「始め!」
華琳の号令の下始まった試合(死合い?)
「ふっ!」
凪は一瞬で勝負を決めようとしているのか凄い速さで踏み込み、間合いを一気に詰める
(これで!)
狙うのは顎、スピードに着いてこれずに突っ立ている賊の無防備な顎に拳が吸い込まれていく
凪は自分の勝利を確信した
しかし
ブンッ!
拳が空を切る音
その音から、当たったら確実に顎が砕けるだろうと思わせる一撃
それは何の前触れもなく後ろに下がった賊に躱された
「なっ!?」
確実に決まったと思い込んだ分、凪に隙が生まれてしまう
しかし賊は剣を持ち止まったまま
隙を見せてしまったというのに攻撃を仕掛ようという動作もない
(くっ!)
凪は驚き、そして怒った
「ふざけるなぁぁぁ!!」
ザッ!
すぐさま体勢を整え、拳の乱舞を繰り出す
ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!
それをことごとく避けていく相手
持っている剣も使わずに
(なんなんだ!?こいつは!?)
凪の頭の中は怒り、驚き、そして混乱で満たされていた
(うわっ!)
一気に間合いを詰めてきた凪。
顎を的確に狙った攻撃に体は当たり前のように反応した
ほとんど無意識に
目の前の凪に致命的な隙が生じる
しかし一刀は自分の反応と凪の攻撃の遅さに驚いていた
(危ない危ない……………………凪の攻撃…前より遅くなってないか?)
凪の攻撃に感じる違和感
その違和感の正体を考える暇もなく
「ふざけるなぁぁぁ!!」
激昂した声とともに体勢を立て直した凪の連撃が迫ってくる
ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!
全てを紙一重で躱す一刀
(攻撃が……見える!?……………なら!)
そして一刀は普通ではあり得ない行動をとる
「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」
全員の声が重なる
それはそうだろう凪の拳をただの賊が躱したと思ったら、次には連撃をも次々と躱していく。
そして挙げ句の果てに
「武器を捨てるだと……!?」
そう、一刀は刀を放した。一刀としては
(刃物なんて使って凪に傷がついたらどうする!)
という感じだったのだが同時に
(刀を使わなくても……いける!)
そのような自信の現れでもあった
もちろん凪は
「隙を狙わずに武器を捨てるだと…………なめるな!」
さらに怒りと闘志を燃やすだけだった
刀を捨てた一刀は凪の間合いに踏み込んだ
ブンッ!
顔の左側すれすれを拳が通り過ぎていく
(当たったら怪我じゃすまないな…これ)
そんなことを思いつつ、凪の一瞬伸びきった腕を見逃さない
凪の腕を掴み、背を密着させ、凪の勢いを利用し背負い投げる
「っ!」
しかし凪も武官の一人
無理やり掴まれている腕を引き剥がすと、危なげなく受け身をとった
その間に一刀は間合いを詰め、右側からの鋭い蹴りを放つ
「ぐっ!」
凪はかろうじて鉄甲で防御する
ザザッ!
「重い……!」
防御したが勢いを完全に殺すことが出来ず、体が後ろにずれる
「だが!」
即座に体勢を立て直す凪は拳と蹴りを交えた連撃を繰り出す
一刀はそれを躱したり、時には上手くいなして威力を最小限に殺している
「くっ!なぜ当たらない!?」
攻撃が当たらないことに苛立つ凪
(くっそ……今のところ躱したり出来てるけど…やっぱり重い……!)
一方、一刀は上手く凪の攻撃をいなしているように見えるものの、体にかかる負荷は見た目ほど少なくはなかった
(仕方ない……少し型を変えてみるか)
バッ!
凪と距離を取る一刀
それを好機と思ったのか凪は距離を詰める
「ハァッ!」
列迫の気合いとともに繰り出される渾身の上段蹴り
しかしそれは
一刀の掌底で難なく受け流された
(ぐっ!タイミングが少しずれた…!)
痛みに顔をしかめつつ両手を使った掌底でことごとく攻めていく一刀
(か、変わった!?)
一刀の戦闘スタイルが変わったことに驚く凪
すぐには対処出来ずに防戦一方になっていく
しかし
凪は無理やり一刀の連撃を弾くと、一刀と同じように距離を取り、力をためるような体勢をとった
「これで………どうだ!」
そう言うと凪は足を思い切り振り上げる
溜めた力を解放するかのように
(まてまて!あれはヤバい!あれは……)
「猛虎蹴撃!!!」
一刀の焦りなどお構いなしに、楽進最高の技が放たれた
ドォォォォォン!!!!!
