No.205040

真・恋姫無双呉ルート(無印関羽エンド後)第四十二話

海皇さん

 すみません、今回で終了になりませんでした。本当は今回で終わらせようと思ったのですが・・・。

 まあとにかく四十二話投稿しました。今回は華琳大ピンチ!!なお話です。

2011-03-05 16:21:30 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:6217   閲覧ユーザー数:4895

 

 「せいやああああああああ!!!」

 

 「はあああああああああああ!!!」

 

 裂帛の気合と共に戦斧と大剣が振り下ろされ、火花が飛び散る。

 

 もはや幾度となく繰り返されたその光景が、再び再現された。

 

 「はあ・・・はあ・・・やるではないか、夏侯惇」

 

 「貴様もな、華雄」

 

 華雄と夏侯惇はお互い息を荒げながらそれでも油断なく睨みあっていた。

 お互いの実力はほぼ互角、そのためここまで勝負が全くついていなかった。

 

 「さすがに魏武の大剣と呼ばれるだけはある。なかなかの剛剣だ。だが私も此処でもたもたしている訳にはいかん。さっさと決着をつけるとしようか!」

 

 「いいだろう!私も華琳様が気がかりだ!さっさとその頸をもらうとしようか!」

 

 「やれるものならやってみよ!盲夏侯!!」

 

 「その名で私を呼ぶな!!この猪武者が!!」

 

 「貴様にだけは言われたくないわ!!」

 

 そして再び、二つの刃がぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 「さすがは神速と謳われた張文遠、私の矢が掠りもしないとは」

 

 「はん!そっちこそ動き回るウチに正確に矢ぁ撃ってくるなんて、さすがは弓の名手で名高い夏侯淵やな!」

 

 一方の霞と夏侯淵の一騎討ちも、両者共に決め手を欠いたまま今に至っていた。

 しかし霞は余裕の表情で夏侯淵を見つめていた。

 

 「けど、あんたの矢の数には限りがあるやろ。幾ら大量に矢を持っていてもいつかは必ず矢も尽きる。そん時のあんたはもう死に体や!!」

 

 その霞の言葉を聞いた夏侯淵も、うっすらと笑みを浮かべる。

 

 「舐められたものだ・・・。私が遠距離で矢を撃つ事しかできない弓兵だと思っているとは・・・」

 

 そう呟くや否や、夏侯淵は霞に向かって、自身の弓を振り下ろす。霞は慌てて受け止めるものの、受け止めた手はびりびりと痺れていた。そして弓は霞の偃月刀の刃の部分に当たったにも関わらず、傷一つついていない。

 

 「な、なんやて!?」

 

 「この弓は特別製でな、全体が鉄によって作られている。万が一矢が尽きて白兵戦に持ち込まれた時の事を想定してな」

 

 「なっ!?そんな弓引けるはずが・・・・」

 

 霞はそこまで考えてはっとした。夏侯淵はあの弓をあたかも普通の弓のように引いていた。だからこれくらいの腕力など持っていて当然だったのだ。

 所詮は弓兵と油断していた自分に腹が立つと同時にこれほどの強敵と戦えることへの喜びが湧き出てきた。

 

 「ええねええね!!燃えてきたで!!これやから強い奴と戦うんは面白いんや!!もっとウチを楽しませいや!!夏侯淵!!」

 

 「ふっ、ならばご期待に答えるとしようか!」

 

 そして霞の刃と、夏侯淵の矢による饗宴が再び始まった。

 

 

 

 

 「・・・お前達、弱すぎる」

 

 「はあ・・・はあ・・・化け物め・・・」

 

 「ウチらの力が、これっぽっちも通用せえへんなんて・・・」

 

 「もう・・・力が出ないの~・・・」

 

 一方その頃、楽進、李典、于禁の三人は恋の足元にひれ伏していた。

 

 三人ともものの三分も経たないうちに戦闘不能になっていた。

 

 一方の恋は、息一つ乱さず、汗一つかかずに平然としていた。

 

 この三人はそれぞれが一線級の武将である。その実力は他の将に比べても見劣りはしないのだ。

 だが、今回は相手が悪かった、いや、最悪といってよかった。

 

 「っ、はあああああああああ!!!」

 

 咄嗟に楽進は自身の体内に残された全ての気を振り絞って、最大級の気弾を放った。その威力はたとえ夏侯惇でも吹き飛ばせる程であった。

 

 

 

 

 

