本編開始前に、これはそこにまで起こった出来事のまとめたものです。
本編開始前の一年前
・真・恋姫†無双〜虚像の外史☆三国志演義〜の主人公が曹操(華琳)と出会う
・主人公は記憶喪失であったため、曹操が哀れみと今後の利用に曹仁という名を与えて義親となる。
・曹仁が自らを鍛えるために修行の旅に出る
↓
半年前
・劉備達と北郷が出会う
・黄巾の乱が始まる
・曹操が于禁・楽進・ 李典を仲間にする
・曹仁が修行の旅を終えて、軍師司馬懿(空)を連れて帰ってくる
・北郷及び曹操や名のある諸侯達が黄巾討伐を始める
↓
五か月前
・黄巾党の首謀者である張三姉妹が自らの危機に蜀の成都に逃亡
・総大将がいなくなり指揮が乱れ諸侯達に討伐される
↓
五か月の半月後
・洛陽に住む董卓が民を苦しめているという理由で、袁紹(麗羽)を総大将として反董卓連合を結成して攻める
・曹操・曹仁が劉備・北郷と出会う
・司馬懿の提案で劉備・北郷が客将として曹操の軍門に入る
・董卓(月)・呂布(恋)軍対反董卓連合が虎関門で激突、反董卓連合が勝利する
↓
四か月前
・呂布が董卓を守るために民や反董卓連合に、洛陽にて董卓を殺したと宣言。この戦いを終わらせる
・曹操が北郷に恋をする
・陳宮(音々音)と張遼(霞)の策で、呂布が徐州を手に入れる
・孫策が戦後の洛陽で手に入れた玉璽(天子の印)が原因で袁術(部下)に殺され、共にいた大喬・小喬も殺される
・玉璽を手にいてれた袁術(美羽)が皇帝と名乗る
・孫権が跡を継ぎ、事の次第を何も知らない袁術に深く恨みを抱く
・公孫賛(白蓮)の国に袁紹に侵略され、蜀の成都に落ち延びる
↓
三か月前
・公孫賛の安否を確かめに蜀に行くことを曹操に提案するが断られてしまう
・曹操と袁紹が官渡で激突。曹操が勝利して袁紹は蜀の成都に落ち延びる
・呂布・曹操(劉備)・孫権が連合軍を結成して激突。連合軍が勝利して袁術は部下の張勲と共に蜀の成都に落ち延びる
・司馬懿が今後のために蜀の侵略を提案するが劉備に反対される
・曹操と劉備の関係が悪くなる
・曹仁が北郷に曹操を守ってほしいと頼み、北郷承諾する
↓
二か月前
・曹操が張遼を仲間にする
・劉備が諸葛孔明(朱里)と出会い仲間になる
・孔明の助言により曹操と決別し北郷もそれに付いて行く
・北郷がいなくなった原因で、曹操が重い病にかかってしまう
・曹仁が裏切った北郷を憎む
・劉備が蜀を手に入れ、趙雲(星)・黄忠(紫苑)・鳳統(雛里)など蜀にいる名のある武将や戦いで敗れた武将達を仲間にする
↓
一か月前
・曹操が病死する
・曹仁が跡を継ぐが曹操の死が原因で荀彧(桂花)・許緒(季衣)が病死する
・曹仁が北郷を殺すまで戦いを続けることを宣言。その見せしめに西涼を侵略し馬騰を殺す。生き残った馬超(翠)・馬岱(蒲公英)は蜀に落ち延び劉備の仲間になる
・馬超達が北郷を一時恨むが、和解する
・劉備・孫権・曹仁が荊州の各部分を手に入れる
・事態の状況に重みを感じた孔明の意見により一時的に拠点を荊州へ移って、劉備は南蛮へ侵略、北郷は徐州の呂布の説得、孔明及び鳳統が孫権の同盟に動く
↓
半月前
・北郷を自身の手で殺すため曹仁は、指揮権を司馬懿に渡したため魏は司馬懿のものとなる。ただし総大将は曹仁まま
・北郷が徐州の呂布の説得に動いたことを知り、呂布との同盟を名目に北郷を殺しに一人で徐州に潜入する
・北郷に遭遇。しかし呂布に妨害され暗殺失敗。
・呂布、攻めに来た五十万の曹仁軍を一人で食い止める。
・呂布戦死、張遼戦死
・徐州を占領するが、北郷も民も蜀へ逃亡
・司馬懿の進言により、呉を攻める
・孔明及び鳳統の助力により蜀・呉同盟結成
・赤壁の戦いが始まる
・黄蓋戦死
・周瑜病死
・劉備南蛮を平定
↓
そして本編開始へ………
主な登場人物
曹仁(本名??)
