「・・・失礼する」
「・・・・・・」
「ど、どうぞ・・・」
侍女に案内されて、蓮華と思春が姿を現す
「えっと・・・ごめんなさい。ちょっと、今日は動けないんで・・・こんな感じですけど・・・」
「気にするな・・・こちらが押しかけたのだからな」
「あ、ありがとうございます・・・」
部屋の中は妙な雰囲気だ
先ほどまでの明るいものではなく
ピンと張り詰めたような冷たい雰囲気
その妙な雰囲気の中・・・
蓮華が口を開く・・・
「私は姓は孫、名は権、字は仲謀だ・・・そして・・・」
横に視線を向ける
「姓は甘、名は寧、字は興覇だ・・・」
簡素な自己紹介・・・
一刀も少しばかり戸惑ってしまったが
「そ、それじゃあ・・・俺の名前知ってるみたいだけど改めて・・・。俺は姓は北郷、名は一刀、真名と字はありません。好きな方で呼んでください」
「・・・あぁ」
「・・・・・・」
「・・・うっ」
重苦しい雰囲気は続く・・・
それに加え・・・
蓮華は一刀の目をまるで睨み付けるように見ている・・・
「・・・華琳」
「何かしら?」
蓮華が一刀の傍らにいた華琳に話しかける
「・・・北郷と二人で話したい・・・外してもらっても構わないか?」
「・・・・・・いいわ」
以外にもあっさりと許可が降りる
「れ、蓮華様!?」
思春は何も聞かされていなかったのか、驚きを隠せなかった
「思春も・・・頼む。私一人で・・・判断したい」
「!!わ・・・分かりました・・・・・・」
蓮華の真剣さが伝わったのか、思春も食い下がるようなことはしなかった
しかし・・・
蓮華の思いつめたような表情を見て・・・
心配になったことも事実・・・
「・・・季衣、流琉も・・・行くわよ」
「「は、はい」」
華琳に連れられ、親衛隊コンビも部屋を出て行く
「またな、3人とも」
「はい、兄様」
「じゃあね、兄ちゃん」
「・・・・・・」
華琳と思春が振り向く
華琳の顔はにっこりとした笑顔で
「(一刀・・・・・・分かってるわよね?)」
「ッ!?(コクコクコク)」
「(何かあれば・・・・・・”殺す”)」
「うぉ!?」
華琳と思春の表情から何が言いたいのかを読み取り、全力で痛む首を縦に振る一刀
「・・・ふふ」
そして、意味深な笑みを残して、華琳は季衣、流琉、思春の3人と共に部屋を出て行った・・・
「・・・」
「・・・」
4人が出て行った後、しばらくの間、部屋の中には沈黙が訪れた
蓮華は何かを見極めようとするために・・・
一刀は何をすればいいのか分からずに・・・
ただただ・・・
黙って、お互いの目を見ていた・・・
その間に部屋の外には人が集まっていた
春蘭と秋蘭は季衣・流琉から聞き
指示を出し終わった三軍師も
三羽烏は見舞いに来たが入れずに
霞は面白そうなことがありそう、と三羽烏についてきて
最初からいた華琳と思春に加え
かなりの者たちが部屋の物音に”聞き耳”を立てていた
「全く動きがないな」
「・・・うむ」
「ふ~む」
「・・・分かりませんね~」
「まったく!なんなのよいったい!」
「あかん・・・何も聞こえへん」
「全然分からないの~」
「真桜、沙和・・・隊長は用があるみたいだし・・・ほ、ほら行くぞ」
「まあまあ、凪。ここにおった方が絶対おもろいって!」
「静かに!」
「「「「!!」」」」
思春の声をひそめながらも強い口調に一斉に黙り込む
「・・・!?何か話しだした・・・」
「「「「!!」」」」
「・・・北郷一刀」
「は、はい」
沈黙を破り、蓮華が語りだす
「少し・・・聞きたいことがある」
「あ、はい・・・何ですか?」
「お前は三年前・・・この大陸に自分の意思とは関係なくやって来たそうだな」