 だが・・・・

 

 

 

 

 

 恋はその気弾を避けもせず、逆に接近すると気弾に向けて戟を振るった。

 

 

 そして気弾は真っ二つに裂けて消滅した。

 

 

 「ば、馬鹿な・・・」

 

 

 それを見ていた楽進は愕然とした。隣に居る李典、于禁も呆然としている。

 

 

 

 もはや実力が違いすぎる。どう足掻いても勝てる相手ではない。

 

 

 

 楽進達は絶望して膝を着いた。

 

 「・・・もういい、終わらせる」

 

 恋はそう呟くと、三人に向かって方天牙戟を勢いよく薙ぎ払った。

 

 その一撃を喰らえば、確実に三人とも胴体が真っ二つになることだろう。

 

 楽進達は覚悟を決めて目を瞑った。

 

 

 

 と、突然無数の矢が恋に降り注ぐ。

 恋は一瞬で矢に気付いて方天牙戟で弾き、叩き落して身を守った。

 

 「え、援軍か!!」「助かったで~!!」「し、死ぬかと思ったの~!!」

 

 楽進達は、援軍からの援護射撃で恋が怯んでいる隙に、その場を離脱した。

 

 「・・・・ちっ」

 

 恋は舌打ちすると降り注ぐ矢の雨を掻い潜って目の前の弓兵の一団を斬り捨てる。

 

 「ぎゃあ!」「ぐぎゃ!!」

 

 一瞬で数人の兵士が真っ二つになるものの、まだ兵はざっとみて一万以上いる。この状況では楽進達を追いかけるのは不可能だった。

 

 「・・・・・・・」

 

 恋は襲い来る兵士達を無表情で斬り捨てながら、心の中で歯噛みした。

 

 

 

 

 「・・・サア、ジゴクヲタノシメ」

 

 愛紗は、そう呟くとニヤリと笑みを浮かべる。

 

 その笑みには、ただ目の前の人間に対する憎悪のみが籠められていた。

 

 「け、警護の兵士達は・・・!?」

 

 曹操はうわずった声で周囲に呼びかける。曹操の周囲には、一万以上の兵士が警護をしているはずだった。

 

 「アア・・・、アノヤクタタズドモノコトカ・・・」

 

 愛紗が指し示した方向には、ただ無数の死体が転がっているだけだった。

 

 

 

・ ・・まさか。

 

 

 

曹操の心の中に、ある事が浮かんだ。

 

 

「・・・全滅させたというの?あの兵士達を・・・」

 

「ソウダトイッテイルダロウ?アア、サミシクハナイ。オマエモイッショニオナジバショニイケルノダカラ・・・」

 

 不気味な笑みを浮かべて肯定する愛紗。それを見た曹操達の背筋に、薄ら寒いものが走る。

 

 だが、ここで怯んでいるわけにはいかない。曹操は自身の獲物である大鎌『絶』を構える。

 

 「私の兵士達を全滅させてここまで来たのは褒めてあげるわ。でもね、そう簡単に討たれてあげるわけにはいかないわ!!」

 

 曹操は絶を振りかざし、愛紗に斬りかかる。曹操は武に関しても非凡な才を持つ少女だ。

 

 その実力は、並の武将なら相手にならない程であり、夏侯惇も稽古の際には本気で戦わねばならない程である。

 

 

 

 

 

 

・・・しかし、目の前の人物にとっては、そんな武はあってないようなものであった。

 

 

 

 

 

 

 「・・・オソイ」

 

 

 

 

 

 

 ガキイイイイイン!!!

 

 

 

 

 

 

 すさまじい金属音とともに曹操は後ろに弾き飛ばされる。

 

 「がっ・・・・・!!」

 

 背中を強打した曹操は苦しげに呻いた。

 

 「華琳様!!」

 

 倒れ伏した曹操を見て荀彧が駆け寄ろうとするが、曹操は足を震わせつつも立ち上がった。

 

 「はあ・・・はあ・・・大丈夫よ・・・、まだ、まだ戦えるわ・・・」

 

 「・・・ソンナボウキレデカ」

 

 「・・・え?」

 

 愛紗の言葉に曹操は自分の獲物に目を向け、そして愕然とした。

 

 なんと絶の刃の部分が圧し折れ、無くなっていたのである。

 

 曹操が周囲を見渡すと、絶の刃は愛紗の足元に転がっていた。

 

