No.182795

真・恋姫†無双 十√ 28

kazさん

魏呉激突編 その1  どーん

投稿始めてもうすぐ一年になろうかというのに終わらない…

2010-11-05 21:34:44 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:31128   閲覧ユーザー数:18723

-時間は魏が南征を準備してる所まで遡る-

 

南蛮

 

ここ最近蜀の南方の村が南蛮大王孟獲とその軍によって頻繁に襲われ被害が拡大しているとの報告を聞いた蜀の面々は

その討伐に乗り出す

 

成都にいる趙雲こと星、張飛こと鈴々、馬岱こと蒲公英、魏延こと焔耶、そして軍師に孔明こと朱里

そして蜀の王劉備こと桃香自らが出征の意思を示し兵1万と共に出征の軍を発する

 

南蛮という慣れない地ではあったものの朱里や星の活躍でたいした被害もなく南蛮軍を破り南蛮王孟獲を捕獲する事に成功する、しかし負けを認めない孟獲、朱里などはこの地の統治の為にも処理を進言するものの桃香は大反対をする、そして

「だったら孟獲ちゃんが納得するまで相手してあげようよ」と、結局孟獲は解き放たれその後幾度も蜀に対し戦いを挑む

時間がかかると思われた戦いではあったが元々アホっ子孟獲、簡単な罠にも引っかかる有様で六度捕まり六度解き放たれ

そしてついに七度捕まり、解き放たれた時

 

「も、もう刃向かうのはやめにするのにゃあああ~」

 

ついにギブアップ、ここに七縱七禽は完了する、そんな風に素直になった孟獲に桃香は抱きつき

 

「わ~い!ほんと!約束してくれる孟獲ちゃん♪」

 

「りゅ、劉備は信用できそうなのにゃ、だからみぃはもう劉備に逆らうような事はしないにゃ」

 

「ホント?良かった~、じゃあ私達もうお友達だよ、私の事は桃香って呼んで♪」

 

「わ、わかったにゃ、みぃの事もみぃって言っていいにゃ!」

 

「じゃあ今から私達のお城に来て一緒にご馳走を食べよう!それで皆仲直りして本当のお友達になろうね♪」

 

「ご馳走!なるにゃ!トモダチになるにゃ~♪」

 

そんな感じであっという間に仲良しになる二人であった、その様子を星と朱里は

 

「ふふっ、ほんとに桃香様の前では皆あのように笑顔になってしまう」

 

「桃香様の人徳というものですね」

 

そう言うと優しげに微笑を浮かべて見守っていた二人が肩の荷が下りたようにホッと吐息を漏らした

 

「にゃにゃ、桃香のむねむねは柔らかいにゃぁ~(ぷにぷにっ)」

 

「あ、ちょ///やぁ~ん、もうっ、みぃちゃんったら///」

 

「ああっ大王様だけずるいにゃ!ミケにもやらせるにゃー!」

「トラもむねむねをぷにぷにしたいにゃーー!」

「シャムも…」

 

そんな感じで襲い掛かる三人に胸を揉みまくられる桃香さん、誰か止めるものかと思いきや

星はほうほうと眺め、鈴々は「鈴々もー」と駆け寄り、朱里は「はわわわわ////」といった状態

 

「(ぼーーーーーーーっ//////)」

「あっれぇ、焔耶ももしかして桃香様の胸触りたいのぉ~?」

「ばっ!////ばばばばば馬鹿を言えっ!と、桃香様にそ、そそそのような事出来るわけなかろう!」

「本音は?」

「触りたい……///(ぽっ)、じゃない!!!」

 

とコントをする蒲公英と焔耶さん、平和な、皆が笑顔になってくれる、そんな世界を作る為に戦ってきた皆はこんな時間

を楽しみ、ずっと続くかと思っていた、しかしそこに

 

「劉備様!成都より報告が参っております!」

 

その兵士の言葉に皆は緊張感を取り戻す、桃香もみぃ達を離し、そしてその報告を聞く

 

「成都の黄忠様よりの報告を申し上げます!孫呉より同盟の使者として孫尚香殿が参られたとの事!

劉備様の御指示を仰ぎたく至急成都にお戻り願いたいとの事でございます!」

 

その兵士の言葉に皆はすぐその考えに行き着く

 

 

 ”魏が南征の軍を起そうとしている”と

 

 

「朱里ちゃん、すぐに成都に帰る準備をしてくれるかな」

 

「はい!」

 

桃香の命にすぐさま行動を起す蜀軍の面々、その様子を見て少し陰った桃香の顔を見たみぃが

 

「桃香?何かあったのかにゃ?」

 

「ん、大丈夫だよみぃちゃん、でもちょっと忙しくなるからみぃちゃんとはここでお別れかな、

みぃちゃん、平和になったらまた会いに来るからね」

 

「嫌にゃ!みぃは桃香と一緒にいくにゃ!」 

 

そう言うとがっちりと桃香に抱きつくみぃ、さらにミケ、トラ、シャムも抱きつき一緒について行くと言い出す

そんな南蛮の皆に

 

「ありがとう皆、じゃあ一緒に行こうか、うん、きっと大丈夫、だってみぃちゃん達がいてくれるもんね」

 

そんな感じでみぃ達の頭を撫でてあげる桃香

 

「そうにゃ、みぃ達が入れば百人力なのにゃ!」

 

「「「そうにゃそうにゃ!」」」

 

みぃ達も桃香を元気づける、そんなみぃ達のおかげで笑顔を取り戻す桃香ではあったが心の中では隠しきれないほどの想い

北郷一刀との戦いは不可避となりつつある現状に心を痛めていた

 

 

 

