あるところに周りから天女と呼ばれる一人若い少女が居りました。
幼い頃からその人は誰の目から見ても美しい顔立ちをしており、そして腰まで伸びた青く美しい長髪をポニーテールにしていました。
誰に対しても蟠り無く、愛想が良かったため周りからとても慕われていました。
ですがその人は決まって夕方になると周りの人達から姿を消し、次の日の朝日が昇るまで戻って来ませんでした。
それと入れ替わるように今度は凛々しい顔立ちをした若い青年が出てくるのです。
髪は漆黒に染まり、青年が歩くその姿は誰もが振り返るほどとても決まっていました。
その青年はとても穏やかな性格をしていて、話していると不思議とその日にあった嫌な事が何でもないことのように感じてしまうことから、こちらも周りからとても慕われていました。
しかし、その青年も朝日が昇る前に忽然と消え、再び日が落ちるまで姿を決して見せはしませんでした。
ある日、どうして二人はいつも決まった時間にしか現れず、しかもお互いすれ違わないのだろう?と疑問に思った一人の男がいました。
その男は周りの人々に内緒で立ち去ろうとする少女を見つけ、こっそりと後を付けました。
その少女は村の外れにある小さな小屋に入ると、姿を消しました。
男は木陰に隠れ、暫く少女が消えた場所をジッと見つめ続けました。
・・・すると、その少女が消えた場所からあの青年が出てきました。
男は声が出そうになるのを必死に堪え、青年が立ち去るまでその場から動けずにいました。
青年が立ち去った後、男はいけない事だと思いながらも、その小屋へと忍び込みました。
そして男はある物が目に映りました。
・・・それはさっきまで少女が来ていた服が脱ぎ散らかした状態で置いてあったのです。
ですがその少女は見渡してもどこにもいません。
もしや、と男は思い至りました。
その時、後ろで閉めたはずの扉が開けられました。
パッと振り向くと、そこに立っていたのは悲しい顔をした青年でした。
「知って・・・しまったんですね・・・」
男は後ずさりながら青年に向かってある言葉を放ちました。
その言葉を聞いた青年はゆっくりと目を閉じながら言いました。
「もうここにはいれないですね・・・今までありがとうございました」
次の瞬間、男と村人達の少女と青年に関しての記憶は・・・無くなったのです。
眩い閃光が辺りを包んだかと思うと、小屋は蛻の殻になっており、最初から誰も住んでいないように静まり返っていました。
残された男は何故自分がこんな場所にいるのだろうかと首を傾げ、村へと帰って行きました・・・
『お前は村人全員を騙していたんだな・・・!!』
そんなつもり、無かったのに・・・
『この男女が・・・ッ!!』
『出て行ってくれッ!!』
私達が何をしたって言うの・・・?
『信じていたのに・・・!!』
・・・いつだってそう。
『やーいやーいおっとこおんな~い!!』
『きもちわりぃーんだよ!!』
『あっちいけ!!』
お前達が勝手に期待して、そして勝手に失望してるだけなのに。
『どうしてこんな子供が生まれたの・・ッ!!』
『バケモノめ・・・ッ!!』
それなのになんで。
『死んでしまえ』
『消えろ』
こんなにも悲しんだろう・・・?
いっその事。
「死んでしまえば楽になれるのかな・・・?」
ぐるぐるぐる思い悩んで。
ぐるぐるぐる場所を巡って。
こんな力もこんな体も。
「いらなかった・・・ッ!!」
(・・・・・・。)
・・・・・・・え?
(・・・・・・。)
こんな自分でもいてもいい場所があるの・・・?
(・・・・・・。)
・・・・・・行ってみたい、かな。
(・・・・・・。)
・・・・・・ところで、貴女は誰?
