No.202675

真・恋姫無双アナザーストーリー 雪蓮√ 今傍に行きます 番外編 2 Episode 1

葉月さん

ご無沙汰しています。

最近仕事が急に忙しくなり中々書く暇がなくなってきました。
さて、そんなことはさておき今回は、大学でのお話となっておりますが、まあ、なんてことはありません。いつも通りにやりたい放題してるだけです。
少し話が長くなってしまったので前編と後編分けてあります。

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2011-02-20 17:22:21 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:7403   閲覧ユーザー数:5040

真・恋姫無双アナザーストーリー 雪蓮√ 今傍に行きます 

番外編 2 Episode 1

 

 

 

 

【全てはあなたの為に】

 

 

 

 

 

 

私と優未はフランチェスカ学園を卒業をした。

 

これで一刀との甘い生活はこれで終わりを告げてしまった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

な~んて、なるわけないでしょ?

 

私や優未が一刀を諦めるわけ無いじゃない。

 

ただ、ちょ~っと距離が遠くなっただけで今でも実家から大学に通ってるんだから。

 

なぜかって?そんなの決まってるじゃない♪

 

 

そ・れ・は……

 

 

大学がフランチェスカ学園の敷地内にあるからよ♪

 

それにしても驚きだったわよ。この学園って一体どれだけ広いの?

 

高校に通っていた時は余り気にしてなかったけど、調べてみるとこれまた驚きなのよ。

 

なんせ、敷地内には幼稚園から大学まであるんだからほんっと驚いたわ。

 

まあ、そのおかげで一刀と離れ離れにならなくて良かったんだけどね♪

 

そうそう、もっと驚いたのが大学の理事長なのよ!

 

高校の時は裸のビキニを着た筋肉ムキムキのおっさんだったんだけど、大学の理事長も筋肉ムキムキで白髭をはやしたおっさんなのよ!

 

もうビックリしたわ。優未なんか顔引き攣らせてたんだから。

 

 

『ひ、卑弥呼様……なんでここにいるのよぉ~~~』

 

なんて言ってうな垂れてたわね。知り合いなのかしら?

 

まあ、嫌な思い出は置いといてっと……

 

とにかく、一年間はなんとか暇を見つけては一刀に会いに行ってたってわけよ。

 

もちろん、夏休みだって一刀と旅行に行ったわよ。ああ、もちろんのことだけど琳の別荘ね?

 

そしてクリスマスの時は……ふふふ♪これはひ・み・つ♪

 

だって一刀と私だけの秘密なんだもん♪

 

「で、さっきから何ニヤニヤしてるのさ雪蓮」

 

「え?ふふふ~♪」

 

「うわっ!気持ち悪っ!」

 

「ちょっと、随分と酷いこと言ってくれるじゃない?あなただってさっきから頬が緩みっぱなしじゃない。だらしないわよ」

 

「え~、だって~これでまた一刀君と一緒に通えると思うと嬉しくってさ~」

 

「それは私も一緒よ」

 

「ん~、なんだかそれだけじゃないような気もするんだけどな~。何か隠してるでしょ雪蓮~」

 

「別に無いわよ」

 

「怪しい~、白状しなさいよ~」

 

「もうしつこいわよ!そんなんだと一刀に嫌われるわよ」

 

「ふふ~ん!一刀君はそんなことで私の事嫌いにならないもん!」

 

「その自信は何処から出てくるのやら」

 

「そんなの愛の力に決まってるじゃん!」

 

「あ~、はいはい。そうですね~」

 

「うわっ!反応うすっ!雪蓮こそ、そんなんじゃ一刀君に嫌われちゃうよ」

 

「それこそ大きなお世話よ。私と一刀の間は切っても切り離せないんだから」

 

「雪蓮だってどこからその自信が湧いて来るのさ」

 

「もっちろん。これに決まってるじゃない♪」

 

「それってクリスマスの時にプレゼントされた指輪だっけ?」

 

「ええ、婚約指輪じゃないのが残念だけど。一昨年のクリスマスに貰った物よ♪私もその時、指輪をプレゼントしたんだけどね~まさか同じ指輪だとは思わなかったわよ。意思が通じ合っているのかしらね♪」

 

「……惚気?」

 

「そう聞こえる♪」

 

「ふ、ふ~んだ!それでも一刀君のお嫁さんになるのは私なんだから!」

 

「何言ってるのよ。私に決まってるでしょ?」

 

「はぁ、こんな大通りで恥ずかしい事を大声で言い合ってるんじゃないわよ。まったく……」

 

振り返ると其処には腕を組んで呆れている琳が居て。その後ろには桃香に愛紗、そして一刀が苦笑いを浮かべていた。

 

「はぁ、あなたたちはいつまで経っても子供ね。少しは成長しなさいよ」

 

「背がお子ちゃまな琳に言われたくないよ~だ」

 

「なっ!あ、あなたねぇ、人が気にしていることを!」

 

「きゃっ!琳が怒った。助けて一刀く~ん♪」

 

優未は一刀の後ろに周ると嬉しそうに一刀に抱きついた。

 

「か~ず~~と~~~~っ!」

 

「ちょっ!優未、俺を巻き込まないでくれよ!」

 

「だって~、琳が怒りんぼなのがいけないんだよ~」

 

「あ、あああなたが私を怒らせるようなことを言うからでしょ!」

 

「まあまあ、琳も押えて押えて。俺は、琳の事可愛くて好きだぞ。それじゃダメなのかな?」

 

「っ!き、急に何を言い出すのよ……そんな事言っても優未は……」

 

「優未も許してやってくれないかな?その分、俺が謝るからさ。ごめん」

 

一刀は笑顔で答えると頭を下げて謝ってきた。

 

「そ、それだけじゃ足りないわね。……そうね、今度一日私に付き合いなさい。いいわね?」

 

「ああ、わかったよ」

 

「~~っ!な、なら許してあげるわ」

 

「……優未」

 

「え?な、なに?」

 

呆然とする優未に雪蓮は話しかけていた

 

「あなた、まんまと琳にやられたわね」

 

「え?え?……っ!あ~~っ!ず、ずるいよ琳!」

 

「ふふ、元はと言えばあなたがいけないのだから。自業自得でしょ?」

 

「むむむっ~!一刀君!」

 

「へ?!な、なんだ?」

 

「私ともデートしてよ!」

 

「「「「っ!」」」」

 

「な、何言い出すんだよ。俺は別に」

 

「二人っきりで出かける事をデートって言うんじゃないのかな?」

 

「う゛……そうなる、のか?」

 

「はぁ~、これだから一刀君は……でも、そんな一刀君が好きなんだけどね~♪」

 

「は、ははは、参ったな」

 

頭をかきながら苦笑いを浮かべる一刀に優未は微笑んでいた。

 

「まあ、そろそろ移動しましょうか。私と優未は別に構わないけど、あなたたちはこれから入学式よね?」

 

「「「「あっ」」」」

 

「あ、あなたたちねぇ……桃香や一刀なら判るけど、愛紗や琳まで忘れてるってどういうことよ」

 

「し、仕方ないじゃない。それだけの事が起きたのだから……」

 

「それよりも、私と一刀さんなら判るってどういう意味ですか雪蓮さん!酷いですよ~」

 

「あはは~、怒らないで頂戴桃香。ほら、それより早く行かないと」

 

「それもそうね。桃香、いつまでも膨れてないで行くわよ」

 

「うぅ~。一刀さん、私ってそんなにお間抜けさんじゃないですよね?」

 

「そんな事ないよ。ほら、機嫌直して」

 

一刀は拗ねる桃香の頭を撫でてあげていた。

 

「えへへ♪ちょっと恥ずかしいけど、ありがとう一刀さん!」

 

「おっと!」

 

桃香は機嫌がよくなったのか一刀の腕に抱き付いてきた。

 

「と、桃香様。みなが見ています。お止めください」

 

「え~、愛紗ちゃん遠慮なんてしてたらだめだよ?ほらほら愛紗ちゃんも反対側の腕に抱きついて抱きついて!」

 

「し、しかしですね……こう一目が多いと……」

 

愛紗は恥ずかしそうにあたりの様子を伺う。

 

「もう愛紗ちゃんったら!そんなことじゃ一刀さん取られちゃうよ?しっかりと捕まえてないとね♪」

 

(むにゅっ!)

 

「うぉ!と、桃香……胸がっ!」

 

「うん?どうかしたの一刀さん?」

 

「い、いやなんでも……いててっ!あ、あいひゃ!?」

 

「む~、一刀様、鼻が伸びていますよ」

 

(むぎゅっ!)

