No.195019

『舞い踊る季節の中で』 第103話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

 朱里の目に映るのはもう闇では無い。
 親友のおかげで闇を振り払う事の出来た彼女は、只管に自分を磨いてきた。
 自分には無い強さを持つ親友の背を追いかけながら。

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2011-01-09 23:04:24 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:14271   閲覧ユーザー数:9659

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割拠編-

   第百〇三話 ~ 桃の華が舞う里が朱に染まりし刻 ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)

   習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

        

  (今後順次公開)

 

 

【最近の悩み】

 人として、どうかと言われたら最低としか言いようがない。

 ましてやこの女尊男卑とまで言わないが女性優位のこの世界で、二股をかけていたら白い目で見られる覚悟はしていた。

 それでも声を上げて言いたい。 誤解だと!

 だがそんな事を声高に言った所で誰も信じないだろうし、新たな情報はそんな誤解を面白がっている連中を喜ばせるだけだと言う事は分かっている。

 そして言いたくても言えない訳もある。

 その噂が二人の微妙な立場を救ってくれていると分かっているから…。

 でも美羽と七乃を肉奴隷にしていると言う噂は、冥琳達に言われていたので覚悟していたけど、

 

「……いったい誰だよ。呉の種馬なんて噂を広めたのは」

 

 俺は部下の朱然達女性隊員にまで、確認のためと言って質問をされた時の事を思い出し、深く溜息を吐く。

 及川じゃあるまいし、何でそんな噂が……本気で泣けてきた。

 

 

        

朱里(諸葛亮)視点:

 

 

 ……凄い。

 

 目の前で起きた出来事は、そんな一言では言い表せれない。

 でも、それしか言いようがなかった。

 強力な射程距離を持つものの、速射性において致命的な大型弩弓による連続射撃。 これはまだ理解できる。 神速の張遼率いる隊による敵軍の切り離しと、大型弩弓による射程範囲の広さを活かして切り離した部隊への殲滅と見せしめ。 これもまだ理解できる。

 でも、問題なのはその過程……。

 

 大軍を思わす轟音とも呼べる足音と地鳴り。

 敵兵の不安を煽り、敵将に虚勢と見破られる暇を与えずに、次なる一手として異常とも言えるほど揃った唱和。 それも虎牢関において、袁紹軍に多大な被害を与えた将の一人の名を呼び。 その恐怖を呼び覚まさせる。

 相手には恐怖を。 味方には鼓舞と興奮を。

 音による威嚇と鼓舞。 策その物としては、古くからある原始的な策。

 

 だけど手法そのものが変わっている。

 普通は威嚇するための雄叫びだったり、罵詈雑言だったり、武器や盾を打ち鳴らす。

 古来よりある其れ等の手法は、それ故に調練を積んで来た者や、胆力在る者には大した意味をなさない。

 だけど二万もの人間に声を揃って唱和されたなら、その異常さと迫力の前に人は恐怖する。

 現にその矛先を向けられていた訳でもない私達の軍にすら、その影響は強く出始めている。

 多くの人間が声を揃える事の効果は、誰も知っている。

 呼び起されるのは原初の感情。 神秘か恐怖のどちらか。

 だけど誰が考えると言うのだろう。 二万人での唱和などと!

 それくらい大勢の人間が声を揃えると言う事は難しい。

 せいぜいが掛け声程度しか出来ないし、それもあの数では揃う物では無い。

 だけどあの方はそれをやって見せた。

 地面を踏み鳴らしていたのは、このための伏線。

 短い単純な言葉を意気の合った者達で揃えて見せる。

 そしてその掛け声と共に、足音をそれに合わせていく事で、唱和の輪を広げて行く。

 掛け声と足音、その二つが相互に補完し合い今まで誰も為し得ぬ事を為してみせた。

 ……妖術を持ってそれを為したと言う張角達以外。

 

 あの方はそれを理と呼吸でもって簡単にして見せた。

 むろん、その下地には一糸乱れぬほど調練を繰り返した孫呉の精鋭だから、と言う前提条件が付くにしても、普通はこんな事思いつかない。 それをされた相手にしたって、こんな事態を想定できやしない。

