「もうすぐ合流か…」
久しぶりの再会だ。少し緊張してきた…どんな顔して会えばいいのかなぁ。
「緊張されているのですか」
「ああ、少しな。久しぶりに会うからさぁ、どんなふうに喋ったらいいかわからなくて」
「ふふっ、いつも通り接すれば良いのですよ」
思春は柔らかな表情を俺に向けてくれる。
「そうだね。今まで会えなかったから、雪蓮姉さんや他のみんなに話したいことは沢山あるしね。早く会いたいよ」
こうして俺達は雪蓮姉さま率いる本隊に向けて隊を進めていた。
「申し上げます!」
伝令がこちらに慌ててやってきた。
「どうした?」
「はっ。孫策様本隊が黄巾党分隊を発見し、前線部隊を率いて先行したとのことです!」
「何!?」
はぁ~、あの人は…総大将自ら敵に突っ込むとは。変わって無いな。そばにいる冥琳は大変だな。
「一刀様。どうします?」
「仕方がない。全軍!行群速度を上げるぞ!付いてこい!」
「「「おお!!!」」」
隊の速度を上げ、本隊との合流を早めることにした。
「雪蓮姉さん!単騎で敵に突っ込むとはどういう事だ!」
俺は合流した本隊で雪蓮姉さまを見つけ一喝した。俺達が合流したとき黄巾党との戦闘はもう終わっており、隊は休憩していた。
「何よぉ~久しぶりの再会の一言目がそれ?もっと言うことがあるでしょう?」
「しかし姉さんは呉の王で、もしものことがあったらどうするんだ?俺も心配したんだからな!」
「ごめんなさい…」
「…まあ、お叱りは冥琳からも受けたんだろう。無事でよかった、姉さん」
「一刀…ありがとう。久しぶりね、元気だった?」
「ああ、見ての通りだよ」
「少し見ない間にたくましくなって。それにとてもかっこ良くなった!」
そう言うと姉さんは俺に抱きついてきた。む、胸が…あたってる……
「茶化すなよ姉さん」
「茶化してなんか無いはよぉ~。早くお姉ちゃんをお嫁さんにもらってね♡」
この人は…こういう所は母さんに似てるな。
ジーーーーーー。
…思春がこちらを見ている。少し怒っているようだ。どうして?
「あの、思春さん?」
「…何でも有りません。お久しぶりです雪蓮さま」
「思春も久しぶり!元気してた?」
姉さまと久しぶりの再会を喜んでいると、
「久しぶりだな一刀。元気にしていたか?」
「久方ぶりだな、一刀よ」
「お久しぶりですぅ~、一刀さまぁ~」
とこちらも久しぶりに会う3人が話しかけてきた。
「久しぶりだね冥琳、姉さんは相変わらず大変そうだね。祭と穏も久しぶり」
メガネをかけた長い黒髪の女性は周瑜、字を公謹、真名を冥琳と言う。呉の軍師で姉さんとは『断金の交わり』を交わすほどの親友で、公私共に姉さんを支えている。
薄紫の髪の女性は黄蓋、字を公覆、真名を祭。母さんの代から仕える宿将で、弓の名人である。
この二人は俺にとって姉のような存在である。
緑の髪のメガネをかけた少女は陸遜、字は伯言、真名は穏である。一見ぼんやりしているようだが冥琳の一番弟子で、軍師としての能力は非常に高い切れ者である。
「元気そうで安心しました。雪蓮は相変わらずですよ」
「はははっ。でもこんなに早くみんなと再会出来てよかった。」
再会の挨拶をひと通り終えると、
「さてと。再会を喜ぶのはこれくらいにして、軍を再編して進軍を再会しましょ」
姉さまが一区切りついたところで言った。
「そうだな、一刀、興覇、疲れていると思うが準備をしてくれ」
「わかった」「了解しました」
こうして俺達は再び黄巾党本隊に向けて隊を進めた。
「しかしいくら俺達が合流したと言っても、20万もの黄巾党に対して俺達は数では明らかに不利だぞ?」
「そこは問題ない。私たちの他に曹操や袁紹、公孫賛、最近名を上げている義勇軍の劉備など他の諸侯も黄巾党の本隊に向けて軍を進めているという情報が入っている。私たちだけではなく他の軍勢もいるから数の問題は無い」
そうこう言っていると黄巾党本隊が篭る城のそばまでやってきた。