 

いつの間にか一刀の空いている腕に抱き付居ている愛紗は、見上げるように睨み付けて頬を抓っていた。

 

「い、いや。あ、愛紗もあ、当たってるって!」

 

「あ、当てているのです!~~~っ」

 

「ふふふ、なんだか焼けちゃうわね、か・ず・と?」

 

「あ~ん!私も一刀君に抱きつきたいよ~!」

 

「この状況で言われても……ってり、琳?どうしたんだ?」

 

琳の体がプルプルと震えてる事に気が付いた一刀は琳に呼びかけた。

 

「あんたってやつは……っ!そこにお座りなさい!じっくりと話さないといけないみたいだから!」

 

「お、俺が何をしたって言うんだ?!」

 

「何をしたか?ですって?!この期に及んでまだそんな事を言うのね」

 

「ちょっ!どこからそんなものを取り出し(スパーーーンッ!!)いって~~~っ!!」

 

琳の手にはいつの間にかハリセンが握られており一刀の顔面目掛けて振りかぶっていた。

 

「か、一刀さん大丈夫ですか?!」

 

「琳殿、少々やり過ぎでは?」

 

「ふん!まだ足りないぐらいよ」

 

「まあまあ、それは後にしてとりあえず先にやる事済ませてきちゃいなさい。もう時間もあまりないわよ?」

 

「っ!大変だ!ほら一刀さんも愛紗ちゃんも早く行かないと!」

 

「くっ、いいこと。一刀逃げるんじゃないわよ!あとでじっくりとお説教してあげるわ」

 

「うぅ~、俺が一体何をしたっていうんだ……」

 

「か、一刀様、しっかりなさってください」

 

それぞれ愚痴や励ましの言葉を言いながら講堂へと走っていった。

 

「ホント、慌しいわね」

 

「あははっ!一刀君たちらしいけどね」

 

一刀たちが走っていた方向を見ながら微笑み合う雪蓮と優未。

 

「それにしてもさ」

 

「ん?どうかしたの優未?」

 

「一刀君たちがイチャついてる時の周りの目線気が付いた?」

 

「ああ~、ふふ。男性達は凄い憎らしそうに一刀のこと見てたわね」

 

「うんうん。逆に女の子の方は、一刀君にイチャついてる愛紗や桃香たちの事を羨ましそうに見てたよね」

 

「まあ、大体ここの大学に通う女の子ってエスカレーターだからね。ずっと一刀にあこがれていた子達なんでしょ」

 

この大学は幼稚園から大学までエスカレーターで進級できる仕組みになっている。とは言うもののそれなりの成績を持っていないと進級は出来ないのだが。

 

「まあ、これから残り3年間楽しくなりそうね」

 

「そうだね!そう言えばこのあとどうするの?」

 

「え?そうね~。入学祝いに何処かに食べに行きましょうか」

 

「賛成!あっ!私、カラオケBOX行きたい!」

 

「いいわね。それにしましょうか♪フリータイムでお酒も呑み放題よ♪」

 

「ま、まだ未成年でしょ!それにフリータイムにお酒は含まれないんだよ」

 

「え~、たった一歳くらい変わらないじゃない。バレやしないわよ」

 

「バレるに決まってるでしょ。年齢確認ちゃんとさせられるんだから」

 

「ちぇ~、後一年の我慢か~。ぶーぶー!こんな法律不公平だ~!」

 

「そんなこと私に言われても困るよ~」

 

「ま、とりあえず終わるまでカフェでお茶でもしてましょうか。みんなにはメールを送っておくって事で」

 

「んだね~」

 

雪蓮と優未は雑談をしながら大学内にあるカフェテリアへと歩いていった。

 

《優未Side》

 

入学式も無事に終わり、一刀君たちとカフェテリアで合流した後、カラオケBOXへ向った。

 

「琳さん!一緒にデュエットしましょう!」

 

「仕方ないわね。それじゃ選曲はあなたに任せるわよ?」

 

「はい!任せてください!」

 

(ピッピッピ)

 

――だんご3兄弟

 

「……」

 

(ピッ)

 

――曲を停止しました。

 

「あ~!なにするんですか琳さん!」

 

「誰があんな幼稚な歌を歌わなければいけないのかしら?」

 

「え~いい歌じゃないですか~」

 

「却下よ。違うのにしなさい」

 

「うぅ~。じゃ、これなら!」

 

(ピッピッピ)

 

――およげ!たいやきくん

 

「……」

 

(ピッ)

 

――曲を停止しました。

 

「あ~!また琳さんが停止させた!」

 

「あ~な~た~ね~~!なんで、こんな曲ばっかり入れるのよ!他にもあるでしょ他にも!」

 

「だ、だっておいしそうな歌だし。私、甘いものが大好きですから!」

 

桃香と琳はなんとも間抜けなやり取りをしていた。うん、やっぱりいいなこの空気。

 

「はぁ~、私が任せたのが馬鹿だったわ。今度は私が入れるから貸しなさい」

 

「うぅ~。わかりました~」

 

桃香は渋々琳にリモコンを渡し、一刀君に頭を撫でられて慰められていた。いいな~。私も撫でて欲しいな~。

 

(ピッピッピ)

 

――無双恋華

 

「ほら歌うわよ桃香。いつまでも一刀に慰められてるんじゃないわよ」

 

「わわわっ!マイクマイク……あった!ゴホン」

 

そして桃香と琳は歌いだした。

 

「「~~~~♪」」

 

曲が終わり、最初に声を掛けたのは一刀君だった。

 

「上手いじゃないか二人とも!」

 

「えへへ♪まぐれだよ」

 

「ふん、当然の事よ。これくらい歌えなくてどうするというのよ」

 

桃香は一刀に褒められて嬉しそうに照れ、琳は歌えて当たり前といいながらも一刀に褒められて満更でもなさそうだった。

 

「な~に、二人して顔赤くしてるのよ。そんなに一刀に褒められて嬉しかったわけ?特に琳」

 

「なっ!そ、そんなわけないでしょ!なんで一刀に褒められたくらいで照れなければいけないわけ?あなたの目はおかしいのではないかしら?」

 

雪蓮に指摘されて琳は顔を赤くして抗議していた。ぷぷっまったく説得力が無いけどね。

 

「なに人の顔見てニヤニヤしているのよ優未は!」

 

「べっつに~♪」

 

「くっ!次は誰が歌うのかしら!?さっさと歌いなさい!」

 

「あ、えっと、わ、私ですね。し、少々お待ちください……えっと、これでよいのですか桃香様?」

 

桃香にリモコンの操作の方法聞いてるって事は、愛紗ってカラオケBOX来た事が無いんだ。へ~。

 

(ピッピッピ)

 

――月千夜序章~つきせんやぷろろーぐ

 

「で、では、参ります!……~~~~♪」

 

うわっ!愛紗、歌うまっ!いい声してるな~。

 

「へ~、上手いじゃない愛紗ったら」

 

「わ~、愛紗ちゃんすご~い!」

 

雪蓮も桃香も愛紗の歌声に聞き惚れていた。

 

「……じゅる」

 

……今、物凄く似つかわしくない音が聞こえなかった?『じゅる』ってなにさ『じゅる』って!

 

薄暗い部屋を見回すとただ一人だけ愛紗を見詰める視線が違うのがいた。琳だ。

 

「ち、ちょっと琳。なにしたしてるのよ」

 

「な、何かしら?別によだれなんか出てないわよ?」

 

いや、思いっきし音出てたでしょうが!

 

「ふふふ、やっぱり愛紗の声はいいわね。ベットの上で聞いてみたいわ……」

 

「っ!?!?~~、~~~~~♪」

 

その琳の送る熱い目線に愛紗は一瞬背筋を震わせてたけど歌い続けてた。

 

「……お、お粗末さまです」

 

「上手いじゃないか愛紗!ビックリしたよ」

 

「すご~い!愛紗ちゃんそんなに歌上手かったんだね!」

 

「そ、それほどでもありません。偶に口ずさむ程度にしか歌ってはいないのですから」

 

マイクを机に置き席に座る愛紗。すると琳は席を詰める様にして愛紗に近づいていた。

 

「……」(ずるっ)

 

「……」(すすっ)

 

「……」(ずるっ)

 

「……」(すすっ)

 

動物的勘なのかな?愛紗は身の危険を感じてなのか琳から距離を取ってるし。それを追いかけるように琳は微笑みながら愛紗に詰め寄ってた。

 

(すくっ!すたすた、ぽすっ)

 

あ、耐え切れなくなったのか立ち上がって一刀君の隣に座った……って!ちょっと!なにさり気無く一刀君の横に座ってるのよ愛紗は!

 

「愛紗?どうかしたのか?」

 

「い、いえ。私の座っているところが風が当たるのか寒かったので場所を移動しただけです」

 

「そっか、寒かったら言ってくれれば室内温度上げるよ?」

 

「いえ、そこまでは寒くないのでお気遣い感謝いたします」

 

「……ちっ」

 

うわ、琳のやつ舌打ちしたよ!そんなに愛紗に逃げられたのが悔しかったのかな?

 

「ほらほら~そんな事より次は誰が歌うの?誰も歌わないなら私が歌っちゃうわよ~♪」

 

「おっ!雪蓮は何を歌うんだ?」

 

「ふふふ♪リクエストがあれば何でも歌うわよ?」

 

「それじゃそれじゃ!『おさかな天国』「却下よ」ふえ~んっ!琳さんが苛めるよ~」

 

いや、流石にこの歳になってそのレパートリーは無いんじゃないかな?

 

流石に雪蓮も苦笑いしてるし。

 

横からすかさずダメだしをする琳も凄いとは思うけどさ。

 

「はいはい、泣かないの。それじゃ私はっと……これねっ!」

 

(ピッピッピ)

 

――夢で逢いましょう

 

あれ?この曲って……

 

「ねえねえ雪蓮?これって確かデュエット曲じゃなかったっけ?」

 

「そうよ?」

 

「雪蓮ともう一人は誰が歌いの?」

 

「ふふふ、それはもちろん、一刀に決まってるじゃない♪」

 

「え~っ!ずるい!私も一刀君とデュエットしたいのに!」

 

「ならすればいいじゃない。まずは私とよ♪」

 

「い、いや俺この歌しらないぞ!」

 

「大丈夫よ。ほらほら始まるわよ!」

 

「うえ!?えええ!?」

 

う~!雪蓮ったらホント抜け目無いんだから!

