※この作品は魏endで一刀が"完全"に消滅した事を前提としているため、
記憶が戻るとかは無いので御容赦下さい。
後、オリジナル設定もあり、登場人物の行動や言動が原作と一致しない場合も
多々ございますので、その点も御容赦下さい。
クスクスクスクスという笑いが思春の耳に聞こえたと同時に思春は迷う事無く踵を返す。
(化け物め!)
五胡の仮面を付けた男はもちろんの事、神事服を着た女からも相当な力を感じる。
明命や他の部下と合流しても果たして勝てるか分からない。
森の中を只管に走り抜ける中で一刀の第五作戦を成功させるべく────
「逃がしませんよ。甘寧様」
「くっ!?」
その声が頭上から聞こえ、思春は日頃の修練で培われた反射のみで体を横に転がせた途端、
ザンッ!!
とさっきまで首のあった辺りを剣の煌きが通り過ぎた。
通り過ぎた剣は『靖王伝家』
その剣を見て思春の表情が変わるが、数本の短剣を女に投げつけて距離を取る。
「貴様・・・ッ!」
「あらあら、さすがは甘寧様。あまり驚かれませんね・・・」
頭上の木の上に現れた女は薄気味の悪い笑みを見せていた。
その笑みは夜の暗闇すら明るいのではないかと思わせる程の深淵に沈んでいる。
「やはり夏侯惇様とは違いますねぇ・・・」
「何故、ここで春蘭の名が出る・・・!」
「おや、まだこちらには報告が来ておりませんか・・・許昌は落とさせていただきました」
「な・・・っ!?」
一瞬うろたえるが、それが敵の揺さぶりであると気付き即座に心を冷やす。
嘘とは思えなかった。
(だが、確かめるのは後からでも出来る!)
慎重に剣を構え、女を見やる。
女はただクスクスと笑っているだけ・・・。
ボッ!!!
突如としてその女の後ろから槍が飛んできた。
ギッッッッッッイイイイイイイインンンンン!!!
「ぐぅっ!?」
辛うじて剣で受け止めたが、その衝撃までは受け止めきれずに転がる。
「何をしている・・・貴様は早く異分子の始末に向かえ・・・主様は待ちわびているぞ」
その槍を放ったのは馬に跨る五胡の男。
感情の無いような声────
「ば・・・馬鹿な・・・!?き・・・貴様、その声は・・・!?」
今度こそ思春の表情が驚愕に変わる。
思春は知っていた。その男の正体を・・・。
五胡の男の正体、それは五胡の王『王我』<オウガ>
五胡兵百万を束ねる五胡最強の男────
だがおかしい。王我は今『主様』と言った。
自らの上にいる者が気に入らないといって、先代の王とその配下の者達を皆殺しにして王の座に座った男。
その王我が誰かの下に付く等ありえない筈。
だが、目の前にいる男の気配は間違いなく王我のものだ。
「そうねぇ・・・ではここはおまかせして、私は異分子の始末に向かいます・・・。
ついでに孫権様の首を頂いて来ましょうか」
王我程の男がここにいる事に混乱する思春に構わず、女がそう言った瞬間に霞のようにその姿が掻き消えた。
「ま、待て────!」
手を伸ばしかけた思春だが即座に構えを取る。
目の前の男の気が遥かに増大したからだ。
「小賢しいマネをしているようだが、我が主の望みの為に貴様にも死んでもらうぞ」
王我が槍を一振りする。
それだけで周囲の大木が吹き飛んだ。
思春の脳裏に蓮華と────
一刀の寂しげな横顔が、一瞬浮かぶ。
「せめて・・・貴様は村にはいかせんぞ!!!」
思春の叫びが周囲に木魂する。
それは第五作戦開始の合図。
森の中で起こった幾つもの爆発に『にゃあ黄巾党』の者達に戦慄が走った。
ここまで来た!と慌てふためき、食事を引っ繰り返して逃げ惑う者や、我先にと逃げ出す者達で
その場は大混乱に陥る。
爆発の正体は10号程の打ち上げ花火。
30号玉はもう無いが、こっちはまだ大量にあった。
それを森の中で爆発させ、『にゃあ黄巾党』に休ませる時間を与えないのが第五作戦。
だが充分に森の中に設置する時間は無かった。
混乱に陥ったのは『にゃあ黄巾党』の三割以下。
その中で門の間近に突如現れた黒い女────
月明かりに照らされたその姿は夢か幻か・・・。
あまりも場違いな神事服のその姿に、攻撃する事も忘れて防壁の上の兵が見入る。
「ここまで持ちこたえるのは予想以上でした・・・でも、これで終わりましょう」
女の周囲に数枚の札が舞い上がる。
何を・・・?