「!!そこまで知られてるんだ・・・。確かに・・・そうでしたよ」
初めて、華琳たちに会った時のことが昨日のことのように思い出される
「そうか・・・。ならば、もう一つ聞きたい」
「・・・?」
「・・・この大陸の歩むべき歴史を知っていたというのは・・・本当か?」
「・・・(コク)」
今度は黙って頷く
「・・・なぜだ」
「うん?」
「只でさえ無理矢理に連れてこられたのに・・・なぜ”消えて”までその歴史を曲げるようなことをしたのだ?」
自分の存在を掛けてまで一刀が守りたかったもの・・・
そんなのは一刀を見ていれば分かる・・・
だが、蓮華は実際に聞きたかった・・・
一刀の誇りを・・・
それに掛けた”想い”を・・・
「簡単だよ」
予想通り、一刀は笑顔で答える
「魏の皆が好きだったから・・・そして・・・」
しかし、これ以上は予想外の答え
「俺が・・・弱かったから」
「・・・弱かった?」
蓮華の言葉に頷いて答える
「そう。弱かったから・・・あんな選択しかできなかった。誰かを守る力もなかった・・・・・・何より」
一つ息を吐く
「心が・・・弱かったから」
「・・・心」
「・・・うん。・・・正直さ・・・・・・華琳たちが羨ましかった。皆・・・どちらかを持ってたから」
「・・・・・・羨ましい・・・・・・」
蓮華の中で、何かがひっかかる
「俺には何にもない・・・そう思ってた」
「!?」
・・・あぁ・・・そうか
「だから・・・最低限・・・自分にできることを考えて・・・あの選択をした」
この男は・・・
「・・・ホントに弱かったよ」
自分と似ているんだ・・・
蓮華も雪蓮に対して、何度思ったことだろう
あの才能が羨ましいと・・・
あの力が欲しいと・・・
「・・・・・・」
この男も自分と同じことを感じてきた・・・
そう思ったら・・・
この男を見極めるという目的など吹き飛んでしまった・・・
代わりに・・・
聞きたいことが出来た
しかしそれは・・・
自分の恥をもさらすことになる
「孫権さん?」
「ッ!?」
考え込む蓮華に一刀が声を掛ける
「もしかして・・・孫権さん」
「!!」
「まだ聞きたいことがあるんじゃないですか?」
「あ、い、いや・・・」
吸い込まれそうな優しげな眼差し
不意に雪蓮の言葉が思い出される
『一刀と話すことは無駄にならない』
もしかしたら姉様は・・・
私の悩みを見抜いて・・・
「・・・北郷」
「はい」
そう考えたら・・・少しだけだが、余計な力が抜けた気がした
「これから話すことは・・・他言無用だ・・・。お前に聞きたいこと、というよりは・・・」
愚痴かもしれない・・・
「分かりました。俺で答えられることなら」
「そ、そうか」
「はい」
一刀の顔を見る
・・・不思議だ
心が落ち着く
そして同時に納得する
華琳たちが
この者を側に置きたいという気持ちを理解したから・・・
「・・・・・・北郷・・・・・・私は・・・・・・」
「・・・ん?」
それは・・・・・・
「正直に言えば・・・・・・姉様が羨ましい・・・・・・」
「・・・・・・うん」
北郷一刀と自分が似ていると思ったからこそ・・・
「戦乱が終わった頃・・・・・・姉様から・・・・・・自分の代わりに王になりなさい、と・・・・・・そう言われたが・・・・・・」
自分が姉の才能に憧れ・・・・・・嫉妬しているように・・・・・・
「・・・・・・私には・・・姉様のように王になる才能などない・・・・・・そう・・・・・・思っている」
「・・・・・・」
『!!』
部屋の前で、蓮華の言葉に反応して1つだけ気配が動く・・・
しかしすぐに・・・
『『『!!!!』』』
いくつかの気配が動き・・・大人しくなった・・・・・・
「北郷・・・・・・」