(・・・・・・。)
・・・そう。私の名前は・・・
・・・・ね。俺の名前は・・・
蒼天と呼ぶに相応しいこの空の下、三人の女性が馬に跨り疾走していた。
一人は桜色の長髪を風に靡かせ、一人は長い黒髪を左右に分け、もう一人は傍らに実用性の高そうな弓を携えていた。
「全くッ!!母様ったら噂好きの癖に自分で確かめようとはしないんだから!!」
苛立ちを顕にしながら馬を駆るその姿は見るものを惚けさせるような程見事だった。
対してそのスピードに追い付きながら豪胆に笑う女性がいた。
「ハッハッハ!!そう言い召されるな策殿。堅殿とて忙しい日々を過ごされておるのだ。少しくらいの我が侭に付き合っても良かろうに。」
「祭ッ!!あの人を甘やかさないでくれる!?そりゃあ忙しいのは分かるけど、だからってこんなところまで行かされる娘の気持ちにもなってもみてよ・・・」
ちなみに三人が疾走しているここは、建業の傍を通る大河である大江を渡り、合肥と建業の合間にある居巣と呼ばれる土地である。
近くに巣湖と呼ばれる湖があり、今大陸で話題になっている占い師の管路曰く、
「巣湖へ天より使われし者が現るだろう。その者仕官しえる王に天下は訪れるであろう。」
という占いが出たと噂されているのだ。
(母様の噂好きには困ったものよ・・・でも大体はその噂でここら近辺の賊とか豪族とか打ち滅ぼしてんのよね・・・)
改めて自身の母の運の強さに呆れつつ、先程話していた人物とは反対側を走っている方へと顔を向けた。
「冥琳~。後どれくらいで目的地に着く?」
冥琳と呼ばれた女性は少しずれた眼鏡をクイッと直すと答えた。
「この速度で行けば後半刻(一時間弱)位で目的地に着けるだろう。」
「そ♪・・・それじゃお二人さんしっかりと付いて来なさいよね!!」
そう言い放つと、先程より俄然馬のスピードを上げて左右の二人を置いて行った。
「全く・・・貴女も相当なものだと思うのは私だけかしらね、雪蓮?」
溜息を付きながらもそれに続いていった軍師を見て再びニヤリとしながらも、最後に残った祭と呼ばれた女性も後に続いた・・・
ここまでぶっ続けで走ってきたのが幸いしたのか、まだ日は完全には落ちきってはいなかった。
「くぅ~・・・流石に腰が痛いわね・・・」
苦痛に顔を歪める雪蓮と呼ばれた彼女を、冷めた目で見つめている冥琳。
「・・・何じゃお主等、この位でもうへばっとるのか?ほれ、暗くならんうちにさっさと探しに行こうではないか。」
年季の違いからか、はたまた唯単に馬の扱いに優れているのか、ケロッとした顔で馬から降りる彼女を見て雪蓮は溜息を付いた。
「はいはい、分かったわよ。・・・ほら冥琳も、私が悪かったから機嫌治してよ~。ね?」
「はぁ~・・・分かったわよ。」
実は冥琳も顔には出してはいなかったが、腰が悲鳴を上げていたのだ。
その原因はもちろん雪蓮にある為、先程まで目で非難をしていたのだった。
三人は馬の手綱を木陰に括り付けると、早速湖の方へと向かっていった。
この湖は横長に出来ており、ぐるりと一周するには一刻半(三時間半)位かかる。
その為、雪蓮達三人は周るのではなく、高所から眺めて見つけようという作戦を取った。
「しっかし、こうしてみるとなんだか懐かしいわね~。」
「あぁ、そうだな。確か昔はよく貴女に引きずられて蓮華様と小蓮様、それに穏も一緒に川へと繰り出したわね。」
「そうそう。あそこで食べた魚はおいしかったなぁ・・・」
懐かしそうに昔話をし始めた二人の話を聞き流しながら、祭は酒を片手に望遠鏡で奇妙なものを見つけた。
(ん・・・?あそこで倒れている者は・・・女子か?)
首を傾げながらも、祭は二人に向かって言った。
「昔話はそれまでじゃ二人とも。行くぞ。」
「あ、見つかったの?」
目を細めながら祭が向いていた方角へ見つめる雪蓮だったが、やがて立ち上がった。
「どっかの誰かさんら二人が真面目に探そうとしていればもっと早く見つかったのにのう。」
「「うっ・・・」」
固まる二人を尻目に再び豪胆に笑いながら祭は崖から降りていった。
顔を見合わせた二人はバツの悪そうな顔をして言った。
「ねぇ、帰ったらお酒の一本や二本祭にあげよっか・・・?」
「そうだな・・・今回は私も悪いしな・・・」
そう言い合ったあと、二人も続いて崖を降りていった・・・
目的地に着くと、そこには不思議な服を着た人物が、体を半分水に浸かりながら倒れていた。
「祭、この子が?」
「そうじゃな。じゃが先程見たときは女子のように見えたのだが・・・気のせいだったかの?」
そう言いながら祭は青年の首筋に手を当てた。
「・・・・・・・。」
「どうです?」
冥琳は腕を組みながら尋ねた。
「ふむ、唯単に気を失っているようじゃな。しかし体温が幾分低くなっているようじゃ。連れ帰るなら早めにしたほうが良さそうじゃな。」
辺りは既に日が沈んでおり、月明かりが無ければ何も見えない状況だろう。
祭は立ち上がりながら二人に問いかけた。
「どうするんじゃ?」
「・・・・・・もし管路の言うとおりだったらこの子だってことになるけれど、どう思う冥琳?」
「どうもこうも無いだろう。現状ではこの者は気を失っていて、このままでは不味いのだろう?ならば取れる選択肢は二つ。」