 

見上げていた目線を下に向けると、桃香と愛紗は二人が歌っているのを羨ましそうに見ていたかと思うと机に置いてあった曲本を手に取り選曲しだしてた。

 

(ピッピッピ)

 

「ちょ!次は私の番だよ!勝手に入れないでよ琳!」

 

「あら。まだ入れていなかったの?随分と遅いわね」

 

「ぐぬぬ~~っ!」

 

(ピッ)

 

――取り消しました。

 

「ちょ!あなたこそ何するのよ!」

 

「ふ~んだ。順番を守らない琳がいけないんだよ」

 

「早く入れないあなたがいけないのでしょ!」

 

「なにさなにさ!またデュエット曲なんて入れちゃってさ。どうせ一刀君と歌つもりだったんでしょ!」

 

「べ、別いいじゃない。そんな事あなたには関係の無い事でしょ!」

 

「ぬぬぬ~」

 

「くぅ~~」

 

(ピッピッピ)

 

(ピッピッピ)

 

「「え?」」

 

琳とにらみ合ってると転送する音が聞こえてきた。

 

「ちょ!桃香に愛紗まで私を抜かすつもりなの?!」

 

「ふええ!?ま、まだ入れてなかったんですか!」

 

「す、すまん。もう入れたとばかり思っていたのだ」

 

「うぅ~、いじけちゃうぞ私!」

 

何気に二人とも入力した曲もデュエットだし!

 

「ほ、ほらほら!割り込み入力出来るみたいですよ?今から入れればまだ間に合いますよ!」

 

「うぅ~、桃香はいいこだよ~。琳とは大違いだね!」

 

「ふん!大きなお世話よ」

 

(ピッピッピ)

 

桃香からリモコンを貰いなんとか雪蓮たちが歌い終わる前に入力する事ができたよ。

 

「ちょ、ちょっとタンマ!少し休ませてくれ!」

 

「だらしが無いわね。まだ一時間しか経ってないじゃない」

 

「そ、そんなこというけど俺歌い続けで喉が……」

 

そう、あれから一刀君はデュエットで歌い続けているのだ。

 

「仕方が無いわね。それじゃ少し休んでなさい」

 

「ああ、そうさせてもらうよ」

 

「はい、一刀君。ウーロン茶」

 

「ありがとう、優未。ん……ん……ぷはっ!うまい!」

 

「あはは、大袈裟なんだから一刀君は」

 

「仕方が無いだろ?歌い続けてたんだからさ」

 

苦笑いを浮かべながら答える一刀君だったけどその顔はとても嬉しそうに見えた。

 

「何かいいことでもあったの?」

 

「え?どうしてそう思うんだ?」

 

「だってなんか嬉しそうな顔してるよ?」

 

「う~ん。いつも通りって言ったら変だけどこうやって皆で集まって騒いでるのって良いなって思ってさ」

 

「そうだね~。琳は居なくてもいいけどね」

 

「ははは、犬猿の仲みたいなもんだもんな」

 

「だって琳が苛めるのがいけないんだよ~さっきだってさ!」

 

そういいながら琳の悪口を言う一刀君は笑顔で聞いてくれていた。

 

「ちょっと~なに二人だけでいい雰囲気になってるのよ!ずるいわよ優未っ!」

 

いい雰囲気になり掛けた時だった。行き成り雪蓮が私と一刀君の間に割り込んできた。

 

「ねぇ~一刀。私ともお話しましょ~」

 

「わ、わかったからそんなに押し付けたら胸がっ!」

 

「ふふふ、わざとに決まってるじゃない♪」

 

「なに無い乳で押し付けてるのさ雪蓮!」

 

「だ、誰が無い乳ですって!これでも少し大きくなったんだからね!一刀のおかげでね!」

 

「ちょっ!」

 

「「「え?」」」

 

は?今、雪蓮なんて言ったの?胸が大きく?一刀君のおかげ?え?え?うええええええっ!?!?!

 

「か、一刀君どういうことかな?説明して欲しいな~~~」

 

「い、いやね?その~、と、とりあえず落ち着こう!ほ、ほらウーロン茶でも飲んで……」

 

「良いから答えなさい一刀!やったの!やらなかったの!どっちなの!」

 

「す、ストレートすぎだろ琳!」

 

「良いから答えてください一刀さん!どうなんですか!」

 

「そ、それはだな……」

 

「もうはっきり言っちゃいなさいよ。私と一刀は一つになったって♪」

 

「か、一刀様……そんなっ!私のを奪っておきながら。まだ足りないと申されるのですか!」

 

「「「は?」」」

 

へ?愛紗まで何言ってんの?まさか私と雪蓮が卒業した後でってこと!

 

「っ!あ、いや違います!一刀様であって一刀様でないのですが、いやでも一刀様が私のを……だが、こちらの一刀様では……と、とにかくどういうことですか!」

 

あ、ああ。そういうことかあ~あ、ビックリした。愛紗は外史の時の事を言ってるんだね。この世界ではまだしてないって事か。ほっ……

 

でも、そんな事を知らない桃香や琳に当事者の一刀君は物凄い顔してるな~。

 

「一刀さん!どういうことですか!?あ、愛紗ちゃんも愛してあげたのに私は愛してくれないんですか!」

 

「ちょ!お、落ち着いてくれ桃香!俺は愛紗とはまだしてないよ!」

 

「まだですって!なら一刀はそのうち愛紗ともやるって事ね!だったらそこに私も呼びなさい!」

 

「り、琳殿?!」

 

「何言い出すんだ琳は!」

 

「ふふ~ん♪一刀~ちゅっ」

 

「「「あーーーっ!!!」」」

 

うわ~、物凄い混沌としてるな~。

 

私は遠巻きからこの騒動を見ていた。さっきの愛紗の言葉で妙に素面になっちゃったんだよね。

 

「とりあえず一人で歌ってようかな~♪」

 

(ピッピッピ)

 

私は一刀君に詰め寄る二人と抱きつく雪蓮を尻目に歌いだした。

 

「う、歌ってないで助けてくれ優未~~~!」

 

「ごめん、無理♪」

 

だってまだ死にたくないもんね。

 

「はぁ、酷い目に合った……」

 

「まあ、自業自得だよね~」

 

カラオケを終え今は一刀君と二人っきりで帰路についていた。雪蓮たちは羨ましそうにしてたけど帰る方向が途中まで一緒なんだから仕方ないよね♪

 

「そうは言うけどさ。無視して歌ってる優未も酷いと思うぞ?」

 

「にひひっ!そんな細かい事気にしたらダメだよ!男の子でしょ♪」

 

「なんだよそれ」

 

苦笑いを浮かべて答える一刀君に私も笑って答えた。

 

「それにしてもな~まさか一刀君と雪蓮とがねぇ~」

 

「う゛……」

 

「私だって一刀君の事が好きなのにずるいよぉ」

 

「ずるいと言われましても……」

 

「ははは、わかってるよ。多分だけど雪蓮に迫られたんじゃないの?あの時みたいに」

 

「あ、あの時?」

 

「そっ♪雪蓮の衝動、知ってるんでしょ?」

 

そう、雪蓮は半年に一回、体が疼くらしい。外史で言うところの戦闘で興奮しすぎると熱にうなされた状態になっちゃうんだって、前に卑弥呼様から教えてもらった。

 

「えっ……優未も知ってたのか?」

 

「まあね~。私も雪蓮とは長い付き合いだし」

 

歩きながら他愛も無い会話をする私達が卒業した後の学園とか、大学での一年間とかお互いに話し合った。

 

「あっ、もう着いちゃった」

 

気がつくといつの間にか私のマンションまで来ていた。これで今日はお別れなんだね……

 

(ズキンッ)

 

そう思うとなんだか胸が苦しくなってきた。明日になればまた会えるのに、でもその苦しみは収まりそうにも無いよ……

 

「それじゃ俺はここで、また明日なゆう、……優未?」

 

「え、あっ……ごめん」

 

「……ちょっと喉か沸いたかな」

 

「え?」

 

「お茶でもご馳走してくれないかな?」

 

「うん!うん!寄って行ってよ!お茶くらいいくらでも出すから!」

 

一刀君は私が離れたくないって事わかってくれたのかな?でも、なんだかおかしな理由だな♪

 

「あっ、ちょっと待っててね。部屋少し散らかってるんだ」

 

「俺は気にしないけどな」

 

「私が気になるの!ほんのちょっとだから待ってて!」

 

――バタンッ!