-時間は再び戻り、魏が南征の軍を発した所まで戻る-

 

建業

 

魏軍襲来の報に呉の主だった諸将達は玉座の間に集まり軍議をしていた、しかしそこには孫呉の支柱大軍師周瑜こと冥琳

の姿はやはりなかった、病に伏せった彼女は今だ療養中であり孫呉の王孫策こと雪蓮も無理をさせまいとしていたからだ

この場を統括するのは軍師陸遜こと穏、冥琳ほどではないにしても軍師としての能力は高い

 

「まずはこの地図を見てください」

 

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

__________________________________________○下邳『夏候惇』

_______________________________○寿春『夏候淵』________=

________________________○安成『張遼』_______________===

_____○襄陽『李典・于禁』____________________________===●建業=

_________________○江夏『楽進』_________________==○石頭__=

_______________________________________===_____=

○江陵『北郷一刀』______ 夏口○===_____________濡須口○==_______=

_===___________===___===___________====_________=

___===_____赤壁===_______===______====____________=

_____===___===________柴桑○========_______________=

_______=====____________________________________=

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

そう言って広げた地図には長江を中心とした図が描かれており、そして魏軍の六方面の配置が描かれていた

 

「まず下邳より迫る夏候惇、寿春より迫る夏侯淵の二軍は各五万を率い建業を目指しています

次に安成より迫る張遼が三万、江夏より迫る楽進、襄陽よりの于禁、李典の軍が各二万五千を率い長江の沿岸諸城を目指しています、そして江陵より発した水軍を率いるのが許緒、典韋、そして北郷一刀自らが…」

 

そこまで言って穏は一息して、

 

「”十万”の本隊を率い長江を下り一路この建業を目指しています、軍船数は我が方の三倍以上、合わせた

魏軍総兵力は”二十八万”です」

 

穏の言葉に皆は言葉を失う、総数二十八万という数より十万という兵力と呉の三倍以上の軍船を揃えた魏水軍に、

荊州を得てその軍船を傘下に収めたといえどその数は驚くものであった、そんな報告に黄蓋こと祭、孫権こと蓮華は

 

「荊州水軍の軍船を得ていたとはいえこのわずかな期間のうちに我らの三倍以上の軍船を用意していたとはのう、

驚くべきは魏の国力じゃ」

 

「水上戦では我らには敵うまいと考え数を揃えたのでしょう、ですがそのような急造の水軍など我らの敵ではありません!」

 

そんな感じで各々が論議をしてる中、穏がさらに報告を続けてもよいでしょうか~、という感じで報告を続ける

 

「さらに魏軍は蜀に対しても軍を進めています、ただこちらは侵攻軍というよりは蜀を動かせない為の牽制の軍のようですが」

 

「その軍を指揮をするのは誰?」

 

「蜀を牽制する軍の兵力はおよそ十万、そしてそれを指揮するのは飛将軍呂布です」

 

その言葉に呉の面々は再び言葉を失う、蜀と同盟を果たし、もし呉に魏軍が侵攻してきた場合、蜀からの援軍の期待も

できたであろうが蜀を封じ込める為に魏軍が配したのはあの飛将軍呂布、しかも兵力は蜀軍の全軍よりも多い十万

 

「蜀からの援軍は期待できそうにないわね」

 

蜀には一騎当千の将が数多く存在するもののさすがに呂布を打ち破ってというのは無理だと感じていた

仮に蜀軍が呂布を迂回し呉に進もうものなら呂布軍はきっと荊州、そして益州への侵攻をするよう指示されているだろうと、

そうなれば蜀は持ちこたえる事はできまいと

 

「こちらの兵力はかき集めて十三万、さて、私たちはどうするべきかしら?」

 

「もちろん迎撃し、魏の奴らを叩き潰すべきです!我ら呉の大地を侵す者は何人たりとも生かして帰しません!」

 

雪蓮の問いに蓮華が元気よく進言する、その言葉に雪蓮は微笑み

 

「よく言ったわ蓮華、穏、魏を打ち破る策はある?」

 

「そうですね~、正直あの魏が相手だと生半可な策では厳しいですがやはり長江を防衛線として考え戦うのが良いと思います、各所で防衛している間に北郷一刀のいる本隊を攻撃し討ち取るのが最上の策だと思いますがそちらに兵を裂くと夏候姉妹に建業を襲われてしまう可能性があります、夏候惇には赤壁の後の戦いにおいて北荊州を烈火の如き侵攻で短期間に制圧した賈駆文和が軍師として共にいるとの報告もありますので」

 

そう言うと穏は雪蓮の承諾を得て各々の受け持つ分担を指示する

 

「夏候惇を抑えられるのは呉では雪蓮様だけです、ですので夏候惇には雪蓮様が当たって頂きたいのですが」

 

「確かに夏候惇が相手となると私以外はきついでしょうね、いいわ、夏候惇は私が抑えましょう」

 

「ありがとうございます~、そして祭様は夏候淵を抑えていただけますでしょうか」

 

「心得た!」

 

「蓮華様は濡須口で張遼を抑えてください、報告では張遼の軍には騎馬戦に秀でた郭嘉が軍師として帯同しているとの

事ですので決して城から出ず、守りに徹してください、これは守りに強い蓮華様にしかできない役目」

 

「わかったわ!」

 

「明命ちゃんは楽進を、私は李典、于禁を抑え撃ちます、よろしいですか~」

 

「はいっ!」

 

そして、そこまで言った穏は最後に残った甘寧こと思春の前に立ち

 

