No.198159

虚々・恋姫無双 虚点3 桂花・紗江黙(続)

TAPEtさん

紗江が華琳を避ける理由は本当に勇気がない、それだけの問題でしょうか

2011-01-27 20:06:35 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2513   閲覧ユーザー数:2163

――桂花さんに料理を教える?紗江が?

 

「ええ、最近料理の本を持って一人で悩まれたようで……少女もある程度は料理が出来ますから」

 

紗江の料理実力は確かにすごいですわね。表に出さないから皆良く分からなけど、実際僕が以前一刀ちゃんに料理を作ってあげたのも、実は紗江の腕があったからできたのですし……

 

「…いけなかったでしょうか?少女が出過ぎた真似をしたと思いますか?」

 

――別にそうとは……寧ろ紗江はもっと他の将たちと仲良くすべきだと思います。この度はいい機会になるでしょう。

 

「そう……ですよね」

 

――…?どうしました?

 

「いいえ、大したことではないのですけれど……あの、左慈さん」

 

――何でしょう?

 

「桂花さんに料理を作っている間だけでもいいから、一緒にいてもらえますか?」

 

――……僕は基本的には紗江と一緒に居ますけど、一刀ちゃんに何か特別なことが起きるとしたら、絶対にそう出来るとは約束できませんわよ?

 

「そう…ですね。ごめんなさい、無理言ってしまって」

 

――……紗江

 

「はい」

 

――華琳さまなら明日秋蘭さんたちと一緒に戦線になる場所を確認しに行ったから、心配ないわ。

 

「………何の話ですか?」

 

――…じゃあ、僕は用事があるからこれで……

 

「あ、左慈さん」

 

………

 

「………」

 

 

「それじゃあ、桂花さん、これから料理を始めましょう」

「宜しく……お願いします」

 

次の日、桂花と紗江の料理教室が開かれました。

 

「それじゃあ、料理で先ず一番重要な……」

「……<<ドキドキ>>」

 

ドキドキはいれてみただけです。

桂花さんが本当にこんなことにドキドキするだろうとは正直僕でも思っていません。

 

「まずは料理を始める前にちゃんと手を洗っておきましょう」

「あ、そ、そうね」

 

そうですね、料理をするに衛生は大事ですよね。特にこんなこういう時代には。

 

「料理を始める前に手や道具が綺麗なのかを確認することは、食べてもらう相手に対しての礼儀です。下手したらお腹を壊すとかもありますしね」

「そうね……」

「それじゃあ、料理を始めたいと思いますけど……桂花さん、料理はまったくしてみたことがないのですね」

「ええ…自分で作るとか考えたこともなかったからね」

 

桂花さんの家は結構強い豪族でしたからね。

自分の手で料理をするとかそんなことはないほど豪華な暮らしだったでしょう。

 

「それじゃあ、先ず誰でも出来るぐらいの簡単な……炒飯とかから始めましょう」

「炒飯?そんなの別に教えてもらわなくても誰でもできるものじゃないの?」

「そうはおっしゃいますけれど、桂花さんは飯を炊いてみたことがありますか?」

「…………」

 

ですよねー

 

「まぁ、炒飯ですので、別に今から飯を炊くことはなく、冷ご飯を使うだけですけどね」

「何よ、脅かさないでしょ」

「ご飯を炊かすことで落ち込んでいると、一刀ちゃんに料理を食べさせてあげるほどにはなれませんよ」

「うぅぅ…それは……って、私は別に一刀に……!」

「はい、はい、それは宜しいですから、早く始めましょう?まずは鍋を火に上げて熱くさせといて……」

 

……

 

 

誰か厨房に来る?

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

「む?誰か厨房に居るのか?」

「??」『流琉お姉ちゃんかな』

「いや、流琉は軍師たちの護衛に行っているから城にはいないはずだが……」

 

げっ、夏侯淵!

