No.190216

『舞い踊る季節の中で』 第97話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

 一刀と美羽の行為の現場を目撃してしまった翡翠。
 その事に翡翠は、黒い靄を身体全体から吐き出しながら、硬直する一刀を廊下へと連れ出す。
 其処で翡翠は…………、一刀は生き残れるのか?

2010-12-18 00:02:52 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:14746   閲覧ユーザー数:10029

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割拠編-

   第97話 ~ 止められぬ想いに宝石は、ひたすらに己を責める ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)

   習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

        

  (今後順次公開)

        

翡翠(諸葛瑾)視点:

 

 

くちゅ、ぴちゃ…。

 

 粘り気のある水音が、実際の音の大きさ以上に私の耳に、…いいえ、頭の中に響いてくる。

 

「…んっ…ぁ…」

 

 時折漏れ出てしまう声が、自分の状況を報せ。 その事がより一層私の意識を冷静さを奪って行く。

 

「…はぁ…はぁ…まって…ぅんっ」

 

 自然と荒くなる息が、私の頭を真っ白に染め上げてて行く上。 休む間もなく塞がれた口が、私の頭の中を更に熱くさせて行く。

 一刀君の舌が、私の口の中いっぱいに広がり。 歯の裏処か口中を丁寧に舐め取って行く。 だと言うのに、私の舌に対しては押し退けるように、そして私から奪い取るかのように激しく絡ませ。そのあまりの激しさと息苦しさに、私の意識は更に白濁化させ私を夢心地にさせてくれる。

 ぁぅぁぅ……でも駄目です。 こんな事で誤魔化される訳には行きません。

 私は残っている理性を掻き集めて、一刀君の胸に当てていた手を使って押し退けようとしますが。

 

ぐいっ

 

「…んぁ…」

 

 小さな体の私を引き上げるかのように、更に抱きしめて来たため。 私の足は爪先立ちの状態になってしまい。より強く押し付けられる唇の感触と、息苦しい程強く抱きしめられた感触に、私の手は己の意識と反して次第に力が抜けて行き意味をなさなくなっていく。

 口の中に流し込まれて来る一刀君の痺れる様な味の唾液は、自分の唾液と混じり合い。 嚥下する度に、体が小さく震え、全体から力が抜けて行ってしまいます。

 

「…翡翠…」

 

 愛しい人が私の名を呼びながら、私の唇を求めて……いいえ、口の中全てを奪う様な口付は私から抵抗する意思を根こそぎ奪っていってしまう。

 やがて、一刀君抱き支えて居て貰わねば、床に座り込んでいたしまうまで力が抜けてしまった頃には、一刀君の舌と唾液を求めるように、私から舌を絡ませていた。

 粘液が出すような水音と、荒い吐息。 そして漏れ出てしまう声が、回廊に響くのが分かります。

 脳裏の片隅で、こんな何時人が通るか分からない場所でと怯えながらも、その事がよけいに私を燃え上がらせてしまう。

 どれだけ、時間が立ったのだろうか…。

 その感覚が無くなるほどにまで夢中になった行為は、始まりと同じ様に一刀君から終わりを告げるように、私から離れて行く。

 

「…はぁ…はぁ…ぅん…はぁ…ぁぅ…」

「……誤解だから…、俺が本当に好きなのは翡翠と明命…だけだから」

「……っ」

 

 朦朧とする意識の中。 行為を終え急速に自分を取り戻して行く中で、一刀君はそんな事を言ってきます。

 ふと空いた僅かな時間を使って、お菓子のお礼がてらに一刀君と軽く談笑をしようと思って赴いた部屋で見た美羽ちゃんとの光景。

 その事を問い詰めようと一刀君を部屋から連れ出した先で、先手を取るかのように始まったのが先程の行為。

 一刀君は、美羽との事は一刀君の指に付いた餡を取っていただけだと。そして七乃が吹き込んだ悪戯ではないかと。私に事情と推論を話してきます。

 

「……俺は二人を裏切る気は無い。それだけは信じて欲しい…」

 

