No.192045

恋姫†転生~太史慈伝~ 其の七

パンドラさん

異端者、そして約束

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2010-12-27 01:20:41 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2381   閲覧ユーザー数:2188

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

俺は大の字に倒れ、気持ち悪い空気を体から出すため荒く息をする

 

「・・・うぅ」

 

吐き気がする

 

俺は奴を文字道理真っ二つにした

 

足にまだ感触が残っている

 

奴の血で足は真っ赤に染まっている

 

そのせいでこの纏わりつくような感覚から逃れられないでいる

 

「俺は、とうとう人を・・・」

 

これ以上は言いたくない

 

これ以上言えば溜めているものをすべて吐き出してしまいそうだから

 

「・・・」

 

もうここには居たくない

 

早く戻って、もう寝てしまおう

 

そう思って、足早に帰ろうとした

 

 

 

「まだ"死合い"は終わっていないぞ?」

 

 

「!!?」

 

後ろから声が聞こえた

 

「なぜ死んでいない、という顔だな」

 

奴はまだ五体満足、それどころかかすり傷、さらには土埃すらついていない

 

「な・・・!・・・嘘だろ・・・」

 

夢であってほしかった

 

そう思った

 

だがこれは現実

 

ここを生き残るには奴が諦めるか、殺すかの二択だ

 

前者はまず無い

 

だから後者を選んだ

 

なのに生きている

 

どうやったか知らないが、もう一度殺さなければならない

 

そう考えると身体と心が縛られるような重みがかかる

 

 

 

「まぁ俺は"異端"だからな」

 

「(口調が・・・変わった?)」

 

口調が年上な感じから若者、もしくは同世代の口調へと変わった感じがした

 

「さて、名乗ろうか。俺は・・・"大局を逆らいし者"でいっか。本名は匿名希望で」

 

いや、確かに変わった

 

「名乗ってねーじゃん・・・」

 

「そこは細かいことを気にしないでよ」

 

「てか、変わってね?口調とか口調とか口調とかさ」

 

「口調ばっかじゃん」

 

奴はクスリと笑った

 

「(な、なんだ?さっきと感じが変わりすぎだろ?)」

 

 

「まぁいいや。で、君の名前は?」

 

「え、あ、俺は原田・・・じゃなくて、太史子義だ」

 

何故俺は前の名前を言おうとしてんだよ・・・

 

「へー。あの"有名な"太史慈なんだ、君」

 

「はぁ?」

 

"あの有名な"?なに言ってんだ?

 

俺何かしたっけ・・・

 

まだ旅にでて数日も経ってないよ?俺

 

 

「おしゃべりはここまでだ。行くよ?太史慈」

 

「・・・応」

 

やっぱり調子狂う・・・

 

 

 

「はぁあ!」

 

上段で切りかかってくる

 

「っよ」

 

カィン!

 

鉄甲の面をこすらせ軌道だけを変える

 

「はっ!」

 

もう片方の腕で胴体に掌テイを打つ

 

「うん。威力はホント、すごいね」

 

言葉とは裏腹に手刀で反らされる

 

「そりゃどーもっ!!!」

 

下段回し蹴りを打つ

 

「おっと」

 

飛んでかわされる

 

「おらぁ!サマーソルトォ!」

 

2メートルぐらい飛ぶ勢いで、顎めがけてサマーソルトを打つ

 

 

 

※サマーソルトキック

 

バク転を蹴りに応用したようなモノ

 

 

「うぐ!?」

 

これは避けれなかったようで、直撃する

 

「追い打ちいいい!!」

 

奴が地面に落ちると同時にボールを蹴るような感じで、腹めがけて蹴る

 

「ぐぁ!」

 

地面を転がりながら吹き飛んでいく

 

 

 

なんか弱くないか?

