真・恋姫無双アナザーストーリー
雪蓮√ 今傍に行きます アフターストーリー第6話
【二人の主】
「はっ!はっ!はぁぁああっ!」
凛と静まり返った中庭で一人、鍛錬をする一人の少女がいた。
「はっ!てやぁ!」
彼女の名前は、関雲長。真名を愛紗。黒髪がとても艶やかな蜀の武将だ。
「ふぅー……」
鍛錬を終えたのか息を吐き呼吸を整えた。
「……はぁ、やはり晴れん、か……」
溜め息を吐きながら空を見上げる愛紗。
「……一刀様」
その言葉に返事を返す者は今この場には居ない。
「いかんな、私の今の主は桃香様、一刀様ではないのだ……」
首を振り、考えを追いやる。
「さあ、鍛錬の続きだ」
そう言うと愛紗は、青龍堰月刀を握り直し鍛錬を再開した。
「……」
そんな愛紗を遠くで見ているものがいた。
「愛紗って不器用だよね」
「まあ、記憶が二つあるみたいなもんなんだから仕方ないんじゃない?なんせ、以前の主が一刀だったんだから尚更ね」
「それもそうだけどさ~。あっ!それじゃこのまま呉に居ればいいんじゃない!そうすれば一刀君とずっと一緒なわけだし、私って天才!」
「なわけないでしょ。愛紗の忠義は本物よ。いくら、以前の主で愛していたとしても今の主は桃香なのだから。そう簡単に裏切られるわけ無いじゃない。出来るんだったら私が愛紗を欲しいくらいよ」
「ぶー、じゃあどうするのさ」
「まあ、一刀が何とかしてくれるんじゃない?」
「それもそっか」
「はぁ、だから種馬、なんて言われるのよあのバカは……」
「そんな一刀君に恋しちゃったのは何処の誰だったかな~♪」
「なっ!わ、私が一刀の事を好きになんてなるわけ無いでしょ!」
「はぁ、私に酔った勢いで愚痴言ったのは何処の誰だったかしら?」
「う、煩いわね!あれはあなたが!」
「私がなに?」
「なんでもないわよ……」
「何々?なんか面白そうな事?私にも教えてよ~」
「ふふふ、実はね」
「あああっ!あなた達、少しは黙っていなさい!」
「怒られちゃった」
「ね~♪」
怒りに顔を赤くする者とそれを面白そうに眺める二人はまた愛紗に目を向ける。
「まあ、もう少し様子を見てみることにしましょうか」
「そうだね」
「まあ、あの一刀が愛紗の変化に気がつかないわけ無いものね。違った意味で」
「はぁ、もう少し女心をわかってもらいたいわね
三人は静かにその場から居なくなった。
「ふぅ、どうも鍛錬に身が入らないな」
朝の鍛錬を終えて私は手拭で汗を拭う。
原因はわかっているのだ。
事の起こりは三日前の夜、私は部屋で寝る準備をしていた時だった……
……
…………
………………
『愛紗ちゃ~ん』
「桃香様?」
扉の向こうから桃香様のお声が聞こえ私は部屋の扉を開けた。
「桃香様、如何なされたのですか?」
――ガチャッ
「えへへ~♪愛紗ちゃ~~~ん!ひっく!」
桃香様は扉を開けるや否や私に抱きついてこられました。
「うわぁ!と、桃香様?酔っておられるのですか?」
「酔ってらんからいよ~?あはは♪」
目をトロンとさせて、呂律が回っていない時点で酔っている事は明白。私は桃香様をお部屋へお送りしようとした。
「と、兎に角、お部屋に戻りましょう」
「や~~っ!」
「嫌ではございません。そのような状態ではお怪我をしてしまいます!」
「わらひは……ひっく!これから~かじゅとさんの所にいくの~~♪」
「……は?い、今何と仰いましたか?」
「らから~、かじゅとさんの所に行くの~、それで~口じゅけするの!きゃ~~~言っひゃった~~~♪」
桃香様は両頬に手を当てて恥ずかしそうに首を振っていた。
「愛紗ちゃんどうかしたの~?」
「え?な、なんでもありません」
「そ~お~?それじゃ、わたひかじゅとさんの所に行っへくるね~♪」
「あっ、桃香様!」
そして桃香様はフラフラした足取りで一刀様の所へと行かれてしまった。
……
…………
………………
そんな事があり、翌日の朝は色々と大変な事になっていた。
話によると、朝、朝議があったらしいのだが、その場に一刀様が現れず優未殿が起こしに行ったらしいのだが、その優未殿も戻ってこなかったのだそうだ。
仕方なく、蓮華殿が起こしに行ったら一刀殿が桃香様と優未殿を……そ、その……襲っていたそうなのだ~~っ。
私は恥ずかしくなり何度も首を振った。
結果として、桃香様に抱きつかれて身動き出来なかった一刀様に朝、優未殿もそれを見て抱き付きそのまま眠ってしまったというのが事の顛末なのだが。
「はぁ、それにしてもうらっ!……ごほんっ!」
思わず声に出してしまいそうになりわざと咳き込んだ。
「もう私には桃香様と言う立派な主が居るのだ。今更、一刀様をご主人様と仰ぐのも……」
そんな事を考えながら木陰で休んでいると、城の方でなにやら騒々しくなってきた。
「何事だ?」
私は立ち上がり騒ぎの方へ歩き出そうとした瞬間だった。
「ひぇぇぇえええっ!!!」
「か、一刀様?!」
なんと一刀様が必死なお顔をして何かから逃げているようでした。
「あ、愛紗!匿ってくれ!」
「え?ええ?ちょっ!えええ?!」
「それじゃ頼んだよ!」
「あ、あの一刀様?!」
一刀様は私の後ろの茂みに隠れてしまい、それと同時に砂煙を上げて誰かが走ってきた。
「北郷ぉぉぉぉおおおっ!」
「夏候惇?」
「ん?おお、関羽か!丁度いい、北郷を見なかったか!」
「一刀様がどうかしたのか?」
「あいつめ。華琳様を抱き付きそれだけに止まらず口づけまでしたのだ。万死に値するやつだ!」
それを聞いた私はジト目で一刀様に目線を向ける。
――ブンブン!
一刀様は必死に首を横に振り否定をしていた。
「ん?どうかしたか関羽」
「いや、一刀様ならあっちへ逃げて行ったぞ」
「おおっ!そうか!間っていろよ北郷!今度こそ貴様を真っ二つに一刀両断してくれる!」
夏候惇は自分の得物を肩に担いで走って行ってしまった。
「……もう大丈夫ですよ一刀様」
――ガサガサッ!
「助かったよ愛紗」
一刀様は苦笑いを浮かべて茂みから出てきた。
「では、先程の理由をお聞かせ頂きましょうか一刀様」
「あ、あの愛紗?なんで刃先を俺に向けているのかな~なんて」
「それは一刀様がご存知なのではないでしょうか?」
私はにこやかに一刀様を見た。
「いや、あれは夏候惇さんの誤解だからね?それはわかってるよね?」
「説明もなしに判断は出来ません。さあ、大人しく白状してください。さもないと……」
「わ、わかった!話す!話すから!こっちに近づけないで?!」
「はぁ、最初から素直に話していただければいいのです」
青龍堰月刀を降ろすと一刀様は渋々話し始めてくれました。
……
…………
………………
「つまり、華琳殿に呼ばれて行ったら目の前でこけて華琳度に抱きついてしまいその拍子にキスまでしてしまい、運悪く夏候惇が現れた、と?」
一刀様の説明を簡略化して聞き返してみると一刀様は頷いて肯定してきた。ちなみに、キスという言葉は前の外史で一刀様が教えてくれたのでそのまま私も使っている。
「……それを信じろと?」
「本当だって!嘘みたいな話だけど本当なんだって信じてくれよ愛紗」
まあ、一刀様はそんな事では嘘を言わないお方だから本当のことなのだろうが……
「はぁ~、わかりました。とりあえずは信じる事にしましょう」
「本当か?ありがとう愛紗!」
――がばっ!