それに、一刀ちゃんまで。

 

「他に厨房で料理をしてるような人と言えば……」

『凪お姉ちゃんかな…でも凪お姉ちゃんは先警邏してるもみたし』

「ふむ……」

 

ここで一刀ちゃんが厨房に入ってくるのは………あまりいいことは思われませんが、

僕としては別に止める必要も見つかりませんからほっときましょう。

驚くネコミミ軍師さまの姿を見たいとかそういうことではありません、はい。

 

 

「鍋って……結構、うっ、重いわね」

「これで鍋でも結構軽い方ですけどね……慣れるそれほどでもありませんよ」

「あなたは病人でしょ?どうしてそんなに平気なのよ!」

「少女は慣れが違いますから…ほら」

 

チィーーー!チィーー!!

 

「ね?カンタンデショウ?」

「その言い方、何か腹立つわね」

「ごめんなさい、はい、続けてください」

「分かったわよ……よいっ」

 

 

 

 

「桂花?」

「ひゃーーー!!!」

「あー!危ないです!」

「!!」

 

丁度鍋の中の炒飯をひっくり返すところで、秋蘭さんの声にびっくりしてしまった桂花さんは、うまく鍋を制御できず、炒飯はそのまま床に落ちてしまいました。

 

「あぁぁ………」

 

それを見た桂花さんは固まった状態。

 

「大丈夫ですか、桂花さん?火傷とかは……」

「…大丈夫よ」

「す、すまん」

 

そして、申し訳なさそうにしてる秋蘭さんの裏に一刀ちゃんが居ます。

 

「……」

「一刀ちゃん」

「か、一刀、どうしてあんたがここにいるのよ」

「……」

「今日は城の大体は忙しくてな。一人で外で食べようとするのを、私が作ってあげると言って連れてきたのだが……」

「あぁ……」

 

何故魏の厨房は武将たちがこうも勝手に出入りしながら自分たちの料理を作れるようになったのでしょう。きっと華琳さまのおかげですね、分かります。

 

「……」『炒飯、食べれなくなっちゃったね』

「……」

 

床に落ちて駄目になった炒飯を黙々と見つめていた一刀ちゃんと桂花さんですが、

 

「過ぎたことは仕方がありません。頑張ってもう一度作りましょう」

「……」『桂花お姉ちゃん、もしかして、紗江に料理を教えてもらってるの?』

「うっ!」

「紗江、お前料理が出来たのか?」

「へっ?あぁ……えっとー」

 

一刀ちゃんと秋蘭さんに問い詰められ、各々困難している桂花さんと紗江。

 

桂花さんはともかく、紗江はどうしてなのかよくわかりませんけどね。

 

「……」『桂花お姉ちゃんの料理、食べてみたことない。食べてみたい』

「いや、といっても、もう作ったのは食べれなくなったし」

「だ、大丈夫ですよ。また作れば良いですから……秋蘭さん」

「…うむ、今日は食べる側になってもらおう」

「ありがとうございます。桂花さん、落ち込んでないで、もう一度作りましょう。人数が増えましたので、ちょっと多めに作っていきます」

「………」

『桂花お姉ちゃん、頑張って』

「一刀……」

「………」『期待してるから』

「!」

「あ」

 

一刀ちゃんの竹簡を見た瞬間、落ち込んでいた桂花さんの背筋がピッと立ちました。

 

「紗江、もう一度手伝って」

「ふふっ、はい。それでは、早速やり直しましょう」

「ええ」

 

先とは違い、鍋を握る桂花さんの腕に力が入っているのが良く分かりました。

 

 

 

そして、出来上がった炒飯が四つの食器に盛られました。

 

「……で、できた」

「できましたね」

「…まさか桂花が料理をするとは思わなかったのだがな」

「な、何よ、秋蘭。あなたは何か文句あるの?」

「そんなことはないさ」

「むぅ……」

 

秋蘭の微笑みに気分が悪くなったのか、桂花さんは機嫌悪そうに口を出しました。

 

「……」『食べてもいい?』

「いいですよ。さ、桂花さんもそうしていないで、初めての自作料理なわけですし」

「え、ええ……」

 

そうは言うものの、自分が作った料理ながらも食べることが恐ろしいのか、それとも他の皆の感想(主に一刀ちゃん)を先に聞きたいのか、先に蓮華を取りません。

 

「……<<バチッ>>」

 

その中でも一人で合掌して蓮華を取った一刀ちゃん。

三人の料理人(?)の目が一刀ちゃんに向かう瞬間です。

 