女が腕を前に振った途端、その札が一斉に防壁に向かって飛び────
防壁が吹き飛んだ。
その音を一刀と蓮華は村の広場で聞いていた。
「何事だ!?」
「ほ・・・報告します!村の正面が何者かによって突破されました!」
広場の入り口に駆け込んだ伝令の兵が大声で報告すると、広場にいた兵達に緊張が広がる。
「それに気付いた黄巾党の部隊がこちらに向かってきます!」
その報告に蓮華もさすがに動揺が隠せず、一刀の顔を見た。
村の中は必要最低限の灯りしか点されておらず、作戦を話し合うこの場でも机の上に数本の蝋燭が
あるだけでその炎の灯りの届く範囲しか見えないが、慌てる者達の中で一刀は一人冷静だった。
「第五作戦の様子はどうなった?」
「はっ、予定よりも早く始まった為、混乱に追い込めたのは三割程かと・・・」
「さ・・・三割だと!?まさか思春と明命がしくじるなど・・・!?」
予定では少なくとも半分以上は混乱に誘い込める筈だった。
「くっ・・・申し訳ありません、一刀兄さま・・・!」
蓮華が頭を下げるが、それを一刀が制する。
「いや、むしろ何かあったんだと判断できる。優秀だよ、蓮華の仲間は」
うろたえる蓮華を安心させる為にフッと笑顔を見せ、一刀は頭を働かせた。
この状況はすでに織り込み済みだ。
一刀のゼミの教授は趣味で戦術、戦略を研究していてそれに何度もつき合わされていた為、
こういった場面での作戦もいくつか立てている。
勘。
全てはそうとしか説明できないが、村の外の戦いだけで終わる事は無いと勘が告げていた。
その為にさらなる準備もさせている。
だが、未だ嫌な予感を拭えない・・・。
その為、いくつかの作戦を変更する。
「第七から第九を飛ばしてすぐに第十作戦を始める!」
「応っ!」
一刀の命令にその場にいた兵達が即座に答え、一斉に自分の持ち場に走り出す。
最早一刀の案に口を挟む者は誰一人としておらず、寧ろその覇気と智謀に心酔していた。
最初こそ蓮華の事を真名で呼ぶ男の事を良くは思えず、疑わしい目で見ていたが次々と出される
案と、その身に纏う覇気と凄まじい気の力にただただ圧倒するしかなく、いつしか命令される事
に安心感すら得るようになっていた。
『まるで孫策様と周瑜様が一緒に居るようだ』
そう評価した一人の兵に皆が賛同する。
古参兵ですら一瞬雪蓮と間違えて「孫策様」と呼んでしまった程だ。
実際に雪蓮や冥琳に確認するまでは『一刀=天の御遣い=三姉妹の兄』説を信じるわけには
行かないが兵達は皆すでにそう考え、村人達は
『孫呉の王家には天の血が入っている』
そう、考え始めていた。
(ふふふふふふふふふふふふふ・・・やはり一刀兄さまはカッコイイ・・・。
孫呉に入った天の血を、血を濃くした方がいいよね・・・。
そういう理由なら・・・いいよね・・・)
一刀は嫌な予感が増した気がした。
お送りしました第21話。
やっとこさ呉√の孫呉に天の血を~フラグを立てることが出来ました。
あのエピソードは絶対入れたかったんですよね。
これで長年の夢だった凪、蓮華、冥琳、思春、亞莎のわんわん連合軍
vs
雪蓮、祭、穏、明命、小蓮のにゃんにゃん同盟軍のわんにゃん大戦争フラグも立った!
・・・というのは冗談ですが・・・。
ではちょこっと予告。
王我との戦いの最中、明命と合流するも王我の力は二人を圧倒する。
苦戦する二人に王我から告げられた事とは・・・。
「王我」
ではまた。
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真・恋姫無双の魏end後の二次創作SSになります。
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