真・恋姫†無双~赤龍伝~第27話「成長の兆し」
赤斗「ふぅー」
赤斗(……何事もなく帰れて良かった。……やっぱり、僕の知っている三国志とは違うみたいだ)
反董卓連合が解散した後、襲撃されることもなく帰ることができた。
火蓮「随分とホッとした顔をしているな」
赤斗「火蓮さん!」
火蓮さんは反董卓連合での戦いぶりと、その後の洛陽復興に向けての取り組みが大陸各地の庶人に評価され、その声望が一気に高まっていた。
赤斗「そうですね。……確かに安心しましけど、まだ分かりませんよ」
火蓮「そうだな。袁紹が玉璽を諦めたとは思えないが、これから当分の間の敵は……袁術だ!」
赤斗「……袁術」
前々から聞いていたけど、袁術打倒に向けて遂に動き出す。
暫くして、袁術から農民の一揆を鎮圧するよう命令がきた。
拠点を発した僕たちは、全ての兵士を引き連れて、江東の地に向かって粛々と駒を進めていた。
赤斗「一揆鎮圧……か」
冥琳「風見どうした?」
赤斗「……やっぱり、気乗りしないなと思ってさ。だって農民の人たちは、袁術のせいで苦しんでいるから、一揆を起こしたんだろ。それなのに」
冥琳「農民たちに同情しているのか?」
赤斗「……同情。……そうだね。僕は一揆を起こした農民の人たちに、同情しているね」
冥琳「…………」
赤斗「冥琳。何とか、平穏に済ませられないかな」
冥琳「それは無理だな」
赤斗「そんな冥琳。本当に何とかならないの?」
雪蓮「……ぷっ」
赤斗「え?」
雪蓮「あはっははは……」
突然、雪蓮が笑いだした。
赤斗「雪蓮。何が可笑しいだよ」
雪蓮「だって、赤斗があまりにも必死だから……」
赤斗「僕は、真面目に言ってるんだ!!」
雪蓮の態度が気に入らず、大声で怒鳴ってしまった。
火蓮「まあ、赤斗落ち着け。雪蓮も冥琳も、あまり赤斗をからかうな」
火蓮が僕たちの間に入った。
火蓮「赤斗。私たちは江東には入らないのだ」
赤斗「……はい?」
穏「そもそも一揆なんて発生していませんしねぇ」
赤斗「………はいー?」
冥琳「一気に偽装した民兵を率いる蓮華様と合流し、そのまま反転。袁術を急襲するのよ」
赤斗「……………」
火蓮「蓮華たちは、その為の準備をしてもらっていたのだ」
赤斗「……作戦だったんですか?」
穏「そりゃそうですよ。本当に一揆が発生しているなら、それを鎮圧するのに時間とお金と人員を投入しなくちゃいけませんからね」
赤斗「みんな……知ってたんだ」
僕はふて腐れて言ってみた。
火蓮「拗ねるな拗ねるな♪」
冥琳「火蓮様。そろそろ蓮華様たちとの合流地点に到着します」
火蓮「そうか。ふふっ、シャオ元気にしているかな♪」
赤斗「誰です?」
雪蓮「尚香って言ってね。弓腰姫とか呼ばれるぐらいおてんばだけど、とっても可愛い妹ちゃんよ♪」
赤斗「なるほどね。孫尚香のことか」
雪蓮「気をつけた方がいいわよ。母様って、尚香にすっごく甘いんだから」
赤斗「へぇ~。孫尚香って、どんな娘なの?」
冥琳「多少、イタズラ好きでな。……それに孫呉の中では一番女らしい方だ。……食われんように気をつけるんだな」
雪蓮「きっと赤斗のこと、気に入ると思うわ……先にご愁傷さまって言っておくわね」
赤斗「どういうことさ?」
火蓮「気にするな♪ お前も会えば分かる。尚香の可愛さがな♪」
“バン、バン”
満面な笑顔で火蓮さんは僕の背中を叩いてくる。僕が抗議しようとすると……
明命「前方に軍旗発見! 旗は黄と諸葛! そして孫家の牙門旗! 黄蓋様、諸葛瑾様、孫権様です!」
前曲を率いている明命の声が聞こえてきた。
冥琳「よし。……興覇。どこに袁術の目があるかも分からん。警戒を怠らないでくれ」
思春「了解です!」
火蓮「まだ、準備が終わらないのか!?」
暫く合流の準備の為、その場で待っていたが、中々準備が整わないことに火蓮さんが不満をもらし始めた。
雪蓮「確かに遅いわね」
穏「何かあったんでしょうか~」
明命「前方に動きあり。馬が一騎突出してきます!!」
火蓮「何だと?」
前方より、もの凄い勢いで馬が迫ってきた。
その背中には、小型の戟を二本携えた銀髪のレゲエの女性がいた。
雪蓮「あれって……」
レゲエの女「江東の赤龍ーーーっ! 出てこーーいっ!!」
近くまできたレゲエの女は、馬から飛び降りて叫んだ。
赤斗「え、僕?」
火蓮「なるほど。赤斗、ご指名だぞ。行ってこい!」
火蓮さんは、驚いている僕をレゲエの女の前まで押し出した。
レゲエの女「貴様が江東の赤龍か?」
目の前に出てきた僕をレゲエの女は睨んだ。
赤斗「え、まあ、一応……」
レゲエの女「一応だとっ!! 貴様、はっきりしろっ!!」
はっきりしない態度を怒られてしまった。
赤斗「うぅ」
レゲエの女「もう一度聞く。貴様が江東の赤龍かっ!?」
赤斗「……僕の名は風見赤斗。江東の赤龍だっ!」
改めて自己紹介をした。