「思春ちゃんには北郷一刀の本隊を急襲する役目をお願いします、数で劣ってるとはいえ我が孫呉の水軍は急造の水軍如きには負けないと思っています、思春ちゃんは水上戦においては呉最強、それはすなわち大陸最強と言っても過言ではありません、ですので必ずや北郷一刀を討ち取って頂けるものだと思っています」

 

「覇っ!お任せを!必ずや北郷一刀を討ち首級を持ち帰ってこの戦いを呉の勝利へと導いて見せます!」

 

穏の指示を聞き終えた雪蓮は少し不満そうな顔をする、雪蓮は自分の手で一刀と決着を付けたいと思っているからだ

しかし穏の指示は的確であった、思春が率いる水軍は雪蓮ですら敵わないほどなのだ、数で劣勢とはいえ、思春ならば魏水軍を打ち破り一刀の首級を取る事が可能性が一番高いかもしれなかった

 

しかし、雪蓮は何故か嫌な予感がした、そして思春に

 

「思春気をつけなさい、一刀は常に我らの予想の上を行く、決して隙をみせるな!」

 

「覇っ!この甘興覇、どのような事態にも隙を見せるような事はいたしません!」

 

 

そして呉の諸将は各地へと出陣していく

 

 

 

それからしばらくして魏と呉は各地で激突する

 

 

『春蘭&詠 vs 雪蓮』

 

数では魏軍の方が有利ではあるものの地の利を生かした呉軍は雪蓮の指揮の下勇敢に戦い戦闘を有利に進めていく

 

「ぬああああああああああああああああ!!!孫策ぅ!ここで会ったが百年目!今日こそ決着を付けてくれるわぁ!!」

 

がぁん!ぎいいいいん!!

 

「あいっかわらず重い剣ねぇ、どんな馬鹿力してんのよ!」

 

「だぁれが馬鹿だぁぁぁあ!!!」

 

そんな感じで簡単に挑発に乗って深追いして被害を受ける春蘭に詠は必死で退却の鉦などを鳴らすも効果なく

 

「ああもうっ!少しはボクの言う事も聞きなさいよぉ!!!この脳筋馬鹿ぁ~!!!」

 

そんな感じで苦労する詠さんであった

 

 

 

『秋蘭 vs 祭』

 

こちらでは一進一退といった状況が続く、守りを固める呉軍に対し、無理をせず一進一退の戦いを続ける秋蘭

 

「頑強だな」

 

呉軍の戦いぶりをみて中々攻めきれない秋蘭は少し苦心していた

 

「さすがは歴戦の勇者の黄蓋、年の功といったところ…(ヒュガッ!!!)」どきゅううんん!!!!

 

秋蘭が言葉を続けようとした瞬間尋常ならざる距離から矢が秋蘭をかすめ後ろの木に突き刺さる

秋蘭ですら見切れなかった程、放ったのはもちろん黄蓋さん

 

「わしは地獄耳じゃぞ」ゴゴゴゴゴゴ

 

そんな風に言ったかは確認できなかったが秋蘭はその矢を見つつ、冷や汗をたらし

 

「今のは危なかった…、これからは気をつけよう」

 

やはり年の事は言わないが吉、そんな風に思うのだった

 

 

 

『霞&稟 vs 蓮華』

 

蓮華は濡須口に二万の兵と共に守っていた、守りに関しては呉で蓮華に敵うものはいない、その蓮華が包囲する魏軍を

睨むように見つめ

 

「魏の侵略者共、ここから先にはいかせない!」

 

元々騎馬中心の編成でもあった為攻城に苦戦する霞と稟

 

「ああもうイライラする!こら孫権出てきてうちと戦わんかい!!!」

 

「霞殿、それは無理というものです、呉は我が方より兵が少なく守る事でのみ互角に戦う事ができるのですから」

 

「せやかて引篭もって挑発にも乗ってこおへんし、こんなん全然おもろないわーーー!

いっその事城門に突っ込んでったろうかいな!」

 

「はぁ…、華雄や恋から聞いた話では霞殿は反董卓連合の時には冷静に戦況を分析し抑え役に回っていたと聞きましたが

あれはどうやらデマだったようですね」

 

「ち、ちゃうねんちゃうねん!うちはただ真っ向から勝負したいだけやねーーーーん!!!」

 

そんな霞の叫び声がむなしく響く戦場であった

 

 

 

『凪 vs 明命』

 

ぎいいん、がっきいいいいん!

 

「くっ!またかっ!」

 

隠密能力を生かした明命の地の利を生かしたゲリラ戦に凪の率いる軍は悩まされ続けていた、凪とて一軍を率いる武将で

ある、さらに規律を重視し訓練された隊の為そうそう崩れる事もない、しかし神出鬼没の明命の軍はそんな凪の軍を

あざ笑うかのように被害を与え続けていた、追撃しても捉える事ができずただ被害を増すばかり

 

「くっ、このままでは北郷様に合わせる顔がない!」

 

「孫呉の為、貴方たちにはここで果ててもらいます!」

 

そんな凛々しい明命に惚れ惚れする貴下の兵士達は「この方の為なら命とて惜しくはない!(キリッ)」と思うのだった

 

にゃ~

 

「ああっ!お猫さまです~♪」

 

凛々しいと思った次の瞬間、猫を見ていつものモフモフ明命になってしまう、そんな明命を見た貴下の兵士達は

「この方の為なら命とて惜しくはない!!!(ハァハァ)」と思うのだった!

 

 

 

『真桜、沙和 vs 穏』

 

ぽよーんぽよーんぽよーん

 

ゆっさゆっさゆっさ

 

ぽよーんぽよーんぽよーん

 

ゆっさゆっさゆっさ

 

 

穏と真桜の激戦は続くっ!!!!