「っ?!」
一刀様は喜びの余りか私に抱きついてきた。
「あ、あの一刀様?!」
「え?ああ、ごめん。行き成り抱きついたら嫌だったよな」
「い、いえ、そんなことは……」
一刀様は、私が嫌がっていると思ったのか直ぐに抱くのを止めてしまった。
「あっ!そうだ」
何かを思い出したのか私の顔を見て一刀様は、ニッコリと笑うと思いもよらない言葉を掛けてくださいました。
「この後何も無いようなら何処か行ってみないか?」
「……は?今、何と仰いましたか?」
「何処かに出かけないかって言ったんだけど……もしかして忙しいのか?」
「い、いいえ!全然!まったく持って忙しく有りません!」
「そ、そうか、なら良かったよ」
か、一刀様とデートが出来る!こんな嬉しい事はない!……はっ!わ、私は今汗臭く無いだろうか?!
さっきまで、鍛錬をしていたのだ、汗もかいてしまっているのは明白だ。
このような姿で一刀様とデートなぞ出来る訳がない!一刀様が気にしなくても、私が気にするのだ!
「あ、あの、一刀様?少々着替えてきたいのですが……」
「ああ、構わないよ。愛紗も鍛錬で疲れてるだろうから、朝食の後、城門の前で待ち合わせにでもしようか」
「は、はい!それで構いません!」
「それじゃ、後でね」
一刀様は笑顔で手を振り中庭から出てゆかれました。
「こうしてはおれん!早く厨房へ行き湯を貰わなくては!」
私は愛刀を担ぎ急ぎ城へと戻った。
「失礼するぞ」
「あら、愛紗じゃない」
「雪蓮殿、なぜこのような場所に?」
厨房に入るとそこには何故か雪蓮殿が居た。
「ん~?酒の肴を探しにね~♪」
「……医者に止められているのではなかったのですか?」
「冥琳見たいな事言わないでよ。別にちょっとくらいいいじゃない」
このお方は本当に自由奔放なお人だ。
こんなおちゃらけてはいるが、戦場になれば率先して先頭に立ち、いくつもの戦場を駆け抜けていたのだ。
だが、魏の一部の兵により毒を受け倒れてしまった。
今は大分、力は戻ってきているようだが、まだ以前のような力はないらしい。
元気な時に、一度は手合わせを願いたかったな……
「ところで愛紗はどうしたの?あなたも何か摘み食いにきたの?」
「貴女と同じにしないで頂きたい。私は少々湯を貰いにきたのだ」
「お湯?なんで?」
「た、鍛錬で汗をかいたので湯で拭おうと思ったのだ」
「ふ~ん……それだけ?」
「っ!そ、そそそれ以外に何があるというのだ!」
私は思わず顔を赤くして否定した。
な、なぜ分かったのだ?!い、いや、雪蓮殿が知っているわけが……
「あれ?愛紗知らないの?」
「な、なにがですか?」
「今お風呂は入れるわよ」
「へ?なぜ朝早くにお風呂が焚かれているのですか?」
「それはね?一度やってみたかったからよ♪」
「……」
「だから酒の肴探してるんじゃない。ほらほら、愛紗も手伝いなさいよ」
「はぁ~」
「なによ、その溜め息は。いいから冥琳に見つかる前に「私に見つかる前に、なんだ?」あ、あら~。冥琳、おはよ~」
「冥琳殿。おはようございます」
「ああ、おはよう。それで雪蓮?私に見つかる前に、なんだって?」
「な、なんでもないわよ~。ちょっと散歩にね」
「そうか。お前は、散歩で厨房に来て酒の肴を探す癖があったのか」
「べ、別にいいじゃない。飲みすぎなければいいって華陀に言われてるんだから」
「はぁ……。お前の飲み過ぎないは常人だと『飲み過ぎ』なんだがな」
「そんなことないわよ。ねえ愛紗?」
「ええ?!わ、私に聞かれて困ります。第一、私はそんなにお酒は呑めないので……」
「そこは嘘でも頷いとけばいいのよ」
あ、相変わらず無茶苦茶なお人だ……
「はぁ、もう朝餉の時間だ行くぞ」
「ああん!冥琳のいけず~」
「……」
「わ、わかったわよ。そんな顔して睨まないでよ。行きます。行きますよ~」
雪蓮殿は冥琳殿に睨まれて渋々と言った感じで厨房を後にした。
「大変ですね。冥琳殿」
「ん?ああ、いつもの事だ、もう慣れたさ。それより、雪蓮から聞いたかもしれないが風呂を焚いてある。鍛錬の後なのだろ?さっぱりして来てはどうだ?」
「では、お言葉に甘えて。入らさせて頂きます。それにしてもなぜ朝から風呂を?」
「急に雪蓮が入りたいとごねたのだ。まったく、私も少し甘やかしすぎたか……」
そう呟く冥琳殿でしたが、お顔はとても穏やかに微笑んでいました。
――しゅる、しゅる
衣服を脱ぎ、籠の中に入れる。
「人の気配は無いが私だけなのだろうか?」
浴場に行ってみると思った通り誰も居なかった。
――ちゃぷん
「ふぅ、朝に入る風呂もいいものだな」
浴槽に浸かりながら気持ち良さから溜め息が出た。
「そ、そうだ……い、一応しっかり洗っておかねば……い、一応だぞ?!」
誰も居ない風呂場で頬を赤くして言い訳がましく独り言を呟く。
浴槽から出て手拭でしっかりと体を擦る。
「んっ……また胸が大きくなった気がするが気のせいだろうか……」
自分の胸を持ち上げて軽く揺すってみる。
「はぁ、これ以上大きくなられては戦闘に支障が出てしまうな……」
だが唯一、私が女だと自覚できる部分が無くなってしまうと女としての魅力がまったく無くなってしまうだろう。
「それではもう一刀様のお傍に居られないかもしれないな」
一刀様ならそんな事は無いと言ってくださるだろうが、やはり小さいより大きい方が一刀様も喜ぶのではないだろうか……
一刀様は、お優しい方だ、居て欲しい時には傍に居てくださる。そして、いつでも笑顔で私達を見守っていてくださる。
そんな一刀様だったからこそ、以前の外史では鈴々や朱里、星、翠に紫苑、皆が集まり、強大な敵にも立ち向かう事ができたのだ。
だが、この外史では私の主、ご主人様ではない。今の主は桃香様だ。私は桃香様の理想に感銘を受け主と仰いだのだ。
そこでふと、ある疑問が浮かんだ。
なぜ私は桃香様をご主人様と呼ばないのだろうかっと。
主とは呼んだ事はあってもご主人様とは一度も呼んだことはない。
桃香様なら、そんな堅苦しく呼ばないで欲しいと言うだろうが、最初のうちはご主人様と呼んでも居てもおかしくは無い。
だが、そんな事は一度も無かった。
「私が桃香様を認めていない?いや、そんな事はない。私は桃香様を認め、共に歩むと鈴々と共に桃園で誓ったのだ」
考えてみても判らぬ……そう言えば朱里も言っていたな……
『桃香様ですか?そうですね。桃香様はご主人様という感じより、頼りないお姉さんって感じがしますね。だから、力を貸してあげたいなんて思うのかもしれませんが……』
確かに、桃香様はどこか危なっかしく目が離せないところがある。
「ふふっ……」
一瞬、桃香様が子供たちに囲まれて困った顔をして私に助けを求める光景を思い浮かべて微笑んでしまった。
「さて、もう一度、湯船に浸かりあがるとするか」
私は、さっきまで考えていた事を頭の片隅に留め、この後待っている一刀様とのデートに思いを馳せた。
――ガラガラ
「ああ、いい湯だった。朝風呂もいいものだな……」
浴場から上がり脱衣場へ戻って戻ってきた。
「さて、着替えて朝餉を食べ……ん?」
そこである異変に気がついた。
「……私の服が、ない……」
そんなはずは無い。確かに私はこの籠に!……ん?何か入っているぞ?