 

私は玄関の前で一刀君を待たせて部屋に入った。

 

「あらん、お帰りなさい優未ちゃん」

 

「……」

 

「むっ、遅かったではないか。関心せんぞ夜遊びは」

 

「はぁ~、やっぱり居た……」

 

部屋には全裸同然で寛いでいる貂蝉様と卑弥呼様が居た。

 

「何で居るんですか」

 

「冷たいわね。一人で寂しくしてると思って来て見たのに」

 

「寂しくないです!とにかく今日は帰ってください。今すぐに!」

 

「なんだ今日はいつも以上に連れないではないか太史慈よ」

 

「どぅふ♪なるほどねん。お師匠様、私達はお暇したほうがよさそうねん♪」

 

「む?どういうことだ貂蝉よ」

 

「これに決まってるじゃない。こ・れ♪」

 

「なっ!」

 

「ふむ、そういうことか、では致し方が無い帰るとするか」

 

「それじゃ、優未ちゃん。がんばってねん♪」

 

「い、一生くるな~~~~っ!」

 

貂蝉様と卑弥呼様は含み笑いを浮かべてベランダから奇声を上げて飛び立っていった。

 

――ガチャンッ

 

「お、おまたせ……」

 

「ああ、お邪魔するよ。優未の部屋に来るのは風邪の時以来だな」

 

「そ、そうだね……あっ適当に座ってて、今お茶持ってくるからウーロン茶でもいい?」

 

「ああ」

 

台所に行って二人分のお茶をコップに注ぎ一刀君の元に急いで戻った。

 

「おまたせ~」

 

「おっ!サンキュー」

 

一刀君はコップを受け取りウーロン茶を一口飲んだ野を見て私もそれに習い一口飲む。

 

「ふぅ。ん?窓開けてたんだ」

 

「えっ?!あ、うん。空気の入れ替えしようと思ってさ」

 

さっき貂蝉様と卑弥呼様がそこから飛び出して行って閉めるの忘れてた!

 

「ん~……風が気持ち良いな。やっぱり高い位置だから風が良く通るね」

 

一刀君は、吹き抜ける風に気持ちよさそうに目を瞑っていた。

 

「……ねえ、一刀君」

 

「ん?どうしたんだ優っ……ん?!」

 

「……ん……えへへ、キスしちゃった♪」

 

「ど、どうして?」

 

「どうしてって、私だって一刀君の事好きなんだからね?雪蓮とあんなことしてたって聞かされたらヤキモチくらい焼くんだよ?」

 

「え、あ……ごめん」

 

少し頬を膨らませて文句を言うと一刀君は謝ってきた。

 

「許さないって行ったらどうする?」

 

「えっ……ど、どうしよう」

 

「じゃ、一つだけ私の言う事聞いてくれる?」

 

「そ、そんなので許してくれるのか?」

 

「それじゃ、三つ?」

 

「……一つでお願いします」

 

首を傾げて言うと一刀君は何故か土下座をして一つにしてくれって云って来た。段々一刀君の土下座が板についてきたように見えるな~。

 

「それじゃ……そ、その……いて」

 

「え?なに?聞こえなかったんだけど」

 

うぅ~恥ずかしいな、こんなこと面と向かって言えないよ!

 

「あ、あのね。だから雪蓮と……いて」

 

「雪蓮と、なに?」

 

「~~~っ!だ、だから雪蓮と同じように抱いて欲しいの!」

 

「……へ?」

 

「な、何度も言わせないでよ!恥ずかしいんだから!」

 

あぅ~顔が熱いよ、きっと今真っ赤だよ~。

 

「えっと……とりあえず、雪蓮と同じようには抱けないよ」

 

「え……な、なんで」

 

一刀君の一言に一人慌てていた私は一気に奈落に突き落とされた気分になった。

 

「……そ、そうだよね。一刀君は雪蓮が好きなんだもんね……ごめんね、こんな事言って」

 

「ち、違うんだ!そういう意味じゃなくて!」

 

「ううん、気にしてないから良いよ。今日はありがとうね送ってくれて……明日はいつも通りにするから」

 

「違うんだって!俺はっ!」

 

「いいから帰ってっ!」

 

「っ!」

 

「ご、ごめん……」

 

「とりあえず俺の話を聞いてくれ優未」

 

「……」

 

「俺は確かに雪蓮が好きだ」

 

「っ……」

 

やっぱりそうだよね……私なんかが入る余地なんて……

 

「でも、優未も好きだ」

 

「えっ……それってど……っ!?」

 

驚き顔を上げると一刀君の顔が目の前になり私の口を塞いできた。え?え?こ、これってっ?!?!

 

「ん……ちゅっ……んんっ……」

 

一刀君の優しいキス、軽く唇にくっ付けるだけのキスだったけど私の心臓は破裂するんじゃないかってほど脈打っていた。

 

「……ちゅぷっ……か、一刀君……」

 

「俺が雪蓮と同じ様に抱け無いって言ったのは別に拒否するって意味じゃないんだよ」

 

「そ、それじゃどういうこと?」

 

「優未を雪蓮と同じように抱けるわけ無いじゃないか。雪蓮は雪蓮、優未は優未だろ?だから俺は優未を思って優未だけの為に抱くんだよ」

 

「一刀君……」

 

笑顔で答える一刀君に私は嬉しくて涙で霞んできちゃったよ。卑怯だよ、そんなこと言われたら嬉しくてどうしようもなくなっちゃうよ。

 

「おいで優未」

 

「うん、優しくしてね。一刀君……」

 

「もちろんだよ……優未」

 

……

 

…………

 

………………

 

――チュンチュン

 

「んっ……朝?」

 

陽の光が目に当たり朝が来たと判り目を覚ます。

 

「っ!つぅ~……」

 

ベットから起き上がるときに下腹部の痛みに顔をしかめる。

 

「そっか……私、一刀君と、しちゃったんだよね」

 

お腹を押さえながら微笑む。まだ一刀君の精があるのを確かめるように。

 

「んっ……」

 

「あはは、可愛い寝顔……」

 

一刀君の前髪を掻き分けて寝顔を見ながら私はこれからも一刀君と一緒に居たいと改めて思った。

 

「……ちゅっ」

 

一刀君の頬にキスをしてそのまま一刀君の胸に顔を寄せてまた眠りに着いた。

 

大好きだよ。一刀君……

 

《愛紗Side》

 

「はっ!……はっ!……」

 

「精が出るでござるな愛紗殿。このような朝から」

 

一人、大学の剣道場で鍛錬をしていると聞き覚えのある声が私に声を掛けてきた。

 

「おはようございます不動殿。鍛錬は欠かせませんからね」

 

不動。彼女はフランチェスカ学園の先輩であり大学二年生にしてこの剣道場の部長を務めていた。なんでも不動殿より強いものが居らず流れからそうなってしまったそうだ。そのせいもあってなのかよく学園には卒業者、おーびーと言ったか、としてよく指導に来てくれていた。

 

「あいも変わらず真面目でござるな。それでは北郷殿と逢い引きもしてはいないのでがござらぬか?」

 

「あ、あいっ!?」

 

「はっはっはっ!顔が赤くなっているでござるよ。愛紗殿はいつまで経っても初心でござるな」

 

「~~~っ!そ、それより不動殿も今日は早いですね。何か用事でもおありなのですか?」

 

「……うむ。少し思うところがあってでござるな」

 

分が悪いと考え、話を反らすと不動殿は先程とは打って変わって真剣な表情に変わった。

 

「……愛紗殿。部長をやっては見ぬでござらんか?」

 

「は?部長ですか?……部長っ!?な、何を言い出すのですか急に」

 

「別段急ではないのでござるが。まあ、そうでござるな強いて言うなれば、某より愛紗殿の方が強いから、でござるな」

 

「で、ですが私は……」

 

そこで言いよどんでしまった。正直に言えば不動殿より私の方が強い。だがそれは乱世を生き抜く為、強いては弱き民達を守るために身につけたものだ。不動殿とは状況も違えば理由も違うのだ。

 

「やはり、受けてはくれぬでござるか」

 

「申し訳有りません」

 

「別に構わんでござるよ。某もダメもとで頼んでみたのでござるから」

 

笑顔で答える不動殿であったがやはりどこか残念そうに見えた。

 

「まあ、折角朝早く来たのでござるから。一勝負お願いしてもよいでござるかな?」

 

「ええ、構いませんよ。その勝負、受けてたちましょう」

 

「では、着替えてくるので待っていて欲しいでござる」

 

「わかりました」

 

不動殿は着替える為に更衣室へと向っていかれました。

 

……

 

…………

 

………………

 

「ふぅ、やはり強いでござるな愛紗殿は」

 

「恐れ入ります。ですが不動殿も大分腕を上げたようにお見受けられますが」

 

「そうかも知れぬが愛紗殿と手合わせをするとまだまだと実感してしまうでござるよ」

 

「いえ、私のは必要に迫られて身に付けたものですから」

 

「なるほど。おっと、そろそろ予鈴が鳴るでござるな。着替えなければ」

 

「そうですね……そんな所で覗き見とは感心しませんよ一刀様」

 

「っ!あ、あははっ……や、やあ、おはよう愛紗」

 

「おはようございます一刀様」

 

「ふむ、某には挨拶が無いとは北郷殿は某の事が嫌いでござるか、そうでござるか……」

 

「ええっ!?ち、違いますよ!嫌いなわけないじゃないですか!」

 

「ほう、では好きなのでござるな?」

 

「す、好きか嫌いかと言われれば好きですが……」

 

「……」

 

まったく、一刀様は……これだから悩みの種が尽きないのですよ。

 

「はっはっはっ!北郷殿はからかいがいがあるでござるな」

 

「え?か、からかってたんですか?!」

 

「当たり前でござろう。お主のことを好いている女子の前で好きだと言わせる訳が無いでござろう」

 

「なっ!不動殿!?」

 

「くっくっく。まあ、先輩を敬う気持ちは大事でござるがな。さて、着替えてしまうでござるよ愛紗殿」

 

「えっ!ちょ!ふ、不動殿、お、押さないでください!まっうわあああああっ!」

 

不動殿は私の止める声も聞かず笑顔で私を更衣室へと追いやった。

 

「まったく、強引過ぎますぞ不動殿」

 

「そうでござるか?あのまま汗の臭いを嗅がれるよりはよいと思ったのでござるが。それとも北郷殿は汗の匂いが好きなのでござるか?」

 

「そ、そんなことは無い……と思いますが」

 

確かにこのような汗をかいた状態で一刀様の前に居るわけにはいかないな……そう考えれば不動殿に感謝せねば。

 

「ありがとうございます。不動殿」

 

「よいでござるよ。さあ、早くシャワーを浴びて汗を流さなくてわな。本当に講義に遅れてしまいかねんでござる」

 

「そうですね。急ぎましょう」

 

こうして私と不動殿は運動で出た汗をシャワーで流すのだった。

 

……

 

…………

 

………………

 

――キーンコーンカーンコーン

 

「一刀様、お昼に致しましょう」

 

「そうだな。それ「あ、あの北郷様っ!?」……え?」

 

声のした方を見ると一人の女性が立ち、どこかモジモジしながら一刀様を見上げていた。

 

「えっと、あの……」

 

「何かな?」

 

一刀様、そのような笑顔で話しかけるから女性からモテてしまうのですぞ。それをわかっておいでなのですか?

