パクパクパクパク。
友哉「相変わらず、よく食べるなぁ」
恋は一心不乱に点心を食べ続ける。
モキュモキュモキュモキュ。
もうすでに五皿たいらげているが、恋のペースは落ちる気配を見せない。
ねね「恋殿、早く帰って支度しないと明日から遠征ですぞ?」
恋「ん、さいご」
恋は店の親父におかわりを追加注文する。
パクパクモキュモキュ。
さらに乗せられていた、三人前はあろうかという点心の山が徐々に小さくなっていく。程なく皿の上には点心が一個だけになる。そこで、恋は手を止めこちらを見つめてくる。
ねね「恋殿?」
恋「さいご、いっしょにたべる」
そう言って恋は点心を三つに分ける。一つをねねの、もうひとつを友哉の皿の上に乗せる。
恋「・・・いただきます」
もう一度三人で合掌する。恋は相変わらず愛くるしい仕草で点心を頬張る。ねねは感激の表情で点心を頬張る。二人の表情は違えど幸せそうに点心を食べている。
恋「・・・おいしい」
友哉「そうだね」
ねね「恋殿に分けてもらったのです!感謝しやがれなのです!」
友哉「そんなに口元を緩ませて言われても・・・」
ねね「何か言ったのですかー!」
友哉「何でもないですよ(ニコッ)」
ねね「///むむむ!」
ねね(友哉と恋殿の二方面作戦ですとー!?あんな笑顔は反則なのです!)
ねねの顔が真っ赤になる。恋と友哉は顔を見合わせる。
恋・友哉「?」
ねね「さ、さっさと食べて帰るのです!」
点心を食べ終わり店を出る。
友哉「さ、帰ろうか」
恋「・・・手つなぐ」
恋はねねに向かって手を差し出す。
友哉「そうだね。どうしますか?」
そう微笑んで友哉もねねに手を差し出す。
ねね「////し、仕方ないから手をつないでやるのです!」
ねねの顔は真っ赤だったが、夕焼けのおかげで友哉は気づいていない。なにもなくても気づくかどうかはわからないが。
三人はねねを真ん中にして、手をつないで城へと帰っていく。
今日は警邏の仕事で一日中街を歩いていた。もう足が棒のようになっている。できるものならすぐにでも寝台に倒れこみたい。しかし城まではまだだいぶある。途中どこかによって少し休もうかと思ったが、今日に限ってどの店も満席だ。
友哉「はぁ、今日は全然ついてない・・・」
霞「お!?友哉やないか~」
不意に呼び止められる。声の主を探していると、酒家の中で霞が大きく手を振っている。もちろん、手には徳利と杯が握られている。隣を見ると莉空もいた。
友哉「おお~!神様、仏様、霞様、女神様!」
霞「な、何や酔うとんか?」
霞の顔が引きつる。莉空もまた顔を引きつらせる。友哉にはその表情の意味が理解できない。あの日の記憶はないらしい。
友哉「いえ、酒は飲んでませんけど、もうクタクタで。どっかで休もうと思ってたんですけど、どこもいっぱいで」
莉空「それは災難だったな」
霞「そこにうちが声をかけたってわけやな?」
友哉「そういうことです。お二人は・・・またお酒ですか。もう飲ませないで下さいよ?」
霞「そりゃ、なぁ?」
霞は莉空に視線を送る。
莉空「そうだな!法を守るというのはいいことだ!ハッハッハッハ!」
ぎこちなく笑って酒を煽る。二人の前には大量の空いた徳利が並べられている。
友哉(チューハイとかとは違うんだぞ?オトーリでもやりだすんじゃないだろうな)
普通なら酔っていてもおかしくない、というかこんなにも平気な顔をしている二人が信じられない。友哉はそんな二人を横目にお茶を注文する。
霞「そういや、友哉の国ってどんなとこなん?」
莉空「それは私も興味があるぞ!」
友哉「どんなところって言われましても・・・」
霞「軍隊はどんな何や?」
友哉「(やっぱりそこか)基本的には空中戦ですかね、詳しくは知りませんけど」
莉空「天の人間は空も飛べるのか!?」
友哉「そうじゃなくてですね、空を飛ぶ鉄の乗り物があるんですよ」
霞「それ速いんか!?」
友哉「馬の十倍は速いんじゃないですか?」
莉空「そんなになのか・・・」
霞「ウチ乗ってみたいわ!」
友哉「じゃあ俺の世界に来ないといけませんね」
三人で天の世界(現代)について笑いながら話し合う。この後も政治、学問、教育などについて話していく。
・・・・・・・・・・
突然、霞が真面目な顔で友哉を見つめる。
霞「なぁ。友哉は天に帰りたいとか思わんの?」
莉空「!?」
さすがの莉空もうすうす気づいていた。天から来たのなら、いつかは天に帰ってしまうのではないか?
