「貴様に任務を命じる。ただちに晋の都に向かい、北郷一刀を解放せよ!さあ、いけ!!」
「了解しましたー!」
ピクッ
涙を見せ顔を伏せていた雪蓮の体が小さく跳ねた
「一刀・・・・・」
冥琳は雪蓮の耳元に寄ると
「そうだ雪蓮、北郷だ。・・・・・コショコショ」
「・・・ウンウン・・・・・・!?」
二人が視線を合わせると、冥琳は力強く頷いた
そして
「残念ですが、まだまだ蓮華様は雪蓮の足元にも及ばないようだ」
「・・・・・なんだと」
「戦場では、一瞬の判断が命運を分けます。
蓮華様に本当の覚悟があれば、雪蓮が謝罪した時に私達を捕縛し、処断できたはず」
「くっ、何をしている。さっさとあの二人を捕らえよ!!」
蓮華は馬上から兵に捕縛を命じた
しかし
「もう遅いと申しているのです」
二人を囲む兵が全て倒されていた
彼らを切ったのは南海覇王、雪蓮だ
雪蓮は蓮華にウィンクすると
「私も冥琳も死ねなくなったわ。ごめんね」
蓮華は悔しげに二人をにらみつけた
そんな妹に雪蓮は
「・・・・・勝手な姉を許して。そして・・・・生き残りなさい。死ぬんじゃないわよ」
二人は馬を並べ北方へ走り去った
蓮華は二人を見送ると、馬首を呉へ向ける
「思春、帰るわよ」
「よろしいのですか?」
「捨て置け、今は呉の統治が先だ」
蓮華はもう一度雪蓮たちが去った方向を振り返る
(ごめんなさい姉さま・・・・・・・・・・・・どうかご無事で)
~北伐~
蜀の北伐軍は快進撃を続け、ついに長安の目前にまで迫った
長安陥落は目の前だ
「それで、長安の守将は?」
「それがびっくりなんです。華雄さんと流琉ちゃんなんですよ~」
詠に報告をしているのは斗詩
北伐に参加した将は
詠 雛里 鈴々 星 紫苑 桔梗 そして猪々子と斗詩
雛里と星は成都に帰還、紫苑と桔梗は街亭だ
焔耶と白蓮は成都の守護として残ってもらった
現在長安攻めに参加しているのは 詠、鈴々、猪々子、斗詩の4人だけ
詠は頭を抱えた
「だぁ~~~、どこに行ったかと思えばどうしてこんなところに華雄将軍がいるのよ!!」
行方不明だったとは言え、流琉が長安の守備に着くのはなんとなく分かる
しかしなぜ華雄が・・・・・・
華雄と一戦交えた鈴々が言うには
「道に迷っててきづいたらここにいたとか言ってたのだ。迷子なら仕方ないのだ」
詠は眩暈を覚えた
猪々子と斗詩は長安の守備の堅さを伝えた
「華雄は馬鹿だけどめちゃくちゃ強くなってるぜ。鈴々が来てくれなかったらと思うと・・・・
ガクガクブルブル」
「華雄さんはとても強いですし、流琉ちゃんの伝磁葉々も厄介です。
攻城兵器は全て破壊され城壁に取り付くこともできません・・・・・」
華雄と流琉が長安の守備についているのは想定外だ
さらに悪い報告が続く
「急報です。荊州方面から長安へ援軍が派遣された模様、10万の大隊を3つに分け進軍中」
30万の兵力に合流されたら今度は自分達が殲滅されかねない
詠たちに残された時間は少なかった
珍しく猪々子がおびえていた
「どどどどどどうすんだよ。華雄だけでも怖いのに、30万の援軍がきたらあたいらやばいじゃん」
やばいなんてもんじゃない
北伐軍が崩壊すれば漢中は突破され、そのまま成都に晋の軍勢が雪崩れ込むことになる
それは蜀の滅亡を意味する
詠は勅を拒否してこの北伐を強行した
ここで負ければ、反董卓連合と同じようにまた主を危険に晒してしまう
それだけは絶対にできない
「猪々子、あんた華雄将軍と戦ったのよね。そんなに強かったの?」
「強いなんてもんじゃねえぜ。ありゃ恋と同じかそれ以上って感じだったよガクガクブルブル」
「鈴々はどう見る?」
「鈴々の方が絶対強いのだー」
詠は考える
流琉は強い、華雄は異常に強い、攻城兵器は使えない
「・・・・そっか、簡単なことじゃない」
斗詩が驚いた
「簡単って、長安を落とす方法が見つかったんですか?」
「ええ、華雄将軍が強ければ強いほど、長安は楽に落とせるわ」
鈴々、猪々子、斗詩の頭上にはてなマークが点等する
「皆、疲れてるでしょう。ゆっくり休んで戦いに備えなさい。早めに睡眠を取り疲れを癒すように」
~深夜~
怪しげな男が長安に侵入を試みた
「むむ、怪しいやつ、ひっ捕らえろ!!」
気づいた兵達は逃げる男を捕まえようと追跡した
しかし、男は手練、逃げられてしまった
「ちっ、逃げ足の速いやつめ。・・・おや?」
1人の兵が、男が落としただろう書簡を発見する
「これは・・・・・・・・むむむ!!!大変だ、至急、典韋将軍にお知らせせねば」
書簡を拾った兵は流琉の元へ駆け込んだ
仮眠を取っていた流琉は急報と聞き、眠気を覚ます
「これをごらんください」
流琉は書簡を受け取り中身を確認した
華雄将軍が蜀へ寝返れば、成都にいる董卓様もお喜びになりましょう
董卓様は華雄将軍と再会できる日を心待ちにしているのです
速やかなる策の実行を 賈文和
「こ、これは!!すぐに華雄さんを連れてきてください」
「はっ!」
兵は華雄のいる兵舎に向かった
それから数分
華雄は現われた
「やあ典韋、こんな夜更けまで仕事熱心だな」
「・・・・・華雄さん、これをご覧ください」
「ん?なんだこの書簡は」
「とにかく読んでください」
「どれどれ、華雄将軍が・・・・・成都に・・・・・董卓様が!!・・・・董卓様は・・・再会できる日を心待ちに!!」
華雄のテンションが上がって来た
「華雄将軍、これは事実なのですか?」
「うおおおおおおおおおおおおお、こうしちゃおれん、すぐさま成都に向かわねば!!!」
「く・・・・この書簡は本物なのですね。酷いです華雄さん!皆さん、華雄将軍を捕まえてください!!」
「何をする貴様ら!邪魔するなーーーーー!!」
華雄はとにかく強くなっている
一般兵が束になっても止められる相手ではない
「華雄将軍が襲われてるぞ。将軍をお守りしろー!」
その日は華雄の部隊が夜の警備担当だった
詠はそのことも知っていた
長安城内は一瞬で内乱状態となった
~北伐陣営~
「賈駆様、長安城内より火の手が上がりました!」
「よし、全軍突撃ーーー!!!!!」
鈴々、猪々子、斗詩の3軍は3方向から同時に長安を攻撃
長安防衛部隊はまともな防衛行動がとれず
さらに華雄が内側から中央城門を突破、詠と合流したことで晋側は完全に崩壊した
長安は蜀によって陥落し、流琉は命からがら脱出した
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長安には意外な人が