 

「っ!あぅああっ!こ、こりぇをっ!」

 

「え?あ、ありがってもう居ないし」

 

女性は一刀様に包みを渡すと一目散に居なくなってしまった。

 

むぅ、あれはやはり弁当か?なんと言うことだ先を越されてしまったではないか!。

 

今日は折角、私の番だと言うのに……

 

そう、この事は一刀様に知らせていない事なのだが、一刀様と二人っきりで昼食が取りたいと雪蓮殿のわがまっ、もとい、提案に桃香様たちもそれに賛成をしたのだ。だがずっと二人っきりでは怪しまれるだろうという琳殿の言葉に一周事に全員で食事を取ると決めていたのだ。

 

「愛紗?どうかしたか。怖い顔して」

 

「……いえ、なんでもありませんっ!」

 

「な、何か怒ってる?」

 

「怒ってません!早く行きますよ一刀様っ!」

 

「痛いっ!耳がっ!耳がもげるっ!歩くから!歩くから放して~~~っ!!」

 

一刀様の抗議の声を無視して私は中庭へと向った。

 

「おおっ!美味そうだなこのサンドウィッチっ!」

 

「……」

 

一刀様は先程の女性から頂いた包みを広げて喜びの声をあげていた。……私だって一刀様の為にお弁当を作ってきたのに……

 

目線を下げ自分の持っている袋をぎゅっと力を入れる。

 

「ん?愛紗?」

 

「っ!い、いえなんでもありません!さあ、早く食べてしまいましょう!」

 

「あ、ああ。そうだな。それじゃ、頂きます!」

 

「……頂きます」

 

「おっ!これ美味いなっ!何使ってるんだ?」

 

――ズキンッ

 

一刀様は美味しそうに貰ったものを食べておられる。一刀様の『美味しいの』の一言で私の胸は締め付けられるような痛みを生む。

 

食べて貰いたい……私が作った弁当を一刀様に食べて貰いたい。しかし、それは我儘というものだ。

 

「ん?愛紗」

 

一刀様が食べ終わった時だった。急に私に話しかけてきた。

 

「は、はい。なんでしょうか?」

 

「もしかして、今日も作ってきてくれたのか?」

 

「っ!な、何を馬鹿なこと言っているのですか。そんなことあるわけがっ!」

 

「だって、その袋……」

 

――ばっ!

 

「こ、これは……そ、そう!クラブ活動の後に食べようと思い多めに作ってきたのです!鍛錬のあとはお腹がすきますから!」

 

「そっか、ちょっと残念だな」

 

「……え?」

 

「いやさ、愛紗の弁当楽しみにしてたんだけどさ。それじゃ仕方ないよな」

 

「そ、そうなのです、か?」

 

「ああ、いつもみんなが作ってきてくれるお弁当楽しみにしてたんだけど。そうだよね。毎日作ってきてくれるわけじゃないんだよね」

 

「い、いえそんなことは!ど、どうぞお食べください!」

 

「え、でも部活の後に食べるんじゃ」

 

「購買やコンビニなどで買えば大丈夫です!さあ、どうぞお食べください!」

 

「お、おうっ、それじゃ頂くよ」

 

「はいっ!」

 

「それじゃ、この卵焼きから……はぐっ」

 

「……(ごくんっ)ど、どうですか?」

 

うぅ、これはやはり慣れないな。一刀様に食べていただけると思うだけで緊張してしまう。

 

「うん、凄く美味しいよ。でも、味付け変えたのか?いつもと違う感じがするけど」

 

「あ、はい。雪蓮殿から『これを入れると美味しくなるわよ』と言われて使ってみました。お口に合いませんでしたか?」

 

「そんな事ないよ。これも凄く美味しいよ」

 

「そ、そうですか。よかったです」

 

味見はしていなかったのだが美味しいと言って頂けて良かった。

 

「ほら、愛紗も食べなよ」

 

「そうですね。それでは頂きます」

 

私も自分の作った弁当を口に運ぶ。うむ、変わった味だが悪くないな。

 

――丁度その頃...

 

「~~♪」

 

「随分とご機嫌ですね雪蓮さん」

 

「そう見える?」

 

「気持ち悪いほどニヤニヤしているわね」

 

「失礼しちゃうわね琳。こんな美人に対して気持ち悪いだなんて」

 

「でも、なんでそんなに上機嫌なの?何か良い事でもあったの雪蓮?」

 

「ふふふ、これよ。こ・れ♪」

 

――コトッ

 

「「「?」」」

 

雪蓮は一本の瓶を机の上に置いた。

 

「なによこれ。化粧水か何かかしら?」

 

「う~ん、なんだろう?桃香は何だと思う?」

 

「私もわからないです。これってなんですか雪蓮さん?」

 

「これはね♪び・や・くよ♪」

 

「「「え?えええええっ!?」」」

 

「きゃん、三人とも耳元で煩いわよ。あ~、耳がキンキンする~」

 

「そんな事はどうでもいいのよ!なんであなたがそんなもの持っているの!」

 

「なんでって、面白そうだったから通販で買ってみたのよ」

 

「お、面白そうってあなたねぇ!」

 

「そんなことより!雪蓮はその媚薬で何するつもりな……っ!まさか!」

 

「ふふふ♪さすが優未ね。私が何をしようとしたか判ったみたいね」

 

「え?え?どういうことですか?」

 

「はぁ、わかってないのはあなただけよ桃香……つまりね、雪蓮はその媚薬を使ってまた一刀とエッチをしようとしているって事よ」

 

「えええぇぇぇええええ!?だ、ダメですよそんなの!私だって一刀さんにしてもらってないのにっ!」

 

「「「は?」」」

 

「はぅ!な、なんでもないです……」

 

桃香は自分の言った事に顔を赤くして俯いてしまった。

 

「あれ?でもこれ少し減ってない?」

 

「ええ。愛紗にあげたもの」

 

「な、なんで?」

 

「だって、本当に効き目があるかわからないじゃない♪だから人柱♪」

 

「ま、待ちなさい雪蓮!という事は……」

 

「琳のお察しの通り愛紗には『弁当に隠し味として入れるともっと美味しくなるわよ』って言ったわよ♪」

 

「なっ!桃香、優未!直ぐに行くわよ!」

 

「ええ!?行くって何処にいくのさ琳!」

 

「決まっているでしょ。愛紗たちのところよ!」

 

「行かせないわよ~♪まだ、本題が残ってるんだから。それに一刀たちが何処にいるか分からないでしょ?」

 

「くっ!仕方ないわね……それで?本題って何よ」

 

「ずばり!優未が女になったって事よ!」

 

「「は?」」

 

「ふぇ!?な、なんで知って!……はっ!」

 

「ふふふ、やっぱりね。さあ、白状しなさい優未♪」

 

「それは聞き捨てなら無いわね。詳しく聞こうじゃないの」

 

「あ、あの気持ちよかったですか?」

 

「うええええんっ!助けて一刀く~~~~~んっ!!」

 

「あ、あれ?」

 

「どうかしましたか一刀さ……ま?」

 

一刀様の声に顔を上げたその途端、目の前がくらくらしだしてきた。

 

な、なんだ急に体が熱く……それに疼く。だが今は一刀様の方が心配だ。

 

「う……一刀様、如何なさいました、か?」

 

「……」

 

一刀様は俯きになり表情が伺えない。やはり、失敗してしまっていたのだろうか?

 

「一刀様、し、しっかりなさってくだ(がしっ)え?」

 

「はぁ……はぁ……」

 

「か、一刀様?どうかしましたか?」

 

「ごめん、愛紗」

 

「え?」

 

「俺、我慢できそうにない……」

 

「が、我慢とはいったっ……んんっ?!」

 

な、何が起きたというのだ?!め、めめ目の前に一刀様の顔がっ!

 

「か、かひゅとっ……ひゃまっ!お、おひゃめくやひゃいっ!……ひゃっ!」

 

無理やり離そうとするが思うように力が出ず、逆に一刀様に押し倒されてしまった。

 

「愛紗……」

 

「か、一刀様お止めくださいっ!このような場所でっ!……はぅ!」

 

うぅ……一刀様の手が私の胸に……だ、ダメだ。流されるな関羽よ!ここは一刀様を叱る所だぞ!