 

そう思い始めた

 

「さすがにこれは効いたろ・・・?」

 

半ば願う感じだった

 

2発とも感触は良好だった

 

 

柔な攻撃でも駄目、殺しても駄目

 

ならそれ以上でもそれ以下でもないダメージを与えればいい

 

そう考えていた

 

・・・だがこれも駄目だった

 

 

「いたた・・・効いたなー」

 

平然と立ち上がってきやがった

 

それもまた無傷

 

「・・・夢だといってくれー」

 

現実逃避の扉があるならそこへ行かせろ!!

 

「君、殺す気できたでしょ」

 

笑いながら言う

 

それが今の俺には恐怖でしかない

 

「殺しても死なない癖に・・・」

 

「はは、それはどうかなー?」

 

「畜生、こいつバグキャラかなにかですかぁ?」

 

誰だよ、俺の人生難易度をハードにした奴!

 

俺はイージーまったりプレイ主義者なんだよ!

 

 

「・・・あらら、もう時間か」

 

突然そう呟いた

 

「時間・・・?」

 

「うん、時間。もう帰るよ」

 

「は・・・?」

 

突然、どうしたんだ?

 

「まったく、現世に留まるのにたったこれだけの時間しか居られないのか・・・」

 

ん?今何て・・・?

 

現世?留まる・・・?

 

 

まさか・・・!!?

 

 

「お、おい!あんた!」

 

「何かな?」

 

「今の言葉、どうゆう意味だよ・・・?」

 

「言葉道理だけど?」

 

 

こいつも俺と同じ境遇なのか・・・?

 

「んー、それは微妙な所だね」

 

「!?・・・心、読めんのか?」

 

「勿論」

 

マジかよ・・・

 

異常な武と身体

 

さらに読心術かよ・・・

 

 

「さっきの答えをあげよう。原田君」

 

「・・・その意味わかってるのか?」

 

「ああ、日本の性だろ?」

 

日本・・・か

 

今の時代に日本っていう言葉は無いし、日本なんて単語、思い浮かんでもいない

 

つまりこいつの知識内にある単語か

 

「その通り」

 

「・・・んで、さっきの続きは?」

 

「境遇について、だね」

 

「君は突然ここにやってきた。これは色々悶着があったかもしれないが間違いではないだろ?」

 

「ああ」

 

「それは俺も同じさ」

 

「へー。ならあんたも現代人か?」

 

「何を現代にするかは人それぞれだけど、まぁ正解」

 

「ならあんたの居た時代は皆あんたみたいなのか?」

 

「いいや。言ったろ?俺は"異端"、"大局に逆らいし者"だって」

 

「・・・まだそのネタ引っ張るんだ・・・」

 

「ネタじゃないさ。まぁ信じるか信じないかは君次第だ」

 

「・・・次の質問だ」

 

「時間的に厳しいから次が最後でお願いね」

 

「わかった」

 

「ではどうぞ」

 

「また"会う"のか?」

 

「・・・これは意外だね。もう会いたくないかと思ってたよ」

 

「ああ、会いたくないさ。"今は"な」

 

「今は、か。なるほど。答えはイエスだ」

 

「・・・それは近いのか?」

 

「残念、質問は終わりだ」

 

「そうか・・・」

 

 

奴の身体が薄らと光りだした

 

 

「まぁ、そうだな・・・」

 

 

足から徐々に消え始めている

 

 

「近いうち・・・いいや、君の本当の意味での"始まり"を迎えた時に俺は現れよう」

 

「本当の・・・意味」

 

「そして、最後に」

 

すでに胸まで消え始めている

 

「俺は君の敵ではないよ」

 

「・・・嘘つけ」

 

「ホントさ。さっきは驚かしてすまないね」

 

苦笑いをしながら謝る

 

「だが、もっと強くなりなよ。じゃなきゃ次会う時は本当に殺しちゃうよ?」

 

奴の目が野獣の目へと光る

 

「今回は見逃す、てか?」

 

「時間が無いのも大きいけど、時期がまだだからね」

 

「時期、ね」

 

「それでは、また会おう。"猛"君」

 

 

奴の身体が完全に消えた

 

 

 

 

「首洗って待ってろ」

 

 

 

 

 

 

 

そう言い残し俺はこの場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、不思議な夜は幕を閉ざした

 

 


 
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