No.207484

虚々・恋姫無双 虚廿~華琳SIDE~

TAPEtさん

………正直、すまんかった。

2011-03-21 21:25:39 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2549   閲覧ユーザー数:2143

「……ん…」

 

私…どうして…

 

「華琳さま!」

「孟ちゃん!」

 

…流琉……霞?

 

「…どうなってるの?」

「蜀の御殿で倒れたんや。覚えてへんの?」

「……倒れ……!!」

 

そう。

確か孟節の話を聞いた直後意識が遠くなって……。

 

「……っ」

「大丈夫ですか?もう少し横になさった方が……」

「平気よ。良い娘ね、流琉…」

 

私のことを心配してくれる流琉を見て、私は笑みながら流琉の頭をなでてあげた。

起きたところ、起きた場所は国の客のための部屋。劉備たちも気をつかってくれたようね。

 

秋蘭の姿は見当たらない。

恐らく、今でも馬騰といっしょに蜀との親善の話を進めているのでしょうね。

ありがとう、秋蘭。そして、心配をかけてごめんなさい。

 

「私が倒れた後の状況は」

「知らへん。孟ちゃんが倒れて直ぐうちが趙雲に案内されてここまで連れてきておったわ。流琉も一緒に来てたし」

「そう……」

 

私ももう駄目ね。

覇王と呼ばれていた私が、こんなことで気を失って他国の王と将たちの前でこんな醜態を見せるだなんて……

だけど……

 

 

『天の御使いとは、乱世を鎮めるために地の表し者。その役目が終わると、世に天の御使いはもう必要なくなります。そして、役目を終えた御使いの最後は、死のみ』

 

 

天の御使い、そう、一刀は天の御使いだった。

乱世を鎮めるとか、平和と保つとかそんな考えなんてなかったけど、その身に篭った寂しさと、悲しさがあってからこそ、周りの人たちが幸せになってほしいと思っていた。

自分が感じていた幸せな感情を、私たちと一緒に居ながら得ようとした。それは私も同じだった。

だけど、彼が人たちを守りたいを思うことが…民たちを幸せにしたいと思うその純粋な心が、

自分の死と繋がるということ……

 

一刀は知っているのかしら。

いや、それ以前に…私は一体あの子になんてことをしてしまったの?

あの言葉通りだと、私があの子を初めて会って、その手をとってくれた瞬間、私はあの子に私のために死になさいと行ったも同然だった。

もし私が一刀が思う通りに乱世を鎮めないで、呉と蜀を制圧して、そうやって天下を統一したところで、乱世を終われば一刀は死ぬ……

私に関わった時から、あの子が死ぬことは決まっていたというの……?

 

「!」

 

行けない。考えな負な方向にしか回らないわ。

今は駄目。

耐えなさい、華琳。まだあきらめてはいけないわ。私がここで倒れたら、一刀にできることが何もなくなってしまう。

 

「孟ちゃん、これからどうするねん」

「これから……」

 

どうしよう……

何も思い浮かばない……

孟節を頼りにしてここまで来たのに、彼女は清々しい顔で私の頼みを一言で断った。

しかもあの暴言。

いつもなら覇気を出しながら頸を跳ねていてもおかしくなかったのに、何故かあの女は、前に見たときは違う感じが漂っていた。

まるでこの世界の人ではないような気がするほど………

 

その美しさのせいで?分からない。

前の彼女の顔は人の顔とは思えないぐらい醜く、皮膚が溶けているような顔をしていた。

それが今は他の意味で人ではないようになっていた。

 

「孟節は今何を……」

「一度ウチらのところに付いてきてから、特に何も言わないで劉備のところに帰っとったわ。何なんや、あの女は」

「…彼女は孟節。私が探していた医者よ…彼女を連れていくためにここまで来たのに……」

 

でも、もう当てにならない。

後は稟が華佗を探してくれることを祈るしか……

 

 

がらっ

 

「華琳さま!」

「秋蘭」

 

扉が開いて、秋蘭は私を見たとたん、私に抱きついてきた。

 