「・・・んっ?」
その間も蓮華は話し続ける・・・・・・
「お前は・・・・・・」
自分が姉の様になることを諦めたように・・・
「華琳たちの側を・・・諦めたことはないのか?・・・・・・」
「・・・・・・」
『『『『『!!!!』』』』』
今度は先程とは逆に、複数の気配が動いた・・・・・・
しかし、それは暴れるとか・・・部屋に乗り込むための動きではなく・・・
一刀のその答えを・・・
聞き逃さないようにするためのもので・・・
「・・・・・・華琳たちを・・・・・・」
何かを考え込むように、一度目を閉じる・・・
「・・・・・・」
蓮華もその間、黙っていたが・・・
「・・・俺は・・・・・・」
すぐに一刀が、何か決意を込めた表情で答えた
「祭さんには言ったんだけど・・・・・・3年前にあの娘たちとした約束・・・・・・全部破って・・・天に帰ったんだ・・・・・・」
「約・・・束?」
蓮華の呟きに頷いて答える・・・
「天に帰ることは・・・運命だったかもしれない・・・・・・でもさ・・・」
「・・・・・・」
過去の自分に対する後悔の念に駆られながら・・・
「無責任に約束をして・・・・・・運命だからって諦めて・・・・・・何も・・・・・・抗おうとはしなかったから」
悔しそうな表情を浮かべ・・・
「そういう意味じゃ・・・・・・華琳たちのこと・・・・・・諦めたかもしれない」
「・・・そう・・・か・・・・・・」
蓮華の顔にも、同情にも似た悲哀の表情が浮かぶ・・・
「でもね」
「!!」
後悔を打ち消すような一刀の少し明るくなった声に驚かされる
「3年間離れて・・・・・・凄く悲しい思いをしたけど・・・・・・」
一刀も一度深呼吸をして・・・
「今・・・俺は”ここ”にいるから」
「!!」
蓮華は驚いた・・・
なぜなら・・・
なんでもないことを口にする一刀の表情が・・・
先ほどとは違い・・・
穏やかな“笑顔”だったから・・・
「・・・俺も3年間・・・・・・色々学んできた・・・・・・」
そして・・・風たちが持ってきた書簡や竹簡を見ながら・・・・・・
「当然・・・華琳たちも前を見て進んできたはず・・・・・・」
「・・・・・・」
蓮華もそれを知っている・・・
自分も呉で、三国による平和のための政策にも関わってきた・・・
当然それは・・・
華琳たちも例外ではないのだから・・・
「これから・・・そんな華琳たちに追いつくのは大変かもしれない」
「・・・・・・」
「それでも・・・・・・追いつくための努力は諦めたくない」
「・・・・・・追いつくための努力・・・・・・」
一刀の言葉に圧倒されていた蓮華もどうにか言葉を発した
「・・・・・・今の俺じゃあ・・・・・・追いついたとしても・・・・・・華琳たちの背中を守れる程の”力”はないけど」
ボロボロになった自分の体に目をやりながら・・・
「追いついて・・・彼女たちと同じものを感じて・・・・・・」
----------誰よりも側で・・・
「彼女たちを感じて・・・」
----------あの娘たちのことを・・・
「彼女たちを・・・理解してあげたい」
----------支えてあげたい・・・
「華琳たちを・・・・・・支える・・・・・・」
一刀の想いを聞き、蓮華は何かを考えるように目を閉じた・・・
「俺なんかが言って良いことか分かんないけど・・・」
そんな蓮華に語りかけるように・・・
「・・・孫権さんは・・・昔の俺と似てるよ」
「!?」
一刀の言葉に、閉じていた目を開け、反応を示す
「(北郷も・・・同じことを・・・・・・)」
その目をしっかりと見据えたまま・・・
「一人で抱え込み過ぎだと思うよ」
「・・・・・・」
「少なくとも俺は・・・・・・それで後悔したから・・・・・・」