武器:「刹我裁」
この物語の主人公。
聖フランチェスカ学園の歴史資料館から古い鏡を盗もうとした左慈を止めようとしたが、気づいた時には異世界に飛ばされる。しかもその衝撃で記憶喪失となる。その後、曹操が哀れみと今後の利用ため曹仁という名になる。
何もない自分を受け入れてくれた曹操を神の如く崇拝しており、彼女を裏切り病死させた北郷に激しい殺意と憎悪を抱いている。通り名は『天の反逆』
前述通り、曹操のことを崇拝していて死後政権を握っても自身は天下は勿論、地位や名誉、金にも興味がなく、北郷の殺すことにしか興味が無い。攻撃的かつ感情のままに行動する性格が災いして人望は薄いが、彼の儚いほどの純粋さを理解する者も少なくない。
以前は北郷と同じく優しさと懐の広さを持ち合わせ女性に対しては一途で、愛した女性は一生愛そうと決めていた。また北郷が曹操の部下であった時には同じ未来人なのか互いに認め合っていた。
ちなみに彼自身はまだ、一度も人を殺したことはない。殺すのは北郷だけを決めているから。
司馬懿(真名:空)
曹仁の盟友であり、彼に変わって魏をまとめている。
程昱ぐらいの小柄の少女で、緩くウェーブのかかった長い金髪が特徴。ワンピース型の下着にも似たスケスケの素材と黒いベルトで構成された拘束服を着用し、その上から黒い外套を羽織り、リード付きの首輪をしている。 また目が見えない象徴として目隠しを装着している。
ちなみに北郷に『なんかすごくない?』と言われも『格好なんてどーでもいいですよ~』と服装などは気にしない。
その正体は程昱(風)。
北郷 一刀(ほんごう かずと)
恋姫の主人公。
劉備(真名:桃香(とうか))
蜀の王。
兵士
たびたび出てくる謎の兵士。
その正体は、左慈が作った人形でかなり強い『歪み』の力を持っている。
管輅(かんろ)
乱世を収める『天の御遣い』の予言をした占い師。
見た人が見惚れるほどの綺麗な瞳をしており、月琴を弾きながら旅をしている。『三国志の世界』の住人ではなく、世界を監視する立場にある存在。
北郷とも何かしらの接点があるらしく、彼のことを「私が選んだ切り札」「会うのは初めてだが良く知ってる」と語っているが、一方で理由は不明だが顔を合わせたくないらしい。
今作の物語については『すべては彼(北郷)が決断で運命が決まる」と予言する。
第一話
『闇の道』
これから語られるのは闇の道
二人の英雄が誕生したために起こってしまった出来事
そして、この運命を逃れる道は
ない
広い船桜を抜け、両空き扉を開ける。
そこには、風が燃え、夜空が燃え、大河が燃えた。
曹仁、彼の瞳に、赤い炎がちらちらと瞬き、耳元にはちりちりと火の粉が爆ぜる音がささやく。
「………」
彼は目の前に広がる赤い風景をにらんだ。
――『赤壁の戦い』。
魏軍百万の軍勢と、蜀呉の連合軍七十万が雌雄を決した戦い。
彼が率いる魏軍は、いま、まさに兵力の大半を失う大敗のさなかにあった。武将達は、自らの指揮する軍船のなかで炎にまれながら兵達に後退を叫び、軍師達は絶望的ともいえる防戦の指揮をおこなっている。
「無事だったか曹仁」
濡れた黒髪を垂らし、荒い呼吸のなか、微笑を浮かべて現れた夏侯惇。
”どうして貴様がここにいる?”と尋ねると夏侯惇は冷静に言う。
「……そんな口を叩けるなら、どうやら心配する必要なかったみたいだ。……全くここまで泳いできた意味がない」
「………」
彼は”そうか”と言ってそれ以上は何も言わなかった。
「申し上げます~。曹仁さん~」
司馬懿が、眠そうに、ふぁあとあくびをしながら現れた。だが、彼女の髪も濡れている。
すぐさま『演技』だとわかったが、彼は何も言わない。
「密偵の報告によれば、連合軍はこの地から陣を引き払い、進軍の準備をしていました~。どうやら家に帰るみたいですねぇ~」
「………」
この敗戦の混乱のなかすでに敵軍に密偵を潜ませた司馬懿に彼は関心をした。しかしその先をさらに述べる司馬懿の作戦には、彼は予想さえしていなかった。
「………くく……あははは」
その作戦を聞いた彼は笑い、司馬懿が仲間であったことに心から喜びを覚えた。
「………」
しかし夏侯惇の顔は良くない。それどころか司馬懿に殺意さえ抱いた表情だった。
