「さて、こいつらをささっと連行して酒飲みに行くで。」
姐さんがで馬に跨って先行する。
まぁ酒好きの姐さんが早よう戻りたがるんは分からんでもないけどな…。
三国の将が集まって行われる立食ぱぁてぃ。
もちろん酒飲みも集まるから大量の酒が振舞われる。
そう、大陸が平定されて一年、そして……
隊長がウチらの前から姿を消して一年が経とうとしていた。
真恋姫無双 魏伝 ~君の名を呼ぶ~
『飲み直すのは構わないけどあそこでは勘弁だぞ。』
そう言ってみんなが居る方を指差す一刀。
そこでは華琳が悪酔いした桃香に後ろから胸を揉まれてる場面や惇ちゃんが大声で叫びながら暴れまわってるのが目に映った。
『分かってるって。それに…一刀と二人きりで飲み直し、したいし…。』
言い終わってウチはすぐに顔を下へと逸らした。多分ウチの顔は真っ赤になってると思う。
こんなんウチらしくないんは、ウチが一番わかっとる。
けれど、一刀を意識すると胸がドキドキして顔が熱くなって、ウチがウチらしくなくなってしまう。
そうなってくるとつくづく認識してしまう。
ウチは一刀に惚れ込んでるんやなぁ、と。
『そっか、じゃ行きますか。』
なんて考えてたら一刀がウチの手をいつの間にか握って、笑いかけてくる。
その笑顔を見て胸のドキドキが一層速くなる。
改めて思う。ウチは一刀が大好きなんやと。
『へぇ、こないな場所よう知ってたなぁ。』
霞の手を握ってやって来たのは城の近くにあった小川。
『飲み直しするんなら場所くらい目星つけといてくれよ…』
『ごめん、ごめ~ん。でも一刀と二人きりになれたら何処でもよかったから…』
霞が言った言葉が嬉しいから頬が緩む。
そう、この小川は俺が偶然見つけた場所。
城からそう遠く離れていないから酒宴の騒ぎがここまで届いている。
『まぁそんな事より早よ飲み直そ、な?』
そう言って杯を俺に渡して酒を注いでくれる霞。
並々と注がれた酒を俺は煽り一気に飲み干す。やっぱりいっきは辛い。
『ええ飲みっぷりや!流石一刀やわぁ。』
なんて呑気に言っていた霞が俺の手から杯を奪い取る。
そして、きらきらと輝いて見える目が俺を見つめている。
『そういうことね…。はい、ご返杯。』
そう言って俺は霞に酒を注ぎ返す。
いつか約束した時もこうして飲みあったな、と思い出し笑いを浮かべるが
直ぐに驚きへと変わってしまう。
『な…、し、霞!?』
『ッん...、えへへ、はい、ご返杯///』
霞は俺が口付けた所から寸分違わずに酒を飲んだのだ。
杯を差し出す霞の顔はほんのりと朱に染まっている。
夜だというのにそれがはっきり分かる程に。
そして俺は顔を背ける。
今顔を見られたら恥ずかしくて三日は閉じこもってしまいそうだ。
『一刀~~、なんや照れてるんか~?』
…分かっているくせにわざとらしく聞いてくる霞。
だから、俺は仕返しの意味も込めて霞の体を抱き寄せた。
『か、かか、一刀///!?』
一刀を困らせてやろうとウチがとった行動、一刀が口付けた所にウチも口を付ける。
かなり恥ずかしかったけど、案の定一刀は顔を逸らした。
さらにからかってやろうと言い寄った。
そしたら、一刀に、一刀の腕に抱きしめられた。
『こうなったのも全部霞が悪いんだぞ//?』
呟いた後、ウチの体を抱きしめる力が強くなる。
ウチも自然と抱きしめ返す。
向かい合わせで抱きしめられられてるから一刀の顔は見ることはできへん。
…だけど、ウチには分かる。
一刀はいま顔が真っ赤でウチに顔を見られたくないってことが。
抱きしめてる一刀の体からドクン、ドクン、って音を立てる鼓動が、ドキドキが伝わってくるんやから。
『なぁ、一刀?ウチ今ホンマに幸せやで?』
『俺も幸せだよ?霞とこうしていられるから、な//』
好きな酒を飲んで、大好きな男と一緒に居られる。
これからこの幸せがずっと続く。
