No.183425

真・恋姫無双 魏end 凪の伝 22

北山秋三さん

真・恋姫無双の魏end後の二次創作SSになります。
凪すきーの凪すきーによる、自分の為のSSです。ご注意ください。

2010-11-08 22:07:16 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:5026   閲覧ユーザー数:4068

※この作品は魏endで一刀が"完全"に消滅した事を前提としているため、

 

記憶が戻るとかは無いので御容赦下さい。

 

後、オリジナル設定もあり、登場人物の行動や言動が原作と一致しない場合も

 

多々ございますので、その点も御容赦下さい。

 

 

 

ギインッ!!!

 

もう何度目になるか判らない王我からの魂を削るような攻撃を凌ぎきり、思春はガクリと膝をつく。

 

「・・・ハァ、ハァ、ハァ・・・」

 

息は上がり、体はボロボロだった。

 

だがこの男を村に行かせるわけにはいかない。

 

思春は鈴音をギュッと握り締め立ち上がり、低く低く構える。

 

倒せなくてもいい。

 

とにかく時間を稼げれば第十作戦が始まる。

 

この男が居ては全てが瓦解するかもしれない。

 

(そんな事は絶対にさせんぞ!)

 

その想いで駆け出す。

 

地面スレスレを滑る様に走り、狙うのは馬の足元。

 

せめて騎馬から引き摺り下ろさねば勝ち目はまったく無い。

 

鈴音が馬の前足に触れようとした瞬間、馬が立ち上がりその背から高速の槍が思春の顔を目掛けて

 

放たれた。

 

「ハッ!」

 

それは思春の誘い。

 

鈴音を地面に突き刺す事で強制的に制動を掛け、槍をかわして王我のくるぶしを足蹴りで狙う。

 

ガッ!

 

という音が思春の足に響くが、それは王我が思春の足を自身の蹴りで返した音だった。

 

────ザワリ

 

体に走った悪寒だけを頼りに後ろに飛ぶ。

 

その瞬間、絶対的な死をもたらす槍の一撃が思春の体スレスレを通り過ぎ、ズンッ!と馬が前足を下ろす。

 

どちらもかわした思春がもう一度距離を取る。

 

それに王我が追撃をしようとしたが、目の前に迫った手裏剣を槍で弾く。

 

「思春様!」

 

手裏剣を投げたのは木の上にいる明命だった。

 

瞬時に二人で目配せをする。

 

「はっああああああっ!!」

 

明命が魂切を抜き、逆手に構えて上空から襲いかかるのに合わせて思春が下から攻撃を始める。

 

「────チッ!」

 

苛立った様な舌打ちは王我が初めて見せた感情だったかも知れない。

 

強引に馬を前に走らせ、上空の明命の攻撃を槍で弾く。

 

だがそこに思春が迫る。

 

ズッ────

 

鈴音の刃先がわずかに王我の太股をかすめ、血が草花に飛んだ。

 

「おおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

突然王我の気配が強くなり物凄い力で槍が振るわれる。

 

ドオンッ!!!

 

「くぅっ!?」「ひゃあ!?」

 

槍を振るう風圧。それだけで二人を後退させ、王我が距離を取る。

 

「ふむ・・・我が体に傷を付けるとは・・・やはりこちらは面白いな」

 

感情が無い低い声に、二人はザラリと撫でられる感覚を覚えた。

 

「五胡の中でも我に傷を付けた者などいなかったというに・・・これで三度目か」

 

「三度目・・・?」

 

「ああ。一度目は我の敗北だったがな」

 

五胡の王を敗北に追い込んだ者がいる。

 

その言葉に思春と明命は衝撃を受けた。

 

だが、その衝撃は次の言葉で打ち消される。

 

「名を呂布、字は奉先・・・真名は恋」

 

思わず耳を疑う。

 

(王我が恋の真名を呼んだ・・・?!)

 

思春は自分の心臓が張り裂けそうになるのを堪えるのがやっとだった。

 

猛烈に嫌な予感がする。

 

冷や汗が出るのも構わず王我を見つめれば、仮面の下の口は醜悪に釣り上がっていた。

 

思春のその予感はさらなる王我の言葉で現実のものとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が主の配下の一人だ」

 

 

 

 

 

 

絶望が二人を包む────

 

村の正面から入り込んだ『にゃあ黄巾党』の男達が見た物は、灯り一つ無く静まり返った村だった。

 

恐る恐る進むが、誰も襲ってくる様子が無い。

 

まさかもう逃げたのか?