 「・・・コンナヤツニ、ゴシュジンサマハコロサレタノカ・・・。コンナ、ヤツニ・・・」

 

 愛紗は絶の刃を踏み砕き、手に握った冷艶鋸を振り上げる。この一撃で終わらせようというのだろう。

 

 「ま、待ちなさい!!華琳様の、曹操様の命だけは助けて!!代わりに私を・・・「アンシンシロ、キサマモスグニアトヲオワセテヤル」・・・・!」

 

 愛紗は振り向くことなく荀彧に言い放つ。その一言だけで、荀彧は二の句が継げられなくなった。

 

 目の前に迫ってくる愛紗を見ながら、曹操は呆然と考えた。

 

 

 

 もはや何もかもがどうでもいい。

 

 

 

 自分はここで死ぬ。

 

 

 

 自分の覇道も、ここで終わる。

 

 

 

 

 

 これが、絶望なのね・・・。

 

 

 

 

 

 そして、曹操の頚目掛けて、刃がギロチンの如く振り下ろされた。

 

 

 雪蓮side

 

 

 「・・・・・」

 

 雪蓮は自身も剣を振るいながら、戦場の行方を見守っていた。

 

 自身の激励で奮起していた呉軍だが、段々と劣勢に陥り始めている。

 

 それも当然だろう。元々数では魏軍の方が圧倒的に有利だったのだ。それを指揮の高さで無理矢理埋めた結果、しばらく自軍の優勢は進んだものの、もう兵士達の体力は限界に近づいている。

 

 

 

・・・そろそろ引き時ね。

 

 

 

 「・・・蓮華、そろそろ兵を引くわよ」

 

 「な、何ですって!?」

 

 蓮華は突然の雪蓮の言葉に驚愕する。そんな蓮華を見ながら雪蓮は冷静に告げる。

 

 「兵士達に疲れが見え始めているわ。これだけ魏に損害をだせれば、充分よ。このままやっても兵を無駄死にさせるだけよ」

 

 「なっ!!姉様は一刀が傷ついたことが悔しくないんですか!?魏が憎くないのですか!?「・・・じゃない」・・・ね、姉様」

 

 「悔しいに決まってるじゃない!!憎いに決まってるじゃない!!私の、私の愛している人が私を庇って死に掛けているのよ!!今すぐにでも曹操の頚を刎ねに行ってやりたいのよ!!でも、でも私は王として、国のことを第一に考えなくちゃならない・・・。私一人の私情で軍を危険に晒すことはできないのよ・・・・」

 

 「姉様・・・」

 

 蓮華は、涙を流しながら独白する雪蓮を見て、沈黙した。

 

 

 

 姉もつらいのだ。しかし、王として、私情は捨てねばならない。それが人の生き死にの場である戦場なら、なおさら・・・。

 

 

 

 その考えにいたった蓮華も、決断した。

 

 「伝令!!」

 

 「はっ!!」

 

 「直ちに戦闘を中止して全軍退却させよ!!もう魏に戦闘できる力はないと!!」

 

 「御意!!」

 

 伝令が去っていくのを見た蓮華は、雪蓮の方を振り返った。

 「姉様・・・」

 

 「上出来よ、蓮華。これであとは退却するだけ・・・「た、大変です!!雪蓮様!!」・・・明命?どうしたのよ」

 

 突如飛び込んできた明命の姿を見て、雪蓮と蓮華は眉をひそめる。明命は肩で息をしながら、途切れ途切れに話し始める。

 

 「か、関平様が、関平様がたった一人で曹操の下に向かったと・・・」

 

 「な、なんですって!?」

 

 「たった一人で、なんて無茶を!!」

 

 雪蓮達は驚愕の表情を浮かべた。

 もう退却するよう全軍に言い渡してしまった。関平を連れ戻すことはまず無理だ。

 それ以前に敵軍にたった一人で侵入するなど自殺行為だ。

 

 「くっ、仕方がない・・・、明命!今すぐ華雄達に退却することを伝えなさい!!そして関平が魏軍に取り残されていることもね!!」

 

 「へ?は、はい!!」

 

 雪蓮の指令を聞いた明命は華雄達の部隊の下へ向かった。

 

 「お姉様・・・・」

 

 「・・・蓮華、今は関平の無事を祈りましょう」

 

 今はこれが精一杯なのだ。雪蓮は歯噛みしながら曹操軍を睨み付けた

 

 

 

 

 EP43に続く

 


 
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