…一刀の姿が透けだすまで、そう思っていた。
『一刀……?どうしたん、体が透け…と…る…?』
抱きしめていた体を離し、問いかける。
一刀は『そっか…』なんて、自分一人で納得し始めるし。
『霞…?俺の話、聞いてくれるか……?』
ウチが状況を理解が出来てないのを見て、一刀はウチに話を聞くように言うてきた。
けれど、ウチの何かが叫ぶ。聞いたらアカン。聞いたら後悔する。
やから……
『…嫌や、聞きたない…』
『霞…、お願いだから……』
『嫌や、絶対聞かへんから…』
『霞……!!』
一刀の大声に体が跳ね上がるのを感じた。
一刀は…辛そうな顔をしていた。
ウチが何も言わんの見て、一刀はゆっくりと話し出した。
『…結論から言うと、俺は消えるんだ。どうしてそうなったのかは聞かないでくれると…嬉しい、かな。まぁ、消えるって言っても元の世界に帰るのか、また違うどこかに飛ばされるのかは分からないんだけど…』
一刀が何かを言うてる。けれどウチには一刀が言った「消える」という単語ばかりが何度も何度も頭の中で繰り返される。
何故?どうして?何で一刀が…
多分そんな考えが顔に出てしまっていたからか、一刀は微笑みながらウチを抱きしめてくれた。
『俺はさ、消える事に後悔なんかしてない。未練は…無いって言ったら嘘になるけど…』
俺は色素が薄く、透明化が進んだ手で霞の頭を撫でる。
霞が落ち着くように、霞の不安を軽くしてやるために。
『それに、元の世界に戻ったとしても、違う世界に飛ばされたとしても、必ずみんなの…霞の前に帰ってくるから。』
『……ん、…ない…。』
霞の声は…震えていた。分かっていたことなのに実際目の当たりにするとかなり堪える。
『そんなん、信じられるないやろッッ!!』
霞からの怒声、目には涙を浮かべながら。
『それに、ウチとの約束破るつもりか!それともあれはウチを慰めるその場しのぎの嘘だったんかい!?』
『そんなわけ、ないだろッッ!!』
つい、大声で返してしまった。お陰で霞の顔が崩れていく。
『ごめん、…でもあの約束は嘘なんかじゃ無いし、破るつもりも無いよ。』
『けど、消えるんやろ?ウチの前から、皆の前から、この大陸から…』
『だぁ~から~、帰って来るって言ってるだろ?俺が霞との約束破った事は?』
『無い…………多分…』
『そこは無いって言い切ってくれよ…』
そして俺はまた霞を抱きしめた。
一刀の姿がだんだんと映らんようになってくる。
それでも一刀はウチを抱きしめてくれている。
この暖かさが消えるなんて嘘みたい話やのに、嘘や無い。
一刀が消えるなんて信じられんのに、一刀は消えかかってる。
『なぁ一刀、ホンマに帰って来れるん?』
一刀が戻ってこれる保障なんてどこにも無い。
もしかしたら、二度と会われへんかもしれん。
けれど…
『帰って来るって言ってるだろ?俺は絶対に約束は破らないって。』
一刀の笑顔を見てたら大丈夫な、そんな感じがして……
『…分かった、信じたる。……けど』
ウチは目を瞑り、唇を前に出す。
『約束して、絶対に…………』
最後まで言い切る前にウチの唇に一刀のそれが触れる。
そして…ウチは一人になった。
これが一刀が消えた一年前の話
あとがき
正直皆さんに伝え切れているのか不安な作者です。
どうでしたでしょうか?今回のお話は…
作者は創造&妄想は得意なのですがそれを文にするのはちょっと苦手だったり…
できれば皆さんに少しでも伝わっていれば幸いです。
そして序章にてコメントをして頂いた皆様。
とても嬉しかったです。この場を借りてお礼を言わせていただきます。
そして見ていただいた皆様にも感謝を…
ではまた次回...
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投稿第二段です。
読んでくださる方がいてほんと感謝です