「何か不満なんですか~春蘭さん?」
司馬懿は、夏侯惇の真名[春蘭]を呼んだ。
[真名]とは、この世界で、真に心がつながりあった者同士が呼び合う「真の名前」である。その名は、その者の「本当の心と姿」をあらわし、心を許しあった仲間同士でしか使われず、口に出すことさえ許されない。名前による「心の絆」「心の契約」といえるもの。
そして、夏侯惇と司馬懿は、その[真名]を呼び合う仲だった。
「………一つ聞きたいことがある空。その作戦は一体いつから考えていたんだ?」
「そうですね~~………黄蓋さんが裏切るわかっていた時からですかねぇ~」
「それは『最初』から知っていたということか? この百万の兵を囮にしたというのか」
「春蘭ちゃん~考えすぎですよ――」
「………」
司馬懿が、眠そうに、ふぁあとあくびをするが、夏侯惇の目はさっきよりもきつくなる。
「………くだらない」
そんな空気を壊したのは曹仁。
彼は夏侯惇に顔を向けると”そんな事よりもさっさと退却指揮をして来い”と命令する。
「………御意」
夏侯惇は明らかに納得できない顔をしつつも残存兵をまとめるべく炎の中へ消えていき、あとに残った二人は、次々に炎に包まれてあぶくのように沈んでいく魏軍の軍船を眺めた。
「……さすがにバレましたかねぇ~この作戦」
「………」
作戦とは魏軍百万の軍勢と、蜀呉の連合軍七十万が雌雄を決した戦い『赤壁の戦い』を囮にしたことであり、司馬懿はこの運命の大局ともいえる戦いを犠牲にした。
「ふふ……本来なら嫌というほど蜀呉連合軍の追撃を受ける運命もこれで戦局は一気変わりますね――」
司馬懿が立てた作戦とは、北郷を人質に取って魏の領内に入るという単純な作戦。
確かにこの作戦が成功すれば蜀は恐れて追撃できなければ、呉も蜀のことを気遣って動かないし、何の犠牲もなく帰ることができるが、まずこんな作戦を立てる必要があったのだろうか。
最初から黄蓋が裏切るわかっていたのならそれを利用して勝利すればよかったではないのかという疑問が抱くのが定石。
しかし、曹仁はその司馬懿の作戦を承認した。それはたった一人の人間を自ら手で殺すため。
「後は手はず通りに、劉備さんに和睦の相談と偽って北郷さんを捕まえてから、本国で処刑しちゃいましょう~」
「………」
彼、曹仁の目的は一日も早く北郷一刀を殺すこと。そのためなら十万の兵が犠牲になろうが百万の兵が犠牲が仲間が消えようが関係なく、この『赤壁の戦い』も敗北することで北郷に接触できるならそれでいいと判断したからに過ぎない。
「…………くく……あははは」
曹仁は堪らず笑うとまるで応援するかのように炎はさらに大きく長江の大河を燃やす。
「待っていてください華琳様。もうすぐ、もうすぐ北郷の魂を貴方に献上致しますっ!」
その瞳の奥、心の奥底で彼は、”待っていろ北郷。すぐに殺してやる”と心を震わせていた。
「ヘックションッ!」
指揮官が待機する天幕のなかで、この世界にはあまりにも場違いな、『白い学生服』を着た青年の緊張感のないクシャミが響く。
―――劉備軍・陣営。
「大丈夫? ご主人様」
栗色の髪の女の子が心配そうな顔つきで、その青年の顔を上目づかいにのぞきこむ。
「大丈夫、大丈夫。ただのクシャミだよ」
青年は鼻を擦りながら、微笑む。
「俺なんかより、われらが蜀の代表『劉玄徳』さんが、風邪を拗らしてしまう方が困るよ」
「そんなことないよご主人様。私は全然自分の夢を叶えられない女の子だもん」
「………」
青年は彼女の細い肩をそっと抱いた。
「あやまるのは、こっちほうさ。乱世をおさめる『天の御遣い』のくせに、なかなか、戦いを終わらせることができないんだから」
彼の名は、北郷一刀。
この世界の人々から、乱世をおさめる『天の御遣い』と呼ばれている彼は、もとは『この世界』とは違う未来世界で暮らす平凡な学生であった。
彼が着ている『白い学生服』も、彼がいた世界で通っていた『聖フランテェスカ学園』の制服なのだが、この『三国志の世界』では、白く輝く『天の羽衣』といわれ『天の御遣い』の証の一つとなっている。
「ねぇ、桃香。この前みんなで話し合った『天下三分の計』なんだけど……」
――天下三分の計。
