関羽「それで、何故おぬしらがここにおるのだ?」
孫権「ただの偵察だ」
楽進「我らも同じく」
黄蓋「儂は面白そうじゃからついてきた」
汜水関攻略戦・二日目。
昨日と同じ場所に、昨日より多い人影がある。
許緒「お~い!」
典韋「まってよ、季衣」
李典「お?季衣に流琉やん。どないしたん?」
二人の女の子が走ってくる。
許緒「あのね、華琳様が暇ならついて行けって。ねぇねぇ、どうするの?」
許緒は関羽に走り寄り、目を輝かせて問いかける。
典韋「ちょっと季衣!いきなりやったら失礼でしょ?」
関羽「そ、そうだな。まずはそれぞれ名乗りでようか」
劉備軍から関羽・張飛・趙雲・黄忠・馬超が名乗り出る。
つづいて孫策軍から孫権・甘寧・周泰・黄蓋が名乗る。
最後に曹操軍から楽進・于禁・李典・許緒・典韋が名乗る。
楽進「それで、関羽殿いかがなさるのですか?」
張飛「罵倒して罵倒して罵倒しまくるのだ!」
黄蓋「ほほう。どんな罵詈雑言が飛び出すのか楽しみじゃの」
于禁「罵詈雑言なら、沙和におまかせなのー!」
李典「沙和、やめとき。あれは人前でやったらあかんわ」
孫権「そこまでひどいのか?」
曹操軍一同「・・・」
黄忠「どんな言葉をつかうのかしら・・・」
于禁「このうじm」李典「あかーん!」ドガーン!
李典が口走りそうになった于禁を螺旋搶で愛の鞭!于禁ノックアウト。
楽進「それでは作戦を始めませんか?」
楽進はなれているのか見事なスルースキルを披露する。
李典「すまん沙和。これも沙和のためなんや」合掌
関羽「そ、そうしよう」
関羽は関の方へ向き直り呼吸を整える。
--城壁上--
霞「何やえらいぎょ―さん来たなあ」
友哉「1,2,3,4・・・13,14人ですね」
城壁からは友哉と霞の二人が下を見下ろしていた。莉空はいまだ監禁中である。
霞「今日はどないなこと言ってくるんやろな?」
友哉「どっちを標的にしてきますかね」
集団の中から関羽が前へと出てくる。
関羽「張遼よ!おぬしもやはりこもることしかできんのか!少しは頭が切れると聞いていたが、やはり華雄と同じ猪のようだな!せっかくの神速もそんな猪には使いこなせまい!」
馬超が関羽の横に並び立つ。
馬超「あたしは馬超!張遼!お前の神速なんてあたしの前では牛の歩みだ!蝿が止まってしまう!その神速の二つ名今日限りで返上してもらおう!あたしが、最速だ!」
張飛「張遼はのろま猪なのだ!」
霞「んなー!あいつらぁ!」
友哉「霞さん落ち着いてください!ここで切れちゃったら莉空さんと一緒になっちゃいますよ!」
霞「うううううぅぅぅぅ・・・・・」
友哉がたしなめるも霞は獣のように唸り続ける。
関羽「よし!次は天城だ!天城よ!お前の頭の中には女のことしかないのか!洛陽の種馬の名はだてじゃないな!」
馬超「こ、このチ○コ将軍!」
張飛「歩くチ○コなのだ!」
趙雲・黄忠「・・・」
関羽「どうしたのだ、星、紫苑」
黄忠「あのね、愛紗ちゃん・・・」
趙雲「いや、些か卑猥だと思ってな」
関羽・馬超「んな!?」
趙雲「あんなことを叫んでおきながら、気づいておらんかったのか?」
関羽「な!?」馬超「★■※@▼●×っ!?」
張飛「・・・何でそんなに驚いてるのだ?」
霞「もう許されへん!うちだけならまだしも、友哉まで!うちが唯一認めた男を!」
友哉「今です!」
霞「!?」
友哉の合図と同時に霞の体に鎖が巻き付いていく。辺りを見回すと十人ほど鎖をてにもつ兵士が立っている。なんとなく昨日も見たような気がするが・・・
霞「何するんや!」
友哉「霞さん、俺のことで怒ってくれるのはうれしいんですけど・・・今は莉空さんと仲良く頭冷やしてくださいね」
兵士たちは鎖で縛られた霞を引きずっていく。
霞「ちょ、どこに連れて行く気や!い、いややー!・・・・」
霞の悲痛な叫び声がだんだんと小さくなっていく。
孫権「よくあんなことを叫べるわね」
甘寧「恐れ入った」
周泰「す、すごいです」
孫権、周泰そしてあの甘寧までもが頬を引きつらせて三人を見やる。
楽進「・・・すごい」
于禁「沙和にも引けをとらないのー!」
