友哉は部屋で六本の剣の手入れをしていた。あの後、何度も霞たちにもともと髪は黒だったと主張しても、「そんなことあるはずないやろ」などとまともに取り合ってもらえなかった。
蒼天はまだ物を斬ったことがなかったため、一度切れ味を見ておこうと思い太めの木の枝を庭から拾ってきた。蒼天を木の枝に押し当てると、いとも簡単に真っ二つになり切り口はつるつるだった。
ここまでの切れ味に少し驚きつつも、師匠・友奈の剣、朱雀の切れ味も試してみようと手に取った。よく見てみると装飾品のようなその剣は、友奈が持っていたときよりも朱色が薄くなっていたように思えた。しかしそんなことは特に気にならなかったので、蒼天と同じように木の枝に押し当ててみた。
友哉(なんだよこれ!?)
木の枝は真っ二つどころかまったく傷がつかなかった。まるで刀の峰を押し当てたようだった。友奈が使っていたときは、少しかするだけで肉がぱっくり裂けるほどだった。
確認してみたがきちんと刃の部分で斬っていた。仕方なく朱雀を床におき、今度は黒天を手に取った。その柄の部分にはもらったときと変わらず、札によって封印してあった。
友哉(何で道空は封印された刀を俺に託したんだ?それに俺はこんな長い刀の扱い方なんてまったく知らないぞ?それに友奈もそうだ。斬れない剣を渡されても、正直困るんだが。あの二人が意味もないことをするとは思えないが・・・。何か意味があるのだろうか?まぁいい。一応お守りとしてでも腰に挿しておくか)
そんなことも思いながら手入れを終え、それぞれを三本ずつ腰に挿した時だった
莉空「友哉!ちょっと私に付き合ってくれ!」
扉を乱暴に開けて莉空が部屋に入ってきた。扉が開く音に友哉は思わずビクッ!と反応してしまった。あまりの驚きにしばらく固まっていると
莉空「何をしている!さっさと来んか!」
そういって莉空はそのまま友哉を引きずって部屋を出た
友哉「分かりました!自分で歩けますから!とりあえず離してください!」
莉空「おう、すまんすまん」
友哉「それでどこで何をするんですか?」
莉空「そんなことは決まっているではないか。練兵場で仕合いをするのだ!」
友哉「そんなの無理ですよ!俺が莉空さんに勝てるわけないじゃないですか!」
莉空「そんなことはどうでもいい。お前も将軍なんだからな、腕のほどを少し見ておかねばならんのだ。これは月様の希望でもあるのだ」
友哉「そういえば、何で俺は将軍なんですか、いきなり?」
莉空「当たり前だろう。あの肉体と天災であるということ。そして六本の剣を使うやつが弱いはずないからな!」
友哉「いつ俺の体を見たんですか・・・。それに俺は六本も剣を使いませんよ。俺が使うのはこの二本、蒼天だけですから。第一、黒天は封印されてるし、朱雀はなぜか全く切れませんからね」
莉空「なんだとっ!ならなぜ六本腰に挿している」
友哉「黒天と朱雀は俺の二人の師匠に託されたものなんです。だからお守りにでもと思って」
莉空「そうか・・・。しかし朱雀は小さいからいいとしても、黒天は邪魔じゃないか?」
友哉「確かに動きづらいですけど、師匠のものですから。うまく説明できませんけど・・・」
正直言うと自分でもなんでこれをお守りとして腰に挿したのかよく分からなかった。たた無性にこれを自分から離してはいけないように思えたのだ
莉空「それでは、はじめるぞ!」
友哉「ところでこれは何なんですか?」
月「友哉さん頑張ってください」
詠「莉空!あんなやつぶっ飛ばすのよ!」
恋「・・・友哉、がんばる」
霞「ゆうやぁ~。がんばりなぁ~。おわったらつぎはうちやでぇ~、ヒック!」
ねね「董卓軍の武将が無様なところ見せたら、承知しないのです!」
一般兵「華雄将軍!頑張ってください!」
四角いリング(?)の周りには董卓軍の首脳陣、そして多くの一般兵が集まってきた。そしてなぜか一人だけ酔っ払っているやつがいた。
莉空「六刀の天災が仕合いをするというのだ。これほど武人にとって興味をそそられるものはないだろう。それにさっきも言っただろう。これは月様の希望でもあるのだ」
友哉「そういうことですか。あまり注目されるのは慣れていないので、かなり緊張しますが・・」
詠「始めッ!」
詠が合図をすると同時に莉空は一気に間合いを詰めてきた。そしてその勢いを殺さぬまま振り上げた戦斧をそのまま真下に振り下ろす。友哉はこれを順手に構えた蒼天で弾き軌道を変えて避ける。しかし莉空は軌道を変えられた方向にそのまま斧を水平に後ろまで回しその勢いを利用して逆の脚で中段に蹴りを入れてくる。
これを友哉は蒼天の柄の部分で刺すように殴りつけると、一瞬莉空の顔が苦痛にゆがむ。次の瞬間には蹴りの勢いのまま体を回転させ戦斧が蹴りが来た方と同じ方向から水平に斬りつけてくる。戦斧を蒼天二本で受け止めにいくがあまりの衝撃に後ろに飛ばされてしまう。
友哉(速さは友奈に比べたらそんなでもないけど、あのパワーはまともに受けるとやばいな)
友哉は今まで同じ二刀流の友奈としか戦ったことがなかったため、力技で押し負けてしまう経験が全くなかった。
莉空(力はないが、あの速さは厄介だな。蹴りを柄で殴られるとは。かなり響いているな。早く決めるしかないか)
ねね「互角なのです!」
霞「ちゃうわ、ボケェ!ちゃんとよぉ見んかい!」
月「違うんですか!?」
恋「・・・莉空、脚痛い。だから追いかけない」
詠「今のところ友哉が少し有利ね。まったく!莉空は何をやってるのよ!」
莉空「どうした、もう終わりか?少しは攻めてきたらどうなんだ」
友哉(あからさまに挑発だな・・・でも行くしかないか!)