「華琳さま……華琳さま……!」

「……秋蘭」

 

不安にさせてしまったのね。

ごめんなさい。

 

「もう大丈夫よ。だから泣かないで、あなたは今我が魏の使者としてここに来ている身よ」

「……はい…分かってます…ですが……」

「秋蘭さま…」

「ごめんなさい、秋蘭……心配をかけたわ。だけど、もう大丈夫だから…流琉が不安そうにしているから、もうしゃんとしなさい。私はいつも冷静にしている秋蘭が好きよ」

「………」

 

そしたら秋蘭は少し間を空いてから、涙を拭いて稟とした秋蘭の顔に戻った。

でもまだ少し顔に不安が残っているのは仕方がないわね。

 

「秋蘭さま、大丈夫ですか?」

「ああ、…少し取り乱してしまった」

「いいえ、私も秋蘭さまだったらきっと泣いていますから……」

 

流琉も秋蘭のことが心配そうな声で彼女を慰めてくれる。

だけど、秋蘭がここに居るということは……

 

「秋蘭、親善の話はどうなったのかしら」

「…はっ、それが……」

「……」

 

秋蘭の顔がすぐれない。

うまくいかなかったようね。

 

「そう、まぁ今はまだ焦らなくてもかまわな『同盟の約束を頂きました』……え?」

 

今、なんて?

 

「それだけでなく、孫呉との同盟の件にも協力してくれると…」

「ちょっ!どういうことねん?」

 

驚いた。

いくら甘えちゃんな劉備でもこんな話を簡単に引き受けるわけがない。

なにより関羽や孔明のこともある。

長い眼目でいかなければならないと思っていたのに、こんなあっさりと……しかも呉の同盟にも協力してくれるですって?

 

「一体何があったの?普通でそんなふうになったとは思わないわ」

「それが……」

 

 

「あの娘じゃ」

 

ふと視線を移したら、扉の前に馬騰が立っていた。

 

「馬騰」

「あの娘、孟節といったかの…何者かは知らんが、ただものではおらぬ。あの処世術、弁論の仕方。大陸にもあれほど人を口説くすべを持ってる者は数少ないじゃろう」

「孟節が……」

 

孟節がこっち側を助けた?

 

「それだけではありません。こちらに蜀が協力してくれると、自分が持っている薬の調剤術の全て蜀に伝授すると言い出してきて……既に書かれた書籍のいくつかを持ってきて、それを見た孔明や鳳士元の顔が真っ青になって……」

「あの孔明が取り乱すほど凄いものを……」

 

そんなものまでばら撒いてこっちを助けるだなんて一体どういうつもりで……

 

「私たちも驚きましたけど、本当のことです。あの頑固な関羽もあっというまで口説いてしまって……私たちはそこに立っていた以外にはほぼしたこともありませんでした」

「……孟節は今どこに…」

「お主を待っておるとか言っておったぞ。起きたら会いに来るとな…どうするか。呼ぶかの」

「……いいえ、こっちから行きましょう」

「大丈夫なのですか?」

「ええ、こっちも聞きたいことが山ほどあるわ」

 

一体どうして私の頼みは拒んでおいて、同盟の話には勝手に乗ってきたのか……

 

彼女が何を考えているのか分からなかった。

こんな感覚、前にも感じたことがあった。

そう、初めてもう一人の紗江に会った時……

その時も、こんな感じがしていたわ。

 

 

「私一人で行くわ。あなたたちはここで待っていなさい」

「御意」

「儂も行こう。儂もあの娘に聞きたいことがおる」

「馬騰……構わないわ。案内して頂戴」

「こっちじゃ」

 

私は馬騰と一緒に孟節のある場所に向かった。

 

 

 

 

「にゃー」

「もう、美似ちゃんったらもう大人しくして。もうすぐお客さんが来るのだから」

「お客さんまだ来てないにゃ。来るまでこうして姉さまの膝の上でゴロゴロしてるにゃー」

「大王しゃまずるいーミケも結以ねえしゃまとゴロゴロしたいにゃ」

「トラと結以姉しゃまになでなでしてもらうにゃ」

「……うぅ…ふあああ、シャム、起きたにゃ」

「んもう……」

 