 

沙和「………」

 

 

 

呉軍は兵力において劣勢ではあったものの地の利を生かし、守勢に徹した戦いをしていた為

どの戦場においても有利に戦いを進め魏は思わぬ苦戦を強いられる事となっていた

 

 

 

-魏水軍-

 

長江を下り一路呉の本拠建業へと向かう魏水軍、その数は大小合わせ一千艘近い大船団であった

 

「斥候からの報告だと呉水軍がこちらに向かってきてるそうよ、軍船数は五十艘、兵は大体五千といった所かしら、

呉水軍の数から考えれば二割ほど、ひと当てしてこちらの力量を計ろうって魂胆のようね」

 

「だとすれば雪蓮や周瑜さんが来てるって訳じゃなさそうだな、あの二人なら一気に勝負をつけにくるだろうし」

 

「どうやら上手く餌にかかってくれたみたいね、まぁ詠は今頃春蘭に悩まされてるでしょうけど、ヒヒヒいい気味」

 

「おやおや桂花ちゃんは酷い事言いますねぇ~、まぁ確かにあの二人は合わなそうですが今回は仕方ありませんしね~、

まぁ詠ちゃんの小言と暴力はおにーさんにお任せいたしますので~、くふふふ」

 

「勘弁してくれよ…」

 

風の言葉にうなだれる一刀、そんな感じで楽しげに(二人は悪い顔して)話す一刀と桂花と風に警護の季衣と流琉が尋ねる

 

「じゃあどうして春蘭様に詠様を?」

 

「名は力って言う奴よ、詠の名は北荊州、関中での戦いで呉にも知れ渡ってるでしょうから生半可な守りじゃ突破される

って思わせるの、そうすればそちらを無視できないから相応の軍を配置する、そこに春蘭が加われば尚更ね」

 

「「なるほどー」」

 

しかし実際はクジを引いて決められたりしてたのだがあえて言わない一刀さんだった(運悪いよね詠は)

 

「とはいえこちらも余裕でいられる状況でもないけどね、水上戦じゃ向こうが圧倒的に有利だし数では勝ってるとはいえ

勝てるって保障はない、だからとにかく緒戦はなんとしてでも守り抜く、頼むよ季衣、流琉、桂花、風!」

 

「「はいっ!」」

「ふんっ、当然でしょ!」

「おまかせを~」

 

「にしてもよくこんな事考え付いたわね、確かにこんな風にしていれば船に慣れない北兵も陸にいるかのように動けるから

戦いで遅れを取るような事はないし、他にも色々事を運ぶには便利だし」

 

そう言って自分達の船団を見回す桂花、一刀が考えたのは”鉄鎖連環”、船と船を鎖で繋ぎ、その間に渡しをかけ

行き来をしやすくしたもの、鎖で繋いだ事によって揺れが少なくなり船に慣れない魏軍兵士も体調を崩すものが減った、

もちろん火計を受ければ脆いという弱点もあるが一刀は真桜にある改造を頼んでいたのだった

 

「ん?これは…、霧…か」

 

その言葉に皆も周りを気にし始める、一刀の言ったように霧が出始めていた、そしてそれはどんどん濃くなっていく…

そんな様子を見た一刀は

 

「桂花、全艦に警戒態勢を命令しておいてくれ、多分呉の水軍が攻めてくるぞ」

 

桂花はその意図を理解し全艦に命令を出す、そして霧が深くなり視界も悪くなってきた時、一刀の予想通り呉水軍は動き出す

 

 

-呉水軍-

 

「甘寧様、魏水軍が近づいてきました!報告どおり軍船と軍船を鎖で繋いでいるとの事!」

 

甘寧は報告で魏水軍が軍船同士を鉄鎖でで繋ぎ止めているとの報告を聞いていた、確かにそうすれば船の揺れは抑えられ

水上に慣れない北兵は船上にあっても陸で戦うかのように闘えるであろうと

 

「ふん、小賢しい策を考えたものだ、だがその程度の事で水上戦が勝てるほど甘くはない!それを教えてやる!」

 

そう吐き捨てると思春は貴下の軍船に命令する、その命令と同時に動き出す呉の水軍、霧で視界が悪いにもかかわらず

その動きは素早い、しかし櫓を出し気付かれないよう慎重に正確に魏水軍に近づく

 

「呉軍ですっ!!!」

 

物見が気付いた時には時すでに遅く呉水軍は魏の軍船に次々と攻撃を始める、蒙衝艦が次々魏の軍船にぶつかり被害を

与えていく、魏軍も反撃するものの霧が深く敵を完全には目視できず被害らしい被害を与える事ができないでいた

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 

魏の軍船に接舷した呉の軍船からは次々と呉兵がなだれ込む、必死で反撃する魏軍ではあったが深い霧で視界が悪い上、

船上での戦いはやはり呉軍が有利であった!そんな中思春は悪視界にもかかわらず正確に十の牙門旗を捉える、さらにそこにいる一刀の姿を捉えるとその前に立ちふさがる魏兵をなで斬りにし一気に間合いを詰め一刀を襲う

それに気付いた一刀は近くにいた桂花と風を下がらせ剣を構える

 

がっぎいいいいいいいいいいいいん!!!!

 

「くっ!」

 

すんでの所で思春の刀を防いだ一刀、一刀の周りには桂花の指示で兵が集まる、

そんな様子を余裕の表情で見つめる思春は霧の中より

 

 

「你們好」

 

 

不気味に微笑み挨拶をする、そして再び一刀達に襲い掛かる、一刀を守る兵を次々なぎ払い、そして再び一刀に斬りかかる

 

がぁん!ぎいいん!!!