一刀が話し終えると、場に静寂が訪れる
「・・・しかし」
蓮華が俯かせていた顔を上げる
「私は・・・孫家の娘だ!泣き言など許されない!王族としての責任もある!そして・・・」
「・・・・・・」
蓮華の言葉にも力がこもり始める・・・
「もしも”王”になり、何かの決断を下し!!それが結果的に、民を苦しめることになるかもしれない!!お前とは!!・・・お前とは立場が違うッ!!」
「・・・・・・」
蓮華が抱えたもの
その全てが、今
吐き出された
「・・・・・・」
そして、それを黙って聞いていた一刀も
「・・・孫権さん」
口を開く
「それでいいんだよ」
「・・・えっ?」
蓮華はまた驚かされた
一刀の肯定の言葉に
そして・・・
穏やかな笑顔に・・・
「今みたいに・・・本音を出せばいいじゃないか」
「ッ!?」
数秒前に自分が口にした言葉を思い出し、ハッとする
「さっき・・・一人で抱え込まないで、って言ったよね?」
「・・・(コク)」
少し赤くなった顔で頷いた
「孫権さん・・・もっと周りを見てみなよ」
「!?」
蓮華の頭の中で、ある言葉が思い出される
それは、雪蓮から『王になりなさい』と言われてからしばらくした頃
『姉のような“王”』になる自信がいまいち持てずに
雪蓮への返事を待ってもらっていた時
雪蓮から言われた言葉・・・
-------「蓮華・・・あなたの周りには何が見えているの?」-------
同じだ
言い方こそ違えど
問いかけていることは
同じだ
「・・・北郷」
「・・・ん?」
今までずっと考えてきた
「こんなことを聞くのは・・・おかしいかもしれない」
自分なりに姉様の側で
「だが!・・・教えてくれ」
多くのこと見て・・・聞いて・・・
「私の周りに・・・」
学んできたのに・・・
「何があるというのだ・・・」
私には・・・何もないのに・・・
「・・・」
一刀は一度小さく息を吸った
これから自分の言うことへ
責任と
決意を
込めるために
「・・・孫権さんの周りには」
そして・・・
「”仲間”がいる」
「!?」
言った・・・
「王が・・・王族が弱音を吐いちゃいけない?確かに民の前だったら、不安を煽るかもしれない。でも、信頼してる”仲間”にぐらい言っても良いじゃないかな?頼ったっていいじゃないかな?すごく失礼かもしれないけど・・・孫権さんが今していることは、俺が3年前に魏の皆にしてしまったことだよ」
「ッ!?」
一刀の言葉にも感情が込められる
目の前にいる王族である”女の子”が
自分と同じ過ちをしようとしている
それだけは
させちゃいけない・・・
「俺も3年前、自分が運命を受け入れればいいって・・・これは自分がとるべき責任だって思ってた。でも・・・違ったんだ。結局・・・それは”自己満足”だった」
「!!」
蓮華も一刀の優し気な表情に
その込められた”想い”に
耳を奪われる・・・
「こっちに帰って来て・・・霞に言われた・・・”なんで言ってくれなかったんだ!”って。・・・桂花に言われた・・・”本当は自分たちのことを信じていなかったんだ”って・・・・・・」
『『!!』』
ドアの向こう・・・
気配が動く・・・
「桂花にそう言われた時、俺はすぐに答えれなかった・・・実際そう思わせてしまったんだって考えたら・・・」
「・・・北郷」
蓮華も、一刀と魏の将たちとの再会には立ち会っていた・・・
そしてその時の・・・
それぞれが抱いていた想いを・・・
感じていた・・・
「・・・皆はさ」
笑顔を浮かべたまま
「こんな俺でも・・・力になってくれようとしてくれてた」
一刀の中で浮かぶのは
「手を・・・差し伸べててくれた・・・」