私は、自分の服が入っていた籠に何か違うものが入っているのに気がつき取り出してみた。
「これは、服?し、しかし何だこの可愛らしい服は!」
そこにあったのは薄い緑色の天の世界で例えるならわんぴぃすなる物に似ていた。
「なぜ、私の服の変わりにこれが?しかし、私がこんな服似合う訳がない……」
無骨者な私にはまさに、孫にも衣装だ。
「くしゅん!~~っ!し、しかしこのままでは風邪を引いてしまう……」
服を手に取りじっと見つめる。
「致し方ない。この服を着て部屋に戻り着替ええる事にしよう」
私は急ぎ着替え誰にも見つからないように部屋へと向う事にした。
「お待たせ愛紗!待たせちゃったか、な……」
な、なぜこんなことに……
「い、いいえ。私も今来たところですから……」
ああ、これは違うのです一刀様!これには深いわけがぁ!
あれは風呂場から出た後のことだった……
……
…………
………………
「とにかく、誰にも見つからずに部屋に行かなくては。こんな恥ずかしい恰好を誰かに見られるわけにいかん」
私はあたりを警戒しながら部屋に向うべく廊下を進んでいた。
あともう少しだ……
その一瞬の気の緩みがいけなかった。
「あ~いしゃ♪」
「ひゃぁぁぁあああっ!」
行き成り後ろから抱きつかれて変な悲鳴を上げてしまった。
「うわ、悲鳴上げるなんてひっどいな~。ちょっと傷ついちゃったよ」
「ゆ、ゆゆ優未殿!なぜこんな所に?!」
「なんでって、そりゃ~自分の陣営だし?居て当たり前だよね?」
「そ、そういう意味ではなくてだな……そ、そう!こっちは優未殿の部屋と反対ではないか!」
頭を働かせてなんとか不自然の無い言い訳を優未殿に伝える。
「ん~、朝食前の散歩?」
「なぜ疑問系なのです」
「まあまあ、細かい事は気にしない気にしない」
「……」
「そ・れ・よ・り、な~んか可愛い服着てるね」
「っ!こ、これはだな!これには理由があって!」
「うんうん!判る判るみなまで言うな!」
優未殿はこれ以上言わなくても判ると頷き返してきた。よかったこれなら何とか……
「おめかしして一刀君と出かけるんだよね」
「ええ、そうな……っ?!ち、違います!」
「え?違うの?」
「ああっ!ち、違いませんが違います!」
ああ、なんと説明すればよいのだろう!
慌ててしまっている今の状態で、私はまともな返答を返すことが出来ないでいた。
「だ、だから?この恰好は掏り返られていてだな!」
「??良くわからないけどさ。いいの?」
「な、何がだ?」
「時間」
「……へ?……し、しまったぁぁぁっ!このままでは遅れてしまう!ああぁ、だがこんな恰好で一刀様の前に出るなど。しかし、遅れてしまうのも不味い!どうすればよいのだ!」
「ん~、別に辺じゃないと思うけど。むしろ可愛い?」
「だからなぜ疑問系なのだ!ええい、仕方ない!こうなればなるようになれだ!」
「にひひ、いってらっしゃ~い♪」
こうして私は、優未殿に見送られて城門前へと急いだ。
……
…………
………………
ああ、やっぱり遅れてでも着替えて来れば良かった……
「ん~」
「あ、あのなんでしょうか一刀様?」
一刀様は唸りながら私を見ていた。
「うん。やっぱり、愛紗はこういう恰好も可愛くていいね!」
「っ?!?!」
か、一刀様は今なんと仰ったのだ?可愛い?
「ご、ご冗談を止めください。私のような無骨者にこのような恰好は似合いませぬ」
「そんな事ないよ!愛紗は素がいいんだからもっと可愛らしい服を着たほうがいいと思うよ」
「~~っあ、ありがとうございます……」
一刀様の笑顔とまっすぐな言葉に私は恥ずかしくなり俯きながらお礼を伝えた。
「それじゃ、行こうか」
一刀様は、手と差し出してきた。こ、これは手を繋ごうと言う事でよいのか?
私はおずおずと一刀様の手のひらに自分の手を乗せて軽く握ると一刀様も握り返してきてくれた。
手から伝わってくる一刀様の温もりに恥ずかしながらもとても幸せな気分になった。
「まずは何処に行こうか」
「……」
ああ、みなが私を物珍しそうに見ている。ある者は呆け。またある者は笑ってさえいた。
やっぱり私がこのような恰好をしても一刀様には似合わないのだ……
「愛紗、愛紗!」
「は、はい?!」
「もう、どうしたんだ愛紗?」
どうやら、いつの間にか私は手を離して立ち止まっていたらしい。
「いえ、別になんでもありませんよ。ちょっと考え事をしていただけです」
一刀様に悟られぬように笑顔で答える。
「……ならいいんだけど」
「はい、それでなんでしょうか?」
「ああ、どこか行きたい所は無いのかなって思ってさ」
「ど、どこでも、一刀様が行きたい場所でしたら」
「ははは、それもいいんだけどさ。まずは愛紗の行きたい所は無いの?」
「とくにはありま(くぅ~)……」
「えっと……」
「~~~っ!」
な、なんでこんな時に腹がなるのだ!