 

「くそっ!速ぇっ!」

 

「北郷一刀!貴様の首級この甘興覇が頂く!!!」

 

「そう簡単にはやれないな、甘寧!!」

 

がぁん!ぎいいいん!がっきいいいいいいいいいいいん!!!!

 

必死で防戦しなんとか防ぐ一刀ではあったが思春との力の差は歴然、徐々に後退していき壁に追い詰められる!

 

「北郷覚悟ぉぉぉぉ!!!!」

 

「なぁめんなあああ!!!」

 

がきいいいいいいいいいいん!!!

 

思春の刀をギリギリでかわした一刀の剣が遂に思春を捉える、しかしそれをすんでで防ぐ思春!

すぐさま間合いを取り直す、一刀を攻撃しようとした次の瞬間

 

どがああああああああああああああああああああああん!!

 

ようやく一刀を見つけた季衣の岩打武反魔が思春に襲い掛かる!しかしそれを軽々とかわす思春

さらに流琉も一刀の守りに加わるとさすがにこれ以上は無理と判断し撤退を指示する、

その指示に従い整然と撤退していく思春と呉水軍、追撃の手も交わし悠々と去っていく、霧の中に呉の水軍が消えていく

その様子を見てどっと座り込む一刀、そんな一刀に皆が駆け寄り心配する

 

「あ、ああ大丈夫、怪我はないから、しかしあれが甘寧か、強いなぁ~、ほんと死ぬかと思った…」

 

「ま、まったくよ!ほんとに全然心配なんかしてないけど今あんたに死なれちゃ困るんだから気をつけてよね!」

 

「ほんとは凄く心配なのに素直になれない桂花ちゃんなのでした~」

 

「風っ!///」

 

「でもにーちゃんも凄かったね、もう少しって感じだったし」

「はい、兄様凄いです!」

 

「ずっと凪や霞に鍛錬してもらってたからね、あと春蘭にさんざん殺されかけたんで本能でかわせられたんだろうな」

 

そんな風に笑う一刀、しかし霧が晴れ被害がわかってくると

 

「さすがに水上戦では最強の呉水軍といった所か、これからはもっと警戒を厳重にしないとな」

 

一刀達はただただ呉の戦いぶりに感嘆するばかりだった

 

 

 

その後も呉水軍は闇夜に紛れ攻撃してきたり、天候の悪い日を選んで仕掛けたりといった感じで戦いを有利に進めていった

魏水軍の被害は日に日に増していく、しかし一刀達は何かを待つかのようにただただ守りに徹し

 

「もうそろそろかな」

 

「そうですね~、私達にこれ以上進まれると各方面から進撃するこちらの軍と合流してますます不利になっていくでしょう

しね~、水上戦ならともかく陸戦となると数で勝るこちらが有利になりますので、仕掛けるとすればおそらこの辺り」

 

”夏口”

 

風の指し示した地図に一刀と桂花も頷く、そしてかねてより準備していた事を指示し、呉軍を待ち構える

 

 

-呉水軍-

 

思春は戦いを有利には進めていたものの魏水軍の足を止めるまでにはいかず、さらに陸路を進む魏軍が長江北岸に

達し始めている事を鑑みて水軍本隊を動かす事を決意する、雪蓮からの言葉”一刀は予想の上をいく”

呉に絶対の忠誠を誓う思春はその言葉を重くみて本隊を動かす事をあえてしてこなかった、思春自身も一刀が何か

を企んでるのではと慎重な戦いに徹していた、しかしこれ以上魏の進軍を放置すると戦局が不利になっていくと判断

 

 

「今夜魏軍へ総攻撃をかける、狙うは北郷一刀の頸ただ一つ!」

 

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

 

 

思春の言葉に呉の兵士達は鬨の声を上げる、ここまでの戦いは連戦連勝、水上戦ではまさに無敵

この勢いであれば数倍の数など関係ない、そんな気概が感じられた、そして思春は呉水軍本隊二万五千をついに動かす

恐らくこの魏呉の戦いの分水嶺となる戦いが今まさに始まろうとしていた

 

 

-夏口-

 

呉水軍は闇夜の中ありえないほどの速度で移動する、本来視界の悪い中水上で移動などすれば艦同士がぶつかる恐れのある為速度は出さない、しかも三百艘近くもの数ならなおの事、しかし訓練された呉水軍の精鋭にとってはそれは当てはまらない、二万五千の大軍は一路一刀率いる魏水軍本隊へと迫る!

しかしその速度を一時落とす思春、斥候からの報告の為だ、曰く

 

「魏軍の軍船数が減っております!」

 

その報告に思春は一刀がこちらの動きを察知し伏兵を配したと考える、普通ならここで相手が何かしらの策をめぐらし

こちらを待ち受けていると考えるのだが、思春はこれを千載一遇のチャンスと判断する

 

「策士策に溺れる、北郷の命運ここに潰えたり!」

 

この策を逆に利用しようと考え再び進撃を開始する呉水軍、斥候の報告を密にし上がってくる報告を精査する、そして

魏水軍が二手に分かれてる事をつかむ、一群は明かりを焚きまるで誘うかのように進撃し、もう一群はすべての明かりを

消し闇夜に隠れるように静かに進む、そしてそちらの一群に十の牙門旗があるとの報告がなされる

おそらく北郷一刀自ら伏兵として急襲しようと考えているのであろうと、その報告に思春は命ずる

 

「全軍闇夜に隠れる一群に向かえっ!!!」

 