“仲間”の
「でも、俺は・・・」
“愛する人たち”の笑顔
「差し伸べられたその手を見ようとすらしなかった・・・」
その笑顔を失った時・・・
「だからね、孫権さん」
「・・・」
死ぬほど後悔したから・・・
-------「差し伸べられた手を握り返す・・・・・・”勇気”を持ってください」-------
「勇気・・・を」
「・・・うん」
蓮華の漏らした呟きに一刀が答える
「きっと、孫権さんは自分が思っている以上に・・・一人で色々なこと抱え込んじゃってるから・・・」
「・・・・・・私が」
「うん・・・それにね・・・」
一刀は続ける
「孫権さんが思っている以上に・・・周りの人たちは孫権さんのこと、ちゃんと見てるし・・・何よりも、大好きだと思うよ」
「周りが・・・・・・私を」
「・・・うん」
一刀の頭の中では、先ほどの思春の様子が思い出されていた
『何かあれば・・・・・・”殺す”』
完全に殺気の込められた視線が
「あはは・・・」
思わず苦笑いが浮かんでしまう
「・・・・・・私を」
そんな一刀の様子には気づかず、蓮華は考え込んでしまっていた
蓮華自身・・・
今までも十分なほど皆の力を借りてきた・・・
それでも・・・
それでもなお足りないというなら・・・
自分は王族として・・・
「孫権さん」
「ッ!!あ、な、なんだ?」
一刀の突然の言葉にまた驚かされる
「もしかして・・・まだ、迷ってる?」
「!!・・・そう・・・だな」
一瞬、どう答えようか迷ったが、正直に答えることにした
「だったらさ」
一刀の明るい声が響く
「皆に聞いてみればいいよ」
「聞く?・・・何をだ?」
一刀の言いたいことが分からず、困惑してしまう蓮華
「頼ってもいい?って」
「・・・は?」
一刀らしい答え・・・
しかし、蓮華は予想外の答えに、つい間の抜けたような声を出してしまった
「ちょ・・・ちょっと待て。い、いくらなんでもそれは・・・」
「え、ダメかな?」
「そ、それは・・・」
しかし、明確な理由は出てこない
「だって、好きな人が困ってたら助けになりたいって思うんじゃないかな?孫権さんも想像してみてよ。例えば・・・雪蓮や甘寧さんが困ってたら何か力になりたいって思わない?」
「そ、それはもちろんd・・・・・・あっ」
「あはは、そういうことだよ。それにしても・・・ん~俺も遠まわしに言いすぎたかも・・・ごめんなさい」
「あ、い、いや・・・いいんだ・・・」
すっかり蓮華も肩の力が抜け、一刀のペースに巻き込まれていた
「うん、まぁ・・・さっき孫権さんが言ったように王様って立場は特別かもしれないけどさ」
「・・・あぁ」
「確かに甘寧さんや明命や亞莎は”家臣”かもしれないけど」
「・・・えぇ」
「大切な・・・”仲間”だよね?」
「・・・そう・・・ね」
蓮華の答えが自分が望んでいたものだったので、一刀も嬉しくなる
「王様は大きな決断を迫られる時もあるかもしれないけどさ」
「えぇ」
「本当に間違った決断をした時は・・・”仲間”が止めてくれる。それぐらい信じてあげてもいいんじゃないのかな」
「そうね、全くだわ」
一刀の言葉に納得し、蓮華の口から大きく息が吐き出される
「・・・全くよ」
蓮華は何かすっきりとしたものを感じていた
こうやって言葉に出してみれば・・・
自分は本当に下らないことで悩んでいた・・・
------”仲間”を信頼していない?------
本当に馬鹿らしい・・・
いや、馬鹿なのだ私は
一人ではこんなことですら悩んでしまう程
弱いのだ
今の私は・・・
「・・・北郷」
「ん?」
自分の中の変化を受け入れる
-------「ありがとう」-------
「・・・っ!?え、えっと・・・」
