No.211574

真・恋姫無双 ~黒天伝~ #10

cherubさん

ついに十話目です。
今後ともよろしくお願いします。

2011-04-13 23:53:30 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1687   閲覧ユーザー数:1584

 

友哉たちは賊退治の帰路についていた。

 

霞「ようやったな!」

 

莉空「やればできるではないか!」

 

恋「・・・がんばった」

 

ねね「最初からこうしろなのです!」

 

友哉「前回は最初だったもので。さすがにもう大丈夫ですよ」

 

友哉が目を覚まして初めての出陣だった。黄巾党程の規模はないが、頻繁に出てくるようになっていた。今回は約三千ほど。たいして多くないので恋とねねの三人でも大丈夫だと言ったが、霞と莉空が心配だと言って無理やりついてきてしまった。

 

----

 

目前には三千の賊。対する董卓軍は約五千。圧倒的有利だが友哉はまたも緊張していた。右翼に配置され敵を中心へと追い込むのが今回の役目。

 

遠くから作戦開始の合図である銅鑼が鳴り響く。

 

友哉「我らが為さんとするは、民の救い!その志を胸に剣を振るえ!矢を射て!敵を蹴散らせ!我らが絶対的善と信じ己が道を突き進め!全軍抜刀!」

 

剣を抜く音が鳴り響き、重なり合う。一瞬の静けさが空間を支配する。

 

友哉「突撃ーーー!」

 

ウオオオォォォ!!!!

 

全軍が雄たけびを上げながら突撃していく。その様子はまるで獅子の方向のようだった。以前の戦いとはまるで練度が違う。

 

その軍団の中、ひときわ早さの違う人影が四つ。最初はそれぞれ舞台の真中にいたがそこから抜け出し、真っ先に敵軍の前線にぶつかっていく。それに続いて兵士たちが次々とぶつかり合っていく。剣がぶつかり合う音、血のにおいが蔓延する。その中友哉の体は赤い血で染まっていた。

 

すれ違いざまに敵を切りつけていく。左手は防御、右手は攻撃に専念する。確実に急所を狙う。首、心臓など一撃で仕留められるところだ。苦しむ時間が短いだけ優しいのかもしれない。その戦い方はやはり師匠である友奈に似ている。

 

一時間もたたないうちに立っているのは董卓軍の兵士だけになっていた。髪も服も体も赤黒い血で染まっている。しかし友哉の体には一つも傷がなく、部隊にも死者はおらず負傷者といっても軽い切り傷、擦り傷程度だった。

 

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霞「これで次からは安心やな」

 

恋「・・・(コクコク)」

 

ねね「こ、これくらいはできて当たり前なのです!恋殿のように、もっと頑張るのです!」

 

莉空「なんだかんだいって、結局は応援しているのだな」

 

ねね「これは違うのです!」

 

霞「そういや、一番最初に友哉と添い寝しとったんはどこの誰やったかいな?」

 

ねね「むむむ!」

 

恋「・・・ねね」

 

ねね「恋殿~」

 

周囲の兵士に笑いが巻き起こる。そんな柔らかい雰囲気のなか一行は洛陽へと向かう。

 

 

友哉「極楽極楽」

 

やっぱり日本人はこういわないと気がすまない。あの後、城に帰った友哉たちはなぜか祝勝会を開くことになった。さすがに全身血まみれというわけには行かなかったので、友哉は先に風呂に入ることに。体についた赤黒い液体を全て洗い流し湯船に使っている。この時代では毎日風呂に入れるわけではないので至福の瞬間といっても過言ではない。

 

―ガラガラガラ―

 

ふいに入り口の戸が開く音が響く。(この時代この音なのかは定かではないがここは愛嬌ということで)人影が姿を現す。

 

城の風呂場はかなり広く湯船は一番奥にあるため湯気で誰か判別できない。足音とともに人影が近づいてくる。

 

友哉「恋っ!?」

 

そこに立っていたのは恋だった。一糸纏わぬその姿に一瞬釘付けになりそうになる。しかし、そこは何とか理性が勝利した。視線をそらし恋に話しかける。

 

友哉「何でここにいるの!?」

 

恋「・・・友哉が、入っていったから」

 

友哉「いやいやいや!理由になってないし!ってかそれ以上こっちに来ちゃだめ!」

 

恋「?」

 

全く理解していない。いつも女の子しかいなかったため、仕方ないといえば仕方ない。しかしこれ以上はさすがに理性が吹っ飛んでしまう。というか裸を見られたくない!絶対に!