呉水軍は速度をあげ進撃を開始する

両軍が互いを目視する距離にまで迫る、斥候の報告どおり煌々と明かりを焚く魏水軍の数は

ほぼ半数、残りは闇夜を進む一刀率いる本隊、思春は迷わずそちらへ軍を進める、それはまさに疾風の如く

魏水軍の大多数は連環船団の為その動きは遅く、呉の水軍について行く事ができない「事成れり!」思春はほくそえむ

 

呉水軍はもう一方を進む闇夜の魏水軍に近づく、攻撃はない、と、その時正面より進む呉軍に対し魏水軍が

ある動きを始める、連環船団の繋いでいた鎖を外しみるみる分裂していく、実はこれが一刀が真桜に頼み作らせていた

鉄鎖を自在に外せる仕掛け、それを作動し始める

 

左右に繋がれていた鎖が外され魏船団は舳艫相接して繋がれていた鎖によって縦長の型が幾重にもある形に展開する

誘い込まれる形となったがそれでも思春は進撃を続ける、この策を食い破るつもりであった、魏軍船に取り付くと次々

乗り込む呉軍、しかし魏軍からの反撃はない、さらに魏の軍船の兵士達がワラに鎧を着せたものだと気付くと

 

「これはっ我らの動きを封じる策かっ!」

 

思春が何か嫌な予感を感じたと同時に、今まで明かりを消していた連環船団とは少し距離を置いた正面に位置する魏船団から明かりが焚かれる、そこにいたのは魏兵、そして一刀、風、季衣

 

「甘寧!過信したな!」

 

「くっ、北郷!これで我らの動きを封じたつもりであろうがすぐに鎖を断ち切り貴様の首級を獲ってくれる!」

 

「甘寧まだ気付かないのか?何故こちらの軍船には兵が乗っていないのか」

 

その言葉に思春は”はっ!”と気付く、「魏兵がいないだと?」そして周りを見回し

かすかな匂いを嗅ぎ付けると思春はようやく悟る、一刀の策に

 

「まさかっ!?」

 

「そのまさかだ甘寧、もし周瑜さんがいれば気付いたかもしれないが、遅かったな」

 

甘寧は兵達に撤退を命令する、しかし遅すぎた! 一刀達の乗っている兵が火弩を構える、そして一刀は命ずる!

 

 

「放てえっ!」

 

 

一刀の号令と共に魏軍は自分達の軍船に火矢を放つ、予め油を染み込ませていた魏の軍船は一気に燃え始める

鎖で繋がれていた魏軍船にもみるみる燃え移りそれは接舷していた呉の軍船にも燃え移り呉兵を焼き尽くしていく

断末魔の悲鳴が響き渡る中魏軍の攻撃はさらに激しく続く、呉水軍も必死でその中から脱出を試みるものの…

 

 

ジャーン ジャーン ジャーン

 

 

脱出する方向には桂花が指揮する明かりを煌々を放っているもう一方の一群が待ち構えていた、桂花は命ずる

 

 

「呉軍を逃がすなっ!放てっ!」

 

 

無数に放たれる矢、精強を誇る呉水軍も火から逃げるのに必死で反撃ができず次々と被害を出していく

燃え盛る魏呉両軍の軍船を見つめ思春は歯軋りをし、憤怒の表情で

 

「これがっ、これが貴様の戦い方かっ!北郷一刀ぉ!!!」

 

自ら百艘以上もの自軍の軍船を焼く、そんな事をやってのけるのかと!

 

「雪蓮と決着を付ける為にもこんな所で負ける訳にはいかないんだよ、甘寧」

 

「黙れぇっ!貴様のような奴が我らが王の真名を口にするなぁあああ!!!」

 

そう言うと思春は火に包まれた軍船の上を駆け抜け一刀のいる軍船へと近づく、しかし

 

「悪いけど甘寧、届かない」

 

 

「 放てぇ!!!!」

 

 

ひゅんひゅんひゅんひゅん!!!

 

無数の矢が思春に向かって一斉に放たれる、多くを撃ち落したものの何本かが刺さり

 

「ぐあっ!」

 

甘寧は一刀の元に辿り着くことなく船から転落、

 

「くっ… ほんごおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

ばしゃーーーーーーーーーーん!! 思春はそのまま水中に没する

 

「甘寧将軍!!!」

 

呉兵達は思春を助けるべく必死で水中に飛び込み負傷した思春を抱きかかえる、動ける船に乗り込むと必死で脱出を

試みる、しかしそれを逃す一刀ではない、火に包まれた船団を迂回し、速度のある船で執拗に追撃を命令する

多大な被害を払うかわりになんとか逃げ切る事に成功する呉軍、しかしその被害は甚大であった

 

 

 

建業

 

夏口での魏軍本隊と思春率いる呉水軍との戦いの結果はすぐに各地に伝わる事となる

魏呉両軍共百艘以上近くの軍船を失うという軍船の被害数だけをみれば双方痛みわけという感じに思えた、しかし死傷した兵の数が魏が千名にも満たないのに対し呉は一万名以上もの精鋭を失うという結果に夏口の戦いが魏の勝利だというのは誰の目にも明らかであった

 

「思春の怪我は?」

 

「はい、矢を数本受けましたが命に別状はないとの事です」

 

「そう、穏、今回の夏口の水上戦いについて貴方の意見を聞かせて頂戴」

 

「はい、魏軍は江陵を発した時からすでに呉の水軍を打ち破る為の策を講じていたようです、まず江陵から発した軍の数を十万と触れ回り、さらに軍船もそれに合った数を用意しまるでそれだけの軍勢があるかのようにみせかけた『偽兵』、実際には魏の兵士は七万だったという事です」

 

「三万もの数を誤魔化していた訳ね、よくそんな事をこちらに気取られずやってのけたものね」

 

