「さてと、龍虎成分も補充した事だし、紹と一緒にお風呂に行ってこようかしら…どう龍虎、親子みずいらずで一緒に入るぅ?」
龍虎と雪蓮の痴話喧嘩も一段落した頃、体力の限界値に近付きつつある龍虎に、何故か先程より活き活きとした雪蓮が含み笑いで聞いてくる。
「う~ん、紹と一緒ってのは魅力的な提案だと思うけど、さっき言ったように冥琳と話があるからね。今回は遠慮しよう。」
「えぇ~何それぇ、親子一緒の時間よりも大事な事なのぉ~。」不満そうな声を出す雪蓮
「はいはい我儘言わないでね雪蓮。それに俺はいつだって子供達と一緒の時間の方が、何よりも大切だって事は雪蓮だって知ってるだろう。」
「ぶぅ~っ、まっ良いか。じゃあ紹と一緒にお風呂入ってくるから、冥琳その間、うちの旦那様宜しくねぇ。」
「うむ了解した。ゆっくり入ってこい。しかし雪蓮よ、うちの旦那様と言うが、龍虎は私の旦那様でもあるのだがな……」溜息混じりに冥琳が、そう返すと
「ヤァダ~冥琳、細かい事は言いっこ無しよ。それじゃあ二人ともまた後でねぇ。紹~、紹~母様と一緒にお風呂入りましょう♪」そう言いながら部屋から出て行き廊下を明るい声で(大声張り上げながらとも言うが…)走っていく。
「はぁ~台風は去ったか……しかし雪蓮は、やたら元気だなぁ。さっき迄俺と一緒に冥琳のお小言喰らったばかりなのになぁ…」
「おや?私は別に二人に説教をした憶えは無いのだがな。」
「いやいや、ありゃ間違いなく説教ですから。冥琳の背後から、どす黒い何かが立ち昇ってましたから……俺何か冥琳の気に障る様な事したかなぁ??」ここ最近の自分の行動を思い出しつつ恐る恐る、冥琳に尋ねてみる。
「ほほう、では旦那様は私が今日一日政務室で、どれだけの仕事を一人でこなさなければならなかったか。御存知でないと……」地の底から響いてくるかの様な声音で冥琳が龍虎に応える。
「うっ!そ、それは……(ヤバイ、ヤバイぞっ!!間違いなく俺、冥琳の地雷踏んだらしい…タスケテ ガクガクブルブル)」
「良いですか、昼頃までは旦那様と雪蓮と三人で急ぎの案件を片付けておりましたが、昼食以降に旦那様が半休になった途端、隙を見て雪蓮の奴が逃げ出しましてなぁ。」
「い、いや、それは、その…俺が悪い訳では……(逃げたのは雪蓮であって俺は正規の休みじゃないか…ってそんな言い訳聞きそうじゃねえよ、今の冥琳…マジ コワイヨ タスケテダレカ)」
「ええ、旦那様はそもそも半休ですので悪くはありませんなぁ。しかしその逃げた輩のおかげで楽しい楽しい政務を一人で、良いですかヒ・ト・リで片付けたのですぞっ、おわかりですか!!」
「は、はいっ、申し訳ありません。(えっ、何で俺、反射的に誤ってんの??)」
「全く雪蓮の奴は目を離せばすぐにいなくなる癖が今だに……ブツブツ、それに私だって偶には…タツトラト…フタリダケデ…ゴニョゴニョ」龍虎の自室の机を睨みながら独り言を言う冥琳の顔は何故か上気した様に赤い。
「あ、あのぉ冥琳さん??」
「とにかくっ!!」
「ひぃっ!!」
「まあ分かって頂けたのであれば、今日の雪蓮の件は不問に処しましょう。」
「えっ、雪蓮の件って、悪いの俺なの?雪蓮の責任者って俺?ちょっと、いや、かなり理不尽じゃないのそれって……「旦那様!!」ハイ…ホントニモウシワケゴザイマセン」
あっこれも何回目かのデジャヴ…などと思いながら、それはそれは見事なくらいの土下座を冥琳の前で展開する龍虎の魂の叫び声が建業の街の夜空に木霊したとかどうとか。
(理不尽だぁぁぁぁぁぁぁっ!!)