 

友哉「男女には適切な距離感というものがだな!」

 

恋「・・・わかった」

 

恋はそういうと、友哉との距離を保ったまま円を描くように移動して湯船につかる。ぎりぎり湯気で隠れている距離だった。二人は黙ったままだ。恋にとってはなんともないかもしれないが、友哉にとっては非常に気まずい。何か話題はないかと必死に頭を回転させる。

 

友哉「そういえば恋は、何のために戦ってるんだ?」

 

友哉は恋の方を向かずにそう話しかける。

 

恋「・・・恋は、みんなが好き。みんな家族。だから守る。友哉も家族」

 

恋は決して話が上手なわけではない。いつも言葉少なく、呟くようにしゃべっている。だがその言葉はただ純粋で、聴く者の心に直接語りかけてくる。だからみんな恋に惹かれていく。思わず友哉も口元が緩んでしまう。幸い湯気のおかげで恋には見られていない。

 

友哉「ありがとう。俺もみんなが好きだよ。恋も大好き。だから俺もおんなじだ」

 

恋「・・・おんなじ」

 

そういって恋は、湯船を出る。どことなしに入り口へと向かう恋の足取りが少し喜びが漏れているようだった。

 

友哉「・・・恋、ずっと一緒だよ」

 

目を閉じて、そっとそう呟く。

 

 

一同「乾杯!」

 

テーブルの上には豪華な料理、そして特上の酒が並べられていた。それぞれが思いのものを手に取り、宴を楽しんでいる。酒を飲むもの、料理をかきこむもの、友と会話を楽しむもの。それぞれの時間がゆっくりと過ぎていく。

 

恋(モキュモキュモキュモキュ)

 

友哉「相変わらずすごい食べっぷりだね」

 

恋「・・・ん?」

 

リスのように口いっぱいに料理をほおばり、こちらを見つめて首を傾げてくる。月の笑顔もそうだがこの表情も破壊力抜群だ。

 

友哉「おいしいか?」

 

恋「・・・ん、おいしい」

 

ついには食べながらしゃべってしまっている。しかし、決して行儀悪くは見えないところが恋のすごさのひとつだ。尋常じゃない量を平らげるが、豪快な食べ方ではない。とても愛らしい食べ方だ。あの食べ方でどうやってあの量を、と疑問に思うのは世の常だ。

 

ねね「恋殿、ご飯粒がついておりますぞ!」

 

隣にいたねねが、恋の頬についていたご飯粒をとって食べる。なぜかとてもうれしそうに見える。年齢・体格的には逆なのだが、こういうところを見るとどうしても恋がねねの子供のように見えてしまう。これもまた恋の魅力のひとつなのかもしれない。

 

月「お疲れ様でした、友哉さん」

 

友哉「いえいえ、月さん。さっきはすみませんでした」

 

詠「ほんとよ!あんな全身血まみれで帰ってきたらビックリするじゃないのよ!」

 

友哉「ほんとにすみません」

 

なぜかいつも詠には頭が上がらない。

 

月「でも、友哉さんが無事でいてくれてほんとによかったです」

 

詠「それは、そうね」

 

こんな何気ない一言が男心という奴をわしづかみにしていることをこの二人はおそらく知らない。

 

月「ところで、友哉さんは飲まないんですか?」

 

友哉「俺は飲みませんよ。俺の世界では法で決まっていて、二十歳にならないとお酒は飲んだらいけないんです。」

 

霞「法なんて気にせんで飲んだらええや~ん」

 

莉空「そうだぞ。郷に入りては郷に従えというではないか」

 

友哉「そんなことは・・・」

 

霞「それよりさっきは恋と風呂でなにやっとったんや?もしかして、あんなことやこんなことを!」

 

莉空「風呂であんなことやこんなことをだと!?なんと破廉恥な!全部吐くまで飲ませるぞ!」

 

友哉「そ、そんなことはしてませんから!」

 

霞たちはそういって無理やり酒を飲ませようとしてくる。

 

友哉「ほんとに駄目ですって!無理ですから!・・・ん!」

 

二人には勝てなかった。結局酒を大量に飲まされてしまう。

 

 

―しばらく経過―

 

 

友哉「霞~、俺どうすりゃええんじゃろ~。このまんまでええんかね?」

 

完璧に酔っ払っていた。敬語が崩れ、方言が丸出しになっている。

 

霞「いや~。うちに聞かれても、なぁ莉空」

 

完全な苦笑い。

 

莉空「な、何でそこで私なんだ!?」

 

こちらもまた然り。

 

霞「莉空かて飲ませたやろ!共犯や!」

 

友哉「莉空~、俺たち家族よね?いつまでも一緒よね?」

 

顔面を真っ赤にした友哉が標的を変え今度は莉空に絡む。月と詠はというと、あまりの豹変ぶりに放心してしまっている。恋は・・・モキュモキュモキュモキュ。

 

莉空「そうだ。ずっと一緒だ!」

 

友哉「ありがとう。みんな大好き~」

 

霞・莉空「////」

 

 

あの後延々と絡み続けた末に、友哉は酔いつぶれて寝てしまった。

 

詠「ま、まさかあんなになるとは」

 

霞・莉空「反省してます」

 

詠「金輪際、友哉に酒を飲ませるのは禁止ね」

 

月「恋ちゃん、友哉さんを部屋に連れて行ってくれる?今日はもうお開きにしましょう」

 

恋「・・・(コク)」

 

ねね「まったく、世話を焼かせるのです!」

 

恋は友哉を担いで友哉の自室へと向かう。途中の廊下には優しい月光が差している。部屋に着くと恋は友哉を寝台に寝かせその隣にもぐりこみ、眠っている友哉に抱きつく。

 

恋「・・・いっしょにねると、あったかい。ずっと、いっしょ」

 

ゆっくりと恋は眠りに落ちていった。

 


 
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