 

「か、一刀様っ!いい加減にっ!ひゃあああっ!」

 

「愛紗だって濡れてるじゃないか」

 

「そ、そんなことはありませんっ!お、お願いですからお止めください一刀様っ!」

 

「そんな大声出すと誰かに気づかれちゃうよ愛紗」

 

「っ!」

 

一刀様の一言で口を手で押さえあたりの気配を探る……よかった、人の気配は無いみたいっ?!

 

「ははっ可愛いな愛紗は……」

 

「~~~っ!か、一刀様、お願いですからお止めください」

 

「ダメだよ。だって俺、愛紗が欲しいんだ」

 

「そ、そのような事を言われましても」

 

「愛紗が本当にイヤだって言うならやめるけど?」

 

「そ、それは……」

 

嫌なわけがない。この世界に来て何度一刀様と一つになれる事を願っただろうか。しかし……

 

「で、ですが、このような場所ではっんんっ?!」

 

「ちゅ……ぷはっ。聞き分けない無い口は塞いじゃわないとね……んっ」

 

「ひょ、ひょんひゃ……かひゅと、ひゃま……んちゅ、じゅるっ」

 

ダメだ、頭がボーっとしてきた。うぅ、一刀様のキス……美味しい……

 

「……んっ……ちゅ、んんっ……あっ」

 

な、なぜキスを止めてしまうのです一刀様……

 

「愛紗はこういうのイヤなんだよね?」

 

「そ、そんな……一刀様」

 

うぅ、ずるいです一刀様。既に私の気持ちをわかっておいででしょうに。

 

「い、意地悪しないでください一刀様」

 

「だってイヤなんだろ?」

 

一刀様だってこんなに固くしておいでなのに、こうまで焦らすなんてやっぱり一刀様は意地悪です。

 

「……ください。一刀様……もう我慢できません!」

 

「やっと素直になったね。おいで愛紗、たっぷりと可愛がってあげるよ……」

 

「はい♪」

 

一刀様に優しく抱かれ私はこの世界に来て初めて一刀様と一つになることが出来た……

 

……

 

…………

 

………………

 

「ほんとぉぉぉにすいませんでしたっ!!!」

 

「も、もう良いのです一刀様。お顔をお上げください」

 

一刀様は事を終え、自分のしたことに青ざめて土下座をして謝ってきた。

 

既に、午後の講義は始まっているのだが、私と一刀様は何度も行為に及び、疲れのせいか気を失うように眠ってしまったのだ。

 

「いやっ!嫌がっていた愛紗にあんなひどいことをしたんだ。これくらいじゃ治まらないよっ!」

 

「そ、そのようなことはございませんっ!そ、その私も……嬉しかったですし……」

 

「あ、愛紗……」

 

「で、ですがっ!こ、ここ今度からは外ではなく中でしてください」

 

「え?あ、ああ。わかった。中に出しても良かったの?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「……」

 

「……」

 

「~~~~っ!ち、違います!何を言っているのですか一刀様!部屋の中という意味です!」

 

「あ、ああっ!そ、そうだよな!俺何言ってるんだろ。は、ははは……」

 

「……」

 

「う゛……ごめんなさい」

 

「はぁ、もういいです。で、ですがその……腰が抜けてしまって立てないのです。出きれば手を貸していただけるとありがたいのですが」

 

「ああ。いいよ」

 

「ありがとうございま、すぅ?!」

 

手を差し出し一刀様にお礼を言おうとしたのだが一刀様はその手を取らず、そのまま腕を回して抱き抱えられてしまった。

 

「あ、あの一刀様?!」

 

「いや、腰が抜けてるならこっちの方がいいかなって」

 

「いや、あ、あのですね?!流石にこれは恥ずかしいといいますか、なんと申しますか……」

 

うぅ、恥ずかしいが誰も見ていないのが救いか……

 

「いいな~愛紗ちゃん」

 

「ひゃぃ?!」

 

(ゴンッ!)

 

「ぐはっ!」

 

誰かの声に驚き顔を上げた時、一刀様の顔面に私の頭が当たってしまった。

 

「も、申し訳有りません一刀様っ!」

 

「だ、大丈夫、大丈夫」

 

「だらしが無いわね。それくらい我慢なさいよ」

 

「あはは。あとで私が治療してあげるね一刀君」

 

「「え?」」

 

声のした方に顔を向けると桃香様たちが笑顔で私達を見ていた。

 

「な、なんでここに桃香達が居るんだ?」

 

「なんでって、この時間の講義、私達取ってないもの。あなたたちもそうでしょ?」

 

「そ、それはそうだけど……って、ここに居る理由になってないじゃないか琳」

 

「あら、そうだったかしら?」

 

一刀様のツッコミにとぼける様に微笑む琳は言い方は悪いが悪皇帝の様に見えた。

 

「ふふふ、それについては私が教えてあげるわ一刀。でも、その前に、愛紗」

 

「え?あ、はい」

 

「私があげたのどうあった?」

 

「え?ああ。隠し味の事ですか?一刀様はとても美味しく頂いてくれました」

 

「う~ん。そうきたか」

 

「は?」

 

何を言っているのだ雪蓮殿は?

 

「面倒だから率直に聞くわよ?気持ちよかった?」

 

「「なっ!」」

 

「そっかそっか。よかったか~。効果は抜群って事ね」

 

二人揃って声を上げると雪蓮殿は満足そうに頷いていた。

 

「あ、あの雪蓮、さん?何を言っておられるのか俺にはわからないのですが?」

 

一刀様……それは流石に苦しいと思います。

 

「ん~?なに?ここで言っちゃってもいいの♪」

 

「ごめんなさい。止めて下さい」

 

「賢明な判断ね」

 

うぬぬ……まさか雪蓮殿にハメられるとは……

 

「愛紗ちゃん、愛紗ちゃん!一刀さんはどうだったの!優しくしてくれた?痛くなかった?気持ちよかった?」

 

「あ、あのと、桃香様。落ち着いてください」

 

「あわわ、えへへ。ご、ごめんね」

 

「まあ、その話はあとでゆっくりと一刀の部屋で聞きましょうか」

 

「はぁ?!お、俺の部屋ってっ!」

 

「イヤとは言わせないわよ?か・ず・と♪」

 

雪蓮殿の囁くような脅迫に一刀様はうな垂れて了承してしまった。

 

はぁ、私のこの世界での初体験は散々な目に合ってしまったが、それでも一刀様と一つになれたことはとても嬉しく思っている。

 

このあとあるであろう桃香様や雪蓮殿の尋問には頭を悩まされるがとりあえず今はこの幸せを噛み締める事にしよう。

 

《琳Side》

 

「一刀。これなんてどうかしら?」

 

「う……ちょ、ちょっと刺激的過ぎじゃないか?」

 

「あら、あなたはこういうのが好きではなかったのかしら?」

 

「か、勘弁してくれ」

 

「ふふっ、いい加減慣れてはどうなの?」

 

「無茶言うなよ……」

 

一刀の恥ずかしがる顔を見て微笑む。まったく、何度も連れてきているのだから少しは慣れてもよいと思うのだけれどね。

 

「ほら、恥ずかしがっている暇は無いわよ?次はこれよ」

 

「うぅ……」

 

ふふっ、いつまで経っても私を楽しませてくれるわね一刀は。

 

「……今日は居ないみたいね」

 

まったく、毎度毎度着いて来られたらたまったものではないわ。まあ、雪蓮たちには見せ付けられるからそれはそれでいいのだけどね。

 

「え?何か言ったか?」

 

「なんでもないわ。さあ、これはどうなの?早くここから出たいのでしょ?まだまだ見てもらう下着はあるのだから、このままでは日が暮れてしまうわよ」

 

「ち、ちなみに、あとどれくらいあるんだ?」

 

「聞きたい?」

 

「止めておこうかな」

 

「それが懸命ね♪」

 

「はぁ~」

 

「そんなに私との買い物がいやなのかしら?」

 

「そんなわけないだろ。そんなわけないけど……毎回ランジェリーショップに連れてこられる俺の身にもなってくれよ」

 

「いいご身分じゃない。ただで下着を見れるのだから」

 

「……俺は変態じゃないぞ」

 

「ふふっそうね。種馬だったわね」

 

「それも違う!」

 

「私を含めて女五人をはべらせているのだから種馬と言われてもおかしくは無いと思うのだけど?」

 

「だからって、誰か一人に絞れるわけが無いだろ?みんな好きなんだから」

 

そこが種馬と言われる由縁だとなぜ判らないのかしらこいつは……

 

「まあいいは、それにしてもお腹も空いてきたわね」

 

「ならお昼に「あと十着は見てからよ」……はい」

 

そんなうな垂れる一刀を見て微笑みながら次の下着に手を伸ばした。

 

……

 

…………

 

………………

 

「はぁ、酷い目に合った」

 

「私は面白かったわよ?」

 

下着選びを終え、一刀を連れて私がいつも通っているレストランへと向う。

 

私の唯一の楽しみ。もし雪蓮たちが尾行していたとしてもそのレストランまでは入ってこれないわ。判りやすく言えば値段が一桁違うという事。

 

もちろん、一刀はそんなにお金を持っていないので必然的にここの支払いは私になるのだけど。

 

「そりゃ、琳は俺が途惑ってるのを見て面白かっただろうさ。俺は寿命は縮まるかとおもった」

 

「情けないわね。そんな事では私の彼女は務まらないわよ?」

 

「だよな~。きっと俺なんかよりも適した人が居るだろうなぁ」

 

「っ!……一刀」

 

「琳?」

 

「あなた、私と居るのがそんなにイヤなのかしら~?」

 

「え?そ、そんなわけ無いだろ?だ、だからその、な?えっと……いたたっ!み、耳がっ!」

 

声を低くして一刀に問いかけると一刀は慌てて言い訳をしようとしていたので耳を摘み上げ、る事ができないから摘み下ろした。

 

「あなたは黙って『琳に見合った男になるよ』って言えばいいのよ!わかった!?」

 

「わ、わかったから!耳っ!耳がもげる!もげる!」

 

絶対わかってないわよあなたは!私がどれだけ……っ!