レゲエの女「ふふっ、そうか。なら勝負だっ!!」
赤斗「何っ!?」
レゲエの女は二本の小型の戟を手に持ち、急に襲いかかってきた。
赤斗「いきなり何なんのさ!? 君って何者? 敵なのか?」
双戟を、こちらは二刀流で迎え撃ちながら、レゲエの女に尋ねた。
レゲエの女「私に勝ったら教えてやるさ!」
赤斗「それって、あまり意味がないんだけど……」
レゲエの女「細かいことは気にするな! ようするに、お前が勝てばいいのさっ!!」
赤斗「…………分かった」
正体不明のレゲエの女に対して、僕は本気になることを決めた。
レゲエの女「どうやら、ようやく本気になったみたいだな」
赤斗「僕が勝ったら、君が何者か教えてもらうよ!」
レゲエの女「あぁ、約束しよう」
それ以上、二人は何も言わずに戦いを開始した。
雪蓮「あーあ、始まっちゃった。母様いいの?」
刀と戟がぶつかり合い、激しい火花が散る様子を見ながら、雪蓮は火蓮に尋ねた。
火蓮「好きにさせておけ。恐らく、祭たちに赤斗の話を聞いて、戦いたくなったんだろ」
雪蓮「確かにね。リンシャンの奴、強い相手と戦うの好きだもんね」
火蓮「お前と一緒だな」
冥琳「はぁー。合流準備が遅れていたのも、子義のせいか」
思春「すぐに止めさせましょう。これでは作戦が遅れてしまいます」
明命「止めさせるって言っても、あの二人をどうやって止めるんですか?」
雪蓮「ほっとけば良いんじゃない。どうせ、すぐ終わるでしょ」
冥琳「雪蓮。何ノン気なこと言ってるの。確かにこのままじゃ、作戦に支障が出ることになるわ」
火蓮「もう少しだけ待ってやろう。そうでもしなければ、太史慈の奴も納得しないだろ」
銀髪のレゲエの女の正体は、太史慈。かつて、雪蓮とも引き分けたことがある武将だった。
冥琳「……仕方がありませんね。もう少しだけですよ」
それ以上、言っても無駄と知り、冥琳は諦めたように言った。
火蓮「うむ。二人を止める役は私がやってやろう」
太史慈「どうした。それで全力かっ!?」
太史慈は戦いのペースを上げてきた。
赤斗(強いな。多分、雪蓮と同じくらいか……けど)
太史慈「はあぁぁぁーーっ!!」
双戟を振りかざす。太史慈を勝負を決める気でいた。
赤斗(けど……勝てない相手じゃないっ!!)
汜水関で華雄。虎牢関で呂布。2度の一騎討ちを経験した。
その経験が確実に赤斗を強くしていた。
太史慈「はっ!!」
双戟が赤斗に振り下ろされた。
太史慈「何だとっ!」
双戟は赤斗と捉えたはずだった。しかし、赤斗は残像を残して消えた。
太史慈「どこに…………ッ!」
赤斗を捜そうとした瞬間、背後から首筋に、冷たい刃を当てられていることに気がつく。
赤斗「まだ、続ける?」
太史慈「…………いや、止めておこう。………この勝負、私の負けだ」
赤斗「そう。よかった」
そう言って、赤斗は刀を鞘に収めた。
太史慈「聞いていたより、ずっと強いな」
赤斗「……で?」
太史慈「うん?」
赤斗「だから、君は何者なのさ?」
太史慈「ああ、そうか。約束だったな」
太史慈は振り返る。
太史慈「私は太史慈。字は子義。真名は嶺上(りんしゃん)。これからよろしくな」
赤斗「あーー、なるほど。太史慈か。もう仲間になってたんだ」
太史慈「私のことを知っているのか?」
不思議そうに尋ねる。
赤斗「まあね。天の知識として知っているだけさ」
太史慈「天の知識、か」
赤斗「ところで、太史慈は何でこんなことしたのさ?」
太史慈「私のことなら、真名で呼んでいいぞ」
赤斗「真名を。……ありがとう。それじゃ、リンシャンは何でこんなことを?」
太史慈「それはな……」
太史慈が説明しようとした時………
火蓮「このバカ者がーーっ!!」
いきなり火蓮さんが乱入して、太史慈の頭を殴った。
太史慈「痛っ!!」
赤斗「火蓮さん……!?」
呆気に取られてしまった。
太史慈「火蓮さん、何すんだよ!?」
火蓮「お前のせいで作戦開始が遅れたぞ。いや、それ以上に、シャオとの再会が遅くなったではないかっ!!」
そう言うと火蓮さんは、太史慈の両側のこめかみに拳を擦りつける。
太史慈「痛ったたたっ……。反省してます。もうしません!! すんません。痛ったたたっ……」
赤斗「ははは……」
火蓮さんたちを見て笑っていると、雪蓮がやってきた。
雪蓮「リンシャンの奴、バカでしょ。ああなることが分かっていて、赤斗に戦いを挑んだんだから♪」
赤斗「何でさ?」
雪蓮「何でって、それは強い相手と戦ってみたいからよ♪」
赤斗「……雪蓮と同じか」
雪蓮「失礼ね! あんな奴と一緒にしないでよね!」
太史慈「それは私のセリフだっ!!」
そこに、ようやく火蓮さんから解放された太史慈がやってきた。
太史慈「雪蓮と一緒にされたら、私が迷惑だ!」
雪蓮「何よ? やる気なの?」
雪蓮と太史慈は、お互いの額をくっつけて睨み合いを始めた。
赤斗(………余計なことを言ったかな?)
