「ここから見ると壮観だな……」
砦の物見櫓から見下ろす軍勢はまるで津波。はためく軍旗に、揺れる槍。それら全てがこちらを目指して進軍している。
迎え撃つのは董卓軍。前方の津波に比べれば、小波程度の戦力。ただこちらには難攻不落と名高い虎牢関や泗水関がある。
篭城し、敵の兵糧切れを待てば、とりあえずの敗北はないはずだ。
白装束の定めた全力で迎え撃つ、というのがどの程度になるか分からない以上、全力を尽くして抗戦しなくてはいけない。
だが……、
「いざ行かん!!私の武を諸侯連合に見せ付けてくれるわ!!」
案の定、華雄は突撃の姿勢を見せていた。
「落ち着け華雄。俺達は防衛戦をするんだぞ?自分から出て行ってどうするんだよ」
「それでは私の気がすまん!!将たるもの、最前線で戦う事に意味がある!!」
まさしく猪武者、といった感じだな。戦い=突撃みたいな短絡思考に項垂れる。
「いいか、もう一度言うぞ?すでに説明回数は十回じゃ済まなくなってるけど、よく聞いてくれ」
分かりやすいよう噛み砕いて解説しないとな。
「戦力、つまりは兵の数はあちらが圧倒的に上、将も大陸に名を馳せた奴らばかり、正面から当たっても勝機は無い。
いいか、まるで無いからな。戦力差が有りすぎる。だからこそ、泗水関で篭城するんだ。分かるか?その為の準備もしただろ?
自分勝手な行動で、月や詠を危険な目に合わすのは本位じゃないよな?」
簡単に、かつ丁寧に言葉を並べて説得を続ける。ここには副官や兵士もたくさんいる。周りの兵士は「なんとかしろ……」みたいな、冷ややかな視線を送ってきた。
一方、華雄とその部隊連中は似たような思考回路をしているのか、全員不満顔だ。
視線の大半は俺、北郷一刀の部隊兵、霞や恋のところから人員を割いてもらった臨時の人達。せめてと優秀な人材を寄越してくれたが、
正直、信頼は得られてない。まあ、武勲一つ無い将にそれを求めるのは都合が良すぎるな。
「もう理解したよな?ここで取る最善策は?」
「圧倒的不利を覆す私の武で、戦いを切り開く!!」
はい、全然聞いてませんね。完全に突撃ありきで話を持っていかないでほしいです。
だってほら、うちの兵士さん達の視線がさらに冷たく……俺のせいじゃないだろ、そんな目で見ないで!
……このままじゃまずい。兵の信頼も、華雄の制御もままならない状況じゃ勝てる戦も勝てない。
なんとかして猪を繋ぎ止めないと……。
「――こうなったら。最終手段だ」
「ぬ?」
泗水関の戦い、落とすわけにはいかない。仕込んだ策を完遂する為にも、自分の全てを費やし、最高の結果が出るように最善手を尽くす!
「副官さん。悪いけど後頼めるかな?」
「?はあ、手順は聞いておりますが……」
突然声をかけられた男、副官のおっちゃんはぎこちなくも応えてくれた。
「ならよろしく、今から華雄を大人しくさせるから。連合がアレを出したら教えてくれるかな」
むんずと華雄の手を握り、目的地を目指す。
「ま、待たんか北郷!!私をどうするつもりだ!?」
手を引かれ、ズカズカと進む俺に訴えかけてくるが、ここは無視させてもらう。正直今からめちゃくちゃ恥ずかしい事をするんだ。
兵の信頼をすぐ得る事は出来なくても、確実に、お前は押さえ込ませてもらう。
辿り着いたのは将軍用の寝室。無論個室。当然する事ひとつ。
「……北郷……まさかとは思うが……」
「そのまさかだ」
すかさず唇を奪う。
「んむ!?ちょ、ちょっとまて!!こんな真昼間から……んんっ……んあっ」
これしかない。これしかないんだ。力の無い俺は、男としてお前を止めさせてもらうぞ!
持久戦だ。覚悟しろ。策が成功するまで、俺とせいk…(割愛)
情けない手段だが文句は言わせないぞ。ほかに対処法があるなら教えてくれ!!