「?どうかしたの?」
「い、いや、その・・・どう、いたしまして」
「・・・・・・ぷふっ」
一刀の慌てように蓮華は思わず噴出してしまった
「(う~~参ったなぁ・・・)」
一刀が慌てた理由
それは・・・
「(笑うと・・・凄くかわいいなぁ・・・いや、そのままでも可愛いんだけどね!?)」
今日初めて見せた蓮華の笑顔に見とれてしまったから
「ご、ごめんなさい。あなたの様子がおかしかったから」
「い、いや別にいいですよ・・・ん?」
笑いながら謝る蓮華
そして一刀は・・・
「孫権さん・・・その喋り方」
「?変かしら?」
「いや、大丈夫!!そっちの方が可愛いし・・・って・・・あ」
「へっ!?か、かわ!」
先ほどからの蓮華の変化に気づく
「か、からかわないでッ///」
「か、からかってなんかないですって」
部屋の中が甘い空気になっていく
『『『『『『(・・・・・・殺す)』』』』』』
外の空気はとんでもないことになっていく
「きょ、今日は・・・」
「へっ?」
「か、帰るわ」
「あ、は、はい」
顔を真っ赤にしたまま、蓮華が一刀に背を向ける
しかし・・・
「ほ、北郷!」
「は、はい!」
背を向けたまま、声を掛ける
「あ、あなたに・・・真名を許すわ・・・・・・蓮華よ///」
少し照れくさそうな声
「あ、う、うん・・・その・・・えっと・・・」
落ち着けるために一度深呼吸をする
「ふぅ・・・うん、ありがとう・・・蓮華」
「!!え、えぇ・・・・・・そ、その・・・」
蓮華はまだ何か言いたいことがあるようだ
「蓮華!」
「ッ!?」
今度は一刀の番
「俺のことは・・・その・・・」
「!!あ、えっと・・・ッ!!」
慌ててドアを開ける
『『『『『!!』』』』』
「・・・あっ」
華琳たちとぶつかりになるが、なんとか避ける
そして・・・
出て行く直前・・・
「そ、それじゃあね・・・一刀///」
「れ、蓮華様!?」
『『『『『(やっぱり殺す!)』』』』』
「!!」
しっかりと、一刀の耳に届く声で
名を呼んだ
「・・・」
蓮華が出て行って一刀は放心状態だったが・・・
「・・・一刀」
「・・・えっ?なッ!!!!」
掛けられた声に反応してみると
「「「「「(ニコニコ)」」」」」
妙にニコニコしている華琳たちがいた
「か、華琳?・・・それに、み、皆も・・・」
「一刀・・・随分楽しそうだったわね?」
「「「「(ニコニコ)」」」」
「え、えっとね・・・違うんだよこれは・・・その・・・」
身動きのとれないこの状況・・・
異常なほど汗がとまらない
だってこれは・・・
「覚悟しなさいッ!!!!」
「「「「(キッ!!!!)」」」」
「うわぁぁーーーーーー!!!!」
命の危機なのだから・・・
「れ、蓮華様!?」
思春は先を歩く蓮華に追いついた
「・・・」
カツ、カツ、カツ、カツ
「!!」
そして、黙って歩く蓮華の真っ赤な顔を見て驚いた
「蓮華様!」
「へっ!?な、何かしら?」
思春の少しだけ大きくした呼びかけにようやく答え、思春の方を向く
「蓮華様、そのままで町に出られるのは・・・」
「あ、え、えぇ・・・そうね」
思春に言われ、火照った頬に手をあてる
「すぅ・・・・・・はぁ・・・・・・」
「・・・」
落ち着かせるために何度も深呼吸をする
「・・・・・・落ち着かれましたか?」
「・・・え、えぇ・・・ごめんなさい、思春」
「・・・いえ」
もう少し落ち着かせるために、蓮華は廊下の壁に背も垂れた
「・・・それで・・・どうでしたか?北郷一刀は・・・」
部屋の外で聞き耳は立てていたが、全てを聞き取ったわけではないので確認のために聞く
「!!そ、そうね・・・・・・コホン」
