」
突然扉を開けて入ってきた孫策は中の様子を見て言葉を止めた。
「えーと・・・お邪魔だったかしら?」
小蓮は孫策の方を向いて
「そうだよ~。せっかく一刀とイチャイチャしてたのに~~・・・」
と恨めしそうに言った。
「へぇ~、早速よろしくやってるわね~~・・・」
ニヤニヤ笑みを浮かべながら言う孫策。
「・・・で?何の用だ?」
一刀は小蓮を離してそう言った。
小蓮は不満そうだったが・・・
「今日はゴメンナサイね?あの子が先走った真似して・・・」
「中々過激な妹だな」
「う~ん・・・本当は真面目ないい娘なんだけど・・・」
「蓮華お姉ちゃん頭固いもんね・・・」
「・・・まあね」
酷い言われようである。
一刀も少し同情したくなってしまった。
「・・・それで、同盟の事なんだけど」
「ああ、ちゃんと話つけてくるから心配すんなって」
「でも、使者である貴方を傷つけてしまって・・・」
「アレは俺からやったようなもんだ。例え他のヤツが文句言っても俺が説得(というか強引に押し通す)するから問題ないって・・・」
一刀の言葉に胸を撫で下ろす孫策
「良かった。今回の事で同盟組んでくれなかったらどうしよう?って心配してたの」
「そこまで小さい男じゃねえよ」
「うん!一刀は大きい男だよね~~」
「おうよ!」
小蓮の言葉に即答する一刀
「・・・仲が良くて結構ね。それじゃあ私は戻るわ。後で蓮華にも謝りに来させるから」
「・・・無理に来させなくてもいいぞ。また殺されかけたらたまらん」
「そうも行かないわよ・・・シャオも行くわよ?」
「え~・・・」
「貴方が一緒だと話がややこしくなるでしょ?」
「う~ん・・・しょうがないか」
そして小蓮は立ち上がる。
「それじゃあまたね、一刀」
「蓮華とも上手くやって頂戴ね」
「・・・ああ」
二人は部屋を出て行く。
そしてそれからしばらくして・・・
「無礼な!ここを通せ!!」
「・・・イヤ」
扉の外から言い合いが聞こえる
「・・・やれやれ」
そう言って一刀は立ち上がり、扉の方へ向かったのだった・・・
どうも、アキナスです
一刀の選んだ相手
皆さんのコメントも見て結構悩んだんですが、当初の予定通りにしました。
別の人を期待してた人はごめんなさい。
・・・というわけで、次回はあの人と一刀のおはなし
どういう結果になりますか・・・
それでは次回に・・・
「回天剣舞・六連!!」
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一刀が選んだのは・・・