―――
――――
「……………すごい漢だ」
閉じこもってしまった二人を確認して呟く副官。まさかあの華雄将軍を手篭めにしていたとは……。
……一刀の知らないところで兵の信頼度が上昇していた。
一方、その頃連合軍では、劉備こと桃香の軍勢が、泗水関前に到着していた。
「ふえぇ……やっぱり大きいね、泗水関って」
「鉄壁の防御を誇る砦ですからな。厚く、高い塀が崖の間を隙間無く塞いでおります」
「篭城するにはもってこいってことだよな」
関心する桃香に星と翠が応える。前回の記憶を持つ二人はこの時点で、蜀軍として合流していた。
「ゆえに攻める側の私達は苦戦するでしょうね」
「あわわ……また袁紹さんに先陣を切らされましたぁ……」
「承知していたとはいえ、腹立たしいな」
自軍陣営にて作戦会議を開いていた全員から溜息が漏れた。あいも変わらぬ袁紹に呆れ、記憶うんぬんを問いただすのも忘れてしまった連合の軍議。
あやつはどんな記憶があっても変わらない気がする。
「しかし状況が前と同じなのは僥倖。策は立てやすいですな」
いかに泗水関といえど、それを守る将が華雄では対策は立てやすい。やつの自尊心を煽り、誘き出せばいいのだ
「よし、さっそく始めるぞ。張飛隊は左翼、趙雲隊は右翼に展開。砦を囲め!関羽隊は私に続き、正面から行くぞ!!」
「おおっ!!なのだ!」「任されたぞ!」
「「「オオオオオオオぉぉ」」」
兵の士気も高く、万全の態勢だ、すぐさまカタを着けようとしたところに伝令が駆けつけてきた。
「報告!!泗水関にて怪しげな動きが!」
「怪しい動き?」
兵と一緒になってエイエイオーしていた桃華がオウム返しする。出鼻を挫かれた形になった愛紗は露骨に嫌な顔になる。
「……いったいなんだ。華雄がもう出てきたのか?」
「いえ。どうやら砦の上部に柵を設置しているようです」
「柵、だと?いったい何の為に?」
「砦の上ってあんま意味ねえよな?」
「もとより、壁があるからな」
突然の奇行に疑念が広がる。柵の設置という不可解な行動より、それが華雄がとる行動とは思えない。
「どう思う?朱里ちゃん、雛里ちゃん?」
「ええっと、柵についてもう少し詳しく教えてもらえますか」
「はい、騎馬を防ぐような類ではなく、こう、衝立で囲った壁のようなものです」
「……うーん」
「あわわ……」
考え込む二人、どうやら時間がかかりそうだな。ここは難しく考えず突破してもいいと思うのだが……。
皆が考え込む中、鈴々が伝令に話しかけた。
「向こうにいるのは華雄だけなのか?他に旗は見なかったのだ?」
「なにを言っている鈴々、忘れたのか?ここを守っているのは……」
「あっ、はい実はもうひとつ在ります。旗は一つ二つしか無かったのですが」
「ん?どんな旗だ?」
……どうせ、数合わせの雑将だろう、たいして気にかけるものではない……。
「色は白、十文字の旗です」
………
………………
………………………
……えっ?(;^p^)
「なっ!?」
「うそっ!?」
「っ!!」
「あわわ!?」
「はわわ!?」
「本当かよ!?」
「まさか……お兄ちゃんなのか!?」
全員が目を白黒させ、一瞬でパニック状態に陥る
なんで、そんな……こんな、こんな事があって堪るか!!
状況が掴めない兵達を置き去りにして、困惑した頭で、砦を見据える。
正直、理解が追いつかない……。
ご主人様……あなたなのですか?…………
呟いても届きはしない。立ちそびえる砦がとてつもなく大きく感じる。まるで、いまの私達にもある見えない壁のように……。
勝利を疑わなかった気合がどんどん小さくなるのが分かる。
このままでは……。
―泗水関の戦いは、すでに始まっていた。
<つづく>
どーも、よしおでーす。うふ。
モンハンで神おま求めて火山ツアー何周もしてます。えへへ!!(*^∀^)
さて、今妄想してみた・改を書いてますけど、早速新しい話が閃いちゃったので皆々様にアンケートをお取りし、
今後どうするかを決めようと思います。
1.妄想してみた・改を集中して書く(^∀^)
2.よしおさんが外史「御使いは五度外史に降る(仮)」を集中して書く(^∀^)
3.いやいやお前、過去にまだ完結していないお話があるだろう……河賊団を集中して書く(^∀^)
4.おいお前、アレはどうなったんだ!!――逃走中を集中して書く(^∀^)
5.「妄想してみた・改」と、「御使いは五度外史に降る(仮)」の両方を頑張って書く(^∀^)
6.全部書け(;^ω^) (゚д゚#)ぁ?ムチャイウンジャネーヨ
なお、期日は1月1日の午後8時までとし、一切票が無かった場合、私の自由気ままにやらせて頂きますのでよろしこ。
あ、そうそう。
女になった左慈と于吉の設定は今日中に書いておきます。
ではではー(谷)ノシ
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第六話をお送りします。
華雄……みうs、華なんとかさんが相変わらずの猪振りを見せるも、
一刀の手腕により何とか踏み止まる。
関にはためく旗を見て、劉備軍は――
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