「朝飯、食べてこなかったのか?」
「それが、その……色々ありまして、食べる暇が無く」
ああ、一刀様に幻滅されてしまった……
「そっか、ならお茶屋さんに入って何か食べようか。俺も朝飯足りなくてさもう少し食べたかったんだよね」
一刀様は私を気遣うようにご自身もお腹が空いていた等と判りやすい嘘をついた。
「か、一刀様。私を気にせずとも!」
「いいからいいから、ちょっと歩くけど美味しいお茶を出してくれるところがあるんだ。こっちだよ!」
「あっ!か、一刀様?!」
一刀様は私の手を取り少し早歩きで歩き出した。
「一刀様、私なら平気ですので」
「そんなわけには行かないよ。それに俺もお腹が空いてるっていっただろ?愛紗は空腹の俺を歩き回らせるつもりか?」
「うっ……卑怯ですぞ一刀様。そのように言われれば拒否できないではありませんか」
「うん、そう思ったからそう言ったんだよ。ごめんね」
「一刀様はお人が悪いです……」
ですが、そんな気遣いが出来る一刀様を私は大好きなのです。
前を歩く一刀様に聞こえないように呟き、握られた手を見て頬を赤くするのだった。
暫く歩くと一刀様は立ち止まった。
「ここだよ。ここのお茶と胡麻団子が絶品なんだよ!」
一刀様は目を輝かせて力説するので私は苦笑いを浮かべていた。
確かに店は落ち着きのある雰囲気を漂わせ、他の店とは一線を引いていた。
「確かに良い雰囲気ですが、絶品と言う割には人が少ないですね」
「ああ、ここはさ店主が頑固者でね気に食わない客には食べさせてくれないんだ」
「そ、それでやっていけるのですか?」
「ん~、まあ、頑固者って言っても根は優しい人だからね。気が合えば気さくなおっちゃんだよ」
「ふん、頑固者で悪かったな、身遣い」
「なんだよ、おっちゃん。ちゃんと言い直したじゃないか、気さくなおっちゃんって」
「はんっ!おべっか使ったってそうはいかねえぞ。さっさと座りやがれ」
「はいはい。それじゃ愛紗座ろうか」
「え?あ、はあ」
私は、店の店主にあっけに取られ、一刀様に素っ気無い返事をしてしまった。
「なんでぇ、今日は彼女付きか?」
「かの、じょぉおっ!?」
「ははは、そんなもんかな」
「えええっ!?か、一刀様っ!?」
「けっ、御遣いも人の子ってか?」
「はははっ!元々俺は人間だよ」
いつものやり取りなのか一刀様は嫌な顔せず店の店主と会話をしていた。私はというと一刀様の正面で顔を赤くして俯いていた。
「いつものでいいんだろ?」
「うん。よろしく」
「ちょいと待ってな」
話をし終わったのか店主は店の奥へと姿を消していった。
「あ、あの一刀様?」
「ん?どうかしたのか?」
「い、いえ。あの……」
「ん?」
一刀様は私が話すのをじっと待っていてくださっています。
「あ、あの、かの「ほらよ。胡麻団子お待ち」……ぁぅ」
「おっ!待ってました!」
「へ、どうせ、城でいいもん食ってんだろ?」
「そんな事ないよ。おっちゃんの胡麻団子は絶品だよ!」
「まっ、そう言う事にしておいてやらぁな。ゆっくりしていけよ」
「ありがとう!あっと、それで愛紗は何か言おうとしてたよな」
「い、いえ。なんでもありません……」
店主に言葉を遮られてしまい。一刀様に伝える機会を見逃してしまった……
「ん~っ!餡が甘さ控えめでやっぱり美味しいな。愛紗も食べてみなよ」
「は、はい……あむ……もぐ、もぐ……これは、甘さが程よくて美味しいですね」
「だろ?しかも、出来立てだからさサクサクでほくほくで美味しいんだよ」
「ええ。ですが、一刀様は相変わらず政務をサボって街を出歩いているのですね」
「っ!げほっ!げほっ!そ、そんな事ないぞ!ちゃん政務も!」
「しているのですか?」
「……お、怒られない程度には……」
「はぁ」
「うぅ……ちゃんと夜だって亞沙と勉強会だってしてるのに」
――ぴくっ
今、聞き捨てなら無い言葉が出てきたような……夜の勉強会、ですと?しかも、あの呂蒙、だと?!
「……一刀様?」
「ん?どうした愛紗?」
「先程、勉強会と仰っていましたが」
「え?ああ、まだまだ、覚えないといけない事が多くあるからね。亞沙と一緒に立派な軍師になる為に勉強中なんだ」
一刀様は、嬉しそうにお話になるのを私は黙って聞いていた。
確かに、私は蜀の将で、一刀様は呉の将だ。だが、だからと言って二人きりの時に他の女の話をされるのは少々、いや、かなり気分がいいものではない。ましてやあの呂蒙!
……な、なぜ私は呂蒙、いや。亞沙だったな真名を交換したのだから。その亞沙にこんなにも怒りを感じるのだろう?あんなにいい娘ではないか。
「愛紗?」
「え?あ、はい。なんでしょうか」
「なんか怖い顔してるけど、胡麻団子、美味しくなかったか?」
「いいえ!そんな事は有りません。とても美味しいです!」
一刀様は何を勘違いしたのか私が不機嫌だったのを胡麻団子が美味しくなかったからと勘違いをしていた。
「んらいいんだけど。それじゃ、なんでそんな怖い顔してたんだ?」
「……それは一刀様が悪いんですっ!」
「へっ?」
「ふんっ!あむ……」
そうです。全部一刀様が悪いんです。私の機嫌が悪いのも、女性に甘いのも、私が一刀様を好きになってしまったのも全て一刀様が悪いんです!
私は一刀様に目もくれず胡麻団子を口に運んでいきました。
「えっと……俺の胡麻団子も食べる?」
「……あむっ!」
「ああっ!」
私は皿に乗っていた胡麻団子ではなく、一刀様が手に持っていた食べかけの胡麻団子を口を大きく開けて一口で食べてしまった。
呆気に取られる一刀様だったが、なぜか次第に笑顔になってゆかれた。
「……何が面白いのですか?」
「いや、可愛いなって思って」
「なっ!」
私は怒っていたにも拘らず、思わず頬を赤くして驚いてしまった。
「な、何を言い出すのですか急に!わ、私は怒っていたのですよっ?!」
「そうだね。でも……」
笑顔で手を差し伸べてきた。
えっ!か、一刀様?!一体何をするのですか!
「~~っ!」
「ほら、取れた」
「……え?」
一刀様の手にはなぜか、餡がついていた。
「……っ?!」
思わず一刀様が触れた頬に自分の手を添えてしまった。
「はは、ほっぺに餡をつけるなんて愛紗は可愛いな。あむ」
「~~~っ!?!?」
一刀様は笑顔であろう事か私の頬についていた餡をご自分の口に入れてしまわれた。
「か、かず、一刀様っ?!」
「え?どうした?」
「ど、どうしたではありません!」
先ほどまで不機嫌だった私はもう何がなんだか分からなくなってしまった。
「わ、わわ私の頬についた餡を食べるなど汚いではありませんか!」
「そうかな?」
「そうです!」
「でもさ、愛紗だって俺の胡麻団子食べただろ?おあいこじゃないか」
「……え?……っ!あ、あああっ!あああああああっ!!!」
そうだ!私は一刀様の食べかけの胡麻団子を、胡麻団子をぉぉぉおおおっ?!?!
先ほど自分のした行動を思い出し、一気に顔の温度が上昇した。
「あわわわわっ!!!」
「お、落ち着け愛紗。深呼吸だ」
「そ、そそそうですね。すーはーすーはー」
「それじゃ、過呼吸になっちゃうよ!はい、吸ってー」
「すー」
「吐いてー」
「はぁ~」
「もう一度吸って」
「すー」
「吸ってー」
「すー」
「もっと吸って」
「す、すーーっ……ぷはっ!む、無理です一刀様!」
「はははっ!でも落ち着けただろ?」
「た、たしかにそうですがっ!」
「ごほんっ!」
「「え?」」
「御遣い様よぉ、うちは食い物食べるところで、女とイチャつくところじゃねえぞ。イチャつくなら他でやりな!」
「い、イチャつく?!い、いや、私は!」
「あ~、あ~うっさいうっさい!いいからでてけっ!」
「ちょっ!お、おっちゃん!」
店主はまだ皿に残る胡麻団子を一刀様に手渡し、店から追いやってしまった。
「まったく……ああ、それと御遣いさんよぉ」
「え?」
「また来いよ」
店主は一言伝えると気恥ずかしくなたのかそそくさと店の奥へと入っていってしまった。
「いや~、参ったな」
「まったく、一刀様があのようなことをしなければ追い出されることは無かったのですぞ」
「そうかな~?愛紗だって原因かもしれないだろ?」
「な、なぜ私が原因なのですか!」
「だって、俺のご「わーわーわーっ!それ以上言わないでください!」あ、ああ」
一刀様に先ほどの私の行為を言われてしまいそうになり慌てて止めさせた。
ああ~……思い出しただけで顔が熱くなってきてしまう……
「さぁって……これからどうするかな~」
一刀様はそんな私を気にもせず、これからの事を考えているようだった。
「愛紗は何処か行きたいところはあるか?」
「え?あ、はい。そうですね……で、では、少々街中を歩きませんか?」
「別にかまわないけど。そんなのでいいのか?」
「はい」
よく考えれば一刀様とゆっくりと街を歩き回ったことがなかった丁度良かった。
「そっか。なら少し街を歩こうか」
「はいっ!」
私は一刀様の腕を絡める。少々大胆だっただろうか?