扉の向こうからそんなことが聞こえてくる。

姉妹の親睦を図ってるときに悪いけど、そんなこと一々気を使ってあげれるほど余裕が今の私にはないわ。

 

ガラッ

 

「にゃ?」

「誰にゃ?」

「……お客さんね。四人とも黄忠さんのところに行ってなさい」

「ははさまや璃々が独り占めしようとするから嫌やにゃ」

「仲良くしなさい。大王さまでしょう?もうちょっと大王の威厳というものを見せてくれたら後でお姉ちゃんがご褒美を上げるかもしれないよ?」

「ご褒美、何にゃ?ナデナデしてくれるにゃ?」

「ふふっ、それはその時のお楽しみで…さ、四人とも行きなさい。後で璃々ちゃんに確認するから騙してもだめよ」

「分かったにゃ。皆、行くにゃ」

「「「にゃー」」」

 

孟獲を含んだ四人が私と馬騰の間をすり抜けて廊下を走っていった。

 

「随分と健気な妹たちなのね」

「…元気すぎて困っちゃうぐらいです。お待ちしておりました。どうぞ…」

 

孟節は苦笑しながらそう言って、私たちに席を勧めた。

 

・・・

 

・・

 

 

「疑問にされることが…多いと思いますが、何から解けていけば宜しいでしょうか……」

 

三人とも席に座ったところを、孟節は話を中心をこっちに移してくれた。

 

「では、先ず聞くけれど、蜀との同盟の話に協力してくれた理由は何?」

「魏と蜀、そして呉を含めての三国と、西涼の同盟は今になって必要不可欠なことになっております」

 

必要不可欠?

 

「必要不可欠とな?それは何故じゃ?」

「…皆さんが知っておられないことがあります。ですがそれは…わたくしに言えることではありません」

「……いいでしょう。でも、もし、この同盟がうまくいかなくて、また三国の中で力競争が始まるとしたら…?」

「それでは時間が間に合わず、三国とも滅亡する、ということになるでしょう」

「なんですって…!」

「歴史の歯車は既に元の姿には戻れないほどに違う形になってしまいました。残ったものはこの新しい形が己の姿を守ることができるのか、否か…この三国同盟の早期可決は、この大陸の命運を賭けた必要不可欠な事項となっています」

 

分からない。

何故この女はそんなことが言えるの?

 

「一体何がどうなるというの?あなたの言う通りだと、三国が力争いで互いを疲弊させ、三国とも滅亡するとか、そういう話でもないわ。何かその意外の力が動いているように言っている。一体何があるというの?」

「それは……」

「五胡……かの」

「……!」

 

孟節の少しだけど驚く様子を見せたわ。

五胡…?

確か五胡というと、大陸の西側にある蛮族の連盟……

大陸の極西地方で彼らと戦い続けていた馬騰には何か心当たりがあるのかしら。

 

「孟徳、お主がまだ孫呉との戦いを始めている前のことじゃ。いつごろから、五胡の現れる数がぐんと減っておった」

「それは……単なる内部事情によるわけではないの…?」

「それはないじゃろう。寧ろ、あやつらは内側に何がおるというのならもっとこちらを激しく攻めて来よる。そういう連中じゃ。それが、一ヶ月が経っても全然西涼に姿を顕さなかった」

「一体何故…そんなことが……」

「……今になって思うと……そうじゃな……まるで、力を貯めこんでおるように…」

「力を…貯めこむ……」

「……」

 

まさか…!

 

「まさか、五胡が…」

「それ以上!」

「!!」

「っ!」

 

 

「それ以上…口にしてはいけません……」

 

今、一瞬だけど、孟節の気迫に私も馬騰も圧されていた。

中国で戦いを続け、覇王と言われていた私と、西涼にて永遠なる漢の忠臣であった英雄馬騰を押すほどの気迫を……この薬師が持っているですって…?