 

「ふ、ふんっ!なら精進する事ね」

 

「いたたっ……ま、待ってくれよ琳!荷物重たいんだから!」

 

自ら言った発言に赤くした顔を一刀に見られないようにする為、早歩きで歩き出した。

 

私は何を自分で言っているのよ!これじゃまるで私が一刀の事を好きで堪らないみたいじゃない!

 

「早く来なさい一刀っ!」

 

「だ、だから荷物が重たいんだってっ!少しは持ってくれよ」

 

「なぜ私が持たなければいけないのかしら?それはあなたの仕事でしょ?」

 

「うぅ~。俺は琳の専属執事じゃないんだぞ?」

 

「そうね。あなたは私の『ペット』だものね」

 

「はぁ、わかったよ。ちゃんと持つからせめて『ペット』だけは止めて下さい」

 

「判ればいいのよ、判れば。さあ、もう直ぐで着くのだから気張りなさい一刀」

 

「了解」

 

気合を入れなおして荷物を持ち直す一刀を横目に私は歩き出した。

 

「うん、うまい!」

 

「はぁ、それ以外に感想を言えないわけあなたは。それにここはそんなに大声を出してはいい場所ではないのよ?」

 

「う゛……すまん」

 

「判ればいいのよ、判れば。それで、どう美味しかったのかしら?中途半端な説明では許さないわよ?」

 

「え゛……う~ん。まろやか……いやいや、まったり?これも違うな……」

 

一刀の悩み姿を見て微笑む。まったく、本当に馬鹿正直なのだから一刀は……

 

「だめだ~、降参っ!とにかく美味しい!……それじゃダメかな?」

 

「ふふっ。別に期待してなかったから良いわよ。美味しかったのならね」

 

一刀は驚いた顔をした後、ばつが悪そうに頭を掻いて苦笑いを浮かべていた。

 

「ほら。そんなことはいいから、さっさと食べてしまいなさい」

 

「ああ、そうさせてもらうよ。はぐっ……うまい♪」

 

ふふっ、まるで子供ね。そんなに美味しそうに食べいるのを見ると、こちらまでそんな気分に感じてきてしまうわ。

 

「ん?どうかしたか?」

 

「いいえ、なんでもないわ」

 

「そうか?って、琳全然食べてないじゃないか。食べないと大きくなれないぞ?」

 

(ビキッ!)

 

「大きなお世話よ!黙って食べてなさい!」

 

「は、はい……ぱくっ」

 

まったく……人が気にしていることをズバッというなんていい度胸しているわね……私だってもっと背を伸ばしたいわよ。

 

「何か言ったか?」

 

「黙って食べるっ!」

 

――ヒュッ!

 

「あちっ!?」

 

一刀の顔目掛けて熱く蒸らされていたタオルを投げつける。すると見事に一刀の顔面にあたり一刀は慌ててタオルを顔から剥がしていた。

 

「な、何するんだよ行き成り。熱いじゃないか」

 

「……ちっ」

 

「今舌打ちしただろ?!」

 

「ちょっと……代えの手拭を持ってきて」

 

私は一刀を無視して店員を呼びつけ、新しい手拭を持ってくるように言った。

 

「かしこまりました」

 

「スルーですか?!」

 

「はむ……」

 

「うぅ……はむ」

 

一刀のツッコミも無視をして食事を再開すると一刀もうな垂れながらも食事を再開した。

 

まったく、折角二人きりだというのにあのバカ、何を考えているのかしら。

 

もう怒りを通り越して呆れてさえも居る。

 

はぁ、なんでこんな奴の事、好きになってしまったのかしらね……愚問、か。

 

自問自答をしてその答えに呆れてしまう。

 

優しいだけじゃない、必要な時にはいつも隣に居て励ましてくれたり、慰めてくれる。たったそれだけの事。でもそれが一番大事なのかもしれないわね。

 

居て欲しい時に居てくれないなんて彼氏としては論外だわ。なのに私が探している時に限って一刀は中々見つからない。

 

一度、ムキになって探していた事があったのだけれど、最終的に見つからず諦めて生徒会室に戻ってみると椅子に座って役員の娘らと楽しそうに会話をしている一刀を見た時には殺意が沸いたわね。

 

まあもちろん本人には理由も告げずお仕置きはしたのだけれど。なんせ『一刀と一緒に居たかったのに』なんて理由言えるわけ無いでしょ。

 

「ホント、何でこんなやつ好きになっちゃったのかしらね……」

 

呟くように言った言葉は一刀の耳には届かなかった。

 

……

 

…………

 

………………

 

「えっと、琳?そろそろ夕暮れなんだけど」

 

「ええ、そうね」

 

「あ、あのまだ怒ってる?」

 

「そう見える?」

 

あくまで素っ気無く答える。レストラン出た後、私はずっと無言を押し通してきていた。その間、一刀はなんとか機嫌を直してもらおうとしていたみたいだけれどそれら全てを無視し続けた結果、うな垂れて無言でついてきていた。

 

「どうすれば許してくれるんだ?」

 

「許して欲しいの?」

 

「もちろんだよ。琳に嫌われたままなのはイヤだよ」

 

「そう。なら着いてきなさい」

 

それだけ言って私はまた歩き出した。

 

まあ、結構前にもう許しているのだけれどね。面白いからそのままにしているだけなのよね。

 

「さあ、着いたわよ」

 

「えっ、ここって琳の……」

 

「ええ、私の部屋があるマンションよ……何しているの、早く着いてきなさい」

 

「え?ちょっ!ま、待ってくれよ琳!」

 

慌てて着いてくる一刀をエレベーターに乗せ自分の部屋のある階へと向った。

 

「えっと、琳?」

 

「黙って着いて来なさい」

 

「……はい」

 

――ポーン

 

目的の階へ着き、自分の部屋へと向う。

 

「さっ、入りなさい」

 

「お、お邪魔します」

 

「ちなみに今のところあなた以外の男は入れたことがないのよ」

 

「へ~そうなんだ。……ん?それって……」

 

「荷物はそこのソファーにおいて頂戴」

 

「え、あ?ああ、わかった」

 

「たいした物は無いのだけれど、中国茶でいいかしら?」

 

「あ、ああ」

 

呆然とする一刀を見て、キッチンに立つ。

 

今日は……そうねこの茶葉にしてみようかしら。

 

湯を沸騰させている間に茶葉を選び、それに合いそうなお菓子を皿に乗せる。

 

「……」

 

チラッと一刀を見るとなんだか落ち着きがないようにソワソワとしていた。

 

ふふっ、一刀をからかうのはやっぱり面白いわね。

 

「おまたせ」

 

「あ、ありがとう。……熱っ!」

 

「何を慌てているのよ。もっとゆっくり飲みなさいな」

 

「す、すまん。ずずっ……ふぅ。これ美味しいな。烏龍茶とは違うのか?」

 

「んっ、違うわよ。中国茶と言っても色々な種類があるのよ」

 

「へ~。琳はコーヒーとか紅茶の方が好きかと思ってたけど」

 

「そうね。嫌いではないけど。家では大体、中国茶を飲んでるわね」

 

「ふ~ん、ご馳走様」

 

「あら、もういいの?」

 

「ああ、それにそろそろ帰らないといけないからね」

 

「え?」

 

時計を見ると、そんなに時間は経っていないと思っていたのだけれど時計の針は19時を指そうとしていた。

 

「ま、待ちなさいっ!」

 

「え?」

 

「あ、そ、その……そ、そう!夕飯!夕飯を食べていきなさい!」

 

「で、でも、流石にそこまでは……」

 

「いいから!食べていきなさい!」

 

「は、はいっ!」

 

「そ、そう……ならすぐ準備するから待っていなさい」

 

大声出したことに恥ずかしさが込み上げて来て逃げるようにキッチンへと向かった。

 

な、なに大声なんか出しているのよ私はっ!普通に誘えば言いだけの事じゃない。

 

「と、とにかく夕飯は食べて居てくれるみたいだから……負けないんだから」

 

誰に負けないのか、そんなことは決まっている。それにこうでもしないと一刀は判ってくれないもの。

 

「ホント、鈍感なんだから……まああまり人の事は言えない、か」

 

私だって一刀に好きと言って見たり、甘える事が出来ないのだから。

 

「はぁ、プライドが高いのも考え物ね。なんでこんな性格になってしまったのかかしら」

 

考えながらも手を動かすことは止めない。材料を刻み、肉に下味を付ける。

 

「相変わらず琳は凄いよな」

 

「これくらい普通よ。毎日やっていればこれくらい身に付くものよ」

 

「いや、無理だと思うけど」

 

「それは努力が足りないだけよ。私だって最初から出来たわけではないのだからね」

 

「そりゃそうかもしれないけどさ。それでも凄いよ」

 

「そ、そう……ありがとう」

 

素直に褒めてくれる一刀に私は照れながらもお礼を言う。

 

「あと少しで出来上がるから椅子に座って待て居て頂戴」

 

「わかったよ」

 

さぁ、仕上げるわよ……一刀の為に、は大袈裟かしら?とにかく、一刀に美味しいと言ってもらえるように頑張らなくてはね。

 

「ごちそうさま!すごく美味しかったよ」

 

「お粗末様。別に普通でしょ?」

 

そういいながらも、今回は少し気合を入れてみたのだけれど、美味しいと言ってもらえてよかったわ。

 

「これで普通なのか。ふ~む」

 

「どうかして?」

 

「え?いやさ。毎日こんな美味しい料理を食べられる琳の旦那さんは幸せ者だな~ってさ」

 

「えっ、そ、それって……」

 

ま、まさか一刀が、私の?