 今回の策は敵軍を追い払う為だけの物では無い。

 これは袁紹軍に対しての楔。 そして降将になったばかりで、信用の薄いの張遼さんに対しての援護。

 他にも、弩弓の部隊の実戦に対する試験運用等幾つも考えられる。

 本気では無いとはいえ四倍もの袁紹軍に対して、孫呉は事実上単独でそれを為し得て見せた。

 

 

 

 

 傲慢だとは思わない。

 不遜だとも思はない。

 むろん不敵だとも…。

 あの方が全て計算の下に動いている事が分かる。

 敵兵の心理も…。

 袁紹と将の心理も…。

 自軍の兵の心理も…。

 力の差を見せつけられた私達の心理も…。

 この一戦が及ぼす影響全てを、あの方は読みきっている。

 そうでなければこの策は成り立たない。

 

 あの人の怖い処は、奇策や私達の知らない知識を持っている事なんかじゃない。

 むろんそれも怖いけど、本当に怖いのは…。

 相手の心理を手に取るかのように見透かすその慧眼と智。 ……でもなく。

 敵味方の関係無しに人の死を嫌い、その為の策を見つけ出す妄執とも言える信念。

 そして必要とあれば虎牢関に見せたように、連合全体を餌にするなどと言う手段すら取り、結果的に多くの人を救うのであれば、地獄をも演出して見せる狂心さ。

 恐いのは、それでもあの方が優しい方だと分かる事。

 あの時触れたあの方の優しい心が、それを証明している。

 だからこそ畏い。 桃香様のような優しさを持ちながら、あんな真似を出来るあの人の覚悟と決意が…。

 

 詠さん達があの方に義理立てして隠しているのは、おそらくそれらに関する事。

 たぶん今ならその事を聞けば教えてくれる。

 私達が知っている事を隠し立てしても仕方ないと言ったのは詠さん自身。

 ……でも、もうその必要はない。

 あの方があそこに居るから…。

 桃香様を救うためにあの方達と対峙する。

 もう目を背けたりはしない。

 洛陽で雛里ちゃんに教えて貰った事。

 また雛里ちゃんほど強くは成れないけど、それでも私は精一杯の勇気を掻き集めて、あの方達から桃香様を救い。 桃香様の夢を叶えるために力を貸してもらう。

 例えその代価がどれ程高いものになるとしても……。

 

 

 

 

「危ない所を助けていただき、本当にありがとうございます」

 

 袁紹さん達の軍を追い払った後、私達は兵を纏め直しながらも、私と愛紗さん、そして介添え人として月さんと詠さんで御礼の言葉を述べに来た桃香様の言葉に、孫権さんはただ冷たい眼差しを向けます。

 孫権さんが桃香様をどう思っているかは、その事からだけでも十分に理解する事が出来ました。

 普通に優しい人なんだと…。

 民を引き連れて此処まで来てしまった事に怒りを覚える程、心優しい王なんだと理解できました。

 

「我は孫呉が王、孫権。 同盟を結んだのは先代とは言え同盟は同盟。 我等は義を持って同盟国の救援要請に応えただけの事」

 

 静かな感情の起伏のない言葉は、感情を無理に飲み込んだため。

 次の言葉に備えて、己が感情をギリギリ抑えるため。

 

「だが、その同盟も考えさせてもらおう」

「え?」

「何故民を連れて来た」

「それは・」

「例え民が望んだ事だとしても、巻き込むべきでは無い存在だっ!

 徳を売りとする貴様に、それが分からぬとは言わせんっ!」

 

 孫権さんの嵐のような弾劾の言葉に、歯噛みする音が、手を固く握る音が、愛紗さんから聞こえてきます。

 こう言われる事は分かっていた事。 それでも声に出されると堪えてしまう。 反論したくなる。

 それでもこれくらいの事は耐えなければいけない。

 理由はどうあれ、私達がしている事は端から見たら責められて当然の事。

 だから愛紗さんも耐えてくれる。

 この後のために、今を耐えてくれる。

 私達が今此処で何かを言えば、それは桃香様の想いと立場を踏み躙る事。

 これは王同士の神聖な場。 王である桃香様が一人で乗り越えなければいけない事だからです。

 