 

そう考えた男の一人が松明を取り出し、火打石でその松明に火を点けようとした瞬間に倒れる。

 

驚いて見れば倒れた男には矢が刺さっていた。

 

「ひぃっ!?」「て・・・敵だ!」「やっぱり待ち伏せしてやがった!!」

 

口々に叫ぶ男達の中で一人の男が叫んだ。

 

「火を使うな!!奴等はそれを目掛けて矢を射るつもりだぞ!!固まって進め!!!」

 

その声を聞いた男達が集まり、次々と村に入る男達で足の踏み場も無くなる。

 

叫んだ男の声が一刀のものだったとも知らず・・・。

 

男達が木の板を盾代わりにし、その下に団子状になって進むが、狭い道と家が邪魔でロクに動けない。

 

さらには路地裏に入ろうにも木簡の材料となる丸太や木の屑で道が塞がれ、

 

男達はまっすぐ進むしかなかった。

 

月明かりを頼りに進み、村に入った『にゃあ黄巾党』は二千人程。

 

ここまで来れば後は何とでもなる。

 

そう思った先頭の男が走り出した途端、何かに引っかかる。

 

それは腰程の高さでピンと張られた縄だった。

 

「もど・・・!」

 

戻れと言おうとしたがさらに後ろから押しやられ、男はその縄と進む男達挟まれる。

 

やがてその縄が切られた。

 

ザアアアアアアアアアッ!!!!

 

という音と共に家の屋根の上にあった袋が倒れ、下にいた男達に向かって粉が降り注ぐ。

 

「うわっ!?」「何だ!?」「ゴホッゴホッ!!」「何かが降って来たぞ!?」「攻撃か!!??」

 

男達は白い粉に塗れ、辺りが粉だらけになった。

 

「何だこれは・・・」「小麦・・・?」「こっちは甘いぞ。砂糖・・・か?」

 

「ちっくしょう!!馬鹿にしやがって!!殺してやる!!!」

 

 

その様子を広場の奥に置かれた土嚢の後ろから見ていた一刀が合図をする。

 

兵の中で一番矢を遠くに飛ばせる弓自慢の兵が、火矢を天に向かって放った。

 

「耳を塞いで伏せろ!!!!」

 

一刀のその声を聞いた兵が全員土嚢の後ろで即座に伏せる。

 

しっかりと全員が耳を塞ぎ────

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

凄まじい爆音と爆風が土嚢の上を通り過ぎる。

 

パラパラと土埃と小石が降って来る中、兵達はあまりの恐怖でガタガタと震えて小さく悲鳴を上げた。

 

体を突き抜けた衝撃で全身の筋肉が強張り、骨が軋んだ気がする。

 

耳を塞いだ筈の鼓膜にキーンという音しか聞こえなくなった。

 

しばらくして耳鳴りが和らぎ、うっすらと目を開ける。

 

震える体を何とか起こして最初に兵達が見たもの・・・。

 

それは逸早く回復して土嚢の上に立つ一刀の背中。

 

ある程度は説明を受けていたがまさかここまでとは思っておらず、花火の大きい版と考えていた。

 

だが実際はそれ所では無かった。

 

未だ土煙が晴れない村の入り口を見ても、その衝撃が容易く想像出来る。

 

ゾクリと背筋が冷えた。

 

これが『天の御遣い』の力。

 

そして呉の王家の力。

 

「明かりを灯せ!」

 

一刀の命令に全員が考える事無く従う。

 

隠れていた兵達が防壁の上で明かりを灯し、ようやく状況が見えてきた。

 

そして、唖然とする。

 

吹き飛んだ幾つもの家屋と、辺り一面に広がる死体の山・・・。

 

原型を留めている者はまだいい方だ。

 

中には手だけ、足だけ、首だけとなった者もいる。

 

その殆どに木片や小石による穴が開いていた。

 

一刀の第十作戦。

 

それは閉鎖型粉塵爆弾による敵の殲滅。

 

普通は小麦だけでは中々粉塵爆発は起きず、その条件は限定される。

 

だが、家と家の間を木簡に使う予定だった材木で塞ぎ、大通り一本にする事でそこを箱のような状態にし、

 