「ところで旦那様。先程この私目にお話しがあるとの事でしたが、いったい何の御用でございましょうか。」絶対零度の雰囲気を纏いつつ冥琳が問いかける。
「冥琳、あのさぁ、もうそろそろ機嫌直してくれないかなぁ…」対する龍虎は先程からほぼ涙目状態であったりする。
「おや私の何処が機嫌が悪いと仰るのですか、我が愛しのダ・ン・ナ・サ・マ。」
「いや、本当もう勘弁してください、何この重々しい空気は……マジで他人がこの場に入ってきたら、この氣に中てられて気絶するぞ!!(よし、こうなったら…)」
「別に私は機嫌なぞっ…コラッ龍虎、な、何を急に!!」龍虎は席を立って、素早く冥琳の後ろに回り込む。
「ごめんな。いつも冥琳ばかりに負担掛けちまって…都督としての仕事だけでも大変だってのに、俺や雪蓮の後始末や育児までも…冥琳には本当に感謝しているよ。」そして椅子に座ったままの冥琳を後ろから抱き締め、耳元に優しく囁く。
「うっ。」急に抱きしめられた事と考えてもいなかった龍虎の甘い囁きに声が出ず、冥琳は俯いてしまう。
「それに俺と冥琳、二人だけの時間も中々取れないしで冥琳に気を抜いてもらう事も出来てないよね、俺、本当にスマナイと思ってるよ。」龍虎は俯いた冥琳の肩越しに柔らかく抱き締めて言葉を紡ぐ。
「龍虎。」不意に冥琳が顔を上げる。
「何?」
「本当に、本当に、そう思ってくれているのか??」若干潤んだような瞳で、冥琳は問い返す。
「あたりまえだろ、冥琳は俺の大事な女性(ヒト)だっ!!その大事な女性が苦労しているのに何も出来ない自分自身に嫌気がさすんだよ。なあ冥琳。俺ではまだ冥琳を支える事は出来ないのか?」それは、龍虎の心からの想い。
「フフッ…フフフッ……」冥琳が龍虎から目を逸らす様に下を向いて笑いだす。
「冥琳??ちょっと、冥琳…うっ…ちゅくっ…」龍虎が笑い声に驚いて冥琳の顔を覗き込もうとした時、不意打ちの様に冥琳から口付けをされた。お互いにとって天露よりも甘美であろう唇から離れた時、余韻を惜しむかのように銀の糸が引いた。
「フフッ…嬉しいものだな、己が認めた男が成長して、いつの間にか己を越えていくという事は。」先程迄とは全く違う、とびっきりの笑顔を真っ直ぐに龍虎にむけて冥琳は話す。
「冥琳…」ずっと見ていたい、大事に守りたい愛する女性の姿が、そこに在った。
「ずっと見ていた…いや、追いかけていたと言った方が正しいか、龍虎があの時、我々の目の前に現れてからずっと…」龍虎に抱き絞められたまま冥琳は話し出す。
「あの頃は戦が終わって同盟は結ばれたが、雪蓮や我ら呉の上層部は焦燥感で一杯だった…それはそうだろう我々は戦に負けたのだから…」
「冥琳……」
「そんな我々の下に、魏に降り立った『天の御遣い』の友人として龍虎がやって来た、それも赤壁の折から行方が知れなかった祭殿を一緒に連れてだぞ。」
(あれは魏を去って呉に向かう途中に寄った邑で療養していた祭と偶然に会ったんだっけ…)
「初めは華琳が、我々の監視の為に龍虎を派遣したのかとも疑ったよ。でもよくよく華琳の話を聞いてみると、魏への仕官の話を断って、この呉に来たと言うではないか…」
「へぇ~初めは俺って、そんな風に思われてたんだ、まあ確かに華琳からの誘いは破格の待遇みたいだったけど、俺はどうしても『孫呉』に仕官したかったからね。」龍虎は、さも当然の事とでも言うようにあっけらかんと言い放つ。
「雪蓮や祭殿、そして小蓮様は龍虎の事を一目で気に入り、初めから家族の様に接していたが、私は『軍師』という性格上、今一歩踏み込めないでいたよ。」
「まあ、軍師という立場でなら、それもしょうがない事なんじゃぁないかな。俺は全然気にならなかったし。」
「そのようだったな、なんせ事在るごとに龍虎は私に話しかけてきたからな。」
「そりゃぁこの国について聞くなら冥琳に聞いた方が一番確実だと思ったのもあるけれど、やっぱり冥琳みたいな美人と話せるのは嬉しかったからね。」
「フフ…調子の良い奴だ。しかし、いつの間にか龍虎に話しかけられるのを心待ちにする自分に、少々戸惑ったりしたものだぞ。」
「そいつはどうも。しかし、当時の話を今聞くとコッ恥ずかしいもんだなぁ。」指で頬を掻きつつ龍虎が応えると。