 

「……っ……<<ブルブル>>」

「?」

 

何か、様子がおかしい。

 

「孟節、あなた…」

「…話を続けましょう」

 

孟節は一瞬の自分の揺れを隠そうかのように話を戻した。

 

「故に、わたくしは三国の同盟をより早く締結させるべく、わたくしが持っていた全てを持って蜀の君主にぶつかりました。わたくしにはもうあなた方を助けるような手札はございません。故に、これからのことは蜀の方々と、孟徳さまの方々だけで凌がなければなりません」

「あなたは……一体何を知っているの?」

「……わたくしは知っていることは…この外史を生きるものとして決して知ってはいけないこと…まさにそれです。これ以上は聞かないでください」

 

カガッ!

 

「?」

 

今何か変な音が……

 

「それより、華琳さまがわたくしにお聴きしたいことはもっと他にあるのではありませんか」

「……そうね」

 

いや、今は他のことは気にしないことにするわ。

私が考えるべきことは……

 

「あなたは、一刀が死ななければならないと言ったわ。何故そう言ったのかしら」

「それは………」

 

孟節は適切な言葉が見つからないかのように目が宙を舞っていた。

 

「一刀様についての話は、わたくしも全てのことを知っているわけではございません。わたくしが一刀様について知っていることは、全てあなた様がご存知の、あの方の口から出てきたことばかりです」

「…紗江のこと?」

「司馬懿さまは既にこの世にございません。そして、あの方の本当の名前は……左慈」

「さじ……?」

「あの方は、己が犯した罪故に、一生を賭けて一刀様の側をお守りしてきたと仰っていました」

 

罪……?

 

「そんなあの方が…もし、華琳さまがわたくしの元に来れば、あなた様に付いて行かないように仰っていました」

「なんですって…?」

「わたくしは…あの方の意志に逆らうことができません。ですが、こればかりは確実です。あの方は、決して一刀様にとって害になることをしようとなさる方ではございません」

「……そう……そうね…」

 

今まで、彼女がしていたことは、私が知っている限りでも全てあの子のためだと…そう言っていた。

だけど、あの時…

 

<<「あの子の最後を見守ってあげてください」>>

 

それは…あの娘さえも一刀のことを諦めた、という話ではなかったの?

 

「彼女は…今どこにいるの?」

「それを教えるわけにはいきません」

 

シャキッ

 

 

「!」

「言え、でなければこの頸を斬る」

「馬騰、何を…!」

 

突然馬騰が部屋に飾られていた剣を持ってきて孟節の頸を狙いながら言った。

 

「馬騰さま、あなたはこの事は関係ないお方。何故こんなことをなさるのですか?」

「確かに、儂はこの事件とは関係おらん。儂はこの乱世に一番遅れて来ておった。西涼の地で、ただ昔の女によった恨みを持って曹操を仇のように思いながら、此奴が私のところに来る日を待っておった日もあった」

「馬騰……」

「じゃが、あの天の御使いという子…あの子の目は本物じゃった。自分の身の安全など考えずいつも人のために、孟徳のためにとばかりに動いておった。ただ純粋な心で、此奴が幸せになれればそれで良いと言っておった。なのにお主は…そんなやつを活かせる方法を持っていながらも、使わんと言うとつもりかの……ならばいっそのこと、今ここで己の頸を斬る」

「やめなさい、馬騰!」

 

「………孟徳さまは、そうは思われないのですか」

 

頸を狙われた孟節は淡々と私に向かって話をした。

 

「馬騰さまのように、私を脅迫してでも、左慈さまの居場所を探れば、あの方を見つけ出せれば、一刀を助ける方法が見つかるかも知れません。そうは思わないのですか?」

「…………」

「それとも、既に子供に弄ばれて、覇王としての己なんて忘れてしまったのですか?」

「言葉がすぎるぞ、孟節!」

「助けようとする人の頸に剣をさしていながら仰ることばとはとても思いません」

「……!!」

 