凪の声とともに放たれた氣弾は一刀のいた位置に吸い込まれていき、舞台をえぐっていった
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ」
既に一刀の戦いで疲労していた凪にはキツかったのか、今の一発で既に肩で息をしていた
「あの賊…死んだんとちゃう?」
「凪ちゃんのあれを食らって生きてるわけないと思うの~」
顔を見合わせて頷きあう三羽鴉の二人
「しかし凪に猛虎蹴撃まで出させるとはな……」
腕を組みながら言う秋蘭
(しかし………なんだ?この違和感…)
ふと秋蘭が華琳の方を見れば顔色が少し青くなっている
その視線の先はいまだに立ち込める砂煙
(……華琳様?)
心配になった秋蘭が声をかけようとしたその時
もくもくと砂煙が立ち込める中、ひとつの影が浮かび上がる
「!」
一番始めに気付いたのは対峙していた凪
煙が晴れるとそこには右腕の鎧が少し千切れているだけの、一刀が立っていた
それ以外に目立った外傷はない
「わ、私の猛虎蹴撃を避けただと………」
賊ごときに避けられたのが信じられないのか、凪は呆然としていた
一方、一刀は
(危ない危ない……これでも元隊長だからなぁ…凪の猛虎蹴撃は腐るほど見てきた訳だし。戦場とか城内とか…………街中とか…)
凪が盗人を捕まえるときに氣弾で破壊した街並み、そしてその後に書かされた始末書を思い出しながら感傷に浸る一刀
しかしそれも数秒のこと
ダッ!
すぐさま間合いを詰めるために地を蹴る
凪が気付いた時にはもう遅く
ヒュッ!ダァァン!
地面に叩きつけられていた
「ぐっ!」(あれ?痛くない…)
見上げるは空
その空に被せるように影が凪の上に乗り、腕を振り上げた
(やられる!?)
反射的に目を瞑る凪
ビュッ!
風を切る音が鳴る
しかし衝撃はいつまで経っても来ない
(……?…)
うっすらと目を開けると顔面ギリギリで止まっている拳が見える
寸止め
それを頭で認識した時
「そこまで!」
華琳によって試合終了が宣言された
(凪…大丈夫かな?後で謝っとかないと……)
三羽鴉の二人に付き添われて舞台を降りていく凪
その背中に一刀はそんなことを思っていた
「あの賊……」
「ん、凪どうしたん?」
凪の呟きに反応してそちらを見る真桜
「手加減していた……」
「はぁ!?」
「ほんとなの~!?」
真桜と沙和、二人の声が重なる
そもそも武器を捨てた時点で手加減されているのだが
それもそのはず、春蘭や秋蘭、季衣や流琉といった主な武官には適わないものの、三羽鴉の中では凪が一番強い
その凪が手加減されていたというのだ
(それに……)
凪は一人思い出す
(腕をとられた時の感覚………どこかで……)
腕を掴まれた時の感覚に凪は戸惑っていた
知らない男に腕を掴まれたにもかかわらず、胸の内に感じたのは嫌悪感でもなく不快感でもなく…安堵感だった
(やっと終わったな……さてこれで…………)
華琳の方を見ると明らかに次を企んでいる顔
(終わらないよな…やっぱり)
「春蘭!」
「はっ!」
華琳の呼び声に打てば鳴るように返事をする
「次はあなたよ。凪の仇をとってきなさい!」
「御意!」
(いや…仇って…)
一刀のツッコミもむなしく舞台に上がってくる春蘭
心なしか楽しそうだ
「貴様なかなかやるな!我が名は夏侯元譲、魏武の大剣なり!」
(何だかんだでこういう名乗りとかは律儀だよな春蘭)
「さぁ!私は名乗ったぞ、貴様も名乗れい!」
(いや、名乗りたいのはやまやまなんだけど……)
そう思いつつ華琳の方を見て、睨まれる
(覇王様が許してくれないからなぁ…)
肩を落とす一刀に
「貴様ぁぁ!人が名乗っているのに名乗り返さぬとはどういう了見だー!」
既に夏侯惇さんは怒っているご様子
フルフル
仕方なしに首を横に振る一刀だが
「ふざけおって………斬る!」
そんな一刀の都合もやっぱりお構いなしで、華琳の号令も待たぬまま試合が始まった
(ここからはリアルに死合いかもしれない……はは)
ドォォォォオン!!!
