※注意※
この作品には以下の点が含まれる可能性があります。
・作者の力量不足によるキャラ崩壊(性格・口調など)の可能性
・原作本編からの世界観・世界設定乖離の可能性
・本編に登場しないオリジナルキャラ登場の可能性
・本編登場キャラの強化or弱体化の可能性
・他作品からのパロディ的なネタの引用の可能性
・ストーリー中におけるリアリティ追求放棄の可能性(御都合主義の可能性)
・ストーリーより派生のバッドエンド掲載(確定、掲載時は注意書きあり)
これらの点が許せない、と言う方は引き返す事をお勧め致します。
もし許せると言う方は……どうぞこの外史を見届けて下さいませ。
古来より交通の要所となり、現在もなお発展を遂げる都市陳留。
その活気はこの都市を治める刺史・曹孟徳の手腕による所が大きく、
噂を聞きつけた民が訪れる事もあり非常に大きな物であった。
されど大きな活気が、発展があれば富も物資もあると言うのは世の理であり、
それを狙う輩が姿を現すのもまた世の理であった。
幸い曹孟徳配下の兵達はいずれも訓練が行き届き練度が高かった為、そこらの賊では
徒党を組んだ所で町を襲い略奪するなど出来はしない、返り討ちに遭うのが関の山である。
故に賊達は陳留そのものではなく、陳留を訪れる者達を狙い略奪を行っていた。
交通の要所であり発展した町である以上、様々な身の上の者が訪れる。
裕福な人間は護衛を雇い、或いは隊列を組むなどすればそうそう襲われる事はないが、
単独の、あるいは少人数の旅人や商人が略奪にあい、時に命すら奪われるという事件が多発していた。
その状況を重く見た曹孟徳は配下の将兵を率いて大掛かりな賊の討伐に出陣。
現在は留守を任された文官達が曹孟徳の帰還を待つ状況であった。
文官達は主が不在であろうとも己の役割を果たさんと職務に励み、ある者は流入する民の対応を、
またある者は討伐を逃れた小規模な賊の情報収集や対応を。
皆一丸となり動く様は、刺史曹孟徳の人望・能力の高さと規律の厳しさを体現しているようだった。
そして、「彼女」もまたそんな文官達の……正式には文官見習いの、一人だった。
「これが数日前からこの近辺で狼藉を働いているという賊の特徴です。
たった3名とはいえ賊は賊、各自警戒を怠らぬ様にせよとのお達しなのです」
町の門に併設された警備兵の詰め所にて一人の小柄な少女が竹管を手に声を上げている。
この町の文官なのだろうが、指示を伝える為にわざわざ駆り出された所を見るとまだ見習いか。
こんなに小さいのに、わざわざご苦労な事だ。それとも文官とは余程暇なのだろうか。
警備の兵からそういった意味合いの込められた生温い視線を送られた少女は、
頬を朱に染めつつも机の上に竹管を叩き付ける様に置くと再度声を上げた。
「いいですか、この3人は遭遇した行商人の話によればいずれも帯剣しており、
姿を見せつつも実際襲いかかるまでには時間をおいて焦らせ、その上で人気のない場所で
ようやく襲いかかる等と悪知恵も働いているのです、くれぐれも油断しない様にするですっ!」
そう言い残して詰め所を後にした少女は、苛立ちながらも城へと戻っていく。
この後に言い付けられていたのは書庫にて書物の整理に目録との照らし合わせだったか。
「はあ……まだ曹操様が戻られぬとは言え、結果が分からぬのは辛いですぞ……」
数ヶ月前、この陳留を訪れるまでの事を思い出しながら少女は小さく溜息を吐いた。
彼女は元々両親が洛陽の文官を務めていた家系の出身であった。
とはいえ父親は早くに亡くなり母が女手一つで自分を育ててくれていた様なものだ。
母は父の遺した数々の書物……四書五経を始め、孫子や老子、荘子などを彼女に読ませ、
知識と教養を付けさせる為に尽力しており、彼女もまたそれに応えようと必死に勉学に励んだ。
そうして彼女は並の文官や知識人とは比較にならぬ程の智を得たのであるが、何の代償も無い訳ではなかった。
彼女には友となる相手が居なかったのである。ひたすら勉学に励み続けた日々は他者との関わりを薄れさせ、
また他人と上手く交流する術を失わせた。更に不幸であったのは、彼女が天才ではなく、優秀であったと言う事だろう。
手の届かぬ程の天才ならば諦めがつくかも知れぬ事も、ただ優秀なだけである彼女が成せば妬心を生んだ。
初めは彼女の周囲に居た同年代の子供達、やがてその輪はどんどんと広がっていき、彼女は一人になった。
そんな状況が続く事数年、ついに決定的な事件が起こる。
彼女の両親の同僚であった文官の娘、彼女の優秀さを最初に妬み爪弾きにした少女。
その子が親から与えられ、大事にしていたという書物を彼女に盗まれたと訴えたのだ。
竹管ではなく紙で作られていた書物だった故にその書物は価値も高く、おいそれと入手出来る物ではない。