小麦を九割と砂糖を一割の割合で混ぜ、それにさらに"あるもの"を混ぜたものをばら撒く。

 

そして火をつければ、空気が乾いていればという条件付だが高確率で粉塵爆発が起きる。

 

これも一刀は教授から聞いていた。

 

もはやここまでくれば教授はこうなる事を知っていたのではないかとすら思える。

 

"悪用するなよ"という教授のニヤリとした笑いが、今はとにかく懐かしかった。

 

「残りを殲滅!逃げる者は追うな!」

 

一刀の号令に、兵達の雄たけびが続く。

 

 

村の人々は爆発音を村長の家の裏にある竹薮の奥で聞いていた。

 

戦えない人々はここに集められ怯えているが、蓮華の堂々とした立ち振る舞いを見て

 

絶望に落ちるものはいない。

 

王たる貫禄。

 

一刀と出会い、それがさらに増しているような気がして村人達は安心していた。

 

白蓮となぎは少し離れた所で病人や動けない人達の運搬を手伝っている。

 

「ああ!公孫賛様!」

 

そこへ一人の若い女が血相を変えて駆け込んで来た。

 

「どうした!?」

 

「昼間に村に来た緑髪の少女が自分も戦うと言って飛び出しました!」

 

「な!?」

 

確かその少女は怪我を負っていると聞いていた。

 

「わかった。私が連れ戻す!」

 

白蓮が駆け出そうとした時、なぎに急激に嫌な予感がよぎる。

 

まるで隊長を失った時のような────

 

慌てて白蓮の服の裾を掴む。

 

「ま、まって!わたしもいきます!」

 

「ええー!?駄目だよ!危ないよ!」

 

なぎの言葉に驚き、なんとか留めようとするが涙を貯めた大きな瞳に見つめられた白蓮は迷う。

 

迷っている間にも少女が危険に飛び込もうとしていると考え、白蓮は溜息をつく。

 

ここからならば敵と会う前に一刀と会う筈。

 

「し、仕方が無い・・・よし、急ぐぞ!」

 

「はい!」

 

白蓮がなぎを抱っこして走る。

 

 

家の屋根の上から月明かりに照らされ、黒い影が伸びる。

 

「何故・・・ここに・・・」

 

黒い神事服姿の女がなぎを抱く白蓮の背を見つめ、呟く。

 

「クスクスクス・・・そう・・・残念・・・・・・」

 

 

「お別れだ、白蓮」

 

黒い女の口調が変わる。

 

その声は────

 

 

お送りしました第22話。

 

・・・もうじき第一部が終わります。

 

では、ちょこっと予告。

 

黒い神事服の女がなぎと白蓮の前に舞い降りる。

 

異分子を処分する為に・・・。

 

────そして女の正体が判明する。

 

「白蓮お母さん」

 

ではまた。

 

 

大事なお知らせの追記。

 

えー・・・結論から先に書きますと、日曜日まで更新できなくなってしまいました・・・。

 

非常に申し訳ありません。

 

予定では今週中に第一部が終わる筈だったんですが・・・。

 

何があったかといいますと、

 

今朝保育園に行きました。

 

なんだかざわざわしているなーと思ったら先生の一人が走ってきまして、

 

「あっ!秋三さん!大変!○○さんとこ日曜日に産気づいて昨日、産まれたらしいの!」

 

激嫌な予感。

 

「それと、△△△さんの所のおばあさんが昨日亡くなったそうなの!」

 

絶望の予感────

 

「え、と。あれ?着物の縫いつけ・・・は?」

 

静かに首を振る先生。

 

「他の方にもお願いしたんですけど、間に合わなくて・・・

 

そこで秋三さんにお願いしたいんですが・・・」

 

「え。発表会は土曜日ですよね?今日を入れて後四日ですよね?

 

・・・何枚・・・残ってます・・・か?」

 

出された指の本数は四・・・。

 

え。それ無理。

 

一枚に少なくとも四時間かかるよ。

 

七時に家に帰ってから色々やって小説を書き始めるのが九時からで三時間程で一話終わるのに、

 

それをやってたら書けないよ。

 

私は意を決して────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、はい。しょうがないですよね。やります」

 

というわけで・・・第一部最後の盛り上がりのシーンですが、もうしばらくお待ち下さい。

 

ではまた。

 

 


 
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