「馬鹿な事だって分かっている。

 それでも先祖から受け継出来た土地を捨ててまで、本気で付いてきたいと思う人達を見捨てるなんて事は出来ない。

 説得しても、それでも私に付いてきたいと願う人達の願いを振り払うなんて事は出来ない。

 私の夢を本気で信じてついて来てくれる人達を見捨てれるくらいなら、私は王になんてならなかった。

 命を懸けて信じてくれる人達を見捨てるのが王だと言うのなら、そんな王には私はなりたくない。

 私は、皆が笑って過ごせる世の中にするために、王になるって決めたの。

 だから例え人に馬鹿な事だって言われても、私は馬鹿を貫き通すって決めたの」

 

 静かに…。

 真っ直ぐと…。

 淡々と言葉を紡ぐ桃香様。

 でも、その言葉には桃香様の王としての想い全てが籠っている。

 民の笑顔を守るために立ち上がった桃香様。

 何度笑われようとも…。

 何度馬鹿にされようとも…。

 その夢のために歩み続けてきた言葉。

 一歩歩む度に想いを積み重ね続けてきた言葉。

 桃香様の夢に共感し、信じて来た者達の想いが載った言葉。

 そんな沢山の想いの乗った言葉を軽いだなんて言わせない。

 それに、そもそもこの人は笑ったりしない。 何故なら……。

 

「……そうか」

 

 長く静かな沈黙の後、孫権さんは桃香様の言葉を受け止めたかのように静かに目を瞑る。

 だけど次の瞬間、腰に在る剣を抜き放つなり、長い桃色の髪をなびかせながら桃香様に斬りつける。

 

 

 

 

「……っ」

「……」

 

 桃香様がその剣に血飛沫をあげながら地に伏せる。

 そんな風景が叩きつけられた殺気と共に一瞬脳裏に浮かぶ。

 そう錯覚。

 孫権さんの剣は桃香様の喉元で止められている。

 愛紗さんに止められたのではない。 愛紗さんは必死に硬く歯を食い縛りながらも堪えて見せてくれた。

 止めたのは誰でもない。孫権さん自身の手によって止められた。

 別に孫権さんは脅しで剣を抜いた訳ではありません。

 桃香様に向けられた殺気は紛れもなく本物。

 もし桃香様が孫権さんの剣を避けようとしたり、目を瞑っていたのならば、その剣は止まる事は無かったでしょう。

 でも桃香様は少しも避けようともせずに、孫権さんの目を見続けた。

 その剣を喉元に突き付けられた今も、目を逸らす事無く孫権さんの目を見続けている。

 実際は何の反応も出来なかったと言うのもあるのでしょうが、それでも桃香様は王としての自分を全て見て貰おうと、孫権さんにその命運を賭けて見せているのです。

 孫権さんの放つ殺気と覇気をその身と心に真っ直ぐと受け止めながら。

 

「貴様の想いが本物だと言うのは分かった。

 だが民を思うならば、今は耐えて貰うのが王道ではないのか。 何時か力を取り戻した日のために」

「違うよ。 それは今の民の嘆きを見捨てると言う事だと思う。

 それに何時かじゃ駄目なんだよ。 何時かなんて待っていられないから今があるんだよ」

「我等はそれに耐えて見せた」

「うん、分かっている。 それでも出来る事があるうちは諦めるなんて真似はしたくないの」

「……民の為に在る王、それが貴様の求める王の姿と言う訳か」

「うん」

 

 桃香様の瞳の奥に在る強い灯を認めてくれたのか、孫権さんは剣を収めてくれる。

 まだ弱いながらも桃香様の王気を認めるかのように、殺気と覇気を静めてくれます。

 王同士の会話はこれで終わり。

 この結果は読み筋通り。 何故なら孫呉が求めるのも、形は違えど桃香様と同じ民を思うと言う事に違いはないからです。

 問題なのはこれからです。

 桃香様の命を懸けた会談は唯の前哨戦に過ぎません。

 本当の闘いはこれから。

 桃香様の夢が潰えるかどうかは、これからなんです。

 

 出てくる。

 

 百戦錬磨の孫呉の知恵袋が…。

 そして、全てを見透かすあの方が…。

 そんな二人を相手に私は戦わなければいけない。

 でも負けたりしない。 諦めたりしない。

 もう私はあの時の私じゃない。

 見て貰うんだ。

 

 あれから私がどれだけ強くなったかを。

 

 

 

明命(周泰)視点:

 

 

