汜水関攻略戦・三日目
友哉は霞と莉空を閉じ込めている部屋へと来ていた。部屋の中にはあの日から変わらず鎖に縛られた二人が椅子に座っている。
霞・莉空「ガルルルルルルルルル・・・・・・」
当然、獣のような唸り声をあげている。拘束を解けば今にも戦場へと出てしまいそうな様子だ。
友哉「そんなに怒らないでください。今日はいい知らせがありますから」
霞「ほんまやろうな・・・」
少しだけ警戒を解いたのか、言葉を返してくれる。
友哉「はい。明日出陣します」
霞「よっしゃぁぁぁぁああああああ!!!」
莉空「ぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」
咆哮がとどろく。
友哉「でも、一つだけ条件があります。敵将とはなるべく戦闘しないでください。敵総数を減らすことを最優先にたたかってもらいます。」
霞「なんでや?」
友哉「琥牢関の士気を上げるためです。敵戦力で一番わかりやすいのは敵の総数です。だから相対したときその数が少なければ少ないほど士気が上がるんです」
莉空「確かにそれはそうだな。しかし・・・・・ぅぅ、これも月様のため!わかった。私はそれに従おう」
霞「それが月っちのためになるゆうんなら、うちもやったるで」
友哉「ありがとうございます。それでは詳しく説明します・・・」
--孫策軍--
周瑜「なに?張と華の旗がなくなっただと?」
甘寧「はっ。紺碧の天旗はいまだ残っています」
軍師の詰めている天幕に甘寧が報告にやってきた。
呂蒙「どういうことなのでしょうか」
陸遜「監禁されていたということは、撤退したと考えるのが定石ですよね~」
周瑜「一人で我々の相手をするか。フフッ。面白い」
呂蒙「しかし、どうなさるのですか?出てこないとどうしようないのでは」
陸遜「亜沙ちゃん、それはちがいますね~」
周瑜「穏の言うとおりだ。撤退したということはそれに合わせて兵数も減ったということだ」
陸遜「それじゃあ亜沙ちゃん、どうすればいいと思いますか?」
呂蒙「兵数が減ったということは糧食の減りが遅くなったということですね。それなら待ってもこちらの分が悪くなるだけ、なら一気に攻めるのがよいかと」
陸遜「正解です~」
周瑜「そういうことだ。思春!明日にでも総攻撃を仕掛ける。全軍に伝えろ」
甘寧「はっ!」
汜水関攻略戦・四日目朝
--曹操軍--
曹操のいる天幕の中には曹操・許緒・楽進そして軍師三人が待機していた。
楽進「華琳様、城壁の上に紺碧の天旗が見当たりません」
曹操「そう・・・!!」
何かに気がついたのか、曹操は目を見開く。
郭嘉「どうかなされたのですか?」
曹操「どうしたもこうしたもないわ!やってくれるじゃない天城。季衣、凪!あなたたち今すぐ城門を攻撃なさい!おそらくもう関はもぬけの殻よ!おそらく劉備・孫策あたりも来るでしょう。何としてでも一番乗りをなさい!」
許緒・楽進「はい!」
二人は天幕を走り出る。そのまま攻城戦専門の工作兵を集め、城門を目指す。他の二勢力より後ろに陣を取っている彼女たちは些かの不利を覆すため全速力で進軍する。
--関内--
汜水関はもぬけのから・・・・・
ではなかった。
霞「おお!友哉の言うとおり工作兵どもがぎょ―さん来よるわ」
莉空「工作兵というのが些か納得いかんが、奴らも命を落とす覚悟はしているだろう。ならば全力をもって叩き潰してくれる!」
友哉「くれぐれも昨日の注意だけは守ってくださいよ。それでは・・・全軍抜刀!これより我らは後方の虎牢関に控える我が仲間のため、敵軍を叩きその数をできるだけ減らす!ゆめゆめ間違えるな!我らの数は一人足りもと減らしてはならない!全軍出撃!!!」
ウオオオオオォォォォ!!!