李典「ずいぶん思い切ったなー」
許緒・典韋「・・・」
許緒と典韋はもはや固まってしまっている。
黄蓋「はっはっは!ずいぶんと思い切ったことをするのう。お?そろそろ矢文がくるようじゃぞ?」
黄忠「ふふっ。どうやらそのようですわね」
ドスッ
一同の前に文の結び付けられた矢が突き刺さる。関羽と馬超は真っ先にその文を読む。
『残念ながら、我が将・張遼もまた監禁中につきご対応できません。またいらしてください。それと、女の子はもう少しおしとやかさがあったほうがいいかと 天城友哉』
それを読んだ関羽と馬超は・・・
関羽・馬超「な!?」
固まった。
張飛「愛紗と翠が固まっちゃったのだ」
孫権「放心したようだな」
甘寧「はっ、どうやらそのようです」
許緒「でもどうすんの?これで劉備軍の策は全滅だよねー」
張飛「うるさいのだ、このつるぺた春巻き!」
許緒「な、なんだとー!?ボクよりお前のほうがぺったんこだろ!」
張飛「鈴々の方が大きいのだ!」
黄忠「ほらほら、喧嘩しないで」
二人の間に黄忠が割ってはいる。当然その二人の視線は胸に行くわけで・・・
張飛「鈴々だっていつかばいんばいんになってやるのだ・・・」
許緒「ボクだって・・・」
涙目になってしまっている。その様子を趙雲が笑いながら眺めている。
趙雲「母性の勝利といったところですかな」
楽進「それで、その矢文にはなんと書かれているのですか?」
李典「そーや、うちもそれが気になっててん」
于禁「沙和もなのー!」
孫権「私も気になるわ」
黄蓋「儂も気になるのう」
一同は固まったままの関羽から文を取り上げるとそれを読む。
趙雲「ほう、なかなか粋なものだな」
黄蓋「面白いことをするのう」
黄忠「これは愛紗ちゃんと翠ちゃんが固まってしまうわけですわ」
孫権「思いっきり正論だけれどもね」
李典「まともな人やわ~」
張飛「お兄ちゃんとは違うのだ」
典韋「でもこれで、天城さんだけになりましたね」
黄蓋「よし決めた!」
孫権「祭?どうかしたの?」
黄蓋は大きく息を吸い込み、そして・・・
黄蓋「天城よ!儂の名は黄蓋!お主と話がしたい!今すぐ降りてこられよ!」
城壁に向かって叫んだ。
一同「!?」
全員の顔に驚きの表情が浮かぶ。そこに再び矢文が届く。
『話がしたいなら全員が武器をその場に置き、城壁との中間地点で待機せよ』
孫権「罠よっ!」
関羽「いくらなんでも怪しすぎる」
楽進「自分は拳さえあれば戦えますが」
趙雲「いざとなれば走って武器を取りに戻ればよいではないか」
関羽「それは、そうだが・・・」
張飛「愛紗は最近太ったから走る自信がないのだ!」
趙雲「そうか、そういうことだったか。これは失敬」
関羽「こら、鈴々!ありもしないことを言うな!行けばいいんだろう!行けば!」
関羽が青龍堰月刀を地面に置き歩き出す。他の劉備軍もそれに倣う。
黄蓋「お?行く気になったかの♪」
孫権「楽しそうね、祭」
黄蓋「それはそうじゃ。あの策殿や冥林までも虜にする男とは興味を惹かれるからのう」
黄蓋も武器を置き関羽の後を追う。その後ろを孫権たちが行き、曹操軍のみが残った。
李典「うちらはどうするんや?」
于禁「いざとなったら凪ちゃんが守ってくれるのー」
楽進「当たり前だ!」
結局あの場の全員が武器を置き、門の前に集まった。
全員が集まってしばらくして、門がゆっくりと開き人ひとりやっと通れるぐらいの隙間ができた。そこにひとつの人影が現れる。
黄蓋「ほう、あれが・・・」
まだ遠くよくわからないが確かにきれいな蒼色のようだ。しかし思っていたより小さくまだ子供にすら見える。
次第に近づいてくるにつれはっきりとその姿を目にする。その腰に剣はなく、戦う意思は感じられない。しかし城壁を見やると、大量の弓兵が矢を番えてこちらを狙っている。下手なことをすれば誰も生きて返さないということだろう。
友哉「お久しぶりですね、関羽さん」
関羽「ああ」
関羽は先ほどの矢文を気にしているのか、顔を赤くしてうつむいている。
友哉「大丈夫ですよ。さっきのはそんなに気にしてないですから」
関羽「そういってもらえると、助かる」