 油断は決して出来ませんが、既に戦局は決着が着いたと言っていいでしょう。

 味方の異様と言える大声援を受けた張遼隊の動きは、異常と言える程の突進力で袁紹軍の鎧袖を削りながら小さな部隊を切り離して行きます。

 無茶と思えるほど派手に突撃を駆けているかのように見せながらも、其の実ギリギリの処で抑えている張遼隊を援護するかのように、一刀さんの隊が切り離した袁紹軍の小隊を新型の弓矢で悉く殲滅して行きます。

 その凄惨とも言える光景と、狂気と言える戦場に在ってさえ、尚狂気とも言える声援の声と地を揺るがさんばかりの足音に、袁紹軍の兵士達は錯乱状態に陥っています。

 

 あれでは部隊を立て直すだけで数日を要しますね。

 一刀さんから預かった望遠鏡が見せる敵兵の表情にそう心の中で呟きます。

 一度崩れた軍を立て直すには時間を要します。 大兵力であればあるだけそれは容易ではありません。

 ましてや、此処で無理をしてもさして得る物が無いとなれば猶更でしょう。

 一刀さんの策はそれを狙った物。

 必要であれば、袁紹軍に入り込んで内部で混乱を引き起こすつもりでいましたが、どうやらその必要はありませんね。

 私は望遠鏡を背中に背負った鞄に収めてから、引き続き劉備軍の内情を調査を続ける事にします。

 気配を完全に消す事を出来る私の子飼いの部下の一人に、予定通り半刻後に撤収する旨を他の部下に伝えるように合図を送ります。

 

 劉備軍の内情は予想通り酷い状態でした。

 今まで袁紹軍の猛攻に耐え続けていただけあって、怪我をしていない者がいないと言っても良いでしょう。 それでも互いに励まし合いながら、必死に仲間を守るために戦ったと言う事。

 兵の動きや伝わる気魄から、かなりの調練を受けた者達と言う事は分かります。

 流石は、武神と名高い関羽を初めとする豪傑の将が鍛えた兵と言わざる得ません。

 劉備の率いている兵士は民を護衛している兵五百と、此処に居る兵を合わせて約八千と言う所です。

 …ですが、この後戦場に立てる兵は半分といないでしょう。 それだけの損害を劉備軍は被っています。

 中には一刀さんの授けた医学書が齎した知識のおかげで命が助かった者も多く居るようですが、再び兵士として戦えるかどうかは別問題です。

 他にも兵站も残りが乏しいようで、特に医療品と糧食が既に尽きようとしているように思えます。

 変わった意匠の帽子を被った…たしか鳳統という軍師と兵士の会話からもそれが確認できました。

 劉備が何を考えてこうなると分かりきった事態を引き起こしたかは分かりませんが、この現状は早く知らせた方が良いようですね。

 そう判断した私は、部下に視線で合図を送り一足先に劉備軍を後にします。

 

 劉備、貴女方が我等を利用とするのは分かっています。

 我等も貴女方を利用するつもりですからそれは仕方ない事です。

 ですが、一刀さんの優しさに付け込むつもりならば、それ相応の報いを受けて貰います。

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

 こんにちは、うたまるです。

 第百〇三話 ~ 桃の華が舞う里が朱に染まりし刻 ~ を此処にお送りしました。

 

 やっと、明命ちゃんのお話を少しだけ書く事が出来ました~♪ そして一刀の悩みも復活。 やはり、あの二つ名は無くせないですよね(w

 一応今回の主役は朱里ですが、朱里の視点で桃香の王としての気概を描いてみました。

 やはり、桃香は馬鹿をまっすぐ貫く姿こそ桃香らしいと思っています。

 桃香の馬鹿と言えるほど真っ直ぐな想いに、蓮華は桃香の王の姿を受け止めて見せました。

 王の姿は一つではないと言う雪蓮の教えを、一刀や冥琳の教えを胸に、彼女なりの答えをその胸の内に出したのだと思います。

 一番最初は桃香対蓮華ではなく、一刀が桃香の甘さに激怒するプロットだったのですが、何処かの外史で似たような事があったのを思い出してボツにしました。(三十話位の時にその辺りの路線変更を決定)

 そうして出来たのがこの後の展開です。 この後どんな事態が繰り広げられるのか、お楽しみにしていただけたらと思います。

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
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