天下を蜀・呉・魏の三つにわけ、それぞれの天下を持ち、平和を保っていく。劉備が思いつき、諸葛亮が、かたちにした計略である。
この『天下三分の計』によって、蜀と呉は同盟を組み、あの『赤壁の戦い』で、力を合わせて曹魏の大軍と戦うことができたのだ。
「……やっぱり曹仁に、どれだけ早く『天下三分の計』を納得してもらうかが、この戦いを早く終らせることだと思うんだ」
「………」
「桃香?」
北郷一刀の問いかけに、劉備は黙った。
「………どうしたの?」
北郷の再度の問いかけに、劉備は小さく呟いた。
「……ご主人様、その考えは本心じゃないんでしょう?」
「………」
栗色の髪が甘く、夜空に流れ劉備は唇を噛みしめて、上を見上げた。
「本当は、曹仁さんに殺されることが戦いの終わりって思っているんですよね?」
「………」
曹仁は天下は勿論、地位や名誉、金にも興味がなく、北郷の殺すことにしか興味が無い。それ意外には一切振り向きもしない。ただ、北郷一刀を殺すことのみだけで今を生きている人間。
「勘がいいね。桃香」
北郷一刀は、劉備に微笑みかける。
「……行かせないもん」
劉備は意地になって、北郷に抱きつく。
「大丈夫だって。なんせ、俺には『天の御遣いの力』がある」
「………そんな力、無いじゃない。だって、『天の御遣い』というのも、あの桃園でわたしとご主人様が決めた役割――」
劉備は、はっと顔を上げる。そこに北郷の瞳がすぐ近くにあった。
「大丈夫。きっと大丈夫さ。なんせこれまでだって俺は何も出来なかったけど、ここまで来たじゃないか」
「それでも、これ以上危ないことをして――んっ!」
北郷は、劉備を胸にぐっと顔をうずめた。
「……するさ。桃香のためだったら危険なことくらい」
そして劉備の唇を重ねた。
紅くぬめる長江の大河に、一本の棹が突き立てられた。
そのまま、船頭によって棹はひかれ、小さな船が前に進みながらその上で、司馬懿が、眠そうな顔であくびをする。
――そのとき。
静かな翼音を響かせ、一羽の白いハトが舞い降りた。
クルック~と鳴く、無表情なハトの足には、小さな手紙が巻かれいる。
それを司馬懿の護衛兵が手紙を開け、目の見えない彼女のために耳元に囁いた。
「……了解です~」
司馬懿はその報告を眠そうな顔で頷く。
「……到着です」
船頭の声と共に小船がこつんと、劉備軍がいる対岸にたどりついた。
たいまつを手にした劉備軍の兵士達が、わらわらと司馬懿達のもとに群がってくる。
目が見えない司馬懿は連れの手に引っ張れながら小船から降りた。
「どうも~~司馬懿で~す」
司馬懿はとろ~んとしたような口調で、兵士に挨拶する。
「………」
敵兵に囲まれても、恐れるどころか、のほほんする司馬懿に、劉備軍の兵達は、どう対応するべきかうろたえてしまう。その中をかきわけて、笑顔満面の劉備が手を振りながら、ぱっと姿を見せた。
「ようこそ。司馬懿さんっ!」
「そのお声は………劉備さん。お久しぶりです~。さっそく今後のお話をしましょう」
「どうぞ。どうぞ。こちらです」
劉備の手招きに応じて、司馬懿は連れの兵士に手を引かれながら歩き始める。その隙に、司馬懿を運んでくれた船頭が、音もなく、夜闇に消えた。
「――これで、お話は、おしまい」
月琴を持った女性が口を閉ざした。
お話を聞いていた青年はびっくりした顔をする。
「続きは?」
「続きは『未来』のお話になってしまう」
彼女は月琴をかたわらに置いて、三日月のように微笑んだ。
「でも、貴方はお話が聞きたい?」
「………聞けば、『未来』が本当になるだろ? だったらすべては聞けないよ。でも……その『未来』の運命を変えてしまうような者がいるなら、そいつの名前ぐらいは聞きたいな、管輅さん」
管輅は星を見て、つぶやくように『未来』を言った。
「すべては北郷一刀の決断で運命が決まる……」
「………やっぱりな」
青年はその『未来』に頷き、管輅と同じように空を見上げて星を見るのだった。
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前回のお話
聖フランチェスカ学園に通う少年は、ある夜、学園内で泥棒と北郷が戦って所に遭遇する。そこで助けに行こうとしたその時、光り輝き、彼は見知らぬ世界へと飛ばされてしまうのだった。