張飛「こいつが天城なのだ?」
関羽以外は友哉に会ったことがない。戦場で見たことはあってもわかる特徴は髪の色程度。本人か認識することはできない。
関羽「そうだ」
友哉「じゃあまず、俺の姓は天城、名は友哉、字と真名はありません」
趙雲「字と真名がないのは、主と同じだな。では私は・・・・」
順番に自己紹介していく。さすがにもう有名武将が女の子になっていても驚かない。そして最後は妙齢の美しい女性。
黄蓋「儂が最後じゃな。儂の名は黄蓋じゃ。おぬし我が孫呉のため孫家に血を入れるつもりはないか?」
関羽「な!?/////」
趙雲「ほう、これはまた積極的な」
黄忠「あらまあ、随分と大胆ですわね」
・・・・・
などなど多様な反応を見せる中
張飛「どういう意味なのだ?」
許緒「流琉、わかる?」
典韋「え!?それは、その・・・/////」
理解してないお子様が約数名。
黄蓋「孫家の人間とまぐわって子供を作らんか、ということじゃ」
孫権「ちょっと祭!そんなの聞いてないわよ!」
甘寧「こんな奴と!」
周泰「私も聞いてないです!」
友哉「・・・・・・・」
黄蓋「なんじゃ、策殿からきいておらんのか。それでどうなんじゃ、天城」
友哉「・・・・・・・」
友哉からの返答は帰ってこない。張飛が友哉の前で手を振ってみる。しかしその瞳はまっすぐ前を向いたまま。まったく反応を示さない。
張飛「今度はこっちが固まっちゃったのだ」
その時劉備軍は関羽より、孫策軍は孫権より、曹操軍は楽進よりも天城は初心であるとそのとき確信した。
黄蓋「初心な天災じゃのう。これではもう話は聞けそうにないのう。このままつれて帰ってしまおうか?」
関羽「それなら私たちが!」
李典「いや、うちらや!」
三軍が友哉争奪戦を繰り広げる。
黄忠「あの、皆さん?あの方たちの存在を忘れてないかしら?」
黄忠が指差す先にはさっきより数を増した弓兵たち。全員から殺気がもれている。
趙雲「あきらめるしかなかろう」
三人はがっかりとした表情になる。
孫権「しかし、我々はこれで目的達成だな」
周泰「そうですね!」
楽進「われらも同じく」
于禁「黄蓋さんのおかげでたすかったのー!」
黄蓋「儂らはこれで戻るかの。おうい!誰かこやつを連れて帰れ!」
固まったままの友哉を董卓軍の兵士が引き取り、門の中へと引き上げていく。それを見届けた各軍はそれぞれの陣営へと戻っていく。こうして汜水関攻略戦・二日目は終わりを迎える。
--孫策軍--
天幕に前線から戻った四人と孫策・周瑜・陸遜・呂蒙が集まっていた。
孫策「それでどうだった?」
黄蓋「儂が孫家に血を入れる気はないかと聞いたら固まりおった。あれは相当な初心じゃ」
一同「じ~」
孫権「な、なんで私を見るのよ!?」
孫策「そこんとこどうなの、思春」
甘寧「はっ!蓮華さまより上を行くかと・・・」
周瑜「それは相当だな」
孫権「ちょっと、どういう意味よそれ!」
陸遜「そのまんまじゃないですか~?」
呂蒙「そのとおりかと」
孫権「亜沙!?あなたには言われたくないわ!」
黄蓋「おちつきなされ蓮華様。儂は策殿や冥林が惚れ込む理由がわかったような気がするがの」
孫権「私は全然・・・」
周泰「私もです・・・」
孫策「あなたたちもそのうち分かるわよ。そういえばその背中についてるのは何なの?」
孫権「背中?」
孫権が後ろを向くと背中に小さな紙切れがくっついていた。
冥林「こんなに上質な紙は見たことがないぞ!」
甘寧「何か書いてあるようですね」
『呉の皆さん せっかくのお誘いですが遠慮させていただきます。虎牢関では袁紹・袁術を前線にして隔離してください。孫呉の独立に手を貸せるかもしれません。 天城友哉』
黄蓋「あの状況で気づかれずにこんなことをするとは」
呂蒙「しかし、どういうことでしょうか。孫呉の独立に手を貸すとは」
冥林「袁術を攻撃するということだろうな」
孫権「どうするのですか姉様?」
孫策「乗ってもいいんじゃない?」
陸遜「私も賛成です。袁術さんがやられたところで私たちに被害はないですからね~」
孫策「じゃあ決定ね。そろそろ出てくるかもしれないから、みんなゆっくりと体を休めるのよ?」