 まるで誤魔化す様な行為。 でも、一刀君にとっては真実だと言う事は分かります。 その言葉そのものはとても嬉しいです。 だから私は、胸に奔る痛みを飲み込んで、一刀君に言葉を返します。

 

「ぁぅぁぅぁぅ……こ、今回は誤魔化されてあげます」

「いや、別に誤魔化しているつもりは…」

 

 この人は、自分の事に気が付かずにそんな事を言ってきます。

 でも今は良いです。 私は自分で言ったように今回は誤魔化されてあげる事にします。

 でも、言うべきことは言わなければいけません。

 

「あぅぅ…事情は分かりました。

 でも一刀君にも責任はあります。 一刀君が毅然とした態度を取れば良かっただけの話なんですよ」

「あ、あぁ。 …そのなんと言うか吃驚して」

「それでもです」

 

 私は、一刀君に言い聞かせます。 美羽ちゃんは袁家の老人達のおかげで止まっていた時間が再び動き出し、その心が急速に成長を始めている最中で、とても不安定な時期だと言う事を。

 だからこそ周りの者が気を付けてあげなければいけないと言う事を、一刀君に言葉を選んで説明します。

 むろんそんな事は一刀君だってある程度気が付いている筈です。 それでもああ言う事が起きたと言う事は自覚が足りない証拠だと、一刀君に注意をしてあげます。

 そして最後に、お菓子のお礼を言いがてら、一刀君を耳を寄せるようにお願いした後。一刀君の耳元で…。

 

「一刀君の所為で疼いてしまいました。 今夜その責任を取ってくださいね」

 

 そう熱っぽく囁いた後、今度は私から一刀君の唇を奪います。

 先程とは違い、そっと触れる様な可愛いらしい口づけ。 でも、その分私の想いがたくさん詰まった口づけです。

 そんな私を恥ずかしげそうに軽く頬を染めながら、一刀君は何時もの様に小さく頬を掻いて、今夜を約束してくれます。 そして、私に温かな春の日差しのような笑顔を残して仕事へと戻って行く。

 

 

 

 

 そんな一刀君の背中を見送りながら、私も仕事に戻るため一刀君の事を考えながら廊下を歩きます。

 別に今夜の事を考えている訳ではありません。 その事が楽しみでは無いと言えば嘘になりますが、それよりも気になる事があります。 その事が無ければ、一刀君の大胆な行動に未だに顔を赤くして『ぁぅぁぅ』言っていた自信があります。

 ……そう、嘘です。 一刀君はさっき二つの嘘を吐きました。

 

 一つは美羽ちゃんの事。

 美羽ちゃん、そして七乃ちゃんの気持ちに関しては、もう止められないと分かっています。 美羽ちゃんは少し前の明命ちゃん以上に無自覚ですが、それは動き始めた時間と共に、次第に自覚して行くでしょう。

 私と明命ちゃんは二人を家族として認めはしましたが、其処まで認める気は今の所在りません。 彼女達はその想いが本物かどうかをまだ示してはいないからです。 むろんそんな日が来るかもしれない事は覚悟はしています。 ………いますが、少なくとも今はその時ではありません。

 そして問題は一刀君は驚いて固まって居ただと言っていましたが。 私が見たそれは、それだけと言えない物でした。

 一刀君の瞳にはたしかに驚気の色が浮かんではいましたが、同時に美羽の行為に感じていたのです。

 ……もっとも、一刀君本人はその事に自覚していないでしょうから、嘘とは言い切れはしないでしょうね。

 

「まったく、流されやすいとは思っていましたが、あそこまでとは思いませんでした。

 注意しても自覚が無い以上、やはり明命ちゃんと協力して身体に教えて行くしかないですね」

 

 思わず小さくぼやいてしまいましたが、言葉にした事で一層重くなる心を、深い溜息と共に無理やり吐き出します。

 そして無理やり落ち着かせた所に、私はもう一つの一刀君の嘘について想いを巡らせます。

 

『……誤解だから、俺が本当に好きなのは翡翠と明命…だけだから』

 

