No.198158

虚々・恋姫無双 虚点3 桂花・紗江黙

TAPEtさん

何とかやっていたら紗江と一緒に組んでいました。
反省はしてません。

2011-01-27 20:03:34 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2835   閲覧ユーザー数:2431

ここはこの城で一番人の気配が少ない場所。

そんな書庫に向かう道を、たくさんの竹簡と本を持ち歩いている二人の少女が居ました。

 

「本を運ぶのを手伝ってくださってありがとうございます、桂花さん」

「別に、私も書庫に用事があったから、たまたま手伝ってあげているだけよ」

 

自分の分の政務に必要な資料を少しずつ書庫から借りてきていた紗江は、やがてその量が部屋の一隅にもっさり積もるほどになってからそれを「返さなければならない」という、とても難しい場面の逢着したのでした。

誰かに助けをお願いしたいところでしたが、紗江が助けを乞える相手なんて、凪君たち以外ではそうそう見つからないもので、その凪君たちも皆仕事がある以上、日頃にこんな多量の書物を一人で運ばなければいけないというわけです。

とても一度で運べる量ではなかったので、一応持ち歩けるだけの量を持ったものの、前が見えなくて目的地へ真っ直ぐと行かず、困っていながら右往左往していたところ、それを馬鹿を見ているような目で見つめている桂花さんとばったり会ったというわけです。

 

正直、紗江のことを桂花さんが手伝ってくれるというのも私にとっては結構新鮮なとこであります。

 

「それに……」

「?」

「こんなにたくさん本を持ち歩いて人の前を歩いているのに、手伝ってあげない人なんていないわよ」

「……ふふっ」

「な、何よ!何で笑うのよ、気持ち悪い」

「何でもありません。…ありがとうございます」

「それは先も聞いたわよ」

「……<<にっこり>>」

「…ふん!」

 

紗江が感謝の気持ちを込めて微笑んだら、桂花さんはそっぽを向いて歩きを早くしました。

 

【左慈さん、これは左慈さんのところでいう、「テレた」というものですか?】

 

……それ、本人に言ったら絶対駄目ですよ。

 

 

兎に角、桂花さんと紗江は一緒に書庫に向かっていました。

 

「あなたね」

「はい?」

 

ふと、桂花さんから紗江に声をかけました。

 

「どうして軍師になろうとしないの?」

「………」

「私は自らの命を賭けて軍師になったわ。稟と風だってそう。なのにあなたは、華琳さまが自ら何度もあなたを軍師として向かうために家にまで尋ねられたのに、それでも華琳さまの軍師にならなかったわ」

「……」

「元なら、私がここに来るずっと前からあなたが華琳さまの軍師と務めているべきだったわ。それところか、あなたが居たなら私は軍師になることさえもできなかった。あなたの能力は私や他の子たちよりも上に居たから」

「そんな……私は、桂花さんにそれほどの評価をされるほどの者では……」

「紗江」

 

桂花さんの質問は、以前華琳さまの休日の時に見た紗江の仕事っぷりを見てから生まれた感情、それを紗江にぶつけているものでした。

確かに紗江は、他の軍師たちとは違う考え方がありました。だから、魏の筆頭軍師三人が頭を合わせて作った策でも、そこにある小さな穴たちを埋められる考えを持っているのです。

 

「答えて頂戴。どうしてあなたはあの時、そして今も、華琳さまの軍師になろうとしないの?」

 

だけど、

 

「桂花さん、少女は……桂花さんや稟さんたちが羨ましいです」

「?」

「少女は初めて華琳さまに出会った時、その時感じた感情があまりにも怖くて、華琳さまの前に立ち向かうことができず、華琳さまから逃げようと必死になっていました。そして、今の少女がここに居ます」

「……」

「華琳さまを初めて見たとき、少女は心の中から湧いてくる感情をありのまま見せることを恐れていました。それは今でも同じです。少女は、桂花さんたちのような勇気が足りませんでした」

「紗江……あなた」

 

紗江はとても初々しい人です。

紗江の華琳さまに対しての感情は、ある意味稟のそれと良く似ています。

稟は己の感情に刺激が混ざって、それがあまりにも強いせいで鼻血を吹いて気絶ずる反面、紗江はその感情を恐れて最初からその人の前に立ち向かえないというところが違うだけです。

 

「だから、始めることすら出来なかった少女なんかに、桂花さんたちが劣るはずがありません。きっと、今後も少女が華琳さまの軍師になることはいないでしょう。だから、少女の分までも、桂花さんが華琳さまの側で尽くしてください」