「冥琳の言った通り他の軍もどうやら到着しているようだね」
周りを見ると曹、袁、公孫、劉などの旗が見える。
「さてどうやって攻める?」
すると穏が城内の地図を取り出した。あの城はもともと太守の城で城内の詳しい情報がわかる。
「厄介な城だな……後ろは絶壁で回りこむことは不可能。左右は狭く、全軍を展開できるのは全面のみか。」
「それなら全面から突撃すればいいじゃない!」
この人は…
「姉さん、冗談はやめてくれ。そんなことをすると被害が半端ないぞ」
雪蓮姉さんは小さい声で「冗談じゃないのに……」とつぶやいていたが無視した。
俺は地図を見つめどうするか策を考えた。
「一刀、何か考えがあるか?」
冥琳が聞いてくると、
「そうだなぁ…この倉のあたりが死角になってないか?多分ここは兵糧を保管している倉だと思う。ここを攻めるのはどうかな?」
「どうやってですか?」
「夜を待って城内に潜入し火を放つ。その時、正門で夜襲をかけるフリをして敵をそちらに惹きつければいい。」
「そうだな……興覇と幼平の部隊が城内に侵入し倉に火をつける。その後正門の部隊が混乱する城内に突入…ということだな?」
「ああ」
冥琳は作戦を纏めるとみんなに伝えた。
幼平とは周泰の字で、真名は明命という。黒髪の長い髪の少女で背中に長い刀を背負っている。隠密行動にたけており諜報活動では活躍してくれる。彼女は各地に散らばっていた旧臣たちの連絡役をしてもらっていた。そして今回の招集の報告で俺のところに来たあと本隊合流の為に一緒に行軍していた。
「それでは祭殿は正門の囮役を頼みます。工作活動が成功したら、雪蓮と一刀は祭殿と合流して
城内に突入してくれ」
「承知した」「わかったは」「了解」
こうして俺達は陣を構築し、夜を待った。
そして夜になり作戦開始が迫って来た。
「一刀さま」
自分の天幕で休んでいると思春がやってきた。
「どうした思春?」
「…今回の作戦、一刀様は危険な役目を負われるのに私は近くに居れません。どうか無理をなさらないようお願いします」
「心配要らないよ思春。俺だけで攻めるんじゃない、雪蓮姉さんや祭もいる。それに思春も危険な任務になる。そっちも無理をするなよ」
「はっ、ありがとうございます。準備が有りますのでこれで失礼します」
そう言うと思春は去っていった。彼女の声を聞くと変に入っていた体の力がすこしほぐれたような気がした。緊張していたのか俺。無理もない今まで小規模な賊との戦闘は経験しているが、こんな大軍での戦いは初めてだ。緊張するのも仕方が無いか……そんな俺を思春は彼女なりに心配してくれたのかもしれない。
「気を付けろよ、思春」
こうして黄巾党本隊との戦闘が始まった。
黄巾党との戦闘は呆気無く終わった。
倉からの火の手を見た黄巾党たちは混乱し、あわてふためいており、そこに俺達が突入。首領が殺られたとたん、さらに混乱が広がった。蜘蛛の子を散らしたように逃げて行く黄巾党たちを徹底的に追いかけ……命を刈って行く。
黄巾党の首領を撃破した俺達の名は大陸に広まり、雪蓮姉さんは『江東の麒麟児』と噂される様になった。
どうも、読んでいただいてありがとうございます。今回は前の2つに比べると少し長めのモノとなりました。
今回悩んだのは祭さんの一刀に対する言葉遣い!ゲームでは蓮華には敬語、一刀には砕けた喋り方をしていましたが本作品は一刀くんが孫権。迷った挙句、敬語で名前は呼び捨てにしました。
しかし祭の敬語は堅い(?)言葉なので書くのが難しい……
(追記)やっぱり祭の喋り方を敬語から砕けた言葉に変更します。祭は一刀の武の師匠と言う事で…
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投稿3作作品目。今回は黄巾党との戦いですが、戦闘描写が…
頑張って書きました!
2011 5/15 祭のセリフを変更しました。