見上げると一刀様は驚いた顔をしていたが直ぐに微笑んでいただけた。
「今日は随分と積極的だね愛紗」
「そ、その……知っている者が見ていないと思うと少し勇気が出せるというか……そ、それでも恥ずかしいのですぞっ!」
「はははっ。でも、こんなに可愛い格好してるんだから愛紗ってわからないかもね」
「か、可愛いっ?!」
今日何度目の可愛いだろう。私はその度に顔を赤くして戸惑ってしまっている。
「お、お止めください一刀様。恥ずかしいではありませんか」
「ははっ!赤くしてる顔も可愛いね」
「~~~っ!」
笑顔でまた可愛いといわれ思わず顔を背けてしまった。
うぅ~卑怯ですぞ一刀様……
先ほどから顔の火照りが取れず、一刀様の顔を見ることが出来ないでいた。
「愛紗?」
「……」
「お~い、愛紗」
「っ?!は、はい!なんでしょうか!」
「いや、ボーっとしてるみたいだったから面白くないのかなって思って」
「い、いいえ!とんでもありません!私は一刀様と居るだけで幸せな気持ちです!」
「あ、そ、そう。ならいいんだけどさ」
「え、ええ……はっ!わ、私は今、一刀様になんと……」
『私は一刀様と居るだけで幸せな気持ちです!居るだけで幸せな気持ちです……幸せな気持ちです……』
「~~~~~っ?!?!はぅ!」
「うぉ!愛紗?どうかしたのか?」
「へ?!い、いえ!なんでもありませんぞ!お気になさらずに!」
「で、でも……」
「大丈夫です!お気になさらずに!」
「お、おう……わかった」
うぅ~本当は大丈夫じゃないのです一刀様……
「……」
「っ!か、一刀様?!?!」
何を思ったのか一刀様は腕を解き私の肩に腕を回してきました。
「あ、あああのあの!一刀様っ!何を……」
「……」
一刀様は何も言わずずっと前を向いていました。心なしか一刀様の顔も少し赤くなっているように見受けられました。
「……」
「……」
その後は、お互い何も喋らずにただ歩き続けていました。
あれからどれくらい経っただろうか……未だに一刀様は私の肩に腕を回し一言も喋ってこられない。私も緊張の余り一言も一刀様にお声をかけていない始末だ。
何か話さなければ……
「「あ、あの……っ!」」
「「一刀様(愛紗)からどうぞ……あっ」」
うぅ~、なんでこんなに被ってしまうのだ……
言葉が被ることにより余計にお声をかけ辛くなってしまった。
「……」
「……あのさ」
「っ!は、はい!」
そのまま暫く無言で歩き続けていると一刀様が話しかけてきてくださった。
「街外れまできちゃったけどどうしようか」
「え?……あっ」
一刀様のお言葉に周りを見てみると確かに外周にある城壁の門まで来てしまっていた。
「……ぷっ」
「え?」
「あははははっ!」
「ど、どうされたのですか一刀様?!」
急に一刀様は笑い出し私は戸惑ってしまった。
「い、いや。何やってるんだろうと思ったらさ。急におかしくなってきてつい笑っちゃったんだよ」
「は、はぁ……」
「よし!愛紗、このまま川原まで行ってみようか」
「ええ?!で、ですが街から出てもよろしいのですか?」
「大丈夫だよ。それにそんなに遠くないからさ。嫌なら強制はしないけど、どうする?」
「私が一刀様の提案を断れるはずがありません。是非ご一緒させてください」
「決まりだね。それじゃ行こうか」
「はいっ!」
そう言うと一刀様は笑顔で手を差し出してきたので私もそれに答えるように一刀様の手を握り歩き出した。
「そう言えばさ」
「はい?」
「桃香に言われたんだ」
「何をですか?」
「蜀に遊びに来てくれってさ」
「桃香様がそんなことを……」
「ああ、あの時は嬉しかったな」
正直、一刀様の笑顔が私には辛かった……別に桃香様のことを話している一刀様に嫉妬をしているわけではない。ただ……
「……一刀様」
「ん?」
「一刀様にお伝えしなればいけないことがあります」
言うつもりは無かった……だが、知って貰わねばならない。蜀の事を、私たちの事を……これで嫌われてしまっても仕方の無いこと、桃香様に叱られようと言わずに入られなかった。
「実は呉との同盟を白紙にしようという話が出ているのです」
「えっ……」
一刀様のお顔は驚き、まさかと言いたげな雰囲気を漂わせていました。
「で、でもなんでだ?別に不利益になるようなことは今まで無かっただろ?」
「はい……今までは、ですが」
「今まではって……原因は一体なんなんだ?!」
「原因は、しぇ、孫策殿の暗殺です」
「あ、暗殺って……雪蓮は生きているじゃないか!」
「はい。ですが、私達に報じられた報告はただそれだけです。それにこの時代、毒矢を受けて生きている可能性は限りなく低いのです。私も雪蓮殿が毒矢により倒れられたと聞いた時は助からないだろうと思いましたし……」
「それで……桃香は、呉との同盟を白紙にしようといいだしたのか?」
「っ!ち、違います!桃香様は決してそんな事は仰ってはおりません!ですが、現状を鑑みて白紙にした方が良いと提案が出たのは事実です」
「それを言ったのは?諸葛亮さん、かな?」
「……」
「そっか……」
一刀様は私が何も言わなかった事を肯定と受け取ったのだろう、一言そう呟くと無言で空を見上げていらした。
「あ、あの一刀様?」
「え?なに?」
「お怒りにはならないのですか?」
「どうして?」
「どうしてと仰られても……同盟を破棄されるかもしれないのですよ?そうなれば、両国は敵同士になるかもしれないというのに」
「でも、雪蓮は無事だったんだしその話も無くなるかもしれないだろ?」
「そ、そうかもしれませんが……なんとも思わないのですか?」
「ん~……」
一刀様は腕を組んで悩みだしました。
「……別に?」
「は?」
「変な話さ。俺には話が大きすぎてピンッと来ないんだよね。ただ、愛紗や桃香たちと敵同士になりたくはないと思ってるけどね」
一刀様は笑顔でお答えになった。私達と敵同士にはなりたくないと。
「私も一刀様とは敵同士にはなりたくないです」
握られた手に力を入れると一刀様も握り返してくださった。
「ついたよ」
「これは……」
森を抜けるとそこに現れたのは綺麗な湖だった。
「綺麗なところですね。それに……すぅー、はぁー。空気も幾分か澄んでいるように感じられます」
「ああ。ここは俺のお気に入りの場所なんだ。明命との部隊訓練の時に偶然見つけたんだ」
「明命殿との部隊訓練?」
「あ、ああ……あれは壮絶だったな。今思い出しても震えが止まらないよ……」
一刀様は自分をお抱きになり震えだした。きっと激しい戦いを思い出しになり体が震えているのだろう。
「っと。それはいいとして、こっちに来てくれるかな?時間的に丁度いいと思うんだ」
「丁度いい?何か起こるのですか?」
「それは起きてからのお楽しみだよ」
一刀様は笑顔で答えるだけで教えてはくださいませんでした。
……
…………
………………
「さあ、着いたよ」
一刀様に案内された場所は何の変哲もない湖の畔でした。ここで一体何が起こるというのだろうか?