「だからお前からの求婚の時には……このまま死んでも良いとさえ思ったものさ。」本日一番の衝撃的告白??が龍虎を襲う。
「龍虎の前でなら私は呉の都督の周瑜では無く、一人の女性としていられる。そして龍虎も私を冥琳として死が二人を別つ迄…いや、死しても尚、私の事を愛してくれると確信したから……そうでしょう龍虎。」
「うっ……冥琳……」なんかもう龍虎の顔は赤いの通り越してたりもするのだが、冥琳は御構いなしに最終兵器になりそうなぐらいの言葉を伝える。
「だから愛しているぞ龍虎。誰よりもお前の事を愛している。」ポフッ!!と言う音が聞こえた様な気がした瞬間に龍虎の理性も一緒に遥か彼方に飛んで行った。
「冥琳!!」
「きゃっ!?」思わず龍虎は冥琳を椅子から抱き上げ(まあ所謂、お姫様抱っこ…ってヤツです)冥琳に口付けしようとした時に冥琳の人指し指でその口を止められる。
「この雰囲気で龍虎の口付けを止めるのは無粋な事であるのは充分承知なのだがな……出来たら入口のアレ達をなんとかしてくれたら嬉しいのだが……」その声に一気に興奮が冷め、嫌な予感と共に自分の後方にある入口に顔を向けた。
「じぃ~~~っ!!」そこには物凄く期待に満ちた目でこちらを凝視する雪蓮と他の龍虎の妻達の姿があった。
ゆっくりと、抱き上げていた冥琳を椅子に戻して、わざとらしく大きな溜息を付きつつ、入口で顔を覗かしている妻達を部屋に通すべく歩を進めながら、誰に言うでもない独り言が口に出る。
「オチなんか付けんでもエエんとちゃうの……」と力なく呟く龍虎の声がどこか淋しげであった。
あとがき……の様なモノ
どうもこんばんわぁ堕落論です。『孫呉の龍 序章その2』をお届けいたしましたが如何でしたでしょうか?相変わらず文脈が整理されてませんねぇ困ったもんだ。とりあえず皆様に読んで頂ける様なモノに仕上がっているかどうかが非常に心配でございますが長編はこれが処女作となりますので…優しくしてね…じゃなかった(笑)暖かい目で見ていただけたらと思います。しかし書いてて気付いたのですが冥琳の口調って注意してないと秋蘭みたくなっちまうんですねぇ(笑)まあ筆者の書き分けの腕の無さも手伝ってはいるのでしょうが(苦笑)はぁ~前途多難ですねぇ。
閑話休題
作品についてですが前回に紹介した通り、この話は魏√アフターの呉の話をメインにしています。オリ主龍虎君は呉でいますが我等が一刀君は魏の恋姫達に囲まれています。で、これも見ての通りですが龍虎君の立位置は真恋の呉√での一刀君と同じ位置と考えて頂いて結構です。
次に今後の大まかな流れとしては次回で序章が終了となり、本編が始まります。正史での龍虎君と一刀君の出会い話から、この外史に一刀君と龍虎君が戻ってくる迄が本編一章となる予定でございます。果してどの様にして一刀君は華琳様の所へ戻れるのか??それに何故龍虎君迄が一緒に外史に来れるのか??等々のお応え編となる予定です。
では長々と駄文にお付き合いくださり誠にありがとうございました。こんなダメダメ作者ではございますが批評、苦言、応援等書いていただいたりショトメ、1行コメなんでも募集しております。皆様の一言が我等初心者を成長させますので宜しくお願いいたします。後、申し訳ございませんが悪意ある中傷等は本人かなり小心者で喰らったりすると泣いちゃいそうなんで御遠慮していただきたいかなと……
ではではまた次回の講釈でお会いしましょう。 堕落論でした。
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はい、待っている人(いるのかな?)も、待っていない人も3日程ぶりでございます。「孫呉の龍序章その2」をお届けいたします。前回が雪蓮SIDEでございましたので今回は冥琳SIDEとなっております。
相も変わらず文才の無さダダ漏れで執筆いたしておりますがそれでも良いよと言ってくれる優しい方、お目汚しでしょうがお付き合いくださいまし。
最後になりましたがこの小説の御注意などを、この小説はオリキャラが主人公となる魏√アフターにおける呉の話となっています。何分筆者の観念世界の話になりますので、そういう分野が苦手の方等にはあまりお勧めする事は出来ませんので御了承くださいませ。