「………断るわ」

「……え?」

「だって、私は私の分だけ華琳さまに尽くすのでも二十四時間では足りないもの。あなたの分なんて考えていられないわよ」

「……ふふっ」

「何笑うのよ、気持ち悪い。さっさと行くわよ。こんな速度だと、いつに経っても終わらないじゃない」

「あ、はい」

 

そして桂花さんと紗江は書庫に向かう足を急ぐのでありました。

 

「流石、華琳さまの張子房と呼ばれるだけありますね」

「何それは?」

「周りでそう呼ばれておられますが…ご存知なかったのですか?」

「さー、周りがどういうとか気にしないからね」

「じゃあ、侍女たちの中に桂花さんと華琳さまの間の夜の秘め事の話が流されているのも……」

「それは今後調べる必要があるわね」

 

……はぁーー

 

 

 

「うん?」

「あら、一刀ちゃん、こんにちは」

「………」

 

桂花さんと紗江が書庫に行く途中、一刀ちゃんにばったり会いました。

 

「ぅ」

 

うん?何か一刀ちゃんの様子が何気に変ですね。

何かこう、あまり会いたくなかったのに会っちゃった的な顔になってます。

 

「どこに行くの?暇だったら少しあんたも手伝いなさい」

「…………」

 

一刀ちゃんは暫く桂花さんと紗江を見ていたら、

 

スッ

 

「あ!」

「あら、逃げられちゃいましたね」

 

これは……ある意味凄いですね。

手伝って欲しいと言ってる人を見て一刀ちゃんがそのまま逃げちゃうなんて……

 

「なんなのよ、アイツ……まったく」

「きっと急ぎの用事があったのですよ。さあ、行きましょう、桂花さん」

「忙しいこと?あの子にそんな用事があるわけがないでしょ?」

 

桂花さんはそうぶつぶつ言いながらまた歩き出しました。

 

 

・・・

 

・・

 

 

そして書庫に着いた二人が見たのは、

紗江の部屋にまだ残っていたはずの書物の山でした。

 

 

 

 

「なんなのよ、まったく。手伝うのだったらもう少し丁寧なやり方もあるでしょ?」

 

一刀ちゃんによって紗江の部屋から書庫まで送られた書物まで全て片付けてから紗江と別れて自分の部屋に戻りながら桂花さんはまだぶつぶつと一刀ちゃんの先の行動について文句を言っていました。

 

「大体、最近のあいつはおかしいわよ。声をかけても適当に返事して他のところに行っちゃうし………前は私がいやいや言ってもずっと一緒に居たくせに………えいっ」

 

桂花さんは足元にあった小石を蹴りました。

 

「痛ッ!」

 

そこを角を回っていた流琉ちゃんが不意に当たってしまいました。

 

「あ、流琉、ごめんなさい。態とじゃないよ」

「い、いいえ。大丈夫です」

「どこに行くの?」

 

流琉の手には結構な量のお肉がありました。

 

「また季衣に料理でもつくってあげるの?」

「あ、はい、…えっと、実は一刀ちゃんだけつくってあげようと思ったんですけど、季衣に見つかっちゃって」

「一刀に手料理?」

「はい。ほら、一刀ちゃん、つくってくれると美味しく食べてくれるけど、食べる量は少なかったじゃないですか?」

「………えぇー、うん、まあ」

「それが、最近は食べるのも増えてつくってあげる甲斐が増えたんですよ。だから、最近は良く作ってあげてます」

「……そう……」

 

そういえば、確かに最近の一刀ちゃんは食べる量が増えましたね。成長しようとするのでしょうか。

いやー、一刀ちゃんずっとそのままに居て、ゲフンゲフン。

 

「あの、良かったら桂花さんもきますか?」

「わ、私はまだ仕事があるから、別にいいわ」

「そうですか…もし途中で気が変わったら来てくださいね。多めに作っておきますから」

「えぇ………」

 

流琉はそう行って厨房の方へ行ってしまいました。

 

「……手料理ね……」

 

何歩か行っていた道を歩いていた桂花さんは少し止まって、

 

「………」

 

振り向いて自分も厨房へ向かいました。

 

 

 

 

「はーい、できたよ」

「わーい」

「……<<キラキラ>>」

 

厨房には流琉ちゃんが作った手料理が広げられていて、季衣ちゃんと一刀ちゃんはそれをキラキラした目で見ています。

 

「いただきまーす!」

「<<パチッ>>」

 

挨拶代わりに合掌する一刀ちゃんです。

 

「はむ……うむ、うん、……おいしい!」

「………<<モグモグ>>」

 

