■ いつまでも君の傍で
陽が沈み、宵闇の帳が下りて、クロスベルの街中を色取り取りのネオンや街灯の明かりによって彩られ始める頃。街の片隅に佇む古びた建物―――『特務支援課』のビルの一室で、移ろいゆく街中を窓から眺めながら大切な人たちの帰りを待つ一人の少女の姿があった。
初めて出逢った時から、自分を本当の家族の様に慈しみ、大切にしてくれている大人達は皆『おしごと』で出払ってしまっている。
「今日は早めに帰れそうだから、良い子にしているんだぞ?」
出掛ける時、そう言いながら頭を撫でてくれた人は、いつ帰って来てくれるのだろう。きっとみんなくたくたになって、「ただいま」とこのドアを潜るのだ。そうしたら、すぐに駆け寄って、笑顔で出迎えるのだ。自分の笑顔は、何よりの『ごほうび』だそうだから。
漸くその日の支援要請を終え、特務支援課に戻って来た頃にはすっかり陽が沈み、真っ暗になってしまっていた。
これも予想外に現れた魔獣たちと、その後の副局長の長い小言の所為だ。朝に交わした約束を破ってしまったロイドは、駆け足で中に入る。
「キーア、ごめんっ。遅くなっ――っ!!」
目に飛び込んできたのは、テーブルに突っ伏して静かに寝息をたてているキーアの姿。きっと待ちくたびれるまで自分たちの帰りを待ってくれていたのだろう。遅れてやってきた他のメンバー達も、そんなキーアの姿を見て、胸の奥に温かなものが溢れてくるのを感じた。
「キーア………ありがとう」
部屋から持ってきた毛布を、その華奢な肩に掛けながら、ロイドは改めて誓った。これから待たせないように、出来るだけ早めに帰れるように仕事をしよう、と。
この先、何があるか分からない。それでも、何があったとしてもこの子を守り抜こう。そしてまた、この何気ない優しさに溢れた日常を、笑いながら皆と一緒に過ごすのだ。
願わくば、いつまでもこの子の傍に。
お互いを大切に想い合う、そんなある日の一コマ。
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軌跡フェスタ用に書いたやつです。