火蓮「お前たち………いい加減にしろっ!!」
睨み合いを始めた雪蓮と太史慈の頭を、火蓮さんが殴った。
雪蓮「痛ーい!」
太史慈「痛っー!」
殴られた二人は涙目になって、頭を押さえる。
火蓮「さあ、合流を開始するぞっ!!」
二人を無視して、火蓮さんは合流開始を全軍に命じた。
つづく
~あとがき~
呂です。読んでくださって、ありがとうございます。
真・恋姫†無双~赤龍伝~に出てくるオリジナルキャラクターの紹介
オリジナルキャラクター①『風見赤斗』
姓 :風見(かざみ)
名 :赤斗(せきと)
字 :なし
真名:なし
武器:武器:花天と月影……二振りの日本刀(小太刀)。赤色の柄で赤銅の鞘に納まっているのが“花天”で、黒色の柄で黒塗りの鞘に納まっているのが“月影”。
本編主人公の少年。
この外史では“北郷一刀”が主人公ではありません。
火蓮によって保護され“江東の赤龍”という異名を付けられる。
古武術を学んでおり、その奥義を使えば恋姫の世界の武将とも闘えることができる。
学んでいる流派には、『全ての奥義を極めしとき、その身に龍の力が宿る。』という伝承がある。
奥義には“疾風”“浮葉”“流水”“月空”“烈火”“絶影”“龍鱗”“狂神”などがある。
能力値:統率?・武力4・知力4・政治?・魅力?
オリジナルキャラクター②『孫堅』
姓 :孫
名 :堅
字 :文台
真名:火蓮(かれん)
武器:南海覇王……やや長めの刀身を持つ、両刃の直刀。派手な装飾はないものの、孫家伝統の宝刀。
孫策(雪蓮)たちの母親。
身長173㌢。腰まで伸びる燃えるような赤い髪の持ち主。
血を見ると雪蓮以上に興奮してしまう。
この外史“赤龍伝”では孫堅は死んでいない。
能力値:統率5・武力5・知力3・政治4・魅力5
オリジナルキャラクター③『諸葛瑾』
姓 :諸葛
名 :瑾
字 :子瑜
真名:藍里(あいり)
武器:不明
諸葛亮(朱里)の姉。
諸葛亮(朱里)とは違い、長身で胸も大きい女性。髪は金髪でポニーテール。
温厚で気配りのできる性格で、面倒見も良い。赤斗の世話役として補佐につく。
一時は、自分たちとは違う考え方や知識を持つ赤斗に恐怖心を持っていた。
政治、軍事、外交と様々な仕事をこなすが、朱里には僅かに及ばない。
能力値:統率3・武力1・知力4・政治4・魅力4
オリジナルキャラクター④『太史慈』
姓 :太史
名 :慈
字 :子義
真名:嶺上(りんしゃん)
武器:雷電(らいでん)……二本の小型の戟。
非常に勇猛かつ、約束に律儀な武将。銀髪レゲエの女性。
孫策(雪蓮)と一騎打ちして引き分けたことがある。
それ以来、孫策の喧嘩友達になっており、よく喧嘩をしている。
また、諸葛瑾(藍里)と仲が良い。
弓の名手でもあり、その腕は百発百中。
能力値:統率4・武力4・知力3・政治2・魅力3
※能力値は「5」が最高だが、呂布の武力と劉備の魅力は「6」で規格外。
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この作品は、基本的に呉√にそっては行きますが、主人公も含めてオリジナルキャラクターが出てきます。今回から太史慈が登場します。
未熟なため文章におかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。