春蘭の七星牙狼が一刀のいた位置に振り下ろされる
もちろん一刀は
(春蘭はマジでヤバい!逃げなきゃ死ぬ!)
全力で逃げ回っていた
「貴様ぁぁ!ちょこまかと………避けるな!」
(だから前も言った通り、避けなきゃ死ぬでしょ!?)
春蘭の理不尽な要求に心の中でツッコんだ一刀は舞台の端に置いておいた、刀を掴んだ
(春蘭の場合はマジでやらなきゃ死ぬ!)
と言いつつ
シャッ……
抜いた刀の刃を逆にする
一刀らしいと言えば一刀らしいが、現代でもそのフェミニストぶりから、女性が相手で何回か敗北した経験があった
それも相まって、現代でもモテていた訳なのだが
「さっさと私に倒されろ!そして貴様の首を刎ねて華琳様に献上してくれる!」
(相変わらず首を刎ねるの大好きだなぁおい!)
「せぇぇぇぇい!!」
(刎ねられてたまるか!)
ガギィィィィン!
七星牙狼を刀で受けとめる
いや、受けとめたのではない
ギィィィィィィ!!!
金属がすり減る音が鳴り響く
そう、一刀は刀を絶妙な角度で七星牙狼の腹に滑らせていた
「なにぃ!?」
予想外の切り返しに慌てる春蘭
(これで!……………とは思わないよ。春蘭の一番怖いところは………)
春蘭の腹に決まる直前の刀を引き、さっと後退する
次の瞬間
ブンッ!
いなしたはずの七星牙狼が、一刀のいた空間を通り過ぎていく
(危機察知能力………というか、戦闘に関しての勘が半端じゃないんだよなぁ……)
苦笑しつつ目の前の春蘭から視線を離さない
決まった
そう秋蘭は思った
しかし春蘭に決まると思われた剣は直前で引かれ、賊が後退する
その瞬間、賊がいた場所を七星牙狼が通り過ぎた
「なに!?」
秋蘭は春蘭の妹、姉の攻撃のクセなどは全て知っている。姉の勘の良さもだ。
今の七星牙狼の一撃で勝負は決まるはずだった
しかし、あの賊はそれを避けた
まるであの無意識の勘による攻撃を最初から知っていたかのように
(何者なのだ……奴は……!)
「おかしいですね~」
突然発せられた声に驚いて横を見ると、まず視界に入ったのはくるくると目を回している人形
「なにがおかしいのだ?風」
視線をそのまま下に落とし、声の主に尋ねる
「いえいえ~。たいしたことじゃないのですよ~」
声を発した女の子、風は飴を舐めながら答える
「ただ、今の春蘭ちゃんの攻撃で決まると思っていたので~」
「うむ。私もそう思っていた」
「それに、さっきの凪ちゃんの時もおかしかったですからね~」
「?」
「凪ちゃんの攻撃をことごとく避けていたことですよ~。まるで先読みですね~」
「!…そうか、さっき感じた違和感はそれか…」
違和感
あの賊は先ほど凪の、今は春蘭の攻撃をことごとく避ける。まるで最初から知っているかのように
「知っている…………攻撃のクセを知っているということか?」
そう呟きながら舞台に視線を移す
七星牙狼を振りかざしながら追いかける姉
それを避けたりいなしたりしている賊
どこかでこのような戦いを見たことがある気がする
あれは確か―
(まともに七星牙狼と打ち合ったら刀が折れる!)
刀とはもともと突いたり凪いだり、素早く振るのに特化した武器
単純な強度で言えば七星牙狼との差は決定的だ
(それに……)
さっきの凪とは違い春蘭には油断というものがない
そして当たり前のことなのだが
ブンッ!
(左………じゃなくて右!?)
2年前と全く同じ攻撃パターンではない
それが逆にやりづらい
声が出せれば
あ!華琳が~
的なことが出来るのだが、発声禁止令が出ているので不可能だ
(というか破ったら後が怖いよ………)
華琳の方をチラッと見た瞬間
「よそ見をしている暇があるのかぁぁぁ!!」
左側から七星牙狼が振り下ろされる
(ヤバっ!)
すかさずサイドステップで距離を取るが
「遅いっ!」
さらに踏み込んだ春蘭の攻撃が迫る
ガギィィィィン!
とっさに刀で防御するも
ドガッ!