友哉「それは・・・」
霞「・・・やっぱり、そうなんか?」
莉空「・・・」
二人はうつむき、沈黙が流れる。
友哉「全く思いませんね!」
霞・莉空「!?」
今度は驚きの表情に変わる。
友哉「帰っても俺の居場所はもうありませんし、こっちに大切なものがたくさんできちゃったんで」
霞・莉空「ほんまか(ほんとか)!?」
今度は喜びの表情に変わる。
友哉「本当です。大切な家族を置いて行ったりしません。もちろん、霞さんも莉空さんも僕の大切な人です(ニコッ)」
霞・莉空「///////」
傍から見ると友哉の一言一句に二人が百面相をしているようだ。この後も三人は夜が更けるまで飲み続けるのだった。
早朝。友哉の部屋の前には二人の人影があった。
月「友哉さん。おはようございます」
友哉の部屋の中に向って呼びかけるが、返事は来ない。
月「へぅ~、お返事がないよぅ。まだ起きてないのかなぁ?」
詠「どーせあいつのことだから、まだ寝てるんじゃないの?」
月「どうしよう、詠ちゃん・・・」
詠「どうって。どうせ鍵掛かってないんだから、たたき起こすしかないでしょ。」
詠は扉を開けて中に入る。
詠「ほらー!朝だぞー!起きろーっ!」
寝台の上ではまだ友哉が寝ている。
月「友哉さんの髪はいつ見ても綺麗だね、詠ちゃん(ニコッ)」
詠「は、反則よ!月も友哉も・・・」
最後の方は月には聞こえないように小さな声で呟く。
月「どうしたの?」
詠「な、なんでもないわよ!それにしても、何で恋はいっつもここで寝てるわけ?」
たまらず詠は眉間を押さえる。
月「友哉さんのことが大好きなんだよ、きっと」
月は寝台の淵に腰掛け友哉の頭を撫でる。
詠「なんか最近月って積極的よね」
月「へぅ!?そ、そんなことは・・・/////詠ちゃんも最近友哉さんと仲いいよね?」
詠「な!?そんな事あるはずないでしょ!こいつがいっつも馬鹿なことばっかいってるから」
月「ふふっ」
詠「月ぇ~」
月「詠ちゃんも素直になろうよ。詠ちゃんも友哉さんのこと好きなんでしょ?」
詠「・・・それは、そうだけど」
月の手が友哉の額に触れる。友哉が相当汗をかいていることに気づく。
月「!?詠ちゃん、友哉さんすごい汗だよ」
詠「そういえば、かなり寝苦しそうね。分かったわ。ボクがすぐに手ぬぐいを持ってくるからちょっと待ってて」
詠があわてた足取りで部屋を出て行く。
――その頃――
友哉「どこだ、ここは・・・」
友哉は真っ暗な闇の中を漂っていった。
昨日はきちんと寝台で寝たはずだ。もしかして刺客に殺されたとか!?ないな。洛陽の城の警備は完璧だ。どんな隠密でもばれずに進入することはできない。それにいつも隣で恋が一緒に寝てくれている。やられることはないだろう。
友哉「夢、なのか・・・」
??「・・・」
ふいに声が聞こえる。友哉は自然とそちらに引き寄せられる。
??「憎い・・・憎い・・・」
声の主は友哉の昔の姿だった。髪も瞳も黒く今よりやや背が低い。そして宙で体操座りをしているような格好だ。しかしその体には鎖が巻きつけられており、その後ろには得体の知れない黒い鬼のような者がたっていた。友哉(?)の純粋な殺気が形を成して具現化している。
友哉「君は、俺なのか?」
友哉(?)「憎い・・・憎い・・・人間はみんな・・・殺すしかない・・・」
友哉の呼びかけには反応しない。ただ同じことを何度も繰り返すだけ。
友哉「何がそんなに憎いんだ?」
友哉(?)「お前も・・・一緒だ!」
友哉(?)が初めて反応を見せる。顔をこちらに向けた瞬間、二人の目が合う。いつの間にか体中を無数の真っ黒な触手に捉まれている。どんどんと友哉(?)の方へと引き寄せられる。周囲の温度が低くなっていくのを感じる。
怖い。
今までいろんな人の殺気を受けてきたが、ここまで心から恐怖を感じたのは初めてだ。何も抵抗できなくなってしまう。自分という存在が吸収されてしまう。
友哉(?)「お前も俺に身を預けたらどうだ?」
友哉「いやだ!」
ふいに周囲が暖かくなるのを感じる。
友哉(?)「また邪魔が入ったか・・・まぁいい。どうせまたすぐにぁぅ・・・・」
最後のほうは聞き取れなかった。今度は視界が白んでくる。あまりの眩しさに目を閉じてしまう。
しばらくして、目を開けてみると・・・
月「あ、友哉さん。おはようございます♪」
恋「・・・友哉、おはよう」
詠「月ー!手ぬぐいもって・・・なんだ、起きたんだ・・・」
自分の部屋に戻っていた。
何ということだろう!男子校に通い続けて苦節四年。まさか女の子と川遊びができるとは!