「あ、あの一刀様?一体ここで何が?」
「直ぐにわかるよ」
笑顔で答えた一刀様はそのまま湖畔を見つめてしまいました。私も一刀様に習い湖畔を見つめることにした。
「……」
「……」
あれから無言で見つめること一つ時(約10分)過ぎた時だった。
「っ!こ、これは……」
「凄いだろ?丁度日が落ちる時にこの湖に沈む感じになるんだ」
「ええ……」
こんな綺麗な光景は見た事がない。いや、他にも綺麗な光景は見てきたがこれほどまでに神秘的な光景は数えるほどだろう。
「愛紗……」
「なんでしょうか、一刀さ……んっ?!」
……え?い、今、何が起きて?
私の唇に何か温かいものが当たっている、そして目の前には一刀様のお顔が……
「んっ!んん~~~~っ?!?!」
アタフタアタフタッ!
な、なな、な~~~~~っ!!!!!
両手をバタバタと振り慌てる私だったのだが、次第に暴れるのを止めてしまった。
一刀様は両手でしっかりと私の肩を掴み離してくれそうにはなく、力ずくで引き剥がすことも出来たのだがすることが出来なかった。
「んっ……ちゅっ、ふぱっ……か、一刀さっ……んんっ!……ちゅぷっ」
一刀様が口を離すと私との間で糸が伸びそれが沈む太陽に照らされて黄金色に輝いていた。
「~~~~っ」
それを見たとたん私は恥ずかしくなり頬を赤くして一刀様から目線を外しました。
「ひ、卑怯ですぞ一刀様……行き成り口づけなど!」
「い、いや~。愛紗がとても綺麗だったからつい……ごめん」
「あ、謝らないでいただきたい!そ、その……私も嬉しかったのですから」
「……え?」
「~~~~っ!な、なんでもありません!」
自分で言ったことにさらに頬を赤くし、少し怒鳴る感じで答えてしまった。
な、何をしているのだ私は!別に怒鳴ることなどないではないか!
「あ、あああの一刀様ぁ?!……あぅ」
緊張してなのか語尾で声が裏返ってしまった。うぅ~恥ずかしい……
「あの、えっと……なにかな?」
「ふぇ?あ、ああそ、そうです!」
恥ずかしさの余り頬に手をあって後ろを向いていると一刀様に呼ばれたことにまた変な声を出してしまった。
「あ、あのですね。そ、その……私を……ゴニョゴニョ……」
「え?なに?聞こえなかったんだけど」
「あぅ……で、ですから、私をだ……さい」
「え?」
「~~~~っ!で、ですから!私を抱いてください!申し上げているのです!」
「え……えええっ?!あ、愛紗、さん?何を言っているのでしょうか?」
「な、何度も言わせないでください……私も恥ずかしいのですから……」
「い、いや、でも……お、俺なんかでいいのか?」
「一刀様だからよいのです……それとも私のような無骨者ではお嫌でしょうか?」
「そんなわけないだろ?逆に俺みたいな凡人で良いのかって思うくらいだよ」
「ふふっ、何を今更……」
「えっと……あははっ」
一刀様は照れているのかしきりに頬を掻き、苦笑いを浮かべていました。
「それじゃ……おいで愛紗……」
「はい……一刀様……」
そして私は、夕暮れの湖畔で一刀様に抱いていただいた……
「ごめん、愛紗」
「あ、謝らないで頂きたい……そ、その……わ、私がお願いしたのですから」
今、私は一刀様に抱き抱えられて帰路についていた。
原因は……そ、その……腰を抜かしてしまったのだ……~~~~~っ!!
「うん、それでもごめん。俺がもっと愛紗に気を使ってあげればよかったのに……」
「良いのです。私も嬉しかったのですから……」
「そ、そうか?」
「は、はい……」
「……」
「……」
日はとっくに沈み空には星が輝いていた。
「みんな心配してないかな」
「そうですね。早く戻ったほうが良いかもしれませんね」
「ああ、お腹も空いたしね。愛紗はお腹空いてないのか?」
「いえ、私は大丈(くぅ~~)~~~っ!!」
「はははっ、体は正直だね」
「あぅ……」
むぅ……なんでこんな時に鳴るのだ私のお腹よ!一刀様に笑われてしまったではないか!
「可愛いな愛紗は……ちゅっ」
「な、な、な~~~っ!?!?!」
――ボンッ!
一刀様の不意打ちのキスに恥ずかしさと嬉しさから頭から煙が出てしまった。
「ちょっ!あ、愛紗、大丈夫か!」
「ひゃ、ひゃい……なんとか……」
既に呂律が回ってない時点で大丈夫じゃないのだが、一刀様を心配させてはならないと思い笑顔(多分引き攣っていただろうが)で伝えた。
暫く抱き抱えられていると城が見えてきた。
「一刀様、ここら辺で降ろしてください」
「え?でも、大丈夫なのか?」
「はい。それに、このまま抱き抱えられて城に戻るのは少々恥ずかしいですから」
「わかったよ。でも、危なくなったらいつでも俺に掴まっていいからね」
「はい。ありがとうございます。一刀様」
一刀様は、私を地面に降ろすと私の横に立ち気遣いながら歩いてくださいました。
「……っ!」
「おっとっ!大丈夫か愛紗?」
不意に倒れそうになった私を一刀様が肩を掴み支えて下さった。
「はい、大丈夫です」
「ならいいけど……そうだっ!」
「か、一刀様っ!な、なにを!」
「ん?こうしとけば大丈夫だろ?」
笑顔で答える一刀様でしたが私は繋がれた手と一刀様を何度も往復していました。
「それじゃ行こうか」
「えっ!あっ……」
一刀様に引っ張られる形で私は歩き出した。
「……」
最初は途惑いつつも繋がれた手から一刀様の温もりを感じて徐々にだが落ち着いてきた時だった。
「はぁい。随分と遅かったわね一刀?」
「おっかえり~、一刀君!それに愛紗も!」
城門の前で二つの影が見えたかと思うと明るい声で話しかけてきたのは雪蓮殿と優未殿でした。
「ただいま。遅くなってごめん」
「別にいいのよ。もともと非番だったんでしょ?だったら冥琳も文句なんて言わないわよ」
「うんうん!雪蓮なんて非番じゃなくても街に逃げ出したりしてるしね」
「ちょっと優未?あなただって人の事言えないでしょ?」
「えへへ。細かい事は気にしちゃダメだよ雪蓮!」
「まったく……それよりあなた達、お腹空いてないの?」
「実はペコペコなんだよね」
「でしょうね。もう作ってあるから着いてらっしゃ」
「ああ、ありがとう雪蓮」
「ありがとうございます。雪蓮殿」
「ふふっ別にいいのよ」
「?」
振り向き様の雪蓮殿に違和感を感じたのだが気のせいだろうか?
「愛紗、どうかしたの?一刀君たちもう行っちゃったよ?」
「いえ、なんでもありません。私達も向いましょう」
「そだね~。楽しくなりそう♪」
「何か仰いましたか?」
「ん~?独り言だよ独り言♪」
むぅ……なんだか嫌な予感がするのだが……兎に角気をつけてみるか。
私は警戒しながらも優未殿の後を着いていった。
「おまたせ、華琳。連れてきたわよ~」
「遅いわよ。人に料理を作らせておいて何処に行ってたのよ」
部屋に入ると其処には桃香様と華琳殿が居られた。何故かは知らないがどうやら華琳殿がこの料理を作ったらしい。
「うぉ!なんだこりゃ?すごいご馳走じゃないか」
一刀様も机に並べられた料理に驚いておられた。
「格別の肴を持ってきてあげたんだからいいじゃない」
「はぁ~。わかったわよ……ほら、一刀に愛紗。料理が冷めてしまうわ早く座りなさい」
「あ、ああ」
「わかりました」
華琳殿は雪蓮殿に対して溜め息を着いた後、一刀様と私に向かい席に着くように諭した。……それにして肴とはなんのことだ?この料理ではないのか?