全員「応っ!」
孫策は一人宙空の月を眺める。
孫策(何でこんなにもあなたのことが気になるのかしら)
--曹操軍--
こちらも同様に天幕に先ほどの五人と曹操・夏侯姉妹・荀彧・郭嘉・程昱が集まっている。
曹操「やはり面白いわね。それでどんな印象をもったのかしら?」
李典「うちは凪より初心やなーって」
曹操「凪より!?」
于禁「沙和もなのー!」
許緒「ボクもだよ!」
典韋「わ、私もです!」
楽進「/////」
曹操「ぜひともあの男で遊びたいわね」
荀彧「華琳様!男など!」
と友哉を罵詈雑言で否定しようとするが、友哉を否定することが間接的に曹操を否定することになると気づき口をつぐむ。
夏侯惇「華琳様!」
夏侯淵「あきらめろ姉者。ああなった華琳様は誰にも止められん」
夏侯惇「それはそうだが・・・」
郭嘉「そんな、華琳様と天城殿が二人きりで・・・・・ぷはっ」
郭嘉が鼻から致死量を超えるはずの赤い液体を噴出して倒れる。
程昱「はーい、稟ちゃんとんとんしましょうねー。とんとん」
鼻血を出した郭嘉の首を程昱がなれた手つきでとんとんとたたく。
郭嘉「ふがふが、もうしわけありません・・・」
程昱「・・・ぐぅ」
郭嘉「とんとんしながら寝ないでください!」
程昱「おおっ!?最近とんとんするのも飽きてきたのでつい。それにしても華琳様をそこまで惹きつけるとは、風も興味がわいてくるのです」
曹操「あなたたちにも行かせようかと思ったのだけれど、さすがに危険すぎるわ」
曹操がふと楽進の背に目をやる。
曹操「ところで、その背中についているものは何なの?」
楽進「え?」
楽進が後ろを向くとそこには孫権と同様に小さな紙切れがついていた。
曹操「随分と上質な紙ね。これほどのものを作れるものなの?」
荀彧「いえ、我らにはまだ不可能かと、おそらくは天のものではないでしょうか」
曹操「やはり天は面白そうね」
曹操はその紙の文に目を通す。
『魏の皆さんへ 我々が虎牢関へと引いたら、袁紹・袁術を前線に出して隔離してください。厄介払いして差し上げます 天城友哉』
夏侯惇「『魏』とは何だ、秋蘭?」
夏侯淵「私にも分からんな。華琳様、何かご存知ですか?」
曹操の方を見るが、曹操はかなり驚いた表情をしている。
曹操「私が考えていた国の名前よ。さすがは天災といったところかしら。いいでしょう、我々はこの提案に乗ります」
郭嘉「華琳様!確かに袁紹が潰れてくれるのはありがたいですが、大将が討ち取られれば我々連合の負けになってしまいます!」
程昱「それは大丈夫なのですよ」
典韋「どういうことですか?」
曹操「さすが風ね。私や劉備、孫策たちは連合で麗羽が大将をやるのを認めてないわ。ただあいつがその気になっているだけよ」
夏侯淵「そうか!それなら」
曹操「ええ。私たちは偶然同じときに洛陽を攻めているだけなのよ。だから麗羽がやられようが関係ないのよ」
程昱「それに袁紹さんや袁術さんたちはいてもいなくてもこちらの戦力には大して影響出ませんからねー」
夏侯惇「どういうことだ?」
夏侯淵「姉者・・・あとで私が説明しよう」
夏侯惇を除いた全員が状況を理解したようだ。
曹操「そういうことだから、おそらく敵はここでは本気でぶつかることはしないわ。みな虎牢関に備えてしっかりと準備するように」
全員「応っ!」
それぞれの天幕へと戻っていく中、夏侯淵は必死に姉に状況を説明している。程昱はいまだ郭嘉をとんとんし続けている。
そんな中、曹操は一人見送りながら空を仰ぐ。そこには白銀の月が輝いていた。
曹操(最初に会ったのもこんな月の映える夜だったわね)
静かに目を閉じるとあの日の光景が浮かんでくる。大きく深呼吸をして、自分の天幕へと戻っていった。
つづく
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ども。最近左腕が腱鞘炎になってきたcherubです。
最近更新頻度が落ちてる気がしますがご了承ください。
それでは第十四話。
汜水関攻略戦・二日目です。
ゆっくりと(?)お楽しみください!