力で押し切られ、後方に吹き飛ばされた
「…がっ……は…!」
衝撃で口から声が漏れる一刀
腹に力を入れて、なんとか立ち上がる
凪との戦闘で疲労している上に、春蘭は遠慮がない
長期戦は不利と判断するのにさほど時間を必要としなかった
(一か八か…かな?見よう見まねだけど…)
これでも現代に戻ってから難しい本ばかり読んでいた訳ではない
バトルマンガを少しは応用できないかと読みあさった時期もあった
(まぁ流石に月〇天〇とかそんなんは出来ないけど…………)
苦笑いしながら腰を落とし、右手の刀を肩より高く上げて水平に構え、左手を刀の先より少し離れた位置に添えるような形をとる
「…?」
対峙する春蘭は訝しげな表情をしながらも警戒を崩さない
(流石は魏武の大剣だよ、俺ごときじゃ適わないな………でも一矢報いさせてもらうよ春蘭)
狙いは肩当て
「はっ!」
短い気合いとともに足に全神経を集中させ地を蹴る
春蘭も向かってくる一刀に対して迎撃の構えをとる
春蘭の間合いに入った瞬間、刀を突き出す一刀
自分の間合いに飛び込んできた一刀に七星牙狼を頭目がけて振るう春蘭
「ふん!速さは見事だが、ただの突きなど……………なにぃ!?」
肩当てを狙った一刀の刀を体をずらして避ける春蘭だったが
チャッ………ヒュッ!
春蘭の方に向いていた刃を返して逆刃にし、横に凪いだ
点の攻撃が線に
流石の春蘭の勘も反応が遅れる
バキバキッ!
何かが砕けるような音が2つ
ひとつは春蘭の肩当て
そしてもうひとつは、一刀の刀だった
(一矢報いた!けど………)
防御を考えない突き
もちろん七星牙狼は一刀の頭に迫る
ゴッ!
鈍い音とともに吹き飛ばされる一刀
受け身も取れずに舞台を滑っていった
(がっ………!痛っ…!)
舞台の端でギリギリ止まる
しかしすぐに起き上がることは出来なかった
(はは……負けちやったなぁ…………刀も折れちゃったし……)
空を見上げながら思う
心なしかさっきより空がきれいに見える
(スッキリしたってことなのかな……)
ぼんやりとそんなことも思いつつ頭を掻く
そう、頭
(………あれ?兜が……無い?)
周りは静けさに包まれている
冷や汗をかきはじめた体を起こしながら周囲を確認
華琳を除いた全員が呆然としている
いや、二人例外がいた
秋蘭と風、この二人は驚きつつも納得したような顔をしていた
「え、えーと………」
罰が悪そうな顔をして頭を掻く一刀
「…に………」
「に?」
季衣から発せられた声を口に出す
次の瞬間
「兄ちゃぁぁぁぁぁん!!!!!!!!」
小型の大砲が突っ込んできた
「ちょっ…季衣!待った………!」
という一刀の制止など意味は無く
「ゴハッ!!!!!!」
それは鳩尾に直撃した
「兄ちゃん兄ちゃん兄ちゃん兄ちゃん兄ちゃん!!!!!」
(あ………ヤバい………意識が………と…お………く)
一刀が最後に見たのは季衣を必死に引き剥がそうとしている流琉の姿だった
<あとがき>
どーも十六夜です。
今回もグダグダな小説に付き合ってくれてありがとうございます。
いやー別の漫画の技をパクッてしまいましたね一刀くん。
え?パクらせたのはお前だ、って?
いやいやそんなことあるわけ・・・・・ありますよね
ホントすいません。つい魔が差してしまったんです。
というか活字の説明だけで何の漫画の、何の技か分かる人いるのかな?
作者も技の原理とかよくわかってないし(笑)
まぁそんなことより、こないだの新作作成状況についてですが・・・・・増えました。
前回はペルソナでしたが、今回お知らせするのは恋姫です。
真恋姫無双~正義の在り方(仮題)~
です。
主人公はオリキャラなので、そーいう感じになります。
え?他の更新は大丈夫なのかって?
はははは・・駄目に決まってるじゃないですか。
すいませんごめんなさい。
ともかくこの先も頑張って更新していくのでよろしくお願いします。
感想やらツッコミやらがあれば気軽にコメントをどうぞ!
それでは、また。
十六夜でした。
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真恋姫無双の二次創作です。
作者は文才が無く、戦闘シーンの描写が苦手なのでその辺りはご容赦願います