孟節はまるで自分は別にここで死んでも構わないかのようにすんなりと話をしていた。

剣を握ってる馬騰の手が震えているのから、彼女の慌てている様子がまるまると見えていた。

 

流石、秋蘭と言った通りかもしれない。

この女は処世術に関しては優れていた。

それに、手札もあっちの方が多いのに、取り乱されてるのもこっち側。

このままだと孟節の思惑通りになる。

 

いいでしょう。あなたがそうにも覇王としての私が見たいのなら、見せてあげるわ。

 

「もし、あなたに吐き出させて、左慈の居場所を探ったところで何が解決するというのかしら」

「それは…行ってみなければわからないことです」

「そう、確かに行ってみなければわかるわ。だけど一つだけ確実なことがあるわ」

「それは、なんでしょう……」

「……」

 

 

突然……孟徳さまの顔が変わりました。

余裕が見えています。

 

「そう、確かに行ってみなければわかるわ。だけど一つだけ確実なことがあるわ」

 

確実なこと……?

 

「それは、なんでしょう」

 

と聞いたら、孟徳さまは卓にひじをついて、両手の甲に顔を乗せながら、余裕ありげな顔をしました。

 

そして、

 

「あなたが左慈のことを愛しているということよ」

「……!!」

 

……え?

 

「い、いきなり、どうして話がその方向に行くのですか?か、関係ないですよ。そんなこと」

 

いけない。ここで取り乱してしまうといけないのに。

 

「関係あるわ。だからこそあなたは、命を賭けてまであの娘を手伝おうとしているのだからね」

「おい、孟徳、此奴の痴情話はどうでも良い。それより本論を…」

「痴情とはなんです!わたくしは左慈さまのことをもっと健全な意味として好きなだけで……」

「……ほほう……<<にやり>>」

 

し、しまったです!

こっちも、孟徳さまの話に乗ってわたくしを取り乱そうとしていただけでした!

この二方、恋仇だったはずですのに、どうしてこんなに仲が良いのです?!

 

「だけどね、孟節。あなたが彼女について知らないことが一つあるわ」

「な、何ですか?」

 

何故か嫌な予感が……

 

「あの娘はね。もう私と閨を共にしたのよ」

 

…………………え?

 

「……ごめんなさい、ちょっと、聞き間違えちゃったみたいです。左慈さまが華琳さまと閨を共にしたって聞こえました」

「聞き間違えじゃないわ、孟節。そう言ったのよ」

「……う、うう、嘘です。そ、そんなの嘘に決まってます」

 

左慈さまが、まさかそんな……

 

「私は下品な冗談は嫌いなの。本当のことを言ってるまでよ」

「………」

 

なんでしょう。

このモヤモヤは……

今直ぐ、馬騰さまが持っている剣を奪い取って、華琳さまを刺したいです。

というか、殺す。この人を殺して左慈さまも殺してわたくしも死にます。

 

「は……ははぁ……」

「…孟節?」

「左慈さま……左慈さまがそんな……」

「孟節?孟節しっかりしなさい」

「左慈さま………」

 

左慈さまの裏切り者……

 

 

「おい、気絶しておるぞ、あ奴」

「……ちょっとやりすぎたかしら」

「別にそれほどではなかったじゃろうに」

「…かなりの衝撃だったように」

 

以外と初々しかったのね、この娘も。

 

「どうするのじゃ。気絶させてしまっては情報は引き出せぬぞ」

「仕方ないわね。取り敢えず待ちましょう…うん?」

 

「ふふ……ふふふ……」

 

孟節がまた起きた。

何か、ちょっと怖いんだけど…

 

「孟節?」

「ふふ……いいですよ?教えてあげます。左慈さまの居場所」

「…いいのかしら」

「構いません…どうせ適当な時に教えてあげなさいと言われてますから…ただ、三国の同盟が完璧なものになる前には行ってはいけません」

「…わかったわ」

「……左慈さまの居場所は、大陸で霊山と言われる泰山です。泰山の一番高い頂点に行く麓には、左慈さまの側の方々が昔儀式のために立てられた神社があります。左慈さまはあそこにあります」

「…そんなところで何をしているの?」

「…この物語に終わりをつける、と仰っておりました」

「物語の終わり……」

 

左慈。。。あなたは一体何をしようとしているの?