「ほらほら愛紗ちゃんも早く座ろうよ」
席の横で料理を見て立っている私に桃香様が笑顔で云ってきた。
「は、はい」
私は途惑いながらも席に着く。すると……
――カチャッ
「「え?」」
音のした方に振り返るとなんと優未殿が扉に鍵をかけていた。
「さてっと……ああ、一刀と愛紗は食べてていいわよ。私達は呑んでるから♪」
「あ、あの雪蓮?優未が扉に鍵かけたんだけどなんでかな?」
「え?ああ、気にしなくていいわよ。逃がさないようにしてるだけだから♪」
「誰を?」
「もちろん、あなた達よ。一刀、それに愛紗♪」
「「は?」」
「うふふ~♪二人で何処に行ってたのかしら?教えて欲しいわね?」
「な、なな、何を言っているのかな雪蓮さん?あ、愛紗とは帰り道に偶然会っただけで一緒に居たわけでは……そ、そうだよな愛紗!」
「ええ?!は、はい。そうです。偶然です偶然!」
「ふ~ん。偶然なんだ……偶然らしいわよ優未?」
「偶然一緒に帰ってきたんだね一刀君と愛紗は」
「そ、そうなんだよ。いや~ビックリしたな~はは、あはははは……」
「だってよ華琳?」
「偶然なら仕方ないわね……んっ」
納得してくれたのか四人とも杯に注がれた酒を口に含んでいた。
「「ほっ……」」
私と一刀様は安心したように一息つくと食事に手をつけようとした……のだが。
「それじゃ、私が昼間に街中で一刀と愛紗を見たのは人違いだったって訳ね」
「「ぶっーーーーー!?!?!」」
「わわっ!あ、愛紗ちゃん。お行事悪いよ?一刀さんも!」
「けほっ!けほっ!す、すいませんでした桃香様」
「ふふふ♪何を慌てているのかしら?愛紗、それに一刀も」
華琳殿は、足を組み椅子の肘宛に肘を当て手の甲に顎を乗せて不適に微笑んでいた。
「あれ?それじゃ私も見間違いだったのかな?実は私も一刀君と愛紗が手を繋いで歩いてるところ見たんだよね~」
「「うぐっ……」」
「あら~?どうしたのかしら一刀?顔色が悪いわよ?」
「そ、そんな事ないぞ?」
「そう?ならいいけど……あっ!そうそう、私ね凄いの見ちゃったのよ一刀♪」
「な、なにかな?」
「ふふふっ、その前に聞きたい事があるんだけど……」
雪蓮殿は一瞬、私を見て目を細めて微笑むと一刀様に向き直りとんでもない事を言い出した。
「気持ちよかった?」
「へ?何が?」
「愛紗の中♪」
「ぶふっーーーーーーーーっ!!!!な、ななっ!」
「やん、一刀汚いわよ?」
――ガタッ!
「そ、そんなことより何言い出すんだよ!」
一刀様が慌てて立ち上がったせいで椅子が後ろに倒れてしまった。
「何って凄いの見ちゃったって言ったでしょ?」
「凄いのって……」
「一刀様、私を抱いてください!」
「愛紗、俺なんかでいいのか?」
「一刀様だからいいのです!」
「わかったよ愛紗……」
「一刀様……」
行き成り雪蓮殿と優未殿は見詰め合い演技をしだしたかと思うとこ、これはっ!!
「~~~~~~っ!?!?!?!?」
「ふえ~~……愛紗ちゃん、大胆だね」
「ちがっ!違うのです桃香様っ!」
「何が違うのよ。熱々だったわよね~優未?」
「うんうん。もうご飯五杯くらいいけるよ!」
「あわわわわっ……」
慌てる私の横で一刀様は固まっておられた。
「まったく、本当に種馬ね一刀は……私にはしなかったくせに……」
「「「「え?」」」」
「な、なんでもないわよ!」
今、華琳殿から信じられない言葉を聞いたような気がしたのだが……って、それよりも!
「な、なぜ知っておられるのですか!」
「なぜって。ねぇ~?」
雪蓮殿は目配せをすると頷く者もいれば苦笑いを浮かべる者もいた……っ!まさか……
「は、謀ったのですか?!」
「謀ったとは聞き捨てなら無いわね。私は桃香に相談されたから一肌脱いだだけよ。でもまさか行くところまで言っちゃうとわね~」
「うぐっ……」
あああ……穴があったら入りたい!
「ごめんね愛紗ちゃん。私が余計な事を言ったばっかりに」
「桃香様……」
「でもねでもね!愛紗ちゃん、なんだか私に遠慮してるみたいだったから……」
「ホント、いい主を持ったわね愛紗は……っといつまで立ち尽くしてるのよ一刀!」
「いてっ!な、何するんだよ雪蓮。痛いじゃないか」
「立ち尽くしてるのが悪いんでしょ?それで?愛紗はどうだったのよ?」
「ど、どうって……」
「気持ちよかったの?良くなかったの?どうなのよ~」
「そ、そんなこと言える訳が無いだろ?!」
「ちぇ~つまんないの……んんっ」
雪蓮殿は一刀殿にとんでもない事を聞きだそうとしていた……あぅ、思い出しただけで顔が熱くなってしまった。
「ふふっ。顔が赤いわよ愛紗?そんなに一刀が良かったのかしら?」
「んなっ!?なな、何を言い出すのですか華琳殿!」
「あら。一刀は気持ちよくしてくれなかったのね。可哀想に」
「なっ!そんなわけがあるか!一刀様は私を気持ちよくさせてくださったぞ!」
「あ、愛紗っ!」
「え?……あ、あああっ!!」
「ふふ、掛かったわね愛紗♪」
し、しまったっ!まんまと華琳殿の策にはまってしまった!
「ふふふ、容易いわね。関雲長、こんな簡単な策にはまるなんて」
「ぐっ!」
「まあまあ、さてっとこれで一刀に抱いてもらったのは私と愛紗と……「はいはい!私だよ~♪」優未の三人ね」
「ふ、ふんっ!別に一刀に抱いてもらわなくても結構よ」
「えっと、私は抱いてもらいたいかな~なんて……えへへ」
「なっ!桃香?!何を言い出すのよ」
「だって好きな人には抱いてもらいたいじゃないですか~華琳さんは違うんですか?」
「べ、別に?」
「まったくもう素直じゃないわね華琳は……それじゃ、華琳は放って置いて私達だけで楽しみましょうか?」
「賛成~♪」
「なっ!」
「「「え?え?え??」」」
雪蓮殿の提案に賛成をした優未殿。
華琳殿は驚きの顔を見せ、私達三人はというと状況についていけないでいた。
「あ、あなた達何を考えているのよ!」
「だって。あんなの見せ付けられたら女として黙って入られないじゃない?ねえ、優未」
「うんうん!あんなに激しいの見せ付けられちゃったらモンモンしちゃって眠れないよ!」
「ってことで~行くわよ一刀♪」
――ガシッ!