「それを指揮していたのはおそらく程仲徳でしょう、かの者は変幻自在の用兵で大軍を寡兵にみせ、寡兵を大軍にみせる事が

できる者、思春様も斥候を使い魏軍の動きを注意深く報告させていたようですが兵が報告より少ないとは最後まで知る事ができなかったそうです」

 

「少しでも違和感があったなら思春も兵の乗っていない船があると気付いてたかもしれないわね」

 

「はい、次に軍船同士を鉄鎖で繋げた『鉄鎖』、これは軍船同士を繋げる事で揺れを少なくし、水上戦に不慣れな北兵でも

水上戦を戦うようにする為の策でもありますが、同時に兵の少なさを気取られない為のものでもあったと思われます」

 

「次に無人の軍船に藁で作った案山子に服を着せ兵に見立てたものを多数配置したもの、目のいい思春様貴下の兵達ならば

これに気付いたかもしれませんが二手に別れ、一方は煌々と明かりを焚いた船団だった為闇夜にまぎれたこれらに気付くのが遅れたと思われます、これが第三の策『空船』」

 

「そして最後に枯葦や薪を満載して魚油をかけ幔幕でこれを覆った自らの軍船に火を放つ『火計』」

 

「これが魏軍が思春様の軍を破った『偽兵』『鉄鎖』『空船』『火計』四つの策を繋げた『連環の計』です、この計により

我が水軍は多大なる被害を受けほぼ行動不能の状態に陥っています、ですがそれ以上に深刻なのは…」

 

 

”魏に水上戦で勝てなかった事”

 

 

呉は水上戦には絶対の自信を持っていた、長江を防衛線とし水上戦での勝利を続ける事で数の不利を覆す事が呉を勝利に

導けると考えていた、しかしそれはもろくも崩れ去り呉の兵は士気を低下させ、さらに一刀へ恐怖さえ抱くまでになっていた

心理的な敗北、これを立て直すには時間がかかるであろうと、しかし魏はそれを許さない、

雪蓮達の元に兵士が夏口での戦い以降の魏水軍の報告を持ってくる

 

「魏水軍さらに勢いを増し進撃!長江沿岸諸城は次々陥落!すでに柴桑にまで近づきつつあり!」

 

「江中には船の進路を妨げる鉄錐(鉄製の錐)を隠しさらに鉄鎖を江上に張り巡らさてあったでしょ、それらはどうしたの?」

 

「そ、それが魏水軍は大筏を流して江中の鉄錐をからめ取り、鎖は麻油を注いだ大炬で焼ききり次々無力化していきました!」

 

その報告に雪蓮と穏は言葉を失う、魏はこちらに態勢を整う時間すら与えないのだと

魏軍は続々と長江を渡河し橋頭堡を確保、南岸の陸路からも建業へと進撃を始めているとの報告も伝えられる

 

「万策尽きたわね、穏、明命と蓮華に建業まで撤退するよう伝令をだして、退路を絶たれないうちに素早くね」

 

「…はい」

 

一人になった雪蓮は玉座に座り溜息をつく、

 

「やはり魏は…、一刀は強いわね」

 

呉軍は各地で転進を始める、穏、明命、蓮華は魏軍の追撃を振りきり建業へ帰還、祭はギリギリまで秋蘭を抑えていたものの局地的な勝利では戦況を変える事は無理と判断ししぶしぶ建業へと転進する

 

 

 

一方その頃の魏軍はというと…

 

一刀の本隊は凪、真桜、沙和、霞、稟の軍と合流し、一緒に仲良く食事中だったり

 

「はぁっ、陸遜ゆうたかなぁ、ほんま強敵やったわぁ」ゆっさゆっさゆっさ

 

(敵、敵、敵!巨乳は敵よっ!!!)

 

やたら清清しい真桜と禍々しいオーラを放つ桂花は貧乳同盟の設立を決意し、巨乳との対決姿勢を示す

巨乳と貧乳二つの勢力の戦いが今まさに切って落とされようとしようとしていた!!!しかし今はどうでもいい!

一方こちらでは離れた木々に隠れて落ち込んでる凪

 

「うう…」

 

「何やっとんねん凪?」

 

「あ、し、霞様…、い、いえその、私は北郷様から軍を任せられたのに戦果を上げるどころかお預かりした大切な兵に

多大なる被害を出してしまって…、これでは北郷様にあわせる顔がなくて…」

 

「なるほどなぁ、けど一刀やったら大丈夫やって、相手の方が戦上手やったゆうこっちゃろ、ほんなら慰めてくれる事

はあっても叱るような事はせぇへんって」

 

「で、でも…」

 

「ああもうウジウジしてんなやっ!うちはずっと包囲戦でまともに戦えへんでイライラしてんねんでっ!

あんまウジウジしてんねんやったら、襲うでぇえええ!、なぁぎいいいい!!!」

 

「き、きやあああ!!!や、止めてください霞様ぁぁ!アッーー!」

 

 

「もぐもぐもぐ、なんかあっちは賑やかだなぁ…もぐもぐもぐ、あ、流琉おかわり頂戴」

「流琉こっちもおかわりーーーー」

 

「はい、兄様♪、季衣は少し控えなさい!もう何杯目よ!」

 

賑やかな食事を終え、一刀が休んでいると

 

「よっこらしょっと」

 

「……えっと風さん、何故俺の膝の上に座られておられるのですか?」

 

「どうもここの椅子は硬くて風には合わないのです、なのでここに座らせてもらいますね~♪」

 

「いやまぁ、それはいいけど…その…な」

 

「くふっ、おにーさん身体は正直ですね」

 

「風!あなたもう少し慎みというものを!////」

 

「ぐう」

 

「寝るなっ!!」

 

風と稟の久々のやりとりに一刀は苦笑するのだった

 

 

 

建業

 

玉座の間は重い空気に包まれていた、最強を誇る呉水軍は多大な被害を受け、長江に仕掛けられていた罠はその悉くを

排除され魏軍の侵攻を抑え切れなかった為だ、各地から建業に戻ってきた面々はやはり気落ちしており中でも水軍を統括

していた思春は傷つき包帯を巻いた満身創痍の身体で雪蓮の前までやってきて膝をつき震える身体で

 

「申し訳ありません…、雪蓮様よりお預かりした大切な軍を失ってしまいましたっ!今回の敗戦は全て私の責任!