 

「一体誰が琳の旦那さんになるんだおるな」

 

(ズルッ!)

 

わ、忘れていたわ。一刀は超が付くほどの鈍感だったのを……

 

「それじゃ、そろそろ……」

 

「っ!」

 

ああ、もうっ!こうなったら!

 

「一刀っ!」

 

「え?ど、どうしたんだ琳?……んんっ?!」

 

無理やりに一刀の唇を奪い。

 

「……んっ……ちゅっ、むんっ……」

 

「……ぷはっ!い、一体どうしたんだ琳」

 

「いい加減にもわかりなさいよね。バカ」

 

「り、琳?…」

 

「一刀はいつもそう。私の事をわかっているようで全然判ってない。私がどれだけ一刀の事を好きか判ってないでしょ!」

 

「り、琳なにを言って……んっ?!」

 

「んっ……私が好きでもない男にこんなことをすると思うの?」

 

「そ、そうは思わないけど」

 

「なら判るでしょ?私は一刀の事が好きなの。雪蓮や優未なんかにも負けないくらい好きなんだから」

 

「琳……」

 

「それなのにあなたは私の気持ちなんてちっともわかってくれないじゃない」

 

「……」

 

「一刀は私の事なんか口煩くて我が侭な女だと思ってるかもしれないけど、私はっ!……んんっ!?」

 

「ごめん。俺って鈍感だからさ、まさか琳を泣かせていたなんて思ってなかったよ」

 

「な、泣いてなんかっ……っ!」

 

自分の頬に手を当てると確かに頬を伝う濡れたすじがあった。

 

「ちがっ!これは!」

 

「うん。何にも言わなくていいよ。俺も琳の事、好きだから」

 

「えっ……かず、と?」

 

「琳を抱きたい。いいかな?」

 

「……ふふっ」

 

一刀のこの言葉を聞き、不敵な笑みを浮かべて一刀の腕を取った。

 

「え?……ぐっ!」

 

「やっと落ちたわね一刀」

 

「あ、あの琳、さん?」

 

私は一刀を背負い投げ、倒れたところを跨った。

 

「まさか自分が泣いてしまったのは驚いたけど、誤差の範囲ね」

 

「ご、誤差?って何脱がせてるんだ?!」

 

「なぜって邪魔でしょ?」

 

「じゃ、邪魔って……ってなんで琳まで脱ぐんだよ!」

 

「んっ……煩いわよ一刀。あなたは黙ってやられてればいいのよ」

 

「はぁ?!り、琳、冗談はいい加減にっ!」

 

「冗談なんかではないわよ。一刀、私はさっきも言ったけど。あなたの事を好きよ。これは嘘でも冗談でもないわ。それに雪蓮や優未にも負けないくらい好きと言うのにもね」

 

「でもね、だからってそう簡単にはあなたの思い通りにはなってあげないわよ。今日は私があなたに尽くすのだから。ふふふっ安心しなさい。雪蓮や優未なんかのことなんか直ぐに忘れさせてあげるわ」

 

(ツツッ)

 

一刀の胸板を人差し指でなぞると一刀は身震いをしてみせた。ふふっ、まだまだこれからなのだから。

 

「っ?!一刀?なにを膨らませているのかしら?」

 

「いいっ?!い、いやこれはっ!」

 

「まさか、私の裸を見て欲情したんじゃないでしょうね」

 

「うっ!ちょ、あ、あまり弄らないでくれ」

 

「あら?こっちのちっさな一刀はそうは言ってないみたいよ?とても苦しそうにしているわよ?」

 

「うぅ……」

 

「さぁ、見せてもらうわよ……っ!?!?ちょ、ちょっとこれ大き過ぎじゃないの?」

 

「そ、そんなこと言われても比べたことないから判るわけ無いだろ普通じゃないのか?」

 

「……は、入るのかしら?」

 

「あ、あの琳?いい加減どいてくれると……痛てっ!」

 

「一刀は黙ってなさいっ!……そ、そう、これが普通なのね……ごくんっ」

 

思わず唾を飲み込んでしまった。こ、こんなの咥えられるのかしら?

 

と、とにかく濡らさないといけないのよね。そうしないと痛いって言っていたし……優未が。

 

「……っ?!ちょ、一刀?!」

 

「俺だけやられっぱなしじゃ癪だろ?」

 

「だ、だからってっ!んんっ?!」

 

一刀に背の向けていたのがいけなかった。こ、このままじゃ一刀に主導権を握られてしまう。

 

「はむっ!……んっ……ひゃっぱり、おおひふぎよっ……んんっ?!ちょ、かじゅとぉ?!」

 

し、舌がっ!一刀の舌がっ。だ、ダメよこのままじゃ本当に一刀の思う、壺にっ!

 

そんなことを思っていたが無駄だった。あのあと完全に一刀に主導権を握られてしまった私は一刀にされるがままになってしまった。

 

「……もう、ばかぁ」

 

「ごめん」

 

あの後、ベットまで抱きかかえられてそのまま一刀と一つになった。それは良かったのだけれど、あんなに痛いものだとは思わなかったわ。

 

「痛かったんだからね」

 

「う゛っ……」

 

「もっと優しくしなさいよ」

 

「ごめん。次はそうするよ」

 

「次は?」

 

「え、いや!そう言う意味じゃ!」

 

「変態」

 

「ぐっ!」

 

「ふふっ。それより一刀。私、ちょっと肌寒いのだけれど」

 

「あ、ああ……これでいいか?」

 

「正解……♪」

 

布団の中で一刀は私を抱きしめてくれた。

 

(トクン、トクン)

 

一刀の胸に耳を当てると心地よい心臓の鼓動が聞こえてきた。

 

「……好きよ。一刀……」

 

「俺もだよ琳……ちゅっ」

 

一刀は私の髪を撫でながらおでこにキスをしてくれた。

 

もう、やっぱり一刀は判っていないのね。まあ、それも仕方ないわよね。だって一刀だもの。

 

きっとこれからも一刀は鈍感で、誰にでも優しく、笑顔を振りまくのだろうけど。それでも私は……

 

一刀の事を愛し続けるわ。

 

「愛してるわ、一刀……」

 

一刀には聞こえないように呟いた私は、そのまま一刀の温もりを感じて眠りに付いた。

 

葉月「どもご無沙汰してます」

 

雪蓮「はろ~♪ダメ作者に翻弄されている雪蓮よ」

 

葉月「ダメ作者って酷いですね」

 

雪蓮「だって三週間も投稿してなかったじゃない」

 

葉月「うぅ……それを言われると、なんだかんだで全キャラ書いてたら一キャラの話が長くなりすぎちゃって」

 

雪蓮「まあ、永久を抜かしても五人も居るからね」

 

葉月「全キャラ載せると制限に引っ掛かって二作品に分けるくらいですよ。自分の編集能力の無さに泣けてくる次第です」

 

雪蓮「まあ、そんなのもう皆知ってることだから今更って感じよね」

 

葉月「雪蓮は今日も突っかかりますね。また自分が乗ってないことに怒ってるんですか?」

 

雪蓮「あら、判ってるのなら話が早いわね。だから……死んで♪」

 

葉月「笑顔で言うことじゃないですよねそれ!」

 

雪蓮「だって~、いつも、いつも最後じゃ、ね?嫌でもそうなるわよ」

 

葉月「いいじゃないですか。雪蓮は主役なんですから」

 

雪蓮「よくないの~!」

 

葉月「まあ、そうは言ってもこのお話もこれで終わりなわけで、もう雪蓮の出番はないんですよ?」

 

雪蓮「そうだった!むむむっ!やるわね、この策士!」

 

葉月「別に狙ってたわけじゃないんですけどね」

 

雪蓮「ぶーぶー!その顔がムカつく!やっぱり、コテンパンにしないと気がすまないわ!」

 

葉月「なんて乱暴な人ですか!」

 

雪蓮「煩いわね!待ちなさい葉月~~~っ!」

 

葉月「待てといわれて待つバカはいませんよ!」

 

雪蓮「それでも待ちなさ~~い!」

 

葉月「理不尽だ!……っと、それではみなさん!次のお話で会いましょう!」

 

雪蓮「っとっと、次は私も出てくるんだからちゃんと見てね♪……待て~~~~っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優未「ところで永久様」

 

永久「はい、なんでしょうか?」

 

優未「カラオケBOXの所で曲名だしてるけどいいのかな?」

 

永久「そう言えばそうですね。まあ、何かあれば消せばいいのではないのでしょうか?」

 

優未「……それでいいのかな?」


 
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