今度は友哉が一気に間合いを詰めていく。迎撃しようと莉空が腰より少し低く右から横なぎに振るうが友哉はそれを跳びながら二本の剣で下に軌道をずらす。莉空はまたも回転力を利用した右上段蹴りを繰り出してくる。空中に飛んで二本の剣で軌道をずらしたため、友哉の両手は下に下がっており迎撃できない。このままだと莉空の蹴りは顔面直撃コースだ。
もうどうしようもないと思われたが、今度は振り下ろした左手を振り上げ蒼天の峰で、右脚の軌道を上に変えた。脚の軌道を変えられた莉空は、戦斧の回転力もありバランスを崩してしまいよろけてしまう。そこに莉空のすぐ後ろに着地した友哉に脚をからめとるように蹴りを入れられ、耐え切れず仰向けに崩れ落ちてしまう。
莉空「私の負けだ・・・」
霞「次はうちと戦ってぇな、ゆうやぁ~」
詠「あんたは駄目に決まってんでしょっ!この酔っ払いが!」
霞「あ~ん。月ぇ、詠が意地悪する~」
月「へぅ~。駄目ですよ~。万が一怪我でもしたら大変ですよ~」
ねね「ここまでとは!さすが恋殿が見込んだだけはあるのです!さぁ恋殿!董卓軍の一の矛としてあいつを叩きのめしてしまうのです!」
恋「・・・友哉も莉空も疲れてる。だから今日はやらない」
一般兵「「ウォ~!!あの華雄将軍が負けた!!」」
こうして『六刀の天災』の噂は広まっていくのだった
--しばらくして、とある義勇軍--
黒髪の女「ご主人様、お聞きになられましたか?」
男「何のことだい?」
黒髪の女「『六刀の天災』のことですよ」
男「誰なんだい?そいつは」
桃色髪の女「ああ!私知ってる!ご主人様の次に予言で出てくる人だよ!」
黒髪の女「その通りです。『黒き雷光と共に天より来るものあり。そのもの天災にして孤独にて大いなる災難を受けようとするものを救うであろう』」
男「それで、そいつが六本の剣を使うんだね?」
黒髪の女「おそらくそうだと思われます。何でもあの猛将華雄に勝ったとか確か名前は・・・『天城友哉』ご主人様と同じきらきら輝く服を着ているそうです。ただ、色は黒のようですが」
男「天城友哉か・・・俺の世界の名前みたいだな・・・」
桃色髪の女「やっぱり気になるの?ご主人様」
男「一度会ってみたいな。できれば戦場以外で。華雄に勝つ人には絶対殺されちゃうからね」
黒髪の女「ご主人様にも少しは武を磨いてもらいたいものです!」
桃色髪の女「あはは~。それは無理だよ、愛紗ちゃん」
男(何気にひどいことを言っているのは気のせいか?)
--時を同じくして陳留--
黒髪の女「華琳様!」
華琳「どうしたの?秋蘭」
黒髪の女「なぜ私に聞かないのですか~」
秋蘭「ふふっ。仕方ないよ姉者。華琳さまは『六刀の天災』のことをお聞きですか?」
華琳「ええ。管輅の占いの天災のことでしょう?もちろん知っているわよ。まぁ、六本も剣を使って華雄に勝つとは驚きだけどね。春蘭より強いのかしら?」
春蘭「そんなことはありません。この私こそが最強です!」
秋蘭「それで、華琳さまいかがいたしましょうか?」
華琳「私の覇道には天の御使いも天災もいらないわ。ほしいのは力ある者だけよ。でも、華雄を倒したとならばその武は確かなものね。一度会ってみたほうがいいかもしれないわね」
--同じく江東--
桃色髪の女「ねぇ、聞いた?冥琳」
冥琳「なにをだ?雪蓮」
雪蓮「『六刀の天災』のことよ!なんか面白そうじゃない?六本も刀使うなんて」
冥琳「占いの天災か・・・。確かに本当に六本も刀を使ったら驚きだな」
雪蓮「うちに来ればよかったのにね~」
冥琳「確かに、我々はあの占いに当てはまるな。『孤独にて大いなる災難を受ける』大いなる災難が袁術といえばそうだな。それにああいった類はいるだけで風評になるからな」
雪蓮「一回会ってみたいわね」
冥琳「会うだけか?」
雪蓮「もちろん!戦うに決まってるじゃない!」
冥琳「やっぱりな」
雪蓮「でも、天水じゃちょっと遠いよね~」
冥琳「あきらめるんだな」
雪蓮「冥琳ひど~い」
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初の本格戦闘シーンです。
非常に分かりにくいと思います。
表現力なくですいません。
今回は魏呉蜀陣が登場します。
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