一瞬ざわついた心を静めるためにわざとらしく”せき”をした
「噂は信じてはいなかったけど・・・・・・本当に噂どおりだったわ」
「・・・・・・」
複雑な気持ちになる思春・・・
「そして・・・私に似ていた・・・」
「!!そ、それは!!」
違う、と言おうとしたが、蓮華は首を振る
「・・・私が悩んでいたこと・・・全部見透かされてしまったわ」
「・・・そ、それは」
そして、蓮華は思い出す
一刀に言われたこと
分からないなら
聞いてみればいい
「ねぇ、思春・・・」
「はい」
「私ね・・・意地になってたわ」
「・・・蓮華様」
静かに語り出す
「姉様に次の王になれ、って言われて・・・姉様のような立派な王になる・・・・・・なんて考えていたの・・・・・・」
「・・・それは・・・・・・間違っておりません」
思春の言葉に頷く蓮華
「そうね・・・でも、いつのまにか・・・”姉様のような”から”姉様と同じ”王になるにはどうすればいいのか考えるようになったの・・・・・・そんなの無理なのにね」
「そ、そんなことは」
首を振る
「姉様と同じは無理よ・・・だって・・・私と姉様は違うんですもの」
「そ、それh・・・ッ!!」
思春は驚く・・・
以前の蓮華なら、自分を追い込むような発言だったのに・・・
そのことを口にする蓮華の表情は・・・
いたずらをした時の雪蓮の・・・
“楽しそうな”笑顔にそっくりだったから・・・
「姉様と同じは無理・・・・・・でも」
楽しそうな笑みが崩れることはなく
「姉様とは違う私なりのやり方で”姉様のように”はなれる・・・それに・・・・・・」
「・・・・・・」
もはや思春の口からは言葉が出ない・・・
ただただ・・・
誇り高い蓮華の姿に・・・
見とれていた・・・
「”姉様を超える”ことだって・・・・・・ね?」
「!!も、もちろn・・・ッ!!」
突然の呼びかけ・・・
慌てて答えたが・・・
その答えは雪蓮に対して、あまりにも不遜なもの・・・
「も、申し訳ありません!!」
「ふふふ、いいのよ思春。気にしないで」
頭を下げるが、蓮華は全く気にしていないようだった
「でもね、思春・・・」
「・・・はっ」
「”姉様を超える”と言っても・・・・・・私一人では無理なの・・・だから」
「!!」
それは・・・
思春も待ち望んでいた言葉・・・
----------あなたの力、貸してくれるかしら?----------
「!!はっ!!この思春ッ!!命尽きるまで蓮華様にお仕えいたします!!!!」
自分の力・・・
それは・・・
この偉大な王になる方の背中を守り・・・
支えるためのもの・・・
「ありがとう、思春」
蓮華も今度は穏やかな笑みを浮かべる
王であっても弱音を吐きたくなる時もある・・・
王であっても間違いを選択してしまうこともある・・・
王であっても泣きたいときがある・・・
そんな時には・・・
仲間がいる・・・
本気で自分にぶつかってきてくれる・・・
本気で信頼できる・・・
仲間がいるから・・・
私は前を向ける!!
「さぁ!思春!」
「はっ!」
壁から背を離し、明るい笑顔を向ける
「姉様に言いに行くわ!!」
大きな決意を胸に・・・
この先を歩んで行こう・・・
----------姉様以上の王になる!と・・・----------
「はっ!!」
信頼できる”仲間”と共に・・・
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後編です。
今回は蓮華さんのお話です
次回は皆大好き華琳様メインで書きたいなぁなんて思ったり
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