門前には三軍からそれぞれ二人ずつ(馬岱・魏延、甘寧・周泰、許緒・楽進)がそれぞれ工作兵約百人とその護衛約五百人を連れてきていた。しかし誰も一番乗りを譲る気はまったくない。
馬岱「前は蒲公英たちが任されたんだから邪魔しないでよね!」
甘寧「一番乗りまで任されてはおらんだろう」
楽進「門を壊すのなら自分が適任かと」
周泰「はうあ!そうやって一番乗りするつもりですね」
魏延「そんなことさせるか!お館さまのためにここはひけないんだよ!」
許緒「ボクだって華琳様のために頑張るんだから!」
当然もめるわけで、そんなこんなしている間に突然・・・
『ウオオオオオォォォォ!!!』
門の中から雄たけびが響き渡り門が開いていく。そこからは天・張・華の旗とともに大量の董卓兵がなだれ出てくる。
馬岱「何で!?撤退したんじゃなかったの!?」
魏延「撤退だ!撤退ー!」
甘寧「くっ!この数ではどうにもならん。明命!戻るぞ!」
周泰「はい!」
楽進「このままでは全滅だ!」
許緒「さすがにこんな数はどうしようもないよ」
攻城部隊は撤退を開始するが、あっという間に董卓軍に追いつかれてしまう。その数の差は二千弱対一万。どうあがいても勝てるはずがない。まして攻城戦のつもりでいた兵士と対人戦の意気込みの兵士の士気の差は言うまでもない。あっという間にほとんどが倒れていく。
夏侯惇「季衣!無事か!」
馬超「蒲公英!援軍にきたぜ!」
黄蓋「二人とも無事な様じゃのう」
連合軍から約二万ほどの援軍が到着する。これで兵数は連合が大きく上回る。約二万対一万。しかし敵部隊をほぼ殲滅した董卓軍は士気が異様なまでに高く、突然の出撃で混乱している兵士では相手になっていなかった。
友哉「霞さんお願いします!」
霞「おっしゃ!ほな張遼隊、行くで!」
霞は騎馬隊を二つに分けそれぞれ敵の右と左から敵を大きく回りこみその後ろにつく。完全に孤立してしまった連合は再びその士気を落としてしまう。
これこそが友哉の作戦だった。撤退に見せかけ敵の攻城部隊を誘き出し、その部隊に奇襲をかけることでさらに足の速い部隊をひきつける。そしてそれを次の援軍が来る前に包囲し撃破する。足の速い部隊は何かとめんどくさい。だから今のうちに叩いておこうというのだ。
そしてこの策は見事にはまり、半刻(一時間)もするころには残存兵数は約三千。作戦のため将は一人も討っていないが総数を減らすという目的は達成された。しかし、敵将を自由にしていたためこちらにもそれなりに被害は出ている。約三千が敵将に討たれてしまった。
じゃーん、じゃーん、じゃーん。
三度銅鑼が鳴り響く。撤退の合図だ。よく見ると三万を超えるだろう敵援軍がもうすぐそばまで来ていた。
友哉「霞さん!莉空さん!撤退です!」
霞・莉空「応っ!!」
友哉たちは門へ向かって一気に撤退していく。連合兵には一部の将を除き、追撃するだけの士気はない。この戦闘は完全に董卓軍の作戦勝ちとなった。
全てが門の中に入り終わると門は硬く閉められ、連合は追撃を諦めざるを得なくなる。
友哉「このまま手はず通りに虎牢関まで撤退します!」
友哉たちはそのまま汜水関を放棄して虎牢関へと向かう。
こうして汜水関の戦いは終わりを迎える。
因みに現在の連合軍総数は約二十五万。董卓軍は四万五千。いまだ絶望的であることに変わりはない。
つづく
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第十五話
ついに汜水関の戦いが終わります。