 私が嬉しいと感じた言葉。

 だけど同時に胸を締め付けた言葉です。

 これが一刀君の答えだと言う事なのだと思います。

 それを信じるべきだと言う事も分かっています。

 でも、それ以上に不安になってしまうんです。

 私の我儘で、自分勝手な言い分だと言うのは自覚しています。

 でも、それでも思ってしまうんです。

 

 なら何故、不安にさせる様な事を言うんですか。と。

 なんで一瞬、間を開けるんですかっ! そう心の中で叫んでしまう。

 一刀君の無意識な行動なのでしょう。

 でもそれ故に、分かってしまうんです。

 改めて気が付かされてしまうんです。

 

 一刀君がもう一つの自分の気持ちに気が付いていると。

 そしてその想いが燻り続けていると……。

 それが分かってしまうんです。

 ……一刀君と雪蓮様。 今の所二人の間には何もありません。

 ごく僅かな時間、給仕役をする間に、ごく普通に接しているだけです。

 不安になる様な事など何一つないはずなのに、どうしようもなく私を不安にさせます。

 その不安が私の心を締め付け続けるのです。

 一刀君を信じるべきなのでしょう。

 一刀君を信じたいです。

 頭では、理性では分かっているんです。

 でも私の心が……、魂が一刀君と雪蓮様の関係を否定しきってくれないのです。

 

 多分私は怖いのだと思います。 怯えているのだと思います。

 もし不安に思っている事が現実になった時、一刀君を手放さなければならなくなってしまう事を。

 そんな事出来やしないと言うのに、勝手な想像が、私の心を狂わせるのですっ!

 手放したくない…。

 別れたくない…。

 そんな事、例え想像でも考えたくもない…。

 もしそれが防げるのならば、美羽ちゃん達を受け入れるのも構わない…。

 一刀君の想いが、私に向いてくれるのならば、それでも構わない…。

 

「……醜いわね。翡翠」

 

 いつの間にか寒さに震えるかのように、両肩を抱きしめるかのように縮こまっている事に気が付いた私は、自嘲気味にそう呟く。 今自分が考えていた事に、我ながら酷い女だと思ってしまう。

 義妹の好きな男と分かっていて好きになるばかりか、自分の夢のために利用している。

 その上、好きな人を地獄に叩き堕としておきながら、それを慰めて彼の心を手に入れた。

 だと言うのに自分の前から消える事を恐れ、そのためなら新たな家族すら利用する事を考えるだなんて……朱里達が今の私を見たら、きっと軽蔑するわね……。

 

 でも、そうだとしても守りたい。

 私の心と想いをでは無い。 そんな事を言う資格は既に私には無い。

 そんなモノより私は一刀君を守りたい。 彼の心を壊したくないんですっ。

 そのためなら酷い女になっても構わない。 一刀君が笑顔でいられるのならば、それで構わない。

 叶うのならば一刀君を元の庶民の生活に戻してあげたい。 そうするのが一刀君にとって一番だと言う事は分かっていても、もうそれは許されない。

 天の御遣いになった一刀君は、生涯それを演じ続けなければいけないからです。

 ……全て、私が招いてしまった事です。

 

 だから、その責任は必ず取ります。

 どんな事があっても一刀君は守ります。

 彼が望むのならば、どんな事も受け入れるつもりです。

 私の持てる全てを使って、彼を悪意を近寄らせはしません。

 同じ想いである明命ちゃんと共に、必ず守って見せます。

 一刀君の嘘から始まった思考と想いは、やがて何時もと同じ帰結に辿り着き。私の決意を奮い立たせます。

 

 ……それにしても一刀君、さっきは今までにない程強引でした。

 ああ言うのも偶には良いのですが、一刀君が妙に積極的な時は気を付けておいた方が良いですね。

 十中八九、何かを誤魔化そうとしている時に決まっています。

 

「ふふっ、あんな事で誤魔化そうだなんて、一刀君可愛いです♪

 一刀君が気が付くまで、あの手で誤魔化される振りをしてあげましょう」

 

 

 

 