――回想――
友哉「川に?」
詠「そうよ!なんか文句あるの!」
友哉「それでこんな朝早くから・・・」
月「そういうことです」
友哉「わかりました。すぐに準備するので待っててください」
――速攻終了――
月「どうでしょうか?」
月は水色のワンピース型の水着を着ている。月の愛くるしさとはベストマッチだ!
友哉「可愛いですよ」
月「へぅ/////ありがとうございます」
月は頬を赤らめもじもじしている。そこへ遅れて詠がやってくる。
詠「何でボクがこんな奴に水着姿を見せなきゃいけないのよ!」
詠はライトグリーンのビキニ型の水着を着ている。スタイルもいいため出るところはでていて、引っ込むところは引っ込んでいる。
友哉「似合ってるよ、詠」
詠「/////あんたに言われたって嬉しくないんだから」
それにしても、ほんとに作っちゃうんだもんな。石油からポリエステルとか作るっていっただけなのに、油から糸を作っちゃうなんて・・・
月「今日はいっぱい遊びましょうね♪」
??「ちょーっと待ったー!」
??「全く。我々をのけ者にするとは・・・」
突然森の中から、これまたナイスな水着姿の霞と莉空が出てきた。
二人は色違いの水着を着ていて、ビキニ型の水着に腰布を巻いている。霞が青、莉空がオレンジ色だ。まさしく大人の魅力全開!
友哉「眼福眼福」
合掌。
莉空「何をやってるんだ?」
友哉「二人とも可愛いなと思いまして」
霞・莉空「//////」
??「ちーんーきゅーうー」
友哉「甘い!」
ねね「キーック!」
友哉「ぐはっ!」
ねねの超必殺技・ちんきゅうキックは友哉の予想とは違う方向から飛んできた。クソッ!ねねのやつ腕を上げたな?
詠「ねね!?ってことは」
恋「・・・恋も、いる」
ねねは月と同じワンピース型。色はピンク色だ。恋は上は普段と同じデザインのもの、下は白と黒のホットパンツ型の水着を着ている。さすが最強美少女!破壊力抜群だ!
霞「今日は遠征やないんか?」
ねね「あんな奴ら朝飯前なのです!」
莉空「まぁ、恋ならありえるか」
いやいや。移動時間とか考えようよ・・・
ピチャ
水が飛んできた。
月「もう。何やってるんですか?早くしないと暗くなっちゃいますよ?」
霞「お?月やりおったな?うりゃ」
莉空「霞!何をどさくさに紛れ・・うあっ!こら、ねねまでっ!こうなったら、おりゃ」
ねね「これも策のうちなのです!」
詠「ひゃ!ちょっと何するのよ!」
恋「・・・」ゴオオオオオ!
友哉「・・・恋さん?」
霞「飛将軍のお出ましや!」
・・・・・・
こうして一同は日が暮れるまで遊び続けた。
袁紹「董卓さん。あ~んな田舎者のくせに、許せませんわ!この名門袁家にたてついたらどうなるか、この袁・本・初が思い知らせて差し上げますわ!オーッホッホッホッホ!」
つづく
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第十一話
今回は拠点風に仕上げました。
次回からストーリーに戻るつもりです。