「え?え?ええ!?」
「か、一刀様!」
「ほらほら、愛紗もくるのよ」
「ちょっ!ま、待ってください雪蓮殿!」
「ほらほら、桃香も早く早くっ!」
「ええ?!ゆ、優未さんまで!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!私を置いていくなんていい度胸じゃない!」
私と一刀様、それに桃香様は雪蓮殿と優未殿につかまれて部屋から連れ出されてしまった。
その後のことは……余り話したくは無いのだが兎に角凄まじいものだった……
翌朝、陽の光に照らされて一人目を覚ました。
「はぁ……まったく、雪蓮殿は強引なお人だ……」
寝台から起き上がり横に居る愛しい人に目を向ける。その周りには桃香様や雪蓮殿たちも眠っていた。
「一刀様……」
その寝顔は年頃の男性とは違い。とても可愛らしいお顔をしていた。
「ふふっ、こんな子供のような寝顔をしているのに行為に及ぶと激しくお求めになってくるのだから困ったお方ですね」
一刀様の前髪を掬いお顔を覗き込む。
「……んっ……愛紗……」
「っ!」
起きたのかと思い、その手を引っ込めたのだが、一向に起きる気配は無かった。
「寝言ですか……まったく人騒がせなお「愛してるよ……」っ!?」
寝言だとわかっていても言われると恥ずかしいものだな……
「私もあ「雪蓮も優未も桃香も華琳も……愛してるぞ……ぐぅーー」……はぁ~」
本当に、このお方は寝ていても女心がわかっておられないのだから……
溜め息交じりで一刀様を見る。
「まったく、少しは察してもらいたいわよね。そう思わない愛紗?」
いつの間にか、起きていた雪蓮殿は呆れた顔をして話しかけてきた。
「ふふっ、そうですね。ですが、よろしかったのですか?他国の私達を」
「な~に、今更な事言ってるのよ。好きな人に抱いてもらうのに敵も味方も無いと思わない?」
「そんなものなのでしょうか?」
「そんなものよ。なにより、あなたの顔、とってもいい顔してるわよ」
「それはきっと一刀様のおかげです」
目を細め、微笑む私に雪蓮殿は満足そうに微笑んでおられた。
「さってと、これでわからなくなったわね」
「?なにがですか?」
「誰が、最初に一刀の子供を身篭るかってね♪」
そう、ここに居る全員が昨日の晩、一刀様に抱かれたのだ敵である華琳殿にも、主である桃香様にも、全員のお腹の中に一刀様の精が注がれているのだ
「~~~~っ」
「なに恥ずかしがっちゃってるのよ」
「し、仕方ないではないか。昨日の事を思い出すと恥ずかしくなるのだ!」
「ホント、愛紗って初心よね~。きっと、一刀もそんな所に惚れたのかしらね」
「あぅ~~~」
「ふふっ……さってと!私は部屋に戻るわよ。そろそろ仕事しないと冥琳に怒られちゃうから」
「雪蓮殿っ!」
「ん?」
部屋から出て行こうとする雪蓮殿を止める。
「ありがとうございました」
「気にしなくていいわよ。好敵手どうし公平に勝負しないとね♪」
「……負けませんよ。雪蓮殿にも桃香様にも」
「ふふっ、私だって負けないわよ」
そう云うと雪蓮殿は部屋から出て行かれた。
「……負けません。この真名に掛けて……」
横で寝ている一刀様を見詰め、固く決意をするのであった。
葉月「ども~、アフターも第六話になりました!如何だったでしょうか?」
愛紗「な、なんだか照れてしまうな」
葉月「ある意味で、無印、真と抱いてもらった事にあるんですよね?」
愛紗「うっ!そ、そう云われるととても恥ずかしいのだが……」
葉月「よかったじゃないですか」
愛紗「う、うむ……わ、私の話はどうでもよいのだ!次回の話はどうなっているのだ!」
葉月「ホント可愛いな~愛紗はもう一話くらい愛紗の話にしても罰はあたりませんよね!」
愛紗「なっ!」
雪蓮「当たるに決まってるでしょうが~~~~っ!!」
葉月「ぶべらっ!」
雪蓮「まったく。勝手に決めるんじゃないわよ!私の話はどうなるのよ!葉月!」
愛紗「雪蓮殿!」
雪蓮「はぁ~い、愛紗。ダメな作者を粛清に来たわよ」
愛紗「は、はぁ……」
葉月「いてて、何するんですか雪蓮!危うく首がもげるところでしたよ!」
雪蓮「もげても構わないと思うってやったんだけどちょっと力が足りなかったかしら?」
葉月「ひどいっ!」
雪蓮「なにが酷い!っよ。次は私の話なんだからね!勝手なことしないでくれる!」
葉月「はいはい。わかりましたよ~だ」
雪蓮「……」(チャキッ)
葉月「っ!ははは!ちゃんと雪蓮のっ、雪蓮様の話を書くに決まっているじゃないですか!」
雪蓮「んふふ♪判ればいいのよ判れば」
葉月「はぁ~た、助かった……」
優未「私参上~~~っ!」
葉月「ぐへっ!」
愛紗「は、葉月殿?!」
雪蓮「あら、あなたも来たの優未」
優未「もっちろん!だって投票の結果聞かないと!」
雪蓮「ああ、そう言えばそんなのもあったわね。それで結果はどうだったの葉月」
葉月「す、少しは労わってください!」
雪蓮「却下♪」
優未「うん、却下♪」
葉月「酷いっ!あ、愛紗からも何か言ってやってください!」
愛紗「そ、その……私も投票の結果が気になるのだ……すまん」
葉月「がくっ!いいですよ。いいですよ。どうせ私なんて……」
雪蓮「ほら、イジイジしないの!シャキッとしなさい!」(バチンッ!)
葉月「いいっ?!」
優未「よ~っし。投票結果行ってみよ~♪」
葉月「ぐすん……結果はこんな感じになりました」
1.三国統一後の話を書く :9票
2.天の世界での雪蓮たちの生活を書く :11票
3.次回作を書く :2票
葉月「こんな感じですね。ちなみに無効票は2票で全部書いてくれって人が居ましたが投票項目にないので無効にしました!」
雪蓮「予想通りね」
優未「だね~」
愛紗「なるほど、天の世界の私生活ですか……それは楽しみですね」
葉月「で、でも3番にも二票入りましたよ二票!今までで私に票が入ったのは初めてですよ!」
雪蓮「でもさ葉月。どっちにしろ、この話が終わった後って新しい話書くんだからある意味3番って無意味よね」
葉月「い、言っちゃいけないことを!いいんです!それでも!」
雪蓮「それで?話は変わるけど私の話はいつ完成するのかしら?」
葉月「……え?」
雪蓮「ふふっ」
葉月「あは、あはははは……」
雪蓮「優未。確保」
優未「了解♪」
葉月「は、放せ~~~~っ!!」
優未「だ~め♪」
雪蓮「さてっと。それじゃお仕置きね♪」
葉月「な、何でですか!」
雪蓮「だって書いてないんでしょ?」
葉月「まだ一言もそんなこと言ってないじゃないですか!」
雪蓮「あなたの態度を見てればそぐに分かるわよ」
葉月「うぐっ!」
雪蓮「っと、その前に締めないとね。それじゃみんな、次回の私の話を楽しみに待っててね。葉月に活を入れて気合の入れたのも書かせるから♪」
優未「私も出てくるかもよ!」
葉月「か、勝手にハードルを上げないでください!?」
雪蓮「それじゃね~♪」
優未「まったね~♪」
愛紗「わ、私の話だったのだがいつの間にか雪蓮殿と優未殿に乗っ取られてしまった……と、とにかく次回を楽しみにしていて欲しい。さらばだ」
葉月「私の話を聞いてくださいよ!と、とにかく次回をお楽しみください!」
雪蓮「さてと、葉月のお仕置き開始よ♪優未も手伝う?」
優未「もちろん!愛紗はどうする?面白いよ」
愛紗「で、では、私も参加させて頂こう」
葉月「い、いや~~~~~~~~~っ!!!」
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アフター第六弾になります。
今回は愛紗になります。
話も終わりに近づいてきました。
近々次回作の話をしようと思っていますのでお楽しみに。
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