「連れて帰るか、このまま捨て置くか・・・ね。」
「この場では策殿が決められよ。堅殿の代理として来られたのだからな。」
雪蓮は暫く手を当てて考えた後、二人に向かって言った。
「・・・よし、一度連れ帰るわよ。」
「いいのですかな?」
確認のために祭が聞いた。
「えぇ。天からの使者かどうかは起きてから聞いてみればいいだけだし、もし違うってんならその時はその時で決めましょう。」
桜色の髪を掻き揚げながら雪蓮は言った。
「決まりね。それじゃあ祭殿、この者の運送お願いします。」
「仕方ないのう。・・・あい分かった。その役目引き受けよう。」
その後はテキパキと青年をぶん縛り、馬が待機している場所へと戻っていった。
その帰り道・・・
「それにしても、彼顔が可愛かったわね~♪」
ケラケラと笑いながら雪蓮は言った。
「しかし、見た目より筋肉もしっかり付いているようで。背負った時にそう感じましたな。」
祭も後ろに乗っけてある青年を指差しながら言った。
「ですが一番肝心なのは彼が天からの使者なのかどうかでしょう。二人ともそう言った事は後回しですよ?」
「ぶーぶー、冥琳ってば硬いんだからー」
「そうじゃぞ公謹。そんなことだから目尻の皺やら目元の皺やらが増えるのじゃ。」
「それ言えてるわね~♪」
「・・・・・・ほう?」
ブチッ・・・
「ん?」
「ほえ?」
「誰が・・・・・・」
この時の冥琳を現すなら、後ろにゴゴゴゴゴ・・・・という文字が相応しいだろう。
「だぁれが増やしてるとお思いかこのお気楽能天気共がァァァァァァァァッ!!!!!」
「め、冥琳が怒ったーーーーーッ!!!」
「策殿、逃げるぞッ!!」
逃げると言っても結局は同じ場所に戻るのだから意味が無いと思うのはこの際置いといて。
「フフフ・・・逃げ切れると思ってもらっては困りますなァ・・・。待てやコラァァァァァァァッ!!!!」
こうして、ブチ切れた冥琳に追い掛け回された二人は、城に着く前にコッテリと怒られたそうな。
・・・・・・彼女の心労を増やさないように心に誓おうとする雪蓮と祭であった。
南「作者と~」
雪「雪蓮の~」
『あとがきこ~な~』
雪「わ~い」(パチパチパチ)
南「ってことで始まりました。いかがでしたでしょうか?」
雪「いかがって言われても、読者の皆さんには分かりづらいと思うのだけれど?」
南「まぁまだ序盤中の序盤ですからね。無理もないでしょう・・・だがあえて言おう!!カスであるとッ!!」
雪「・・・何読者の事罵倒してんのよ。」
南「いや、何となく。」
雪「そんなこと言ってると、読者から見捨てられるわよ?」
南「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい(ry」
雪「(ry使う位言うんだったら最初から言わなければいいのに・・・」
南「いやだって最初に作者のキャラ付けしとかなくちゃいけないじゃないですか。」
雪「うん、どっからそんな間違った情報を知ってくるのかしらね?」
南「まぁ、とにかくキャラ付けもバッチシ決まったことだし、あとがきっぽいことしましょうか。」
雪「何だろう、とにかくすっごくコイツを切り捨てたい。んでさっさと帰りたい。」
南「まぁそう言わずに。さてこの作品は感づいてる人もいるかと思いますが、一刀が男と女に変わります。」
雪「なんかどっかのマンガに似ているわね。」
南「二重人格・・・とでも言えばいいんでしょうかね?朝は女、夜は男と、心と体が入れ替わっちゃうんですよ。」
雪「で?本人はそれに気付いてるの?」
南「はい。気付いてます。本文中にもあった通り、一刀等は元の世界ではその姿の変わりように気味悪がれて嫌われていた、という設定です。しかもどちらも元の世界では恐ろしく強かった為、尚更恐怖と畏怖の対象として見られていたわけです。」
雪「ふーん。でも、本文中ではそんな感じは見受けられなかったけど?」
南「あれは社会から隔離された村にひっそりと暮らしていたという設定で書いてます。ですが不思議に思った村人の男がそれに気付いて・・・とまぁここら辺はまた書くと思います。」
雪「なるほどねぇ。・・・ところでさ、機神。気付いてた?」
南「何がですか?」
雪「あんたの後ろに祭いるってことに♪」
南「・・・・・・。(ギギギ・・・)」(ゆっくりと後ろを振り返ってる)
祭「機神とやら。大層ご立派な名前じゃなァ?」
南「そ・・・それはどうも・・・」
祭「それは置いていて・・・この世に言い残したいことは無いかの?」
南「・・・いや、きっと祭さんなら俺を許してくれるはずだッ!!」
祭「・・・ほう、言いたいことはそれだけか?・・・ならば覚悟せいッ!!」
「機神はどれを選ぶ? 逃げる← 逃げる 揉む 」
南「コレだぁッ!!」
「機神はどれを選ぶ? 逃げる 逃げる 揉む←」
祭「死ね」
ドッゴォォォォォォォンンンンンンン!!!!!
ギャアアアアアアァァァァァァァァァ・・・・・・
雪「・・・(無視して)それじゃあ皆こんな作者だけど見捨てないでくれるとありがたいわね。それじゃ次回でまた会いましょ♪」
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記念すべき第一作目。