それを妬み、羨んだあの子が盗み取ったのだと喚く娘に、まず父親が反応した。
父親は彼女の母親へ詰め寄ると言葉汚く彼女と母を罵り、盗人め、罪人めと叫んで回った。
当然母親も反論するが相手はそれを聞き入れない。また彼女を爪弾きにしていた子供達の親も、
その場に複数いた事が彼女と母親の不幸だったのであろう。
その日の執務室は怒号が飛び交い彼女の母を糾弾する声で溢れていた。
終わりの見えぬ議論に疲れ切って家に戻った母にその話を聞かされた彼女は仰天する。
その様な事などしていないし、そもそも盗まれたという書物の存在すら知らなかった。
しかしそれも当然であろう、彼女に皆を関わらせぬ様にしていたのは件の少女だったからだ。
だが周囲の者達は彼女と母を延々と責め続ける。それに耐えきれる程に彼女も母も強くなかった。
今はまだ言葉だけで済んでいるが何時それが拳に、石に変わるかも知れない。それが恐ろしかった。
やがて身の危険を感じた二人は夜闇に紛れて洛陽から、あの恐ろしい場所から出奔する。
人々は二人が逃げたと知り、やはり罪人だったのではないかと息巻き二人の家だった場所に火を掛けた。
人々は声を上げて笑っていた……その数日後、人家に忍び込んでは金銭や財宝を盗んでいた盗人が捕縛され、
その盗人の自白によって応酬された盗品の中に件の書物が含まれているのを見つけるまで。
人々は悔やんだが謝罪すべき相手はもう既におらず、その後悔と怒りの矛先は事件の口火を切った少女とその家族に向けられた。
そこで何が行われたかは、彼女の知る所ではない……少なくとも、再び洛陽へ戻るその時まで。
洛陽を逃げ出した彼女達は僅かばかりの金銭しかもっていなかった。このままでは長く保たない。
そう判断した二人は生きていく為の場所を求め、人々の噂に上っている陳留へと向かった。
噂通りの町であるならば仕事も見つけやすいだろう、そういった打算もあった。
陳留までの道中では写本や手紙の代筆などで銭を稼ぎ糊口を凌ぎつつ、邑を渡った。
そしてようやく陳留へと辿り着いたものの心労と慣れぬ旅のせいか母は体を壊し寝込んでしまう。
彼女は母の分まで働こうと必死に仕事を探した、しかしまだ年若く小さな彼女を雇う者など居はしなかった。
進退窮まった彼女が一縷の望みを掛けて向かったのが刺史・曹孟徳の元である。
噂に依れば彼女は優秀な者を好み、眼に適う相手であれば出自を気にせず家臣として取り立てるという。
ただし男性についてはその限りではない、という噂も聞いたが女の自分には関わりがない。
己の智には多少なりと自信のあった彼女はその噂に望みを掛けて居たのである。
その結果、彼女に目通りこそ適わなかったが採用するかどうかを確かめると告げられた。
文官を希望していた彼女に与えられた試験のは陳留の街に適用できる改善策を献策する事。
期限は10日、その出来次第で判断するとの言葉に彼女は張り切り、街を見て回っては様子を克明に記録。
やがて大量に積み上げられた街の情報を元に三日三晩掛けて策を練り、竹管に記していく。
殆ど不眠不休で続けられた作業がついに完成した時は、既に9日が過ぎていた。
気絶する様に倒れ込み睡眠を取った後、彼女は竹管を手に意気揚々と城へ向かった。
だが不運な事に、ほんの数日前彼女は賊の討伐の為に陳留を発ったばかりであった。
今居る文官だけでは判断できぬ、曹操様がお戻りになるまではひとまず見習いとして働いてみろ。
そう告げられた彼女は些か落胆したものの、仕方ないと割り切りその話を承諾した。
策を記した竹管は応対をしてくれた文官の女性が預かると言う事なので、大事に手渡した。
曹操様がお戻りになったらすぐに渡しておきますよ、とその文官は笑っていた。
そして何とか母と二人、生活していくだけの稼ぎを得る事が出来ているのであった。
仕事量は非常に多く目が回る程の忙しさではあるが、これも試練だと彼女は耐えていた。
――――――目前に迫る、己の運命の転機を未だ知らぬまま。
以上を持ってプロローグは終了となります。
今回まではあくまでも状況説明、盛り上がりもさほど無いのが心苦しい所ですが……。
何とかお話を進めていきたいと思っています。
次回より本編へと移行、ルート的にはオリジナル色が強くなりそうです。
……プロットを手直ししてゲーム本編では登場しなかった某ルートに流れるかも知れませんが……。
それでは、またいずれ。
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こんばんは、今回のプロローグ3までが本編開始前のストーリー。今回はヒロインの置かれた状況説明に終始しております。
誰がヒロインか分かった方、まだ秘密にしておいて下さいね?
それではどうぞ暖かく、時に厳しく見守って下さい。