 私は、自分を言い聞かせるように、そう言って心を切り替えます。

 よく雪蓮様から、考え過ぎる悪癖があると言われますが、こればかりは性分ですから仕方ありません。

 実際、考えるべき事は山ほどあります。

 先の戦で魏を撃退したとはいえ、土地を奪われ。 今まで先陣を切って諸侯を引っ張ってきた雪蓮様は王を退かざる得なくなり。 新たな王である蓮華様は、その力をまだ天に示してはいません。

 雪蓮様が生きている事で、旧臣達はこれくらいの事で揺らぎませんが、問題はそれ以外の者達です。

 今の所、動いているのは極一部と言う事で、祭様達は楽観視していますが、これはそんな簡単な問題ではありません。

 例え、反旗を翻そうとしている輩を見せしめ的に討伐した所で、一時的に抑えただけに過ぎません。

 不安に怯え、疑心暗鬼になっている諸侯を納得させるには時間がかかります。

 

 そう時間です。 あまりにも時間が足りません。 周りはそんな猶予を与えてはくれないのです。

 ……正直言って、今のままでは孫呉単独による天下統一は無理とさえ言えます。

 江東江南の地を、完全に掌握しなければ、生き残る事すら難しいのが実情と言わざる得ないでしょう。

 だからと言って、諦める訳には行きませんし、そのつもりもありません。

 民が戦や賊に怯えず、希望を持って生きられる太平の世の中にする。 それが私の夢。

 そしてそのために、まず必要だったのが時間でした。

 

 一刀君は時間を稼ぐために、曹操に劉備に渡したのと同じ本と渡し、捕獲した細作を帰した。 ……幾つもの疑念と思惑と共に。

 そのおかげで、曹操は袁紹を破り最大の敵へと成長するでしょう。 …ですが、その方がまだマシです。

 もし万が一何をするか分からない袁紹が曹操を降した時の事を考えたら、最大の敵の方が、不確定要素だらけの最狂の敵より戦いやすいと言う物です。

 何より曹操の性格からして、今度はこちらの準備が揃うまで待つはずです。

 曹孟徳。 彼女は別に伊達や酔狂で決戦を好む訳ではありません。

 それが天下に示しやすいと言うのもありますが、その本当の狙いは民への負担を最小限に抑えるためです。

 そして勝ち負けをはっきりさせる事によって、その地を素早く手中に収めるためです。

 彼女が、一刀君の言葉をどれだけ受け止めるかは分かりませんが、間違いなく一刀君を警戒し万全の態勢で臨んでくるはずです。

 

 ですが、それだけでは足りません。 最大の問題は使える駒が足りないと言う事です。

 一体どうしたら………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

 こんにちは、うたまるです。

 第97話 ~ 止められぬ想いに宝石は、ひたすらに己を責める ~ を此処にお送りしました。

 

 今回も明命が出てこなかったです。 本当にバランスよくキャラクターを登場させてゆくのって難しいですよね。 一応、明命が多く出てくる展開があるので控えていると言うのもあるのですが、気が付いたらこんな事に(汗

 さてさて、今回は前回の続きで翡翠視点で描いてみました。 さて、どれくらいの人が、あの後一刀はお仕置きを受けずに済んだと推理していたのかなぁと思いつつ、最初から軽い濡れ場を持ってきました(w

 その後は翡翠の苦悩なのですが、私にとっては翡翠はロリでお姉さんであると同時に、誰よりも『 女 』である人物なんですよね。 『 ぁぅぁぅ 』言いながら恥ずかしがりながらも。その裏では、一人の弱い大人の女として、苦悩に悩む姿があったりする。 そんな一部を今回持ってきました。

 こういうヒロインの闇の部分を嫌う人は多いかもしれませんが、私はこういう部分があって当然だと思っています。 だって、例え話の中だけだとしても、生きている人間なのですから多くの苦悩を持っていて当たり前だし、それ故に、光る物が在ると思っているからです。

 とまぁ、今回のお話の件はこれくらいにして、次回くらいから、もう少し話を進めて行こうと思っています。 ………遊びながら(w

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
136
13

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択