甘興覇この命をもって償わさせていただきますっ!!!」

 

次の瞬間自らの刀で自害しようとした思春の刀を持っていた南海覇王で思春ごと弾き飛ばす雪蓮

 

「勝敗は兵家の常!敗戦の責任を感じているのであれば次の戦いにて武功をあげよ甘興覇!」

 

吹き飛ばされ壁に叩きつけられた思春は大粒の涙を流し悔しそうにただただ泣き続けるのだった、南海覇王を収めた雪蓮は

 

「穏、現状を報告してくれる?」

 

「はい、魏軍は水軍の援護をうけ次々長江を渡河し、陸路より進撃を始めた魏軍の総数は十万に達しています、

現在は石頭城近辺にまで迫りつつありますが石頭城を守る兵は五千、戦いと成れば落城は時間の問題かと思われます、

そこを抜ければあとは建業まではすぐに辿り着くかと」

 

「そう…、穏、石頭城は放棄、兵は全て建業に転進させなさい」

 

「はっ」

 

命令をし終えた雪蓮は皆の方に向き一呼吸してから

 

「建業は孫呉の聖地というべき場所、相手が何者であれここを渡すわけにはいかないわ!、いいわね、皆!」

 

「はいっ!」

 

「お供いたします雪蓮様、我が命尽き果てるまで!」

 

「我が命に代えても」

 

「ふっ、今から血が滾りおるわ!」

 

「もちろんです!母様との想い出がある建業を、むざむざ北郷などに渡すわけにはいきませんっ!」

 

雪蓮の言葉に明命、思春、穏、祭、蓮華が答える

 

 

「ありがとう、ならば皆の命私が預からさせてもらうわっ!」

 

「「「はいっ!」」」

 

雪蓮を中心として呉の面々は力強く答える、普通の相手ならば勝てるかもしれない、しかし相手は北郷一刀と大国魏

もはや決戦を挑むしかない状況に呉の面々は討ち死にの覚悟を決める

 

 

しかしその時!

 

 

 

 

 

 

「遅れてすまない」

 

 

 

 

現れたその人物、その声に皆は振り返る、そこにいたのは病に倒れ療養中のはずの呉の支柱大軍師周瑜こと冥琳その人であった

 

「冥…琳」

 

一番驚いたのは断金の交わり交わした雪蓮だった、何度も見舞いをしに行ったが体調は回復する兆しは見受けられなかった

その冥琳が少なくともしっかりとした足取りで雪蓮の元まで歩いてくる

 

「心配をかけた、まだ完全にという訳にはいかないが呉の、そして雪蓮の為に役立つ事はできると思う、

私も戦場に同道させてもらえるか雪蓮」

 

「冥琳っ!!!!」

 

「「「冥琳様っ!」」」

 

抱きつく雪蓮、そして周りに集まる呉の面々、久しぶりかもしれない皆の笑顔、誰もがこの時を待っていた

誰もが冥琳の安否を心配していたのだから

 

「だ、大丈夫なのですか冥琳様!」

 

「万全という訳ではないがな、なんでも神医と言われる華陀という人物が処方した薬を商人が持ってきてくれてな、

病気を治す事はできないが痛みや吐血を抑えてくれる効果はあるらしくておかげで少しは楽になった」

 

「そ、そうなんだ、あはっ、良かった~、ほ、ほんとに…、う、ううっ、あーん、めいりーーん」

 

そういうと子供のように泣き抱きつく雪蓮、そんな雪蓮を優しく撫でてやる冥琳、周りの皆もその様子を優しげにみつめるのだった、絶望的状況、決死の戦い、そんな暗い事ばかりを連想する魏軍との戦いがあっという間にかき消され希望が見出された

 

 

「これで魏に勝てますね!」

 

 

明命の無邪気なその言葉に他の面々も笑顔で賛同する、雪蓮もそう思いたかった、しかし相手は一刀と魏

 

「冥琳、勝つ為の策はある?」

 

その言葉に冥琳は微笑み

 

「入れ」

 

そう言葉を発する、と同時に扉から一人の少女が現れる、皆はその少女を見るのは初めてだった

顔を隠し弱弱しく歩いてくるその少女を見て雪連が冥琳に訪ねる

 

「この子は?」

 

その問いに冥琳は微笑み

 

「自己紹介を」

 

冥琳に言葉をかけられた少女はビクッとしたものの恐る恐る顔を上げる

幼いながらも端正な顔だちをし、片眼鏡をしたその少女はぎこちなく自己紹介をする

 

 

 

 

「は、はじめまして!わ、私は呂蒙子明と申します!」

 

 

 

 

 

 

あとがきのようなもの

 

軍船数は結構適当です、あちこち見て参考にしたりして考えたので

地図はわかりづらいとも思ったのですが軍の配置が多少はわかればという程度で

 

この時点での各国の総兵力は

魏50万、呉13万、蜀9万  て感じで考えてたりしてます

 


 
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