「………<<モグモグ>>」

「「「………」」」

「……へへ<<にっこり>>」

 

これは、またいつもとは違う反応ですね。

いつものようなパッとした表情じゃなくて、軽く顔を緩めながら内から笑うような感じの笑い声が一刀ちゃんの口から出てきました。

 

「な、何よ。し、仕方ないじゃない。初めてだから少し美味しくなくても……」

「?」

 

けど、それを自分に対しての嘲笑を見たのか、桂花さんは少し凹んだように言いました。

一刀ちゃんはキョトンとしましたが、反論することはなく、蓮華で炒飯を掬って、桂花さんの口の前に持ってきました。

 

「な、何するのよ」

「………」

「……」

「「……」」

 

側で紗江と、秋蘭はそれを羨ましく見ているだけで特に何も言いませんでした。

 

「……」

 

桂花さんもそれ以上拒否できず、一刀ちゃんの蓮華に向けて口を開けました。

 

「…はむ………むぐ………」

「……<<にしっ>>」

「どうですか、桂花さん?」

「……まぁ……食べられそうではあるわね」

「……そうですか?……じゃあ、一刀ちゃんが毒味をしてもらったところですし、楽しく頂きましょう」

「ちょっと、あなた、何よ、その言い方。あなたが手伝ったものでしょう?」

「少女は後ろで助言をしたまでですからね。一刀ちゃん、この炒飯は桂花さん一人で作ったのですよ?」

「あんたね……」

「………」<<美味しい>>

「うぅ………」

「……」<<また作ってくれるよね?>>

「さ、さあ、時間があれば……ね」

「…<<にっこり>>」

「ふふっ……」

 

一刀ちゃんと紗江はそう微笑みました。

秋蘭さんが空気なのは仕方ありません。

 

 

………あれ?

ところで秋蘭って確か、華琳さまと一緒に遠くまで偵察に行ったはずでは……

 

 

「あら、皆揃って何をしているの?」

「!」

「華琳さま」

「華琳さま」

「……」

 

げっ!曹操。

 

「か、か、かりんさ……ま…」

「どうしたの、紗江?そんな幽霊でも見たような顔で…」

「あ……あ、は、はの……」

 

紗江?

 

ガン!

 

「ぁ」

「紗江?」

「ちょっとどうしたのよ」

「はっ!」

 

華琳さまを見た瞬間、紗江は席からパッと起きまして、その余波でテーブルが揺れました。

 

「お、お先に失礼いたします!」

「ちょ、ちょっと、紗江!」

 

紗江は厨房の入り口に立っていた華琳さまを通りすぎて逃げ出してしまいました。

 

「紗江!」

「ほおっておきなさい、桂花」

「華琳さま?」

「………」

 

…………

 

「……?」<<秋蘭お姉ちゃん、紗江お姉ちゃんって、どうして華琳お姉ちゃんを見て逃げちゃったの?>>

「…分からない」

「……?」

 

……紗江…

 

 

 

 

 

 

 

「………はぁ……はぁ……」

 

自分の部屋の中、紗江は荒い息をついていました。

 

……

 

――紗江

 

「左慈さん……」

 

――……ごめんなさい、僕が間違った情報を上げてしまって

 

「どうして華琳さまがお城へ……」

 

――分からない。聞いた話では確か今日だったはずだけど……秋蘭を見た時に気づくべきでしたわ。

 

「………すー………はぁぁ<<カタカタ>>」

 

深呼吸をする紗江の喉が震えて、息も一緒に震えてました。

 

「……ごめんなさい」

 

――紗江が謝る理由なんてどこにもありません。

 

「……少女は……少女は……うぅっ」

 

――紗江……

 

…僕は一刀ちゃんを守るためにあなたの身体を使っているのに、いざとなって見れば慰めが必要なのは一刀ちゃんよりも、あなたになってしまってるわね……

 

「……かりんさま……ぅぐ……」

 

部屋の壁でもたれていた紗江の身体がどんどん下へと動いて、両足を組んで泣く顔を隠して聞こえないように泣くようになるまで、僕は何もできないままそこに居ました。

 

・・・

 

・・

 

 


 
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