 

「そして、これを、孟徳さまに……」

「何?」

 

孟節は懐から手紙を一つ出した。

 

その場で開けてみると…

 

「……華佗の居場所?!」

「名医と呼ばれる華佗殿は、その居場所は定められず、いつもあっちこっちを動いておられます。ですが、今のところ、華佗殿は大陸の一周を終え、また旅立つ前に必要な道具を集めるために五斗米道の本拠地である漢中にいると言います。今ならまだ間に合うでしょう」

「……ありがとう、孟節。だけど、前は一刀が…」

「一刀様は亡くなられます。それは、早くても遅くても、結局訪れる未来。人は結局皆死にます」

「……」

「ですが、それでも華琳さまはまだ諦めておりません。ならば、わたくしも、守ってあげたい人がある、一人の姉として、その姿を見届けて頂きます」

「あ…」

 

そう、そうだったわね。

私が一刀のことを考えているように、あなたも…自分の妹たちのことを……

 

「……ありがとう、孟節」

「結以と申します」

「え?」

「………この外史の終わりに、あなた様が幸せにあることを、結以は心から祈っております」

「……ありがとう…結以、私の真名は華琳よ」

「華琳さま…どうか、わたくしや左慈さまの分まで一刀様をお守りください」

 

言わなくても分かっているわ。

 

「結以、それでは、失礼するわ。劉備には挨拶しないで行ってわるいって伝えて頂戴」

「はい。急いでください。その情報を頂いたのは三日前です。今から向かえばギリギリかも知れません」

「ええ……馬騰、私はこのまま漢中を通って陳留に帰るわ」

「うむ、頑張りな。吉報を待っておるぞ」

「ええ」

 

一刀、待っていなさい。

絶対に、このままあなたを行かさないわ。

 

 

 

孟徳が急いで部屋を出た後、儂は孟節を見た。

 

「孟徳は…見てしらんぶりをしておったか、それとも子供のことに目が眩んでみえておらんかったのか」

「……どういう?」

 

しらないふりをする孟節が被っているマントを外したら、布が少ない身体のそこそこがまるで古木のように枯れている。

 

「…!人間の身体が、こんな風になろうとは…!」

 

先から変な音がするとは思っておったが、まさか人の身体から水分が消えるみたいに枯れるとは……。

 

「……龍の源を使った身体でも、外史の力には及びませんね…」

「どういうことじゃ。先からお主は外史がなんとやら、歴史がなんとやら言っておったが……お主も御使いの小僧も、そんなふうになりながら一体何をしようとしておるのじゃ」

「大切なものを守るのです」

「大切なもの?」

「はい、例え、この体が砕け散るとしても、守りたいものがあります。そのためなら……例えこの身体が枯れた古木のようになろうが、苦痛の中で死んでゆくとしても構いません」

「………いかれておる。そこまでして守ったところで、その守ったものが喜ぶと思うのか」

「……」

 

孟節は悔しそうに目をぐっと閉じた。

 

「人に認められるとは思っていません。守った人が泣くかも知れません。でも、それでも守りたいと思うのが…わたくしの気持ちです……そしてきっと一刀様も…」

「……いや、認めぬ。儂は認めぬ。そして孟徳ものぅ」

 

認めてたまるものか。自分たちを幸せにするためと言いながら、己が死ねば、一体残ったものたちにどうやって笑えというのじゃ。

 

「ならば、あなた様はあなた様にできることをするまでです。過去の過ちの二の舞にならないためにもです」

「……っ…」

 

もう、この者に用はおらん。

 

「ついさっきの無礼な行動、謝っておこう」

「……」

 

孟節は静かに頭だけさげて、身体をまた隠した。

 

儂もそれ以上彼女を邪魔せず、部屋を出た。

 

 


 
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