「………」

 

そしてその姿を外で黙って見守っている人が居ます。

……いえ、僕じゃなくてネコミミ頭巾の方です。

 

「……」

 

僕は普段一刀ちゃんと、凄く例外的な場面で紗江や華琳さまの頭の中は覗けますけど、この人の頭は覗けませんので、何を考えているかはわかりませ、

 

「何ニヤニヤしてるのよ…」

 

この人が一刀ちゃんが食べ物を食べながらニヤニヤしていると主張しているということは良く分かりました。

どうやるんですか食べながらニヤニヤするって……

 

次からはちゃんと一刀ちゃんのこと付いて行きます。絶対このネコミミの後は追いませんよ。

 

「おかわりー!」

「………」

「はい、おかわりね」

 

一刀ちゃんが季衣ちゃんと同時に空になった皿を流琉ちゃんにさしたら、流琉ちゃんは笑いながらその皿をもらうのでした。

 

「………<<もぐもぐ>……><<パーッ>>」

 

「…………ぅぅ」

 

流琉ちゃんの料理を食べながら大げさに目をキラキラさせながら嬉しく笑う一刀ちゃんを見ながら、桂花さんは逆に額にしわをつくっていました。

 

 

 

一刀ちゃん最近太りました?

 

「!!?」

 

冗談です。一刀ちゃんの体重は以前と代わりありません。

 

「……」【ほんとに?】

 

自分の食べ量が増えた自覚はあるのですね。

 

【あたりまえじゃない。以前だったらおかわりなんてありえないもの。いくら流琉お姉ちゃんが作ってくれたのだとしてもお腹に入らなかったのに……】

 

いわゆる育ち盛りというものですね。

まぁ、おかげで城の中で料理が出来るという方々(秋蘭さん、流琉ちゃん、凪君)は大体一刀ちゃんに手料理作ってあげる回数が明らかに増えましたね。主に流琉ちゃんとかは、結構週に一回ぐらいは季衣に料理を食べさせてあげていたのに、最近はそれが頻度が倍になった感じですし。

 

【流琉お姉ちゃんの料理美味しい。いくらでも食べられる】

 

それは季衣ちゃんと食い競争が出来るぐらいにですか?

 

【季衣お姉ちゃんの腹の四次元袋だよ】

 

意義はありません。

ところで一刀ちゃん、最近春蘭さんに会ったことがありますか?」

 

【ないよ?】

 

風さんは

 

【風お姉ちゃんを探すのは街で猫を捕まえるより難しいよ】

 

桂花さんは?

 

【……見てないね……この前紗江お姉ちゃんと一緒に見た時以来は見てないかな】

 

桂花さんが最近何してるか知っています?

 

「………<<ふるふる>>」

 

 

 

 

 

「…………」

 

コンコン

 

「…………<<ひらっ>>」

 

コンコン

 

「…………」

 

がらり

 

「…………<<ひらっ>>」

 

「………桂花さん?」

「ひゃあああ!!」

「どうしてそんなに驚くのですか?」

「紗江!?入る時はちゃんとノックしなさいよ!」

「しましたよ。何度も……何の本なのにそんなに本の韋編が絶ちそうに見てるのですか?」

「ちょ、ちょっと!」

「えっと……『料理の基本三十三つ、あなたも料理人』…料理を習おうとしているのですか?」

「ちがっ!……ちょっと、持ってくる本を間違えただけで……たまたま目に入っただけよ!別に…」

「別に一刀ちゃんに手料理を食べさせてあげようとか思っていないわけですわね」

「そうよ!………」

「…………桂花さん」

「何よ」

「この本の著者、誰なのか知ってます?」

「著者?………」

「……<<にっこり>>」

「…あなたが書いたの?」

「家に居る時暇でしたので……売り上げはあんまりできたけどね」

「あなた、料理出来るの?」

「華琳さまほどじゃあありませんけどね」

「…………」

「…………」

「……紗江」

「はい」

「………やっぱりいいわ」

「いいですよ。それじゃあ、早速始めましょう」

「私は教えてって言ってないわよ!?」

「安心してください。授業料はもらいませんから」

「そういう問題じゃなくてー」

「料理が出来るようになったら、後で華琳さまが料理をなさるときにお手伝いできるようになるかも知れませんよ?」

「………そう…ね……そう、これは華琳さまのためにするんだからね。別に、一刀に手料理を食べさせようと思っているわけじゃないわ」

「はいっ」

 

 

と、誰かさんの部